表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚まし時計  作者: nacare
2:覚醒
48/75

9.

 フィルムをリーダーに挿れると火を熾した音がした。フィルムに刻まれた金の線をレーザーがなぞる音だ。デスクライトが透明なそれを照らすと、構造色に似た繊細な模様が見えた。もう少し目を凝らすと目が眩んでしまうほど、みっしりと刻まれている。

 弾けていく電子音が静かに響く。ラップトップに繋がれた中古の機械が立てた音と激しく唸り続けるファンの音が交雑して不安定な音楽に変わる。ひとりだけの部屋だと聞こえてくるのはそれだけで、いみじくも孤独とギークさを表した。

 僕の部屋には椅子はひとつ、机もひとつ。あとは段ボールとガンロッカー、ベッドで家具の紹介は終わる。床に置きっぱなしになった掃除機、埃を被った電源タップ。殺風景な部屋をオレンジ色の電灯とデスクライトがささやかながら照らしていた。

 パソコンを見た。アナログな物理的情報が電気信号へと変換されて滂沱のごときデータの奔流が現れる。当て所なくキーボードに翳した手に熱いそよ風が触れた。意味のない文字列が解読されるたびにフォントが揺れていった。もう一週間も稼働し続けているのでパソコンも限界に近い。

 僕が物理ボタンを信仰しているのは父からの影響だ。”信頼性と操作性は優先されうるべき事項であって、それは概ね物理ボタンで手に入る”後は無言ではあったが、IHや自動車のエアコンの液晶に静かに指を叩いていたことを思い出す。

 それは演技でもなんでもなかったらしく、トリチェリは極めて実在性に富んだ媒体を選んでくれた。

 僕が手に入れたのはシュワンフィルムと呼ばれている。シュワン高分子は火星の荒野に放置されても数千年はその形を保っていられる。それで純金を挟み込んで情報を刻み込んだフィルムだ。最適化にもよるが、現代なら2000本の映画が30mmに収まってしまう。情報媒体としてはひどく高価ながら、その耐久性から公文書等に用いられる。

 面倒臭いことに読み取る機械だって専用のものを使わなければいけない。製造にも許可が必要なのに、ここまでする必要があるのか?

 机の上で中古で買ったリーダーが怪しい音を出した。これだって1400セルぐらいはかかっている。オレンジ色の照明は机の周りしか照らしてくれない。買い換えればベッドで映画が見れるだろうか。どうも生きていて金を使うと脳がちぢむような感覚がある。

「これはいつ終わるんだ」

「そうですね、古い型式ですが2本ありますので……1540時間程度でしょうか」

「その間パソコンとリーダーは付けっぱなしか。電気代が恐ろしいことになる」

「いえ、これは圧縮されたデータを印刷しているので……解凍にはもう2290時間程度は必要ですね」

「さらに絶望的だ」

「私を使えば話は別ですが」

「いや、駄目だ。作戦は続くし、危ない橋を渡っているんだから。思考領域は守らないと脅威に対応できない。ジルには僕の事を守ってもらわないと」

「そうですね。ふふ。そうです。ふふふ」

 気味の悪い音が目覚まし時計から鳴った。こういう信頼を示すような事を言っておけばジルはやる気を出してくれるらしい。事実ではあるが強調して言うような事ではないと思うけれど、現実ににとってはそうではないらしい。最善の結果を出すならやる意味はある。

 初めての作戦は終わった。幸いにも追撃はなく、デイヴィッドをラウンケルに引き渡すことが出来た。装甲車は破壊されてしまったが結果は出したので問題無いだろう。彼も今朝正式に逮捕されたことがニュースで流れた。

 僕は潰された脚や内臓をすっかり治してもらった。幹細胞培養治療を行っても給料から引かれない。あまり見ていなかったけど負傷の治療は福利厚生の一部のようだ。さすが大企業と言っていい。

「ネリー、と言うかラウンケルはちゃんと金を払ってくれるみたいだな。正直使い捨てかと思ってた」

「能力を認めたということよりは、私が居ることの方が大きいでしょうね。デーモン部隊が貴方を殺しに来たら会社を四散させる程度のことはします」

 想像を超えてきたな。

「僕も少しは感を取り戻した。金があるというのはいいことだ。あんな状況でも生き残れた」

「全くそうです」

「だけど倫理性はどこでも一緒か。後のあの街のことは、考えたくもないな」

 アルブムはCEOを失ったことで衰退していくのは間違いないだろう。また戦争が起こることも同じく。グリーゼのマーケットチャートは忙しなくのたうち回っている。結局僕たちのやったことは誰かが望んだことなのか?

 この作戦を成功させて一番得をしたのは企業だ。ほぼ製薬を独占していた会社の責任者が排除されたのだから。この混乱に乗じて、別の企業が入ってシェアを奪い合うだろう。比較的安定していた経済と治安が壊されて成長する余地が生まれた。

 そしてやることは変わりない。あの街の地下には製薬施設があり、安い地価から貧者が集まってくる。合理的な方法を考えて、いつでも同じやり方に行き着いてしまう。競り合いの中でどれだけの人々が潰されていくだろうか。

 サイクルは変わらない。戦争とスマートドラッグに引き寄せられる傭兵たち、すり潰されていく無数の複製たち。コーパスではきっと何もかも変わらずに生の冒涜が続いていく。僕はいつも通り巨大な星を僅かに穿っただけで、あとに残すものは無かった。

 それでもジョージは清々しいような顔をしていた。理解は出来なかった。

「作戦は上手く行った。誰も死ぬことなく、僕たちも目的を達成できた」

「そうですね。私もお役に立てて嬉しいです。さらに役に立つためにドローンがもう100機ほど欲しいですね」

「それは無理だろうが、あいつの後のことが心配だ。自殺とかをしてないといいけれど」

「ジョージ・バッカス氏のことでしょうか?そうは思いませんね。むしろ信頼感に繋がったのではないでしょうか」

「僕には分からない。それを考えるのは相手のことであって、僕がどうこう出来ることじゃない」

 ジョージは満足だったのか?この世界に変わったところはない。デイヴィッドは直接の仇というわけではないようで、彼を殺すこともできなかった。傭兵を集めて殺していく街に変化はない。ほんのちょっとだけ、自分がすっきりしただけではないのか。それでもあの表情が演技だとは思えない。

 僕には彼のことは分からない。彼に僕のことは分からない。いつまでも思っていて、しかも真実だと信じていること。自分で考えて生きていくということはこうまで盲信しなければならない。

「それはそうですが、推理しなければいけない場合もあります。完全にトリックを説明しなければいけない読者というわけですか?」

 それはそうかも知れない。僕は全てが推論で遂行されていく推理小説はあまり好きではない。全てに証拠があり、かつ証明されていく物語なら好きかも知れないが。だけどそんなもの面白くはない。

「最近は昔の友達のことばかりを思い出してしまうよ。2人とも性格が良かったんだな。僕なんていうコミュニケーション不順者に接してくれた」

「私は目覚めてからのことしか知りませんが、出会ってすぐは如何だったのですか」

「……普通に仕事をして、それなりに接していた」

「今していることと同じですか」

「まあ、うん」

「なら期待して待ちましょう。悲観するよりも建設的です。望んだように進むこともあるかも知れません」

 彼女はまるで子供をあやすように、ゆっくりと言った。あるいは僕の気のせいかも知れない。その間にうるさく鳴いたリーダーとファンの音を思い出せなかった。

 いつか、他人が変わることが自分を変えることだと思った。期待しているだけ無駄に思えても、それでも。僕はその果てに何かが実ることを望んでいる。そしてもう戻る道はない。だから僕は待つことにした。


 デーモンのログを提出したあと、僕たちには2週間の休暇が与えられた。その間最低3回は精神科医、またはメタアナリシススコアが一定以上のAIソフトに対面しなければいけない。ログと食い違わせるような失敗はしないが、その判定だってAIがしているんじゃないのか。

 そして僕はゴミ収集の3倍の月収を手に入れた。それも半分は怪音を響かせるリーダーに消えていった。かなり専門性の高い領域だから値段が変化しようがないようで、こんな古臭い機械でもかなりの金額を払うことになった。それでも意味がある。

 フィルムが入っていた金庫にはもうひとつ、書類が入っていた。ボールド体で”試験体遺伝子情報”と書かれたもの、おそらくその概要を示した説明書だった。そして、詰められた文字間が威圧するさなかに彼の名前があった。

「試験体、か」

「彼が遺伝子情報を譲渡していた事をご存じでしたか?」

「いや全く。だけどしていてもおかしくはない。その程度なら僕が知らないだけかもしれない」

「正直な主観で構いませんが」

「……全くイメージが湧かないな。トリチェリならもっと楽に稼げる筈だし。そんなに金を必要としている様子も無かった。何より売血のような真似をするような人間じゃない」

「彼はスリーパーでした。地球同盟軍の記録も存在しているので間違いはありません。彼らの目覚めの後は一般的には経済的に優位な傾向があります。かつての資産および地球同盟からの援助があるため、また経済的に発展した地球近郊で働くことが出来るためです」

「だろうな。だけど知っての通りだ。僕たちはケブラー442にいてややみじめに暮らしていた」

「有利な条件を貴方の父親は選ばなかった」

「そうだ。だから金銭面での問題とは考えにくい。別の理由があったのか、より致命的な問題があったか」

 僕たちはお互いの思考を整理するように、開け拡げに語り合う。彼女の思いやりだろうか。ここまで他人に尽くせるとすると嫌になってくる。僕がやってきたような気の使い方はまさしく、他人と触れ合えない人間のやり方だ。

 スリーパーは地球の人口爆発時に冬眠状態に入った人間の総称だ。かつての母なる星には人が増えすぎてコーヒーの一杯も危うかった。末法の世の中を生きるよりかは苦痛なく眠っていた方がいいだろう。そう考えた金持ちたちが目が覚めると数百年後になっている。

 残りの貧乏人たちは火星に運び込まれたりして憎悪を激らせ続けた。後のことはもう2回ぐらい起きているから良いだろう。

 僕の父はというと、これらのステレオタイプから外れた存在のようだ。わざわざ地球から離れて働き続けた。

「もっと話をしていれば良かった」

「根本的な問題ですね。それが出来ていればもう少しだけ後悔をすることなく、また煩悶することも少なくなったと思います」

「いや、そこまで壮大じゃない。単純に何でここに居るのかを聞いておけば良かった」

 この言葉がすっかり、何の気後れもなく出てしまうこと。それが忘れかけていることを証明していた。トリチェリと接してきた中でそれを聞く勇気も臆病さも無かったはず。だから今こうしている。

 受容の過程をやけに現実的にしてみればそうかもしれない。人間の脳みその都合上、どんなことだって忘れる時が来る。シナプスは発火しなくなると刈り取られてしまう。僕にとって忘れたくないことだったとしても機械的に行われる。

 もっと苦しんでいたい。傷跡だけがそこにあったはずのものを証明していた。痛みがあるうちが、傷ついていられた方がいい。それが無くなって、また別のもので埋めるよりもずっと誠実だと思う。でも生活がしたいのなら、忘れた方がいいのだろうな。いちいち思い出していたら重荷になって動けないから。

 結果として僕は彼が死に際に放った言葉の通りになっている。彼のことを忘れて、自分のやりたいようにやって。他人の気持ちを類推しながら仕事をするのは辛かった。戦いの方が楽というか、頭の中が透明になるような気がするのは変わらなかった。親としてはそれで良いのかもしれないが、他の人間にとっては良い迷惑だろう。

 自分で選んだことのはずだった、ゴミ収集の仕事も辞めてしまった。それも世界に対しては身を窶した男のやることだった。いつも思っていたことと同じで、僕は僕からまだ逃げられない。

「……このまま待ち続けるのも無駄ですし、解凍に成功したものから閲覧してみましょうか」

「そうだな」


『Dec 19th,2365:今日、ようやく決意を固めた。リュラを、あの子を助けるためならどんなことだってする。まさしく世界を覆う暈、響き渡るレクイエムの一助になってしまうとしても』

「貴方の父は結構ずぼらだったりしますか?」

「……どうだろうか。思い出したくないから内容に集中しよう」

『Dec 18th,2365:思い出したのは赤子だったときの姿だ。濡れて小さなその命を俺は手に取った……あの時と同じ決断が今も求められている。心までは従えないものだ』

「そうでないなら自分のゲノム情報を日記がわりにしないと思いますが」

「……実際この情報はリーダーで起こした後に解凍、コードの暗号化を解かないと見れないようになっている。必要な遺伝子情報にプロテクトは掛かっていないから、あっちの閲覧者がわざわざ興味を持たない限りは問題は無い。安全な場所を見つけたからというだけ、だろう。うん」 

「それは……そうかもしれませんね。事実として私でも数分ほどかかる強度でした。見られたく無かった、ということは有り得ます」

「そうだろう」

「変な所で雑になるのは親子だからでしょうか。そういえば、いい加減本棚を買ったら如何ですか。段ボールを積み降ろして本を取ってくるのは非合理的だと思いますが」

「……」

 自分にとって完璧だった父親のあんまり信じたくない事実だ。シュワンフィルムに情報を書き込むには時間がかかる。フィルムに入れるデータを作成して紋様へと暗号化させ、それを中間層に使う純金に刻み込む。最後にフィルムで挟み込んで完成する。

 フィルムには何度か切れ目が存在した。膨大な遺伝子情報を紋様に起こすのだから、とてつもない長文になる筈だ。おそらく何回か分けて印刷所に持ち込む間に書いたのだろう。

 年月は僕が拾われた後らしい。第一次火星戦争の終結が2365年3月13日。僕の誕生日が3月23日だ。その後ちょうど20年経ってから第二次火星戦争が始まる。僕は記憶力が良いとは思えないが何度も何度もニュースで流れてくると覚えてしまう。

「これが一番新しいものですね……時間は掛かりますが、全部を読み込んでから時系列順に纏めることも可能です」

「いや、情報は何でも必要だ。このままでいい」

『Dec 17th,2365:刻一刻と時間は迫る。最も悪い結果を生むのは決断をしないこと。怠惰であれ、勤勉であれ、そのどちらかを選ばなければいけない。自分の無力さを思い知らされる』

『Dec 16th,2365:容態は芳しくない。人工的に作られた子宮の中であの子は眠り続けている。本当なら親の手の中で揺られている筈なのに。現状を続けていても生存する見込みは少ない』

 彼の言葉らしくない、弱々しい言葉が続いていった。どういう声色でこれを話すのか想像もつかない。こんなことを言うような人間だったか?

「……ここからは病状の記述が続いていますね。統合して推察するとMHCクラスII欠損症が最も合致しているように感じられます。心当たりはありますか?」

「いや。聞いたこともない。別の人間じゃないのか」

「確かに貴方であるという記述は存在していませんが、今になって隠し子を疑うこともないでしょう」

 こんなことを言われていたのか。違和感しかなかった。物心がついた後の記憶はたかが知れていて、結局は最期まで本音で話したこともない。寡黙で語らないと言う訳ではなく、くだらない言葉で本音を覆い隠すタイプの人間だった。もっとも、それも僕たちしか数える対象に入っていないけど。

「その長ったらしい病気はどんなものなんだ」

「大雑把に説明すると必要な分子が生成されない病です。MHCクラスIIが欠損すると免疫応答が害され、免疫不全症を引き起こします。しかしながら、HSCT(造血幹細胞移植)を行えば比較的予後は安定する筈ですが」

「孤児にドナーがいる訳無い……これが本当だとすると、さらに疑問が湧いてくるな。なんでそんな赤ん坊を拾ったんだ」

「記述から推定すると引き取った、という形が近いように思えますね」

『Nov 30th,2365:医者の診断によると、経過は良くは無いようだ。抗菌剤、免疫グロブリン製剤の投与など対症療法で好転することを願う。今リュラを守ってやれるのは俺だけだ。罪は背負わなければいけない』

『Nov 29th,2365:俺が薄汚い地球同盟軍から彼を引き取ってから半年と2ヶ月も経っていた。父親らしいことも出来ない。フェデリコと居たときのような。自分の中でちらつく影が彼を救おうとしているのか?それでもいい。上手く付き合えるかどうかよりも、生きてくれることを願うばかりだ』

「息子の名前はフェデリコ……”俺”?」

「そこですか」

 それからは病状について細かい記述が続いていった。さながら本物の医者のような神経質さは、何か狂気じみたものを感じてしまう。生命体らしく自分の複製を守ろうとする動きはそんなに強いのか。

 息子がいたことは知っていた。あの写真のことは詳細まで思い出せる。フライトジャケットを着たトリチェリ、栗色の長髪の女性、赤いズボンの子供。それが彼の家族なのだろう。僕はどこにも居ない。

 トリチェリは自分の醜い部分を隠すよりかは、まるで現実に起こっていることが全てであるかのように行動する彼と僕の違う部分だろう。珍しく理解も出来るけど、そうはしたくない。ますます彼が僕を拾った理由が分からない。根本的な治療が施せなければ治療費も嵩んでいくのに。

 まるで彼の言葉は別人のようで、僕の中に生まれた疑問はますます肥大していく。醜い感情をさらけ出すことも出来ない。僕はそれほど愛された覚えがない、羨ましいというもの。言う訳がないだろ。言ってどうにかなるわけでもない筈だ。もう全ては起こったことであってどうしようもない。

 平静を取り繕って何かを言おうと思った。左手がいつもの場所にあったコップをすり抜けた。小さな叩いたような音がやけに引っかかって聞こえた。少しの沈黙を破ったのはジルだった。彼女はまるで何もなかったかのような調子で音を編んだ。

「1週間かかってたったこの程度ですか。理解はしていましたがとんでもなく遅いです」

「最新型を買うべきだったかな」

「それで6日になる程度でしょうか。3000セルの価格上昇に見合った性能だとは思いませんね……あ、離れて下さい」

「ん?」

 彼女が奇妙な音を出すのと同じ瞬間、パソコンの画面が真っ黒に変わる。煙を噴き上げてファンとリーダーの音が止んだ。代わりにバチバチという破裂音が聞こえる。嫌な匂いが鼻腔に届いた時に僕はようやく状況を理解した。ケーブルを抜いて、消化器がどこにあったか思い出せずシンクにそのまま持っていった。

 幸いというべきか炎上はせず、真っ黒い健康に悪そうな匂いを死ぬほど(けぶ)らせてくるだけだった。ラップトップを抱えた虚しい姿が蛇口に映った。とりあえずその中に入れて見守っていると発火は止んだ。そういえば忠告に従ってナノ構造体の入ったものを買っていた。

「1週間も動かしていたんだから、そりゃ発火もするよな」

「そうですね。会話が楽しく忠告することを忘れていました。ちなみにリチウムイオン電池の火災に水は使えません」

「先に言ってくれ。データはダウンロードしたな」

「ええ。問題はありません……と、端末にネリーから連絡です。追跡インパルスはありません」

「分かった」

 急な連絡をすることが生きがいなのか。もう老い先も短いだろうに。

『リュラかい。休暇中だが仕事が入った。次の標的はレメディウムソフトウェア。ケプラー452bに今すぐ向いな』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ