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Mission-79 『対峙と証拠と機械オンチ』


 そして再び一日が経過した。

 録音機の検証を終えた翌日の放課後、俺は一人空き教室にて壁に寄りかかる様にしてと待ち人が来るのを待っていた。

 前述の通り、今は放課後。つまり例の作戦はすでに終えており、これから行われるのはその集大成ということになる。


 ――ガラガラ。


 指定した時間ちょうどに扉が開く音が教室内に響く。

 そして、


「…何の用?」


 日下部とお馴染みの二人の女子が姿を現した。

 三人が三人とも俺を訝しむ様な瞳で見ている。そりゃそうだ、今度はこっちからあんな内容の手紙を出したんだからな。

 

「何の用って――。わかってるだろ、だって手紙に呼び出しの内容は書いたんだからな」


 頑張って悪役っぽい声を出しながら、クスリと笑って俺はそう告げた。

 彼女達、正確には日下部に書いた手紙には『お前の嫌がらせの瞬間の録画映像と録音音声がある。バラされたくなかったら放課後○○教室に来い』と言った旨の内容が記してある。これはマジでメッチャ悪役っぽい。

 そして、その手紙を受け取った日下部が仲間二人を連れてここにやってきたという訳だ。


「つまりここに来たってことは――あんたが俺に痛がらせをしていたのを認めるってことかな?」


 意地悪くそう問いかける。

 対して日下部はそんな俺をキッと睨み、


「ふざけないでっ! あんな根も葉もない事を言われちゃ堪らないからしょうがなく来たの!」


 そう怒鳴った。

 やはり、俺が確たる証拠を得たという点に関してはまだ半信半疑らしい。だがキッチリと確たる証拠があるんだなこれが~。


「つまり否定すると?」


「当然でしょ、なんであんたなんかにわざわざ!」


 やはりそうアッサリとは認めてくれないらしい。

 ま、ここで即座に認めて謝られちゃったりとかしたら…それはそれでここ数日の準備が無駄になってちょっとやるせない気持ちになっちゃうというめんどくさい事情もあったりするんだが。


「よし、わかった」


 だが、そうはならなかった。

 変な言い方だが少し安心しつつ、俺はポケットからあのデータが入ったUSBメモリを取り出した。それを持ちながらあらかじめ達也がセッティングしてくれていたノートパソコンへとゆっくりと歩いていく。


「じゃあ証拠をお見せしよう。これは俺と協力者――ミスターXの力を借りて得たあんたらが俺に嫌がらせをした確たる証拠だ!」


 そして俺はそう意気揚々と告げるとパソコンにそれを突き刺した。

 

「……えーっと、これで、あとはたしかっ…」


 は、いいのだが……。

 んー? 確かこのあとは動画データと音声データを…。

 あれ? どうやんだっけ、これ?


「「「………?」」」


 パソコンの前で右往左往する俺に三人の表情が焦りから疑問に変わり始める。

 …あれ、やばくない? 全然躓くとこじゃないのに躓きまくってんだけど! さっきまでの空気台無しじゃん!

 

 どうしよっ…! どうしよっ!?

 そう内心で悲鳴を上げている間も時間はどんどん進んでいき、どんどん俺の滑稽さも増していることだろう。 

 あー、もう! こうなったら背に腹は代えられん!


「ちょっと待て! ちょっと待っててくれ!」


 できるだけでかい声を出しながら手を大きく上げて、そう三人に要請する。

 そして俺はすぐさまポケットからスマホを取り出して達也へとコールした。


「もしもし」


 幸いにもワンコールで出てくれた。

 そして俺は口元をかくし、キョロキョロと日下部らの様子を窺いながら、小声で通話を始める。


「ん。意外と早かったな、もう終わったの――」


「やばい、パソコンの操作方法がわかんなくなっちった」


「……あ? ふざけてんのか? ちゃんと教えただろ」


「俺は言葉ではなく体で覚えるタイプなのを忘れてた」


「――――ふうっ」


 小さく息を吐く様な達也の声。

 だが、俺はその中に含まれている怒り&呆れを何となく察した。

 お怒りでいらっしゃる~…。ま、悪いのは俺で怒るのも呆れるのもごもっともなんだが…。

 

 まぁでも…いるじゃん? どうしても機械とかに苦手意識がある人ってさ。

 やっぱり生まれ持った性質だと思うんだよね~、これって。うん、しゃーない。わかんなくなっちまったもんはしゃーないよ。許しておくれよ。

 心の中でそんな風に言い訳を繰り返しながら、無言で達也の次の言葉を待つ。


「…………。しゃーねぇ、こっちで誘導するからその通りにやれ」

 

 そして待つこと数秒。

 静かに達也はそう告げてきた。

 ――なんやかんやで、優しくて頼りになる男だぜ!!


「サンキュー! 愛してるぜ、達也くん!」


「奇遇だな。俺も今、お前を凄くぶん殴りたくなってるよ」


「全然奇遇じゃねぇじゃん!? 愛と対極の感情じゃん!?」


「うるさい。ほら、さっさと終わらすぞ。そもそもただデータを再生するだけの作業のどこにわかんなくなる要素があるんだよ…」


「了解。でだ、USBを勢いよく突き刺してから先がわかんねぇんだわ」


「――なるほど、最初から丸々全部忘れたってことだな」


「そんな怒んなよぉ…」


 そして俺と同じくらい――もしくはそれ以上に困惑する日下部達を背に、俺は改めて証拠をカッコよく見せつける準備をカッコ悪く進め始めたのだった。


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