Mission-75 『怒りとヘルプと逆襲開始』
自分で言うのも何だが俺はそこそこ温厚な方だと思う。
怒ることなんてほとんどないし、イライラしたりもあまりしない。その上、この生活が始まってからは他のみんなに性別を偽っているという後ろめたさからか、温厚度は更に上昇。大抵のことは笑って許せるほどの心持ちがあったと思う。
だが、何事にも限界はある。
嫌がらせくらいは笑って許そう。変な噂を流されても笑って許そう。急に着替え中に乱入してきて因縁つけられてもギリギリ許そう。
だが、それでも限られた百回のループ。それをいたずらに消費させられては流石に我慢の限界というものはやってくる。
うん、すまんな日下部。
意図してやったことじゃないのは百も承知だがちょっとやり過ぎだったな、というわけで――今回は許さないぞ♪
***―――――
そんな男の娘っぽい許さない宣言をしたところで俺の意識は現実に引き戻された。
どうやらループしたらしい。
さてっと、
「やっ、やっぱり私が愛姫ちゃんに直接言ってきます…!」
気になるループ先は先程の三人と昼食を食べていた食堂。
時間帯は、ちょうど渡辺が勢いよく立ち上がってそう宣言したところだった。
ループ前の俺はここで渡辺のその行動に驚きながらも、落ち着くように窘めた。そしてその後に穏便に解決するプランがあると伝えて彼女を安心させた。
が、今回は違う。
「大丈夫だぞ、渡辺」
「え?」
グッと拳を握り立ち上がった渡辺を座ったまま見上げて名前を呼ぶ。
そして、
「その件は、――俺が責任をもって言い逃れできない証拠を集めて正面から問い詰めてその後キッチリ罰を与えるから」
ニッコリと笑ってそう伝えたつもりだったが、どうやら俺の顔には隠しきれない怒りが滲み出ていたのか「あははっ…、りょうかいです」と渡辺は苦笑いを浮かべてすぐに席に着いた。
そして横では「葦山さんでも怒ることはあるんですね」「いいねぇ~、蒼のブチギレ本気を私も見てみたいかも」と委員長と緋音がそんな会話をしている。
「ん?」
どうやら、俺が内心の怒りは友人たちにはお見通しらしい。
そんな分かりやすいかな、俺?
そしてその後、今回の俺は当然さっきとは別の行動をとった。
具体的には最後まで三人と一緒に昼食をとることにした。更に並行してそんな中で周囲に気付かれない範囲でキョロキョロと周りを見回していると、少し遠くに日下部達の姿を確認。だが、彼女たちは俺らよりも先に昼食を終えるとそのまま食堂を出て行ってしまった。
どうやら、さっきの遭遇は最初から狙っていたわけでも廊下とかの途中で見かけたわけでもなく、ここで偶然足早に食堂を後にする俺を見て何かを勘ぐり起こした突発的な行動てな感じっぽい。
その証拠に、この後は前回と同じ様に使っている人間がいない更衣室で着替えたのだが日下部達が再び現れることはなかった。
そしてやってきた体育の時間。
今日の授業は男女別れての体力測定。昼食後の五限に体育を入れて、しかも体力測定とは中々に鬼畜な日程だ。
まぁ、それはさておき――そんな体力測定の最中、俺は空いた時間を見つけてとある人物へとコンタクトをとっていた。
「おい、達也」
「ん? 葦山か…」
体力測定の種目は、外でやるものと体育館の中でやるものに分けられる。
前半は女子が外で男子が体育館、後半はそれが入れ替わるといった形だ。そして、その入れ替わり際に俺は体育館から出てくる男子の中から達也を呼び止めて、木陰から「こっちにこい」と手招きした。
「めんどくせ~」そんな気持ちが前面に出ている表情を浮かべている達也だったが、無視はせずに意外と素直に近づいて来てくれた。
そしてそんな達也に、
「なんだよ?」
「達也。パソコン部部長のお前の腕を見込んで頼みがある」
「?」
「今日明日中に昇降口の下駄箱内もしくは下駄箱付近に仕掛けられる音と映像のとれる小型カメラ用意してくれねぇか?」
俺はそう単刀直入に依頼をした。
「――――」
達也の表情が固まる。
そして、
「とりあえずどこからツッコむべきかわからんがまず最初に………お前はパソコン部部長を何だと思ってるんだ?」
そう呆れ声の答えが返ってきた。




