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Mission-74 『ドンとぼふっと響く悲鳴』


 さ~って…、どうしたもんかね?

 セーラー服を脱ぎかけの体勢のままに俺は高速で思考を回転させ始めた。


 まずは状況整理だ。

 偶然、日下部達三人がここに来たということはないだろう。さっきの口調も俺が中にいるのが解りきっていたような話し方だった。

 つまり俺の考えが正しければ、彼女たちは最初から俺をつける又は途中で見かけるなどしてここまで来たはずだ。


 ならば次に考えるべきはその目的。

 これも想像はつく。要はいびりの様な感じだろう。

 あの下駄箱手紙が入れられ始めてから早数日。俺は特に何かを変えることなくいつも通り生活してきた。当然、隼平とも普通に話していた。

 それに痺れを切らし、日下部は次の一手を打ってきた。すなわち今日の朝から聞こえ出した例の噂である。しかし俺は今日の午前中何かを変えることなくいつも通り生活していた。当然、隼平とも普通に話していた。

 よって今回のこの直接攻撃は、日下部の第三手と言ったところだろう。


 さて、最後に考えるべきはこの状況をどう乗り切るかだ。

 ここで「全部お前の仕業だろ!」と切り出すのは悪手だ。何故なら証拠がないから。それに下手をすれば大事になるから。それは俺も彼女達も望んではいない。

 数日中に解決するとは言ったが、急ぎ過ぎて失敗しては本末転倒だ。つまりここであからさまな敵対行動をとるのはよくない。

 よって俺のとるべき選択肢は一つ。


 ――なあなあでこの場を収めて、ササッとトンズラするしかない。


「くっ、日下部さん…!?」

 

 捲っていたセーラー服を下ろし、さも心から驚いた様にリアクションをとる。

 即座の判断からの即座の芝居だというのに我ながらなかなかのものだ。その証拠に、


「んふっ。そんなに驚かなくてもいいじゃない、クラスメイトなんだし。傷ついちゃうわ」


 日下部の方は俺の演技に気付いた素振りはない。

 そしてそのままテクテクと俺の横のロッカーまで歩いて近づいてきた。


「えーっと、日下部さんはどうしてこんな普段使ってない更衣室に?」


 そんな彼女に目的はわかっているが体面上そう問いかける。

 というか、近づいてきているのは日下部だけで他の二人は入口の中と外にそれぞれ立ったままだ。恐らく他の誰かが入ってこないように見張っているのだろう。

 

 おー、なんか本格的に転校生いびりっぽい感じだ。

 そんなどうでもいい感心をしていると、


「ねぇ、葦山さん」


「うおっ!?」


 俺の質問には答えずにそのまま目の前まで近づいてきた日下部が、俗に言う壁ドン的な感じで俺にロッカードンをしてきた。

 これはちょっと予想外の行動だ、ここまであからさまに攻撃的に来るとは…。

 背中がロッカーにつき、すぐ前には日下部の顔があった。


 …つーか、こいつ普通に美形な顔してるじゃん。背も女子にしては高めでスタイルもいいだろうし。しかもお互いに付き合いの長い幼馴染なんだろ。

 こんな狡い事せずに普通に隼平にアプローチ掛ければいいんじゃねぇの? 謎だな、理解できんわぁ…。


「あなたさ、ちょっと調子に乗り過ぎじゃない?」


 勝手に心の中でそんな批評をされていることなど想像だにしていないだろう日下部がキッと鋭い瞳で俺を見据えてそう問いかけてくる。

 

「いやぁ~、別に調子に乗ってはいないと思うんだけどねぇ」


「へぇ、男子と見ればすぐに色目を使っておいてよく言うわ」


「いやいや、使ってないしそもそも俺のどの辺に色目を使えるほどの色気があるんだよ」


 パット入れても貧乳だぞ。

 まぁ、男なんだから当たり前だけどよ。


 が、俺がそう言ったところでその態度が気に入らなかったのか「ちっ…」と舌打ちをすると日下部が予想外の行動をとってきた。


「――へぇ、確かにね」


「なっ…!?」


 俺のセーラー服の上を捲ってきたのだ。それも下着まで全部見えるぐらいにガッツリと。


「あなたの言うとおり貧相で可愛くない下着ね。とても華の女子高生とは思えないわ」


 それは俺じゃなくてこの下着をタンスの中に準備していた男の娘を司ってるふざけた神様に言ってくれ。

 というかこれ予想していたピンチじゃないタイプのピンチにいつの間にやら陥ってるぞ!? こんなしょーもないことで男の娘バレをするわけにはいかねぇ!

 

「いや、これは流石に――」


 危機を察知し、素早くセーラー服を捲る日下部の手をどかそうとする俺だったが、


「やばっ…! 愛姫、先生がこっちに来てるって!」


 そこで日下部の取り巻きから声がかかる。

 よし、ナイス。俺にとっては向かい風だ。これに乗じてこの場から脱出す――、


「えっ、なんで!? ちょっ!?」


 が、その報告に日下部が思った以上に動揺を露わにした。その上、動揺するだけでは終わらなかった。

 

「きゃっ!?」


「おっ、おい!」


 焦った日下部がロッカードンの体勢からいきなり体の重心を後ろに引いたことで体勢を崩す。

 それを見て俺は反射的に倒れる日下部を受け止めようと手を伸ばした。

 が、そこでハプニングが起こった。


 ――そう言えば、この前もこんなことあったな。流石は幼なじみ同士というべきか…。


 空中で体勢を崩した日下部が何かを掴もうと手をブンブンと振る。

 そして、その手が――メチャクチャふざけた偶然だが、ちょうどさっきまでセーラー服がまくり上げられていたこともあり俺の下着に下からグッと入り込んだのだ。


 結論を言おう。

 俺は結局、こける寸前だった日下部を空中で何とか受け止め抱きかかえることができた。

 …セーラー服が捲れ、下着が完全には上にズレる様にしてはだけた状態でだ。


「――――えっ?」


 さっきまでの威勢はどこにやら、蚊が鳴く様な声が日下部の口から漏れる。

 なにを隠そう抱きかかえたことにより日下部の顔が思いっきり、何もつけていない真っ平らな俺の胸の前にあるのだ。


「なっ…、えっ? こっ、これ…」


「………いやいやいやいや、待て待て待て待て!!」


 まだ間に合う。まだ日下部の脳に今の現状の理解は追いついていない。

 このまま何とか超貧乳として押し通せば、


 ――ぼふっ!!


 が、そんな俺の思い虚しく日下部の顔がそんな擬音が聞こえてきそうな程に一気に熱く真っ赤になった。それは俺の正体を正しく認識したからこそ起きた変化だろう。

 そして、


「おっ、おおおおおお――おっ…おっおおおっ」


「いやっ、ちがっ、これはあの、ちがっ――」


「おとっ、男~~~~~~~~~!?」


 日下部の悲鳴が更衣室から学校中に木霊したのだった。


***―――――


 REBORN-METER 98→97


 残りループ可能回数:九十七回


 ループ先:学生食堂――本日PM12:37


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