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Mission-73 『決意と嘘と直接攻撃』


「やっ、やっぱり私が愛姫ちゃんに直接言ってきます…!」


「へ?」


 昼食開始から十数分。

 委員長が落ち着き緋音が飯に集中し始めたところで、唐突に椅子から渡辺が立ち上がりそう宣言した。

 ………いやっ、まぁ宣言するのはいいんだが、


「私ならどちらのこともよく知ってますし、それに原因は私にも――」


「渡辺、一応ここ学食だぞ」


「――はっ! すっ、すみません!」


 中々の大声だったため、地味に近場の生徒たちの視線が集まっていた。

 そして、俺の指摘があるまで渡辺はその状況に気付かなかったらしい。地味に天然だな、こいつ。


「その気持ちは嬉しいよ。ありがとな、渡辺」


「はい、私にお役にたてることなら――」


「でも、大丈夫だ。お前が気に病むことじゃないし、俺一人でササッと穏便に解決するプランもすでに実行中だ」


「そっ、そうなんですか?」


「そうそう、もう楽勝よ」


 俺のサラリと発した言葉に渡辺が目を丸くする。

 プランを実行中ってのも楽勝ってのもまぁ嘘だが、実際他の連中にも数日中に解決すると言っている手前ほとんどホントみたいなもんだろ。うん、これは嘘じゃない。優しい嘘だ!

 ちなみにそんな俺の優しい嘘を素直に受け取ったのか「葦山さん、すごいっ!」と渡辺が羨望の目線を送ってくれている。


 …なんか騙してるみたいで申し訳ないな。

 渡辺が凄く素直なぶん罪悪感が結構ある。

 

 ――いや、どっちみち数日中に解決すれば渡辺から見ればその通りになるんだ。ここはもう数日中とは言わず今日明日にでもちゃっちゃと終わらせちまうか。


 そして決断した俺の行動は結構早い。

 ――ガッガッガッ、と生姜焼き定食の残りを食べきり昼食を手早く終えて、


「次、体育だよな。すげぇ楽しみだから俺は先に行って準備してるわ。じゃあお先」


「はあっ!? なにを急に少年みたいなことを言って――って、こら蒼葦! …行っちゃったよ」


 三人を学食に残し、そのまま俺はその場を後にしたのだった。


 ***―――――


「さて、どうしたもんか?」


 場所は移り、一階の女子更衣室。

 俺はそこで一人、体育の準備をしていた。とはいっても短パンはスカートの下にはいてるから、上を着替えるだけなんだが。


 ちなみにこの更衣室はこの時間使われていない更衣室となっている。さっきまで一緒に昼食をとっていた三人を始め同じクラスの女子たちは二階の体育館に近い方の更衣室を使っているというわけだ。

 男の娘であるため、男子更衣室は使えない。かといって女子と一緒に着替えるのは倫理的に勿論NGだ。という訳で俺は毎回体育の前には使われていない更衣室で一人で素早く着替えていた。


 といっても今回はその素早くというのは守れていないかもしれない。

 何故なら、


 ――さて、どうしたもんか…?


 俺はロッカーの前に立ち、セーラー服に手をかけながら今後の展開を思案していた。

 今回の一連の騒動の解決策に頭を悩ませていたのだ。

 まぁ、ぶっちゃけ手段を問わなければどうとでもなる気がする。向こうのアキレス腱である隼平に協力を頼むとか、それこそ今までのことを隼平にバラすぞってこっちが逆に攻撃を仕掛けるとかな。

 

 だが、俺の目標はあくまで穏便な解決。

 言うなれば俺はこの学校このクラスにおける本当は存在しなかった異分子。そんな異分子の影響で、歪だがずーっと続いていた日下部の幼馴染への思いが閉ざされるのは流石に忍びないしな。

 とりあえず今回の件に隼平に関わらせるつもりはない。

 となると…、


「やーっぱ、俺が直接話にいくしかないかな~。いきなりこられたら向こうも多少は面食らうだろうし、そこを俺の話術で何とか――」


 そう独りでに呟きながらセーラー服を脱ごうとしたのだが、


 ――ガラン。


 そこで不意に閉まっていた更衣室のドアが開く音が俺の耳に届いた。

 …えっ?


 そして、


「あら~、偶然ね葦山さん。こんな誰も使っていない更衣室でお着替えなんてどうしたの?」


 そこから後ろに友人っぽい女子を二人引き連れた日下部が薄い笑みを浮かべながら更衣室内に入ってきたのだった。


 ――おっ、お前の方がいきなり来るんかい!?

 

 そして、腹付近までセーラー服を上げていた俺はその恰好のままそこで静止した。


 こっ、これはどっちなんだ…!?

 そのまま絶体絶命な状況と考えるべきなのか!? それとも問題解決に向けて渡りに舟の接触と考えるべきなのか!?


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