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Mission-72 『男子と女子と心配それぞれ』


「で、実際この噂ってどれくらい広まってんだろ?」


「う~ん…、言いづらいけどマジで平均以上の生徒が知ってるレベルかも」


「あー…」


「普通の生徒は、何らかのルートで耳に入る感じだね。俺の場合はSNS、そうでなくても個人的なやり取りもあるし今日の学校の会話とかでさらに広まるだろうね」


 そんな彰の言葉にげんなりしながらダラダラと話を続けていると、


「おはよっ」


 教室の前のドアから隼平が入室と共に朝の挨拶をしてきた。

 ――あれ?


「おおっ、おはよ」

「おっはー、隼ちゃん」


 俺と彰もそんな隼平へと挨拶を返す。

 

「…彰は相変わらず今日も朝から元気だね」


「いや~、そんな朝から褒めないでよ隼ちゃん」


「今回に限っては褒めてないよ。皮肉だよ」


 相も変わらずの彰の態度に、「はぁ~」と小さなため息を吐きながら隼平が自分の席に着く。

 まぁ、それは言いとして…、


「これ知らなそうじゃね?」


「知らなそうだね。ま、隼ちゃんはSNSとかやらんしね」


 彰に確認をとってみるが、考えは一致。どうやら隼平はまだ俺の噂に気付いてないらしい。

 そして、


「御門。邪魔だ」


「っと、ごめんごめん」


 そこでもう一つ新たな声がかかる。まぁ、今回は朝の挨拶ではないけど。

 その声に応じて、彰が話の流れで座っていた席から立ち上がる。俺の横の席、つまり及川達也の席である。

 というか、達也って別の人が自分の席で話していても何の躊躇もなく話しかけられるタイプなんだな。まぁ、そんな気はしてたけど。


「おいっす、達也」


 そんな達也には俺から挨拶をかける。

 すると、いつも通り「ん」とギリギリ挨拶として通用しそうな声で返事をすると、やはりいつも通り鞄を開けてサクサクと朝の準備を始め出してしまった。


 ――あれあれ?


「これ、知らなそうじゃね?」


「知らなそうだね。…まぁ、及川くん一年の頃からあんまり他の人と関わりもたないイメージあるしね」


 再び彰チェック。そして返ってきたのは肯定と地味に悲しい理由だった。

 そんな理由だったらむしろ知っていてほしかった。涙が出てきそうになるぞ、達也。


「…達也」


「?」


 我慢できず達也の肩をポンと叩き、


「達也、俺たち友達だよな?」


 そう聞いてみる。

 すると、


「は? いや、違うと思うが?」


「――…そっ、そうか」


 という照れ隠しとかの一切なさそうなマジな疑問と否定の声が返ってきた。

 …凄いね、こいつ。普通友達かと聞かれてそんな返しできる? 

 初対面のときから変わらぬこの態度、完全に自分を持ってるな。つーか俺の男友達はブレないやつばっかりじゃん、最高じゃねぇか…!!


 そして、そんなブレない男三人に囲まれて俺の朝の時間は過ぎていったのだった。


 あっ、ちなみに否定されたけど俺は達也を友達だと思っているから自分勝手ながら男友達認定しています。


 ***―――――


 が、男子と女子の事情はまた違うのだ。


「あの…、本当に大丈夫ですか、葦山さん」


「だから大丈夫だって、朝から何回聞いてんのよ委員長」


「でっ、でもこんな根も葉もない噂…」


 時間は流れ、時刻は放課後。

 いつもの女子三人と男の娘一人で俺たちは学食に来ていた。俺はいつも通り普通に誘ったのだが、彼女たちは少しいつもとは違っていた。特に委員長と渡辺である。

 具体的にどう違うかといえば、俺の噂を信じているとか疑っているとかそういうわけではなく俺のことを心配して気を使いすぎなぐらい気を使ってくれているのである。


「大丈夫大丈夫、俺は気にしてないって。確かに普通の女子だと中々にヘビーな嫌がらせだけど、ほら俺って図太いからさ」


「でも――」


「でもじゃない。箸動かしてほら、おうどん伸びちゃうよ。というかうどん好きね、委員長は」


「はい、大好物ですけど…」


「なら一番美味しいうちに食べなきゃ。ほらハリーハリー!」


「――はっ、はい」


 俺の言葉に促される様に、委員長がちゅるちゅるとうどんをすすり始める。とても素直だ。

 委員長の心配の仕方はストレート。だから、こう躱しやすくもある。


 問題はもう一人の方である。


「わっ、渡辺~。お前もおそば伸びるぞ~」


「――――…………」


「そういや、渡辺もそば好きだよなぁ~。委員長と二人でうどんそばコンビだな~」


「――――…………」


 ちなみにこれは渡辺が俺をシカトしているわけではない。

 多分聞こえていないのだ、ずーっと思い詰めたような顔をしてるし。犯人が日下部ということもあってか、恐らく感じる必要のない責任を感じているのだろう。

 こいつ真面目過ぎるところあるからな。はてさて、どうしたもんか?


 そして残る一人はというと、


「――!」


 俺が日替わり定食の生姜焼きを口に運びながらチラリと見ると、ニッと好戦的な笑みを浮かべながら親指をグッと立てて目で合図を送ってきた。

 俺は何故だかその眼だけで緋音が何を言いたいのかわかってしまった。


『殺るならいつでも協力するぜ、相棒!』


 そんな風にその眼は語っていた。


 流石に殺るのはご遠慮しま~す。


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