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Mission-71 『教師と生徒と気持ちを新たに』


「で、まぁ軽口はこの辺にしておくとして。どうする? 教師として以前に私は個人的にこういう陰湿なのは大嫌いだから全面的に協力するけど」


「必要ないですよ」


 先生の提案に手をヒラリと振って答える。

 確かにこの先生ならば犯人を見つけるのなんて容易だろう。究極、一人一人に「噂を流したのはお前か?」と聞けばいいだけだしな。

 でも残念、


「実はもう相手の目星はついてます。先生に解決してもらうのは簡単ですけど、それじゃ大事になっちゃう可能性高いですしね。俺が悪目立ちしてる自覚も全くないとは言い切れないし、それで大事になっても向こうがちょっとかわいそうな気もするんで――まぁ俺自身が穏便にササッと解決しますよ」


「ひゅ~、かっきぃな」


 俺の言葉に先生が愉快そうにニッと笑みを浮かべる。


「ま、お前がそう言うならこっちは静観するぞ。だができるだけ早めに解決した方が良いぞ」


「わかってます。二、三日くらいで終わらせますよ」


「よし、わかった。ふぅ~、とりあえず私の中で不安は消えた。ホームルーム前に屋上で煙を補充してくるわ」


「相変わらずの不良教師っぷりですね」


「生徒を思って朝の貴重な自由時間を削ってここで待ち伏せしててやったんだ。生徒想いの教師と言ってくれ」


 カラリと笑い、後ろ手にヒラヒラと手を振りながらそう言うと先生はそのまま階段を登って行ってしまった。

 そして、何故かその後ろ姿を最後まで見送った俺もまた教室へと歩き出した。


「おーす」


「――――」


 教室に入り、誰に言うわけでもなくそんな朝の挨拶をする。

 いつもならば近場にいた何人かは挨拶を返してくれるのだが、今回はその代わりに少し重い沈黙と数人の「…おはよ」と小さな挨拶が返ってきた。

 どうやらここでもしっかりと噂は浸透しているらしい。


 …はてさて、どう取り除きますかね?

 まぁ別にほっといてもいいんだけどな。噂の元をしっかりと取り除いちゃえば、噂自体は時の経過と共に自然消滅するだろうし。


 そんなことを考えながら机まで移動し、鞄を置く。

 どうやら前の席の隼平も隣の席の達也もまだ来てないらしい。そういや伏見…じゃないや緋音もいなかったな。うーん、未だ地味にこの呼び方が俺の中で自然に定着してないな。


 不意に思考が噂から離れる。

 そこで、


「ういっす、葦山ちゃん!」


「うおっ…!? びっくりした、急に後ろからでかい声で話しかけんなよ…!」


 突然、後ろから陽気な声がかかる。

 なんやかんやで今のところこの学校で一番会話してるかもしれない男子の声だった。

 …というか、


「昨日の今日で何でそこまでいつも通り元気なんだ、お前は? イカれてんの?」


「…朝っぱらからひどい言い様すぎやしないかな? 何と言うか――俺は過去はひきづらない主義だからね♪」


 キランと白い歯を見せて、親指を立てる彰。

 かっこいいことを言ってる風だが、普通に最低なことを言っている風にも聞こえる。つまり、いつも通りという訳だ。

 「はぁ~」と思わず深いため息を吐いてしまった。やはりブレないなこいつは。


「いやぁ~、でも昨日は葦山ちゃんには迷惑かけちゃったからね。今回はさっそくその借りを返す機会が巡ってきたっぽいじゃない」


「あー…、お前も知ってんのね」


「もちろん信じてはいないけどね」


「おっ、そうなのか?」


「当然当然、むしろ俺が一番信じないタイプだと思うよ」


 さも当然の様に彰がそう言う。

 断言した様な口調だな。嘘がわかる先生はともかくこいつはなんでだろ?


「超簡単な理論さ。転校数日で色んな男子に手を出している=遊び人=俺の女子生徒バージョン≠葦山ちゃんというね。俺って男女問わず自分と似た様なタイプの人って何となくわかっちゃうんだよね~」


「…誇らしく言うことじゃないが、謎の説得力のある理論だな」


 実際、当たってるわけだしな。

 彰はそういう感覚には中々鋭いやつなんだろう。


「――というか、こういう噂って昨日の今日で広まるものなのか?」


 そこで話題を変えて、ちょっと気になっていたことを聞いてみる。

 実際昨日までこんな感じになる前兆はなかったと思う。それが今日登校してみれば、これだ。中々ハイスピードで広まってると個人的には思っていた。

 しかし、


「まぁ、ありえるでしょ。実際広まってるわけだし、最近の若者の情報拡散の速さは凄いしね。それが学校とかの小さいコミュニティなら尚更だ」


「へぇ~、そういうもんなんだな」


「ま、今回は相手が事前に葦山ちゃんを落とすために色んな穴を掘ってた感はあるけどね。穴掘りの材料はそろってたわけだし」


「?」


「いや、だって葦山ちゃんって普通の女子と比べて男子と話すこと多いじゃん。俺らと放課後で初日から一緒にサッカーしたりもしてたし」


「――なるほどな」


 確かに俺は結構男子との絡みは多い。俺自身が男子だから仕方ないのだが、一般的な女子とは違うだろう。

 そして、そこを日下部は利用したと。


「――どうする? 今回は規模大きいし、ちょっと悪質だよね」


「だよな、昨日のお前の件とどっちが悪質だと思う?」


「ふふっ、比べるまでもないね」


「ほぉ」


「何故なら俺は彼女たちをただ純粋に、そしてどちらかに偏ることなくどこまでも平等に愛していたと心から天に誓って言える。正直、そんじょそこらの男女交際よりも純愛だったと言っても差し支えないと思う。――つまり圧倒的に今回の方が悪質だ」


「…それあの子らの前で言わなくてよかったな。ビンタが往復ビンタになってたぞ」


 やっぱこいつ底が知れんな。

 

 ――いや、待て。ということは今の俺は学校中の生徒からこいつみたいと思われてるのか? 

 ……あっ、やべーな。なんか一気にブルーな気持ちになってきたんだけど。


 そんな何気ない会話で俺は『もう、さっさと解決して終わらせるか』、とよりそう思ったのだった。


 目標は今日明日あたりまでに全解決だな。

 そんで神様が言ってた一週間記念を晴れやかな気持ちで迎えるとすますかね。


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