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Mission-70 『記念と噂と二連続ダメージ』


 御門彰二股事件から一夜あけて、学生生活五日目の朝を俺は迎えていた。

 

「そう言えば、もうすぐあれだな」


「あれ?」


 通学前。セーラー服に着替えながらの俺に、テレビの中から神様が声をかけてくる。

 …というか、こんなイカれた朝の日課にも慣れちまうもんなんだな。

 自分で言うのもだが、神様と話しながらセーラー服に着替える状況に慣れた男とかもうヤバいの向こう側にいるやつだろ。


「そうだな。着々と男の娘としての階段を登っていると言えよう」


「勝手に人の心の声と会話するな! …で、あれってなんだよ?」


「決まっていよう、明後日で記念すべき男の娘生活一週間ではないか」


「なんだそりゃ。それに一週間で記念って言われてもなぁ…。付き合いたての恋人同士かよ」


「ふっ」


「?」


 何気なく言った俺の言葉に神様が笑う。


「どうした?」


「いや、恋人がいたことのないやつが使う例えでは…ふふっ、ないからな、ふふはっ」


「お前マジでぶっ飛ばすぞ! テレビから出て来い、この野郎!」


 急に男の娘とか全然関係ない煽りをいれてきやがった。

 なんじゃこいつ!

 

「いやぁ~、すまんすまん。悪気はないんだ」


「悪気が無かったらそれはそれで問題だな」


「まぁ朝からそう怒るな、葦山蒼葦。それに記念なんだ、勿論私からのプレゼントもあるぞ」


「へぇ~…」


「むっ、あまり気乗りしていない感じだな」


「そりゃ今までの傾向から考えて、新たな女装グッズとかの可能性高いしな」


 というか絶対そうだろ。

 ――と俺は思っていたのだが、


「ふっ、私を甘く見過ぎだ。こう見えて公私はキッチリ分ける主義なのだ。プレゼントはしっかり貴様が嬉しがるものを用意しているさ」


「ほぉ~」


 意外な言葉に俺は少し感心した。なるほど、ちょっと見直したぞ神様。

 まぁそもそも、こいつの場合はどこが『公』でどこが『私』なのかわからんけど。


「じゃあ、それを少し楽しみに今日も男の娘として学校生活を乗り切ってくるわ」


「うむ、励めよ」


 そして、セーラー服に着替えた俺はカバンを持ってそのまま玄関へと向かう。

 …と、危ない。忘れるところだった。玄関に着く前に鏡の前で一端足を止める。

 そして、


「今日も可愛い、頑張れ蒼葦♪♪」


「…それ気に入ったのか?」


「おめぇがルーティーンにしろって言ったんだろが!!」


 今日も賑やかな朝と共に俺の一日が始まった。


 ***―――――


 さてさて、今日の手紙は何でしょうね~。


 そのまま何事もなく登校は終わり、ほぼ事務作業となり始めていた下駄箱に入っている日下部からの贈り物の確認を行う。

 今日もいつも通り紙が一枚入っていた。

 しかし、


「ん?」


 今日はいつもとは文面が少し異なっていた。

 いつもは大体隼平の名前が書いてあるのだが、今日は『お前が悪いんだ』と簡素な一文だけがそこには書いてあった。

 おおっ、含みを持たせてきたな。これは地味に気になる。


 『お前が悪いんだ』、これはつまりすでに何かをしているってことだよな。

 まぁ、そろそろ朝一で下駄箱に入れられた紙をわざわざ読むのも面倒になってきたし――場合によってはここいらで日下部と決着をつけるとしますかね。

 

 そんなことを考えながら、上履きに履き替えて学内に入る。

 が、


 ――?

 

 そこで俺はすぐさま違和感を感じ取った。

 周囲から視線を感じるのだ。それも複数の。


 それに気づき、軽く周りを見渡すとサッと何人かから顔を逸らされた。

 なるほど、何故か注目されてるな。転校してきた初日とも違う感じだ。言うなれば、少しの嫌悪の混じった好奇の目線。

 ま、普通に考えれば日下部がなんかしたんだろうな。俺の悪い噂を広める的な感じかな。


 ――だが、残念だったな。

 女装して学校に通うことにより元から強かったメンタルが更に強化され、完全なる鋼メンタルと化した俺にはその程度どうってことないのだよ! はっはっはっはっは~!


 言葉通り俺はそのまま視線は無視して階段を登り、あっという間に教室のある階まで到着。

 とりあえず教室に入ってから隼平か二股辺りから現状を聞くか、と思っていたのだが、


「おっ、葦山。ちょっとこい!」


「はい?」


 そこで背後から声がかかった。

 毎日聞いている聞き覚えのある声。我が担任教師であり人間ウソ発見器こと、浅見凛先生である。

 そのまま先生に袖を引かれて、廊下の端まで移動させられてしまった。


「えーっと、昇降口から浴びせられている謎の視線の件ですか?」


「おっ、気づいてたか」


「はい、多分誰かになんか悪い噂でも流されたのかな~と勝手に予想してます」


 俺のその答えに先生は「ほぉ~」と感心した様な素振りを見せる。


「聡いな、その通りだ。出所は知らんが、何故かお前が転校五日目にして色んな男子に手を出しまくっているという噂が流れている」


「うわぁ~…」


 すっごい嫌な噂だ。俺がそもそも男子なわけだし。

 ――まぁ、そういうタイプの噂であると予想してなかったわけじゃないけど。


「嫉妬か何かは知らんが、まったくいい迷惑だよな」


「ですね~」


「お前は男子に手を出しまくるどころか、恋人もできたこともないのにな」


「………」


 あっけらかんとそんなことを言う先生。

 そういや、初日にこの人の能力でそれを知られていたんだった。


 はぁ…、何故朝っぱらから神と人に連続して恋人がいたことないと指摘されなきゃいけないんですかね…?

 変な噂流されてることよりも、そっちの方が地味にダメージがでかいんですけど…。


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