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Mission-07 『蒼と緋と初体験』


「ふっふ~ん、なるほどねぇ。まぁなんにせよここで会ったのは何かの縁だね、私達仲良くなれそうじゃない?」


「そう…ですか? まだほんの少し喋っただけですけど」


「ほんの少し喋っただけで仲良くなれそうって思えることが凄いんじゃない、初対面って大事よ。それにほら名前も共通してるし」


 そう言って生徒会長――伏見が俺の学生証をヒラヒラと手に持って振る。


「蒼葦に緋音。ほら青と赤って別に対義語ってわけじゃないけど対比されること多いでしょ。それにどっちの漢字も何か通常とは違うタイプのあおにあかだしね。これだけでこの広い世界じゃ大きな共通点でしょ」


「はぁ…」


 そのよくわからない謎の理論に首を傾げつつ、学生証を受け取りこちらも学生証を返す。

 うん、さっきも思ったけどこの女子はだいぶ変わってるな。そして、変わっているということは少々失礼な言い方にもなるが俺の女装ミッションに置いての不安因子になる可能性が高い。

 伏見緋音か、おぼえておかないとな。


 と、いってもここらが潮時だろう。

 これ以上話していてもボロが出るだけだろうしな。


「じゃあ私、少しコンビニに用があるので」


 そうさりげなく会話を切り上げてコンビニに向かおうと思ったのだが、


「そっかそっか、了解。あっ、そうだ噂の転校生はモデル体型の美人さんでしたって知り合いに知らせてもいい?」


「やめてくれっ!!」


「うわっ!?」


 後ろから聞こえてきたそんな陽気な声に思わず、振り向き様に近づきちょい大きめの声を出してしまった。

 うわっ、ヤバい!? つい素の感じが出てしまった! さすがに女子にあんな言い方は――、


「えっと、あの、ごめん! 別に怒ってるとかじゃなくて、そのそういうのはやめてほしいなぁ~てな感じでね。ほら私別に美人でも全然ないしさ…」


 すぐさま、しどろもどろになりながらそう言い訳を展開する。我ながら焦りまくっているのか手をブンブンと振り回してのジェスチャー付きだ。

 そんな俺に最初はビクッと驚いた様な表情を浮かべていた伏見だったが、そんな俺の様子を見て何を思ったのか「ふっ」と吹き出した。


「いやぁー、そんな必死にてんてこ舞いにならんでも大丈夫だよ。ちょいビックリしたけど、そんな怖がったり嫌に思ったりはしてないって」


「そっ、そうなんですか?」


「うん、そうなんです。こっちこそいきなり変なこと言っちゃってごめんね」


 そう言いながらぺこりと頭を下げる伏見。

 こっ、こいつ…、良いやつじゃないか!

 そんな素直な態度に心の中でちょぴり感動していると、再び伏見がカラリとした笑みを浮かべ「でもさ~」と口を開いた。


「カッコいい系女子かと思ってたら、蒼葦ちゃんってもしかして可愛い系女子? 美人って言われてあそこまで取り乱すなんてさ。だって今までの人生で腐るほど言われてきたでしょ?」


「…い、いやぁ~、どうでしょう?」


 美人と言われて取り乱す理由はそれとはまた別にあるのだが、そんなことを知らない伏見に言っても仕方ないのでグッと湧き上がる思いを抑えて、そう受け流す。

 ちなみに蒼葦ちゃん呼びも同じだ。これから何度も言われる可能性もあるので慣れておく必要もあるだろう。


「いやぁ~、やっぱりそうでしょう。それに純情な気がするし、もしかして彼氏とかいたことないんじゃない?」


「…どうでしょ~」


 いたことねぇよ! だって男だからね!


「まーた、そうやってはぐらかす~♪ もしかして彼氏どころか男子と手を繋いだこともないんじゃない?」


「……どうでしょ~」


 したことねぇよ! だって男だからね!


 つーか、しつこい!! なんでこいつはそんなに俺に興味があるんだ!?

 そして俺はいつになったらコンビニに行けるんだよ!!


「ふぅー、まああんまりここで根掘り葉掘り聞くのもよくないか。なんせこれから一年間同級生なわけだしね、仲良くなる時間はたっぷりある」


 とそんな俺の心の声が通じたのか伏見の方から会話を切り上げてくれた。


「そうですね、お話の続きはまた学校で時間のあるときにでも。では私はコンビニに行ってきます」


 これを逃す手はない。

 俺のその伏見の言葉に全力で乗っかり、クルリと踵を返す。今度こそはその場を後にできるかと思った。思ってしまった。

 

 ――それ故に油断してしまったのだろう。その瞬間に伏見が何故か小さく周囲をキョロっと見渡したことにも俺は大して気にかけなかった。


 そして次の瞬間に、


「では最後に~、女の子同士のスキンシィ~プ」 


 とそんなノリノリな声と共に伏見の両手が後ろから俺の胸部に触れる。


「…ちょ!?」


 唐突なその行動にすぐには理解が追い付かず、一瞬遅れてそう声を上げる。

 まずい…!

 そう思った時にはすでに手遅れだった。


「う~ん、制服の上からでもわかってたけど…まったく………―――――ん?」


 そして俺の胸部に触れたままに最初は普通に感想を漏らしていた伏見であったが、途中でその声は言い淀むようになり、しまいには止まってしまう。

 そして、三触れしたあたりで俺の胸部から手が離れる。

 

「―――いくら小さくても柔らかい感触はあるはず…だよね、…それが全然ない。ただ硬いだけ、それに下着もつけてない…? ……えっ、うそ…、え、えっ…」


「ちょ、待て! 違うん――」


 そんな伏見をポツポツと呟く伏見の方へ俺もビビりと諦めが半分半分の硬直した顔面のままに振り返る。

 振り返った俺の眼には、両手をわなわなと震わせ血の気の失せた顔の伏見の姿があった。

 そして、


「―――あっ、あなた……。まさか…男の子?」


 その信じられないような呟きと共に俺の意識は暗転した。


***―――――


 REBORN-METER 100→99


 残りループ可能回数:九十九回


 ループ先:自宅――本日AM6:00


***―――――


「恐らくはまたすぐに会うことになろうが――とは言ったがまさかここまですぐ会うとは思わなかったよ」


 そして、そんな神様の呆れたような声のモーニングコールと共に俺は初めてのループを体験した。


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