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Mission-57 『苗字と名前とその答え』


「ささっ、蒼の初生徒会登校。気張っていきまっしょーい!」


「…おー!」


 昼休みの五人での謎の手紙対策会議が終わり、そして午後の授業も終わった。

 そして時刻は放課後。部活動に所属していないので普通ならばそのまま帰宅コースなはずの俺は伏見と二人、とある場所に向けて歩いていた。

 そのとある場所というのが伏見の言うように生徒会室という訳だ。


 そんで何故生徒会役員でもない俺が生徒会室に向かっているのかというと、俺の所属委員会が生徒会補助委員であるからに他ならない。

 ちなみにこの生徒会補助委員という役職は各クラスごとに割り当ては一人なため、うちのクラスは当然俺一人になるわけだ。


「というか、始業式の次の日にもう仕事とはもしかしてこの生徒会補助委員って結構忙しいのか?」


 伏見の後を付いていくように歩きながら、そう尋ねる。

 正直聞いていた話では学校行事の際に少々手助けをするぐらいの認識だったため、「今日の放課後に生徒会室ね」と伏見に昼休みの会議終わりに言われた時には少し驚いたものだ。

 あっ、別に嫌なわけじゃないけどな。普通に暇だし。


「いや、仕事上は委員会で一番楽って有名だよ」


「ふ~ん、そうなんだ。ちなみに他のクラスのやつらはもう来てるのか?」


「? 来てないけど。そもそも今日呼んだの蒼だけだし」


「はい? …あー、毎日一人ずつ呼ばれて説明を受ける的な感じか?」


「ううん、蒼だけ。ちなみに呼んだのも私の完全な独断だよ」


「えぇ…」


 しかし、何となく尋ねたことを起点にそこそこの事実が発覚した。

 まさかの職権乱用の告白である。


「え? じゃあなに? これって委員会関係ねぇの?」


「関係ないってわけじゃないんだけどねぇ。ほら、私これでも生徒会長じゃん。その生徒会長のクラスの委員な訳だから蒼には他の人よりも早めに色々と知っておいてほしいな~、ってのが50パーセント」


「残りの50パーセントは?」


「んー、面白そうだから♪」


 悪びれもせずにそう言う伏見に俺は思わず「はぁー」と苦笑を浮かべながらため息を吐いた。

 相変わらず自由奔放なやつだ。


「…まぁ、どうせ暇だし別にいいけどよ」


「うんうん、それでこそ蒼だよ。私の愉快な仲間たちを紹介し甲斐があるってもんだね」


「俺的にはこれ以上愉快な仲間が増えるのはご勘弁願いたいんだが…」


 そんなことを話しながら伏見と二人で渡り廊下を歩く。

 ちなみに昨日の朝に伏見が言っていたように生徒会室は教室のある本校舎ではなくそこそこの距離の渡り廊下を挟んだ別館にあるため移動距離が長い。伏見が言うには朝は歩いて別館まで行きそこの下駄箱で靴を脱ぎ、作業を終えてまた再び靴を履き本校舎の昇降口まで歩き、そこで上履きに履き替えて教室に向かうらしい。

 聞いただけでもめんどくさいのにそれを実際にやってるんだから頭の下がる話だ。


「そんで伏見は――」


「はい、ストップ!」


 そう心の中で伏見を敬いながら、何となく話を振ろうとしたところで唐突にピシッと突き出された手と共に制止の声がかかった。


「ん、どした?」


 その意味がわからずにそう聞き返す。

 すると、伏見は「む~」という擬音が聞こえてきそうな仏頂面を浮かべながら、


「昼休みからず~っとモヤモヤしてたんだけど、なんで私はずっと伏見呼びなの?」


「はい?」


「だって、御門くんとか渚くんとか名前で呼んでるじゃん!」


「あー…」


 結構もっともな指摘を唐突にしてきたのだ。

 

 そう、俺と伏見は仮にも女子同士。そして俺にとってはここに来て初めてできた友人だ。

 そんな伏見をずーっと伏見呼びで、方や他の男子は初見で全員名前呼び。まぁ、そりゃひっかかるわな。そりゃそうだ。

 伏見の立場から俺を見たら中々にクレイジーなやつだろう。

 

 つまり最初に男の娘を演じるにあたり、変に自分を偽り女子っぽく振る舞ってボロを出すリスクよりも元の性格はそのままで自然に生きていくリスクをとった時点で遅から早かれこの命題に辿り着くことは決まっていたのだ。

 

 ――さてっと、そんで俺はどう答えるべきなんだ?


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