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Mission-05 『時間と場所と初対面』


「うーん、完全な住宅街って感じだな」


 部屋から出て、いの一番に浮かんだ感想はそれだった。

 もちろん見える範囲は限られているが目に映るのは全て住宅。店っぽいものは見当たらない。


 ちなみに俺が今までいた部屋はアパートの一階部分に当たるらしい。開けたドアを見てみると101号室という表記がしてあった。

 そして、少し歩いてまた振り返ると俺が済むことになる建造物の全体像が見て取れた。

 木造の二階建て。見た限り一階当たりの部屋数は二つの合計四つの部屋しかないこじんまりとしたアパートだった。

 

「…つーか、もしかして俺の他にも誰か住んでんのか?」


 ふとそんな疑問が過ぎるが、すぐに恐らくそれはないだろうという結論に至る。

 かなり小さめだが一応ある駐輪場や駐車場は利用されている気配がないし、そもそもあの神のことだ。俺のこのミッションのためにこのアパートをゼロから作ったとしても何ら不思議はない。

 

 まったく、ふざけた神様だ。

 そう心の中で一人ごちると、アパートに背を向ける。

 右手には先程の話でもあった学校までの地図が握られている。意外と細かく書いてあるため迷う心配はなさそうだ。


「さて、行きますか」


 そして、俺は今日から通うことになる学校に向けて歩き出した。


***―――――


「うー…、ちょいとさみぃな…」


 歩き出して数分が経っただろうか、まだ俺は住宅地の中の道を歩いている。

 そんな中、時折吹く風が地味に寒さを感じさせてきていた。


「というか、今何月でここはどこなんだ?」


 そして、それによりふと俺の中でそんな疑問が浮かぶ。

 今考えるとそれはそこそこ大事なことのように思う。

 

『貴様を今から私が指定したとある時間軸のとある場所に黄泉がえり(仮)として送り出す』

 

 俺がミッションに挑む前に神様はそう言っていた。

 とある時間軸のとある場所。今の俺にはそのどちらもわかっていない。

 

 時間軸に関しては、見た感じでは建造物的にそこまで昔とは思えない。それどころか、俺が生きていた時代と明確にどこかが変わっているとも思えない。

 場所に関しては、確定しているのは日本ということだけ。神様の言葉通りなら今は四月のはずだから、このちょいと肌寒い感じからするに俺が住んでた東京よりも北な気がする。ま、それはあくまで俺の予想の域を出ないんだけど。


「こんなことなら、部屋のテレビをつけてみりゃよかったなぁ」


 少し後悔してそう呟く。

 そうあの部屋でテレビを一回つけるだけでその二つの疑問の答えは簡単に出たはずだ。

 あー、今さらながら悔やまれるー。まあ、ごたついてたからしょうがねぇんだけど…。


「ん?」


 と反省していたら、そこでふと視界にある建物が映る。

 住宅地がようやく終わりに差し掛かったようで、それを象徴するかのようにそれはそこにあった。

 二十四時間営業している便利の象徴。そう、みんな大好きコンビニエンスストア略してコンビニだ。

 そして、それを見つけたことで一つの閃きが頭をよぎった。


「時間の余裕もあるし、ここで新聞でも読んで確認するか」


 先程の疑問の答え合わせだ。我ながら中々に名案だと思う。うん、そうしよう。

 そうと決まればと、すぐさまコンビニに向けて歩き出そうとした時だった。


「あ」

 

 そんなアホっぽい声が思わず俺の口から漏れた。

 

 平日の朝ということもあり、そこそこコンビニには人がいた。

 その大盛況のコンビニの自動ドアがウィーンと開き、一人の女子がレジ袋を片手に持って中から出てきたのだ。

 しかし、それだけなら別になんてことない。問題はその女子の反対側の手には学生鞄が握られていること。更に身に着けている衣服があら大変、俺とまったく同じものだったのだ。

 つまり、同級生!!

 

 やっ、やばい…! まさか心の準備をする前に同級生に出会うとは…、しかも女子だし…!

 突然のその邂逅に思いのほかテンパってしまい、何も声が出ず立ち尽くす。

 ちなみにこれは俺が人見知りというわけではなく、純粋にセーラー服を着て同級生とどんな会話をしていいかわからないからだ。

 それ故に、「頼む、ここは気付かずにスルーしてくれー」と心の中でその名前も知れない女子に祈ったのだが、


「…ん?」


 その願いは虚しく塵と消えた。

 セーラー服女子の視線が俺を捉え、そしてそんな声と共に首を横に捻る。漫画みたいなリアクションだ。

 そして、そこで終わればいいものをそのままテクテクと俺に向かって小走りで近づいてきた。


 これは…、本格的に覚悟を決めねばならないな。…というか、ここ数時間で何度覚悟を決めてるんだ俺は?

 そんな現実逃避気味に謎の疑問を抱く俺に向かい、


「あなた、もしかして転校生さん?」


 と俺の心とは真逆のような明るい顔と声でセーラー服女子はそう若干嬉しそうにしながら話しかけてきた。


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