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Mission-45 『駅と秘匿と締めのエンカウント』


 唐突に現れた何かを隠す様なモザイクの存在。

 それは本来テレビなどの液晶越しなどだから成立するもので、印刷された紙面の上でこんなにグニャグニャと動くわけがない。人智を超えた干渉が働いているのだ。

 つまりこれは人の仕業ではない。

 では何の仕業か? 当然、神の仕業だろう。

 

 そして、その目的は大方の予想はついている。というかそれしか考えられない

 だからこそ俺は特に動揺などはせずにビラの地図に従ってとんかつ屋へと向かっていた。偶然にもとんかつ屋があるのはあの・・場所・・のすぐ側だったからだ。


「やっぱりか…!」


 そして、とんかつ屋のすぐ近くまで辿り着いた俺は、とんかつ屋とは別のとある建物を見てそう苦笑しながら声を漏らした。

 そこは俺の自宅及び学校からの最寄駅。生前では見覚えのない駅だ。

 しかし、その駅名を俺は見ることも読むことができない。


 何故なら、その駅の正面にでかでかと描かれている駅名もビラに書かれた住所の様にモザイクがかけられていたのだから。

 …なんかあれだな、とんでもない猥褻物があっこにあるみたいな感じがするな。もっと別の隠し方があるだろう、神様よぉ~。


 ――そう、つまり神様は俺に今現在いる時は教えても、今現在いる場所を教えるつもりは無いらしい。


 いや、でもこれ意味あるか?

 ぶっちゃけなんやかんやで気付くのは時間の問題なんじゃねぇのか?

 うーん、わからん。何を考えてるんだ、男の娘神。


「…でもまぁ、俺が今考える事じゃねぇか」


 が、一人で考えても当然その疑問に答えが出るはずもない。

 答えてくれるかはわからんが、帰ったら家のテレビ越しに聞いてみるか。うん、そうしよ。今は俺にいる場所を教えるつもりは無いってことが知れただけで十分か。

 とりあえず、この場はそう結論を出すことにした。


 あー、小難しいこと考えたら更に腹減ってきたな。

 よし、とんかつ食おう。そんで、帰ろう。それで真に生き返るための生き返り(仮)一日目は締めだな。

 そして、俺は駅から目を離して本命のとんかつ屋まで歩き出したのだった。


 が、ここで少々予想外のことが起こった。

 なにが予想外かというと、ビラを貰ったとんかつ屋がそこそこ混んでいるのだ。

 開店初日にこれだけ賑わってりゃお先が明るそうでめでたいが、なんかちょっと待ちそうな気がするなこりゃ。

 あー、俺って飯屋で並ぶのあんま得意じゃねえんだよなぁ…。もし結構待つようなら別の場所も考えるか。


 と、そんなことを考えて少し不安になりながら店の前まで歩いていく。

 するとあの呼び込みの女性と同じような服装をしたこれまた若い女性が店の前には立っていた。


「あの~」


「はい、いらっしゃいませ!」


「あのー、あっちら辺でこのお店のビラ貰ってきたんですけど、これ結構待ちそうですか?」


 そう問いかけると、女性は「え~っと、少々お待ちを~」とだけ言って店の中へと消えていった。

 よく見れば店のドア越しに見える順番待ちのスペースに何人かが座って待っているからすぐに案内されないのはほぼ確実だろう。あとはお店の回転率次第だが――、


 とすでに待ちは確定事項と思って店員さんが帰ってくるのを待っていた俺だったが、


「は~い、おまたせしました~! ただいま満席ではあるんですけど、相席でよろしければすぐにご案内できますよ~」


 帰ってきた答えには嬉しい誤算があった。

 やった、待ち時間いらず。

 

「あっ、こっちは全然大丈夫です」


 特に知らない人との相席とかは気にならないので俺としては全然オーケー。

 しかし、その俺の答えに「あーっと、それでですね…」とすぐには店内に案内せずに店員さんが先程とは打って変わって言葉を濁す。心なしか申し訳なさそうな表情だ。

 

「? どうしました?」


「えっとですね、その相席相手の方から条件があるらしくてですね」


「条件?」


「はい。なんでも話しかけたりとか互いに干渉はせず、ただ同じテーブルで食事をするだけなら相席を了承するとのことでした」


「ほぉ」


 それはまた中々の条件だな。

 人見知りとか人嫌いのタイプかな。まぁ、条件付きでも得とかの無い相席を了承してくれるんだから悪いやつではないか。


「どうされます? もしお嫌でしたら――」


「あっ、大丈夫ですよ。こっちは相席させてもらう側なので、それくらい問題ないです」


 そう答えると店員さんは「ありがとうございます」とだけ言って笑顔で一礼すると、「一名様ご来店で~す」という元気な声で俺と共に店内へと入って行った。

 予想通り、いや予想以上に店内はお客さんでいっぱい。それと同様に店員さんも忙しなく厨房で動き回っていた。


「なんか、凄い人の数ですね」


「ですよねぇ~、ぶっちゃけ全然自給に割に合ってないです」


 …そういや、なんで店内はこんなに大忙しなのにこの人は店の外で呑気に立ってたんだ?

 もしかして、サボって――、


「はい、あちらのお席になります」


 俺の中で目の前の店員さんにそんな疑いがかかりかけたところで、案内されたテーブルの近くまで到着する。

 そして、「では、ごゆっくりどうぞ~」とだけ言うと店員さんは踵を返して戻っていってしまった。

 …まぁ、いっか。俺が気にすることでもねぇし。


 それよかこっちだな。

 あちらの席と言われた席はもう目と鼻の先。そして、そこには後姿ではあるが一人の男性が座っていた。

 …ん、ちょっと待て。よく見たらあれってうちの制服だな。

 が、そこでその後ろ姿を見てそんなことに気付く。凄い偶然だな。ちょっと話したい。…でも話しかけちゃダメなんだよな。

 つっても「相席どうも~」ぐらいは礼儀的に言っといた方がいいよな。

 

 そう色々と考えながら、俺はそのテーブルの前まで行きその男性の対面付近に立つと、


「相席どうもっす。――って、あれ? 達也じゃねぇか」


「? ――げ…、転校生…!?」


 なんとそこに座っていたのは、俺の隣の席の及川達也くんじゃないですか!


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