表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/80

Mission-41 『奇人とT字と間違い探し』


「クイズ? …何を言ってんだお前?」


「その奇人を見る目は止めろ。キチンと理由があるクイズだ」


 そう「は?」みたいな顔の聖也に言いつつ、俺は五歩程前に出てそこで一回転。三人と向かい合う様に立った。

 そして、


「ジャンルはベタだけどみんな大好き間違い探しだ。というわけで、はい注目」


 そこで俺は両手を横に伸ばし、両腕を横に水平にして背筋をピシッ伸ばす。

 前から見ればアルファベットのT字っぽく見えるはずだ。まぁ、別にそれを意識してやってるわけではなくて、これなら身体全体が見えるためだ。


「今、目の前に何が見える?」


 その体勢のままそう問いかける


「…アホか?」

「…お調子者かな?」


「はい、お前らチョンボ。回答権は隼平に移ります。何に見える、隼平。ヒントをあげるならば、これはまだクイズじゃないからそのまま答えればいい」


「えーっと、…葦山さんかな」


 そこで若干気まずそうにしてそう隼平が答える。

 その欲しかったっ答えに俺はニコッと笑みを浮かべ、「その通りだ」と親指を立てた。

 フフッ、待っていろ隼平。その気まずさをもうすぐ解消してやるぜ。


「…いや、なんだそりゃ? そのままんまじゃねぇか」


「だからそのまんまって言っただろうが。それに本題はこれからだ。俺はクイズのジャンルを何て言った?」


「間違い探しだね」


「そうそう。――という訳で今から間違いをつくるから、全員後ろ向いとけ。不正者にはそれ相応な報いを受けさせるからな~」


 まぁ、それでループしてもおかしくないしな。

 そんな俺の言葉に三人は「ったく、早くしろよ」「へーい」「うん、わかった」と三者三様のリアクションを見せつつも素直に後ろを向いた。

 

 ――さってと、やるか。

 

 そして、三人の視覚から完全に俺が外れたことを確認して、


「ん、――っと」


 自分の制服シャツの一番上のボタンをはずし首元を引っ張ると、その中――つまり自分の胸部へと片手を突っ込んだ。



 大体一分程が経っただろうか、とりあえず予定していた作業を終えてシャツを元通りにする。

 なお、余計な疑心を三人に与えないために可能な限り音を出さない様に慎重に行動したため、そこそこ時間がかかってしまった。

 ちなみにその間三人は振り返る素振りも見せなかった。うん、流石は俺のダチたちだぜ。


「おっし、いいぞ~」


 というわけで、準備が整ったので三人にこっちを向くことを許可する。

 これで間違い探しクイズの準備は整った。

 

「はい、早押しな。さて、さっきまでの俺とどこが変わったでしょうか?」


 先程の様にT字の姿勢をとってそう今度こそクイズを出題する。


「んー。変わったつっても……―――は?」

「…いやいやいやっ」

「? ん? あっ、…ええっ!?」


 そして、意外とすぐに三人はその正解に気付いた様だ。

 まぁ、そりゃそっか。なんかアンバランスだし、T字だから地味に体のラインが出るしな。

 

 が、気づきはしたが三人とも答えようとはしない。驚いてそれどころではない様だが、それと同時にどこか答えにくそうにしている。


「………あ」


 が、その三人の反応によりそこで俺もあることに気付いた。

 

 ――これって見方によっては逆セクハラってやつになるんじゃねぇか? 


 いや、だって今の俺は女子だし。女子が男子こんなこと・・・・・してるってモロ逆セクハラじゃん。


「…」


 そう思ってしまったらなんか冷静になってきた。

 そして、冷静になるにつれ客観的に見たときの自分の現状はメッチャ奇人である。聖也の俺を見る目は正解じゃん!

 

 ――うん、ここはもう自分から答え合わせしちゃお。完全に自業自得だが、この空気にもう耐えられそうにない。


 そう即座に決断し、自分の方から答えを口にしようとしたところで、


「いや、あのな――」


「ほーい、じゃあ俺が答えてもいい」


 そこで助け舟が入る。彰が手を上げたのだ。

 思えば協力を要請した手前、何となく俺の行動の真意を理解してくれたのかもしれない。

 見直したぜ彰くん!


「はい、彰!」


「――えーっと、始めに言っとくけどこれ断じてセクハラじゃないからね」


「――ああ、俺も言っておくけどこれは断じて逆セクハラじゃないからな」


 そんなお互いに謎の予防線を張りながら答え合わせに移る。

 ちなみに聖也がボソッと「えっ、違うのか…」と困惑した様な声を漏らしたが聞こえないふりをする。


「えっと、最初との違いは何故か葦山ちゃんの片方の胸がなくなってること…ですね」


「うん、正解!!」


 そして、俺は恥ずかしさを吹き飛ばすぐらいの声量でそう答え合わせをした。

 右だけ下着の中に詰めたパットを全て抜いて、完全なるペッタンコになった胸を張りながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ