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Mission-31 『おまけと会話と不安解消』


「はい、お願いします」


 という訳で一人で学食の定食専用配膳列に並ぶこと少々。

 順番が回ってきたので、配膳係っぽい気のよさそうな店員のオッチャンに食券を渡す。


「はいよ。おっ、食べるねお嬢ちゃん」


「成長期ですんで」


「ははっ、そりゃそうか。…って、よく見たら見たことない生徒さんだな。新入生…ってわけでもないか。ネクタイの色が違うし」


「ええ、今日からここの生徒になった転校生ってやつです。多分これからお昼は結構ここでお世話になりますんでよろしくどうぞ」


「はー、なるほどな。――おし、初日から学食に来てくれた礼だ。唐揚げ二つおまけしてやろう」


「えっ、マジで!? さっすが、おっちゃん男前だね~」


「おっ、わかってるじゃねぇか! しゃあねぇ、もうニ個おまけだ」


 そして、そんなやり取りを経てまさかの唐揚げ四つがプラスされたミックスフライ定食を手に俺は意気揚々とその場を後にした。ちなみにご飯とみそ汁も心なしか量が多い気がする。

 やたーっ、もうけ♪

 さてと、あとは伏見たちを見つければ――っと見っけ。


 チラチラッと学食内の食事スペースを見渡すとすぐにその姿は見つかった。

 ちなみに俺以外の全員がすでに揃っているようで、俺も小走りでその席へと向かう。


「いやいや、そんな急がんでも…」


「待ってて、みんなのが冷めちゃわりぃだろ。それに委員長と渡辺は麺類だから伸びちゃうかもだし」


 委員長の前には天ぷらうどん、渡辺の前には山菜そばっぽいのが置いてあった。

 ちなみに全員口をつけてはいない。

 もしかしなくても、俺を待っててくれたんだろう。いいやつらだ。


「はい、お待たせ」

 

 そんな彼女たちの厚意に感謝しつつ、四人掛けのテーブルの空いた残り一つの席に腰を下ろす。

 

「うんじゃ、食べますか」


 そしてそんな伏見の言葉が合図となり、


「「「「いただきます」」」」


 四人それぞれが手を合わせ、昼食の時間が始まった。

 うんうん、礼儀正しくてみんな偉いな。


「あっ、そだ。学食のおっちゃんに唐揚げ四個おまけしてもらったから、みんな一個ずつとっていいよ」


「ははっ…、四個ってそれはもはや普通の唐揚げ定食レベルですね」


「さっそく学食内の人の心を掴むとはやるなぁ~、蒼。ほんじゃ、ありがたくいただきっ」


「では、私もありがたく」


 俺の言葉に伏見と委員長が俺の皿に箸を伸ばす。


「渡辺も遠慮しなくていいよ」


「えっ、えっと…。じゃあすみません、頂きます」


「おう」


 そして、最後に俺に促される形で渡辺が唐揚げをとる。


「ってか、あれだな。今さらながら教室で誘って以来初めての会話だけど、誘っちゃって大丈夫だったか? もしかして予定とかあったりした?」


「ホントに今さらね」


「こらこら、茶々を入れるな。そこの麻婆娘」


「こりゃ失敬」


 俺がそう言いながら手をヒラヒラと振ると、伏見はカラリと笑い食事に戻る。

 そしてそのタイミングで、


「えっと…あの、それは全然大丈夫です。それどころか…ほんとあのままだったら一人でパンでも買って食べようかと…ぐらいに考えてたくらいなんで。むしろ嬉しかったというか、渡りに船だったというか…」


 渡辺が何故か恐る恐るみたいな感じで口を開く。しかし、その言葉の終わりの頃には微かにだがその口元に笑みが浮かんでいた。

 

 ――よかった。どうやら、俺のお節介は功を奏したらしい。そんで俺の心配は杞憂だったようだ。


「ハハッ、それならよかった。いやぁー、マジで嫌嫌だったらどうしようと思ってよ。あー、これで一安心。伏見、ソースとって」


 というわけで不安解消すれば自然と空腹が顕著になってくる。

 さて、俺も食べるとしますか。

 「はいよ」とテーブル挟んで向かいの伏見が手渡してくれたソースを「あんがと」と受け取り、メンチとアジフライにかける。

 そして、俺は初めて学び舎の学食に手を付けたのだった。

 

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