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Mission-18 『男子と女子と生前の知恵』


「………」


「………」


 うー、やばい。気まずい…。

 さっきの椎葉の自爆から今現在に至るまでの間、俺たち二人の間には無言が続いていた。

 正確には椎葉が窓の外に向かい絶叫した後の「…すいません。あの…じゃあ行きましょっか」からだ。

 

 ぶっちゃけ俺ももし椎葉が男だったのなら、適当に茶化して普通の会話に戻るのだがそうはしなかった。何故なら一応こんな外見だから、生前の俺は結構女子の友達も多かった。まぁ、こっちから積極的に友達になりにいったというよりかは向こうから話しかけてきたり寄ってきたりとアクションがあったが故だが。

 …ちなみに、こう言えば何かメチャクチャ鼻につくモテる男みたいに感じるかもしれないが誤解しないでほしい。

 ――だってそもそもほぼ男扱いはされなかったしな。女顔だから話しやすかったのだろう。その上、俺は同学年の男子の友達もメチャクチャ多かったから、恋愛の橋渡し役とかにも最適だったんだろう。


 まぁいいや。それで結局何が言いたいのかというと、俺は普通の平均男子よりも女子と近く接する機会は非常に多かった。それ故にに知っているのだ、こういう場合男子は踏み込んでも大丈夫だが、女子の場合は下手に踏み込むと大火傷する可能性があることを。

 もちろん、椎葉が良いやつなのはすでにわかっているがそれとこれとは別問題。女子は繊細だからな。 

 それにわざわざ自分の時間を割いて俺の案内をしてくれているのに、下手に茶化して傷つけても忍びない。


 そんなわけで俺は待ちの一手を現在進行形で打っているというわけだ。

 それに不本意なことに今の俺は立場上は同じくその繊細な女子生徒なわけだしな。同じ女子同士気遣いは大事だ。これからかの生活を考えると尚更な。


「あの…着きました」


 と、そこで到着の合図と共に椎葉の足が止まる。

 目の前には確かに『職員室』とかかれた表札がドアの上にかけてあった。


 ちなみにここに来るまで階段を2段上がり、角を4回曲り、渡り廊下を1回渡り、そこそこの距離を歩いた。隼平の説明がよくわからんわけだ、初見じゃ無理だろこれ。そりゃ慣れればそこまで気にならないのかもしれないが。

 でも何はともあれ目的地に到着したわけだな。それは一先ずよかった。


「ありがとね、椎葉さん。メチャクチャ助かったよ」


 とりあえず椎葉に向かい、ぺこりと頭を下げてお礼を言っておく。 

 すると椎葉は「いえいえ、お役にたててよかったです」と手を振り逆に頭をブンブンと下げてくる。そして、そのまま一刻も早くこの場を立ち去りたいかのように「では」と踵を返そうとした椎葉だったが、


「あっ、あと一言だけ」


 その背を向けた椎葉の肩を俺が掴む。

 その行動が予想外だったのか椎葉が「えっ」と驚きの声を上げて振り返る。そんな椎葉に対して、


「あの、さっきの俺マジで何にも気にしてないからね。逆に気ぃ使わせちまってわりぃなぁー、ってこっちが反省してるくらい。だからさ…、あれだ、色々とめんどくさい手のかかる奴だと思うけどこれから卒業までよろしく頼むよ、委員長」


 そう思ったままの気持ちを口にする。

 このままこれで別れたら、この気まずさが次会ったときも継続しそうだしな。ここで綺麗さっぱり全部を水に流すに越したことはない。

 それに親切な良い奴とは仲良くなりたいと思うのは当然のことだよな。


「ふふっ」


 そんな俺の言葉に少しだけポカンとした後にクスリと委員長が笑みを浮かべる。


「いや、笑うところか?」


「ふふふっ、ごめんなさい。いきなりそんなことを言われるとは思わなかったので。うん、やっぱり人を見た目と少しの印象で判断してはだめですね」


「どんな奴だと思ってたんだよ…」


「それはまたの機会に。でも――ありがとうね、葦山さん。そして私からもこれからよろしくお願いします。あっ、ちなみに担任の先生はすっごい三白眼が特徴的な美人先生の浅見あざみ先生だよ。職員室入って名前呼べば返事してくれると思うよ」


 そう最後まで面倒見の良い言葉を残し、「じゃね」と委員長は今度こそおそらく教室へと向かって行った。どうやら、さっきまでの落ち込みは回復してもらえたらしい。よかったよかった。


 いやぁ、それにしてもいきなりメチャクチャ世話になった。あとでなんかお礼しなきゃな。

 そう勝手に決めると、俺も職員室の方へと向き直る。


 さてと、まずはその浅見先生とやらに粗方のことを聞くとするか。


 ――コンコン。


「失礼します」


 軽く二度ノックをして、俺は躊躇いなく職員室の扉を開けた。


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