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第90話 王都の冒険者ギルド

前回更新をしくじっているのですが、三日に一回の更新のつもりで書きましたので投稿します。

 貴族院へ入って二週間経過した。

 相変わらずリードは寮に着くとだらしなくなるものの、貴族クラスでは次期侯爵としてしっかりやっているようだ。

 リードのいるAクラスは試験の結果上位二十名だけが入ることのできるエリートクラスなだけに、周りもなかなかに優秀な人がいるらしい。

 その中の一人はもちろんミルルで、さらにはババンゴーア様もいる。試験では一悶着あったものの、今ではそれなりに仲良くしているらしいので私としても安心している。

 そして今日は土の日で貴族院も休み。

 なので私は一人で王都に出てきている。

 リード?今日は少しだけ訓練した後はゆっくりするって。その時にこんなことを言われた。


「いい加減セシルも僕の世話ばかりでストレスが溜まっているだろう?町にでも出て遊んでくるといい。それと今後僕も冒険者ギルドに顔を出すことになるだろうから先にセシルが顔を繋いでおいてくれ」


 ストレス解消をネタに体のいいお使いを頼まれたようなものよね?

 でもそんな心遣いができるようになっただけでも成長したってことだよね。多少ムッとしたものの、とりあえずはその気持ちはありがたく受け取っておこうと思う。




 ということで、私は前日にミオラから聞いておいた冒険者ギルドへと向かっている。

 ここもまた町の門の近くにあるためまずは貴族院から門へ向かって歩いている。

 王都の中は中央に建国記念碑が建っており、そこから東西南北へ大通りが伸びていくわかりやすい地形になっている。

 真北の最奥にあるのが王様がいる王城。その周辺に法衣貴族と呼ばれる領地を持たない貴族達の屋敷がいくつも建っている。ミルルのベルギリウス公爵家は王城のすぐ近くにある。

 そして王城のすぐ東側にアカデミーがあり、その隣が貴族院だ。また逆の西側には王立国民学校となっている。

 西大通りの周辺は職人が多く、各種工房の多くがここらへんに軒を連ねているそう。南大通りに商店やら宿が多く集まっており、そこから東側は住宅街、西側は飲食店が多くなっており冒険者ギルドもここにある。


「はい、皆様右手をご覧下さい。あちらに見えます一番高い建物が冒険者ギルドでぇ、ございます」


 突然前振りも無く町中でバスガイドの真似事などしてみる。

 飲食街で午前中とはいえそれなりに人通りはあるのに何故こんなことをしているかというと。


「…デカすぎでしょ…さすが王都の冒険者ギルドね」


 王都に来てすぐ泊まったモンド商会の宿屋『巡る大空の宿』と同じくらいの大きさがある。

 三階建ての建物なんて王都の南側ではここしかない。

 ミオラが


「行けばすぐわかるわよ。目立つから」


 と言っていたのがよくわかる。

 さて、ベオファウムの時と一緒だけどいつまでもここで見てても仕方ない。とっとと入ろう。

 私は重厚な扉を開いて王都の冒険者ギルドに初入店(?)することにした。


 中に入るとベオファウムのギルドよりも遥かに広い空間となっていた。

 受付のすぐ隣に大きな掲示板があり、そこには大量の依頼が貼り出されている。午前中とは言えもうすぐ三の鐘が鳴る時間だ。それなのにまだこれだけの依頼が貼ってあるということはそれだけ絶対数が多いということだろうか。

 そして受付カウンターの前にはベオファウムのギルド同様テーブルがいくつも並んでいる。一つ違うのはそこで冒険者達が飲食をしていることだ。飲み物はお酒と思わしき物が出されており、まだ朝だというのにもうかなり出来上がっている人の多いこと…。

 カウンター自体も数が多いようで、上から吊り上げられている案内もベオファウムのギルドより充実している上にBランク以上は専用の窓口となっている。かなり優遇されているのがよくわかる。買取カウンターも多いので順番待ちでイライラすることも少ないかもしれない。

 とは言え、冒険者自体が非常に多いのでBランクもそれなりの人数がいるだろうし素材の買取をしてほしい人達だって相応にいるだろうけどね。

 私は入り口近くの低ランクのカウンターを無視して奥のBランクカウンターへ進もうと足を向けた。


「こんにちはお姉さん」

「…こんにちはお嬢さん。依頼受付カウンターがわからなかったかしら?ここの一番右にある入り口に一番近いカウンターが依頼受付カウンターよ」


 そのテンプレは一度リコリスさんにされてるからもうお腹いっぱいです。

 お姉さんはウェーブのかかった薄紫の髪を揺らしながら私を前屈みで見下ろしている。上質なアメジストのような濃い紫の瞳に私が映っていて、それが一つの宝石のようにキラキラとしている。

 こんな綺麗な人に対応してもらう男性はかなり優越感を味わえるだろう。よく見るとAランクのカウンターには水色の髪の綺麗なお姉さんがいる。

 なるほど、ここのギルドマスターの方針がよくわかるというものだ。

 いい女に対応して欲しかったらお前らわかってるよな?的な?

 でも中には私みたいな女性の冒険者もいるわけだし、ひょっとしたら同性愛者の冒険者もいるかもしれないんだし、男性の受付もいた方がいいんじゃないかなぁ?

 そういうところは男尊女卑の蔓延るこの世界らしいところだよね。

 話を戻そう。

 私はお姉さんの目の前に私のギルドカードを突きつけた。


「はい、これ私のギルドカードだよ」

「…お嬢さん、ギルドカードの貸し借りはとても悪いことなのよ?貴女にこれを貸した人は誰?」


 駄目だこの人。私自身のカードだって認めようとしない。

 休みは一日しかないからこんなことで時間取られたくないのに。

 あ、そうだ。

 私は腰ベルトからベオファウムのギルドで預かった紹介状を取り出すとお姉さんに封を開けずに渡した。


「なぁにこれ?………え…?…うそ」


 …一体何が書いてあるんだろう…?

 ブルーノさんのことだから悪戯心を出してとんでもない内容にしてるんじゃないかと気になって仕方ない。


「ちょ、ちょっと待っててくださいね?」


 そういうと受付のお姉さんは紹介状を持って奥へと下がっていった。残された私はとりあえずカウンターに設置してある椅子に座って待つことにする。


 やることもないのでギルドの中の様子を見ているとだいたいがパーティーを既に組んで依頼の話をしているようだけど、何人かは私の方を訝しげな目で見ている。

 無理もない。

 Bランクのカウンターに年端もいかない少女が座っていれば何事かと思うだろう。

 間違って座っているのかもれないが、ギルド職員が何の対応もしないということはひょっとしたら本当にBランクなのかも?と思っているのかもしれない。

 とにかく椅子に座って足をブラブラさせている私の方を見ている人は全部で三組。正直これ以上のテンプレ展開は望んでいないのでもし絡んできたらきっちりとお灸を据えてあげるつもりだ。

 そんなことを考えてる間にお姉さんは慌てた様子で戻ってきた。手にはさっきの紹介状は無く、急いだせいか髪は少し乱れている。


「お、お待たせしました。マスターがお会いになるそうなのでこちらへどうぞ」

「はーい」


 椅子から飛び降りるとお姉さんが建物の奥へと案内してくれた。ホールから奥へ行くとすぐに階段があって、途中踊場で折り返して二階へやってきた。

 建物の大きさからすればまだ奥があるはずだけど、恐らくは買取のための空間になっているのかもしれない。

 先を歩くお姉さんが一つの扉の前で立ち止まった。

 そこだけは扉自体に何らかの魔力反応があり、明らかに普通ではないことがわかる。尤も、普段から魔力感知を使うような人もあまりいないだろうから実際に気付く人は僅かかもしれないけど。


コンコンコン


 お姉さんは三回ノックをすると中からの返事を聞く前にドアを開けた。

 それ私も何回かリードにしたけど、怒られるから止めた方がいいと思う。


「来られましたね。ようこそ、ベオファウム期待の新星セシルさん」

「初めまして。セシルと言います。よろしくお願いします」


 私は相手からの言葉をそのままスルーして用意していたセリフを淡々と吐き出した。

 絶対こうなることがわかっていたので、ブルーノさんから手紙を預かった時点で考えていたのだ。試験のことよりもこっちの方が今後の活動に支障を来す可能性があったため必死になっていたとは領主様には言えないなぁ。


「さすが貴族院に入られるだけのことはありますね。私はこのアルマノス王国王都の冒険者ギルドを預かるレイアーノと言います。こちらこそよろしくお願いします」


 名乗ってくれたギルドマスターは自分の執務机から立ち上がると私のすぐ近くまで来て手を差し出してきた。

 私も特に警戒するつもりもなく彼の手を取って快く握手に応じた。


「それでは少しお話しましょうか」


 そう言うと彼は室内にある応接セットへと私を促し、ソファーに座るよう勧めたので私達は向かい合うように座り、一息つくことに。

 ちなみに一緒に入ってきたお姉さんは私達が座ると同時にお茶を入れてくれるとそのまま黙礼して部屋を出ていった。なんというか出来る秘書みたいな人だね。


「さて…時間もないことだし早速話をしようか。あぁ、お茶は好きに飲んでいいからね。こんな場所だけど王都にあるからには茶葉はそれなりのものを用意してある。私もお気に入りなんだよ」


 自らカップを手に取り、一口啜ると優雅な動きで紅茶の香りと味を楽しんでいることが一目でわかった。


「それじゃ折角なのでいただきます。……ん、香りも味もクアバーデス侯爵様の屋敷で出されたものと引けを取らないですね」

「ふふ、そうだろう?この紅茶を用意するだけで予算をだいぶ使ってしまっているからね」


 …それは聞かなかったことにしよう。

 良さそうな人に見えたけどなかなか腹黒い一面も持ち合わせているみたいだ。

 彼の人となりをじっくり観察したかったけど、時間がないことは私も同意なので今は早速話し始めることとした。

今日もありがとうございました。

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