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第8話 普通の子ども達って普通だよね

子どもの頃の遊びって遊びとは言えないようなものがありましたよね。

7/27 題名追加

「それで、今日は今から遊ぶところなの?」


 キャリーが勢いよく訓練中の私に走ってきたから遊んでる最中だったとは思えないんだけどね。私も訓練を続けたいところではあるけど、年下の子どもたちを放ってはおけないんだよねぇ。

 ただ年下とは言ってるけど、実際にはセシルとほぼ変わらない。私には前世の記憶がそのままなので彼らより20年以上年上のお姉さんなのよ。


「うん、さっきみんなで集まったところ。これから何しよっかって話してたらセシルちゃんが見えたから慌てて走ってきたんだよ」


 キャリーは私の右手を自分の両手で包みニコニコ笑顔で繋いだ手をブンブンと振る。

 キャリーってば、そんなかわいいことされたらお姉さんぎゅってしたくなるじゃない。


「折角セシルがいるんだし、狩りに行こうぜ!セシルももう少しくらい獲物があってもいいだろ?」

「ハウルが行きたいだけで僕は別に狩りになんか…」

「コールぅ、お前なぁ。男がそんななよなよしたこと言ってどうすんだよ!村の男は狩りに出て一人前なんだぜ?」

「それはハウルの周りだけでしょ。僕は店の跡取りなんだから勉強して立派な跡取りになることが一番大事なんだよ」


 いつ見てもこの二人は昔からある古き良き日本のアニメを踏襲してるかのようなキャラだね。

 体力自慢のジャ○アンと頭脳派でイヤミっぽいス○夫というか。私もあのアニメは大好きで孤児院の子達と一緒によく見てたっけ。

 私が前世に思いを馳せているとハウルがちょっと脅して仕方なくコールも付き合うような図式が成り立つ。というか、私一緒に行くとか言ってないんだけどね。


「あたしはセシルちゃんが一緒ならなんでもいいよー」


 キャリー…もうこの子ってば私の天使だわ。


「お兄ちゃん、アーネまだちょっと怖いよ」

「大丈夫だよ。狩りって言ってもほとんどハウルとセシルでなんとかするんだし、僕とアーネは後ろで見てて荷物持ちするだけだよ」

「う、うん…。セシルお姉ちゃん、アーネのこと守ってね?」


 ミックはハウルについていくだけだけど、アネットは私より一つ下の3歳だっけ。ところどころ舌っ足らずな言葉になってるけど、それがまた逆にかわいい。

 アーネに見つめられて私は大きく頷くと


「うん、アネットは私が必ず守るから心配しないで。ユーニャも気楽についてきていいからね」

「ふふ…はい。頼りにしてます、セシル」


 結局私も強制参加になるわけだ。

 嫌ではないし、これも訓練の一環だし、子どもたちは心配だし、何より夕飯のおかずが増えるのは全く悪いことではない!

 最後が一番の理由ではないからね?ホントだよ?


 さて。

 狩りに行くに当たって子どもたちはどれほどのものなのかというと。

 実際この世界で生まれ相応の生活をしていればそれなりのスキルは身に付き始める頃だと思う。私みたいなのは明らかに異常だとしても、ハウルたちは至って普通の子どもだ。

 折角なので子どもたちのスキルを見てみよう。

 私は一人一人に向って人物鑑定を行っていく。


ハウル

年齢:4歳

種族:人間/男

LV:1

HP:7

MP:3

スキル

言語理解 1

身体操作 2

投擲 1

片手剣 1

格闘 1


 ハウルは典型的な体力バ…自慢だね。このまま育てばいい狩人とか戦士とかになれるんじゃないかな?


キャリー

年齢:4歳

種族:人間/女

LV:1

HP:4

MP:11

スキル

言語理解 1

魔力感知 1

弓 1


 キャリーは後衛タイプだね。魔力感知もあるし弓で牽制しつつ後ろから大火力の魔法を使う。なんてこともできるようになるかもしれない。


コール

年齢:4歳

種族:人間/男

LV:1

HP:4

MP:6

スキル

言語理解 2

算術 1

道具鑑定 1

野草知識 1

道具知識 2


 おや?この前までついてなかった「算術」なんてスキルがある?実はなかなか頑張ってる様子。この調子で勉強すれば立派な跡取りになれそうだよね。


ミック

年齢:5歳

種族:人間/男

LV:1

HP:5

MP:2

スキル

言語理解 1

投擲 1

弁明 1


 ミックにも以前は無かったスキルが…。「弁明」って。言い訳ばっかりしてて身に付いたんだろうけど。

 将来詐欺師とかにならないかお姉さん心配だよ。


アネット

年齢:3歳

種族:人間/女

LV:1

HP:3

MP:6

スキル

言語理解 1

詐術 1


 アーーーネットーーーーー!詐術って何!!?お姉さんさっき騙されちゃった!?

 というかこの兄妹の将来が全力で心配になってきた…。


 そして今日初めて見るユーニャはっと。


ユーニャ

年齢:4歳

種族:人間/女

LV:1

HP:6

MP:9

スキル

言語理解 2

算術 1

道具鑑定 1

道具知識 2

礼儀作法 1

裁縫 1

料理 1


タレント

女中


 これは…ちょっと驚いた。ユーニャってば既にタレントまで持ってる。折角だしタレントをスキル鑑定してみよう。


≪女中≫:礼儀を知り、家事全般を行う者。礼儀系、家事系スキルの獲得補正と成長補正。


 女中って所謂メイドってことよね。

 つまりユーニャは店の知識もあるし、メイドさんとしてもやっていけるわけか。そのうち貴族の家とかに召し抱えられたりするのかな?



 というのが現状。

 これが普通の子ども。ユーニャはちょっと将来が期待できそうな才能があるから他の5人よりは抜き出てるけどね。ミックとアネットは将来が心配というか…どこに向かっていくつもりなんだろう?


 私が全員のステータスを再確認してる間に全員で歩き、一番近い森までやってきた。

 ここは普段私が狩りをしてる森とは違い、大人たちが定期的に見回りを行っている場所だ。大物が獲れたりする分、危険も大きくなる。もっとも、それは森の奥まで入った場合だ。子どもだけでそんな愚を犯すわけにもいかないので、森の入口から少し入ったところ。ちゃんと見れば森の出口は視界に入る。


「ハウル、いつも何度も言ってるけど絶対森の奥には行かないこと。大物を見つけても下手に刺激しないこと。それと絶対に私の指示に従うこと。わかった?」

「わかってるって。って、なんでオレだけ注意されるんだよ!」

「ハウルが一番危なっかしいからだよねー、セシルちゃん」

「キャリーの言う通りよ。ここは大人でも慎重に行動するところなんだから、一人で突っ走られたらどうにもならないよ」

「ちぇ…。わかってるって。『狩人は生きて帰るまでが仕事』って父ちゃんがよく言ってるからな」


 少し不貞腐れたような表情を浮かべるが、父親の言いつけはしっかり守りそうだ。

 正直、この森で逸れられたら探しようがない。それこそ、大人に報告して捜索隊を組まないといけなくなるだろう。


「ユーニャは絶対に私から離れちゃダメだからね。ミックとアネットもね」

「はい、わかりました。セシル、ちゃんと守ってね」


 ユーニャは穏やかに微笑んでくれる。

 森の中に狩りに来てるのに怖くないのかな?

 ミックとアネットも頷いてユーニャと、しっかり狩り不参加を決め込んだコールを含めた4人で私の後ろをついてくる。

 キャリー?しっかり弓を構えてるよ。森に入る前に私の矢筒を渡しておいたから問題無い。

 ハウルはいつも持ち歩いてる木剣を右手に構えて先頭を歩いている。



「キィィィィィィィッ」


 聞きなれた悲鳴を上げてガーキンがヨロヨロと歩いて横向きに倒れた。


「やったぜ」

「ハウルって剣持ってるのにいつも石投げるだけよね」

「どうでもいいだろ。狩りは獲物が獲れればいんだから」


 私は狩りに参加しない4人を連れて二人を後ろから眺めているだけで全く出番はない。

 今のところガーキンしか出会っていないからわざわざ手を出す必要もないのよ。さっきから血抜きとかもハウルがやってくれているし、この調子だと今日は本当に出番は無さそうだね。

 ちなみにこれで既に3匹目。全員で分けても夕飯のおかずには十分な量になったと思う。


「ぴぎぃぃ」


 ん?なんだろ?少し先から小さい動物のような声がしたような。多分ここからそれほど離れてはいないと思う。


「今の鳴き声ってブーボウの子どもだぜ」


 ブーボウというのは見た目そのまま猪の動物だ。私も何度か狩りで仕留めたことがある。

 脂が非常に美味しくて肉は豚肉のようだけど少し獣臭さがあった。それでも非常にインパクトも満足度も高い良いお肉でした。

 ハウルは息を潜めて忍び足でさっきの鳴き声の方へ向かった。キャリーも弓に矢を番えたままハウルの後ろをついていく。私も後ろの4人に唇に人差し指を当てた後、頭を下げるようなジェスチャーをしてついてくるよう促した。

 ハウルが木の影から鳴き声のしたところを見ていて、キャリーも弓を構えることなく一緒に見ているようだ。

 私も気になって覗いてみたところ、ウリ坊のような小さな個体が3匹、木の根元に頭を突っ込んで何かを食べているようだ。小さいと言っても体長1メテル近い。大人のブーボウは大きなものになると4メテルを超してくるらしい。なので子どもでも十分以上の肉が獲れる。

 さすがに私が手を出そうかと思ったがハウルが足元にあった拳大の石を拾って自信ありそうな顔で親指で自分を指差す。

 逃げられたら勿体ないので、もし逃げられそうになったら私が手を出すことにして頷いた。


「……シッ!」

「ぴぎぃぃぃぃぃぃぃっ」


 3匹の内の1匹に当たって動きが止まった。その間に他の2匹は逃げてしまったが、すかさずキャリーが矢を放つとちょうど前足の付け根あたり、心臓近くに刺さる。

 キャリーの弓じゃちょっと威力が足りないかな。あれだとそのうち死んじゃうだろうけど、それまでに全身に臭みが回っちゃう。

 ハウルが木陰から飛び出すより早く右手を突き出してウリ坊の足元に土魔法を使ってガッチリと拘束。


睡眠闇(スリープ)


 闇魔法を使って眠らせることにした。下手に刺激を与えて暴れられたらその分だけ筋肉に乳酸が溜まって美味しさが台無しになってしまう。

 キャリー達5人がその様子を見て「やったー」「今夜はご馳走だ」など好きに叫んでいる。

 確かにブーボウが食卓に上がることなんて村人にとっては滅多にないことだから気持ちはよくわかる。

 我が家?私の狩り次第だけどちゃんとやれば週一くらいで上がることもあるかな。

 そして喜んでいる子ども達にとって、この後とても怖い思いをすることになるとは私を含めて誰もまだ思ってもいなかった。

大きな地震があってびっくりしました。

被害はありませんが、余震などに備えて早めに休むようにします。

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[気になる点] 会話見てると4歳どころか10歳ぐらいの集団に見えますが……
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