第66話 egg
少し前ですが、ブックマーク100件超えました!
皆様ありがとうございます!
「さて、とりあえずちょっと一息かな…」
ケツァルコアトルを退治した後、疲れからか魔人化を解いて近くにあった岩に腰掛けてスキルも一度全て解除した。
まさかこんな魔物がこんなところにいること自体びっくりした。多少強い魔物と言っても森の中で出会う虎や蛇より大型で力が強いのだろうとタカを括っていたわけだけどそんな予想を遥かに上回っている。
私が実際目にしたものだけでも魔眼…それも状態異常を起こすものを二種類、上級の風系魔法…恐らく天魔法と遜色ないほど、後は魔人化していないとは言え高レベルの私の体をふき飛ばすほどの尻尾の力、多分それ以外にも何かしらの能力があるのかもしれないけど…とにかく無事に討伐できてよかった。
まともな冒険者だったらここに入ってきた時点でアウト。最初の魔眼で何かしらの状態異常に陥らされて手も足も出ないことになっただろう。知られていないだけで実は既に何人かの犠牲者は出てるのかもしれないけど…見えるところにはそれらしいものは見当たらない。
きょろきょろと周囲を見回していると、ふと気付くことがある。
ケツァルコアトルのバラバラにしたはずの体が減っている?
ハッと思った瞬間に魔力感知と気配察知、知覚限界を使い周囲の状況を確認してみる。
思った通り、元々ケツァルコアトルの石像が立っていた台座にバラバラにされた胴体などが集まっていっている。今はまだ十個以上にブツ斬りにされたもののうち三個しか戻っていないが、もし全部集まれば元の姿に戻るかもしれない。
冗談じゃない、あんなのとまた戦ってなんかいられないよ!
洞窟崩れたら地魔法でなんとかトンネルでも掘って出ていこう!
「爆発魔法 衝爆砲!」
ドオオオォォォォォォンン
私の手から放たれた魔力の塊が台座に当たると大きな音を上げて爆発した。粉々になったようで辺りには細かい石の破片がバラバラと降り注いでいる。
この魔法ももっと威力を上げたいんだけど、なかなか強力な爆発を生み出すことが出来ないでいる。今の爆発は水蒸気爆発を用いたものだから、普通の人間なら十分致命傷になるのに今回のように石の塊ではまだまだ安心できるほどの威力が出ない。これは今後も課題としておこう。
台座を破壊したことで集まろうとしていたケツァルコアトルの胴体たちは動きを止めて、魔力反応が消えるように無くなっていくのがわかる。今度こそ終わったかな。
そう思ったのも束の間、魔力反応はほとんどないもののバラバラになっていたケツァルコアトルの体がくっついていき徐々にその体が復元されていく。また同じことはしたくないので復元されている体に向かって再度爆発魔法を撃っていく。
撃っていくが……復元しているケツァルコアトルの体の周りに薄い膜のようなものが広がって私の魔法を弾いている。アドロノトス先生が使っていた魔力障壁と似たようなものだろう。私の爆発魔法を弾いているところからすると強度は比べ物にならないほど高いようだ。
「ぐるるぁぁぁぁっ!!」
結局見ていることしかできなかった私の前に再びケツァルコアトルが体を取り戻して大きく吠えた。台座諸共体のパーツもいくつか吹き飛ばしたのに大きさはさっきと同じくらいある。鎌首をもたげた状態なのに地面から頭の上まで五メテルはある。
多少回復したMPにもの言わせて魔人化を使うと今度は全力で斬り掛かった。短剣にも魔闘術で魔力を通しているので現在の私が出せる物理攻撃の最大威力になる。
最初に斬り掛かった時は魔人化を使っていなかったせいでほとんど生身のスピードしか出せなかったが、今回は違う。
踏み込みと同時に全身に圧力がかかったかと思えばケツァルコアトルの胸?まで一瞬で距離を詰める。その勢いのままもう一度ぶつ切りにするためにその胴体へと短剣を走らせた。
ザグッ
「くっ…固っ…!ったくもぉぉぉぉぉっ!電撃魔法ぉぉぉっ!」
短剣はケツァルコアトルの鱗を切り裂いたものの筋肉を切り裂くことなく胴体の半分ほどまでしか食い込ませられなかった。
仕方無く追撃で電撃魔法を使って内部から体を焼いたうえで体を痺れさせる。
体の中から黒焦げにされたケツァルコアトルは電撃の影響でまだ麻痺から回復していない。
「剣魔法 圧水晶円斬!」
これもさっきより全力。一枚だけに絞り大きさ、回転数を全て集約したもの。
その最大威力の水の刃を投げつければ風の魔法での相殺ができない今のケツァルコアトルの体を真っ二つにするのは造作もないこと。造作もないことだけど…。
「ぐるぁっ!ぐるるるるぅぅあぁぁぁぁっ!!」
真っ二つにされたのに残った上半身だけで暴れ狂い洞窟内のドームを崩さんばかりの勢いで私へと特攻をかけてくる。
それ自体はスピードもないので避けるのは簡単だ。しかし私の魔法も攻撃も一撃でケツァルコアトルを倒しきるようなものはもう残っていない。
一撃では、だけど。
「だからどうしたってこうするしかないよねっ!」
魔人化を解除して魔力感知、気配察知も全て解除。残りのMPを全て使って魔法を撃っていくしかないじゃない?!
「あああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
両手から魔力を最大まで込めて、今の私が打てる最強の属性魔法をありったけ出せるだけの数でケツァルコアトルの周りに出現させる。私が発射と意思を込めただけで魔力が収束して炎魔法、氷魔法、天魔法、地魔法となって降り注ぐ。
ケツァルコアトルの周りに浮いている魔力塊の数は百を超えているが、魔法が撃たれるたびに減ることもない。
それは発射された魔法はその場から消えると同時に私が魔力を込めるだけでもう一度出現するからだ。
こうなると私のMPが切れるのが先かケツァルコアトルのHPを削りきるのが先か。彼の蛇は私の魔法を受けてもはや特攻する勢いなどない。それでもその巨体は充分すぎるほどの体力、生命力を誇るだろう。一発一発が特異魔法以上のMPを消費するほどの高威力魔法をさっきから数百発撃っているのに多少すら揺らがないのは頭に来るのを通り越して絶望感すら感じる。
だが残りのMPが十万を切ったその時、私の頭の中にアナウンスが流れた。
---魔王種の撃滅に成功しました---
---レジェンドスキル「egg」を獲得しました---
その声が聞こえたと同時にケツァルコアトルの巨体がぐらりと揺れ、大きな音と共に洞窟の地面に崩れ落ちた。
アナウンスが流れてケツァルコアトルの動きがなくなった後もしばらく警戒しながら魔力を探っていたけれど、あれからは結局魔力反応は出てこない、動きもないままだったので今度こそ私はしっかり休憩を取ることにした。討伐証明になるかと思いバラバラのボロボロにしたケツァルコアトルは腰ベルトに収納しておいた。
MPも回復してきたしHPも既に回復済みなので時間はかかったもののほぼ全快していると言えるだろう。
それにしても最後のあれはなんだったんだろう?魔王種?今のケツァルコアトル…擬きは魔王だったの?
…一人で考えててもわかるわけないか。とは言え、なんかよくわからないスキルも手には入ったよね?なんなの?
折角の機会なので私は自分を鑑定してステータスを細かく表示することにした。
セシル
年齢:9歳
種族:人間/女(管理者の資格)
LV:117
HP:11,915
MP:8,469k
転生ポイント:214,792
スキル
言語理解 7
気配察知 MAX
魔力感知 MAX
補助魔法 9
付与魔法 9
威圧 9
投擲 MAX
弓 MAX
片手剣 MAX
二剣術 9
短剣 MAX
小剣 6
格闘 MAX
魔闘術 MAX
人物鑑定 8
道具鑑定 6
スキル鑑定 MAX
野草知識 MAX
鉱物知識 9
道具知識 7
宮廷作法 7
料理 6
ユニークスキル
炎魔法 8
氷魔法 9
天魔法 9
地魔法 7
上級光魔法 5
上級闇魔法 5
理力魔法 4
空間魔法 8
魔法同時操作 6
魔力運用 8
魔力圧縮 MAX
詠唱破棄 9
精神再生 7
魔人化 7
隠蔽 MAX
異常無効 2
四則魔法(下級) 9
錬金術 2
魔道具作成 1
レジェンドスキル
新奇魔法作成 6
egg -
神の祝福
経験値1000倍
タレント
転移者
転生者
格闘マスタリー
魔導師
狙撃手
錬金術士
魔工技師
蛮勇
突撃者
…うん、相変わらずぶっ飛んだステータスだね。レベルなんて遂に百超えたしね。HPも一万超え…まぁMPの数字がこんなだから9999が最大ではないんだろうなとは思ってたけどね?
このままの数字なんてとてもじゃないけど他人に見せられないよ。
それと転生ポイントも前回確認したときは一万くらいだったはずなのに今見たら二十万超えてるね?この魔王種を倒したのが原因なのかな?これだけ貯まるなら積極的に魔王種を倒して回るのも有り…じゃないよ、冗談じゃない。私は死にたがりじゃないんだからね。
どのみち相変わらず転生ポイントについては謎しかない。どこまで貯めたらいいか、何をしたら一番稼げるのか不明。あぁでも魔物を倒すとそこそこ貯まるのと今確認した通り魔王種を撃滅すると二十万なんて馬鹿げた数字が貯まるようだね。
それで今新しく獲得したのが…これか。レジェンドスキル「egg」。スキルレベルもないみたいだしなんだろうね?
私はスキル鑑定でそのレジェンドスキルを確認してみることにした。
egg:魔王種撃滅者に送られるご褒美。獲得者自身が望むスキルが手に入るが、どんなに願っても自身の欲望を叶えるためのスキルにしか孵化しない。
孵化までの撃滅魔王種数:残り三体。
「は?はああぁぁぁぁっ?!馬鹿じゃないの?!またあんな死ぬような思いまでした化け物を倒せっていうの?!?!!」
私は洞窟の中で一人絶叫した。
信じられない。というかもうあんな思いはゴメンだよ。私は自分がどれだけのトンデモ性能か理解しているつもりだ。それなのにそんな私と五分五分…寧ろMPが足りなければ死んでいたかもしれないような相手を更に三体も倒してまで手に入れるようなスキル?いやいや、いりませんし。今でも充分すぎるって。
私はそんなことより平和と宝石があれば充分だし、そういう「魔王」とかわけわかんないものの相手は「勇者」とかいう人の役目なんじゃないの?アドロノトス先生に聞いたことがあるし、勇者の仕事は魔王を倒すことだろうから仕事を取ったりしませんよ?
けどなぁ…頭の中に響く転生ポイントを貯めろという声はいつも私を駆り立てようとする。
あんなのとまた戦うなんて冗談でも笑えないし、スキルだって今でもそんなに困ってるわけじゃないのに…予感として私の中では確定事項だ。
きっとまた魔王種と戦うことになる。
だから次はもっと危なげなく倒せるように、スキル頼りになっていた私の攻撃手段や能力をもっとうまく使う方法を考えて訓練しなきゃいけない。
「あ、そうだ。こんなことしてる場合じゃない!」
私は時間を確認してから自分の青いステータスボードを閉じると改めて洞窟内の探索に戻ることにした。
今日もありがとうございました。
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