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第65話 遭遇

 なんだかんだ忙しい日々を過ごしつつ、それでも楽しくてびっくりしながら、させながら。新しいことを覚えることは楽しいし知らない場所に行くとワクワクする。

 そんな感覚も少しずつ落ち着いてきたのはベオファウムに来てから一年と少しが過ぎた頃だった。

 最近ではリードの訓練もわたしとの模擬戦、その後森へ行って魔物との戦闘となっている。リード自身も冒険者登録をして今はランクE冒険者として討伐依頼を積極的に受けているところ。

 不思議なことに登録する際の試験をブルーノさんではなく別の冒険者が担当したのよね。強さで言えば騎士団の中位ほどでリードといい勝負をしていたので、訓練としてもかなり効果的だったことは認める。認めるけどじゃあなんで私のときはブルーノさんっていうベオファウム冒険者ギルド最強が出てきたの?解せぬ。

 ともかくリードは闇の日は私と一緒に冒険者の仕事もしていて一緒に依頼を受けており、その評判は上々といったところ。

 言葉遣いはともかく貴族としては領主様同様領民からの支持は厚いと思っていいのかな。

 ちなみにナージュさんに申請すれば地の日から闇の日までの三日間、泊まりで依頼を受けてもいいことになった。もちろんリードの訓練としてであり私が同行するのは変わらないのだが、これでようやく私も冒険者ランクを上げることができそうだ。

 私の冒険者ランクは現在Bランクまで上がっているのだが、この上は護衛依頼を受けることが必須になっている。別にこのままランクが上がらなくてもいいかなと思ったけど、冒険者ランクが上がれば立ち入り禁止地域がほぼ無くなるという嬉しい特典があるからね!

 もちろんリードの面倒を見るのは闇の日以外では強制ではないため基本的には私の活動は相変わらず一人ですることがほとんどだ。カイトのパーティーとは湿地帯に一緒に行ったっきりギルドで会ったときに世間話するくらいでしかないし、シャギルさんのパーティーとはあれっきり会ってない。稀に下のランクのパーティーから用心棒代わりに加入してくれと言われて組んだことがあるけど、あまり楽しいものではなかったので二度ほど受けてからは全て断るようにしている。

 やっぱり私はソロでの活動が性に合っているらしい。


 という近況報告をしたところで、と。

 ここはローヤヨック伯爵領にある廃坑。以前シャギルさんが調査に来ていた場所で盗賊のアジトになっていたと聞いているが、その盗賊たちもローヤヨック伯爵領の冒険者ギルドが討伐隊を結成して一網打尽にしたとのことで、今はもぬけの殻となっている。

 採掘されていた鉄もミスリルも出ない、言わば人工の洞窟になっているのだが最近になって強力な魔物が住み着いたと噂が出ていて、その調査をしてほしいとギルドに依頼が届いた。本来ならローヤヨック伯爵領の冒険者ギルドが請け負う案件なのだが今あちらの冒険者ギルドでは対応できそうなランクの冒険者がいないからとこちらに回ってきて、私に届いたわけだ。

 決して指名依頼ではなかったものの鉱物の採集が得意とギルドに登録してあったため、まずは私に声が掛かった。

 というか廃坑の調査とか心躍る依頼なんて私以外にさせなくていいよ!

 リコリスさんから「セシルちゃん受けてくれないかな?」とセリフが終わるより早く「今すぐ行ってくる」と飛び出しそうになった私を必死に依頼受諾手続きをするために引き止めた彼女が涙目だったのは悪いことをしたと反省している。

 うん、反省だけはしている。改めるつもりはない。


「さて、じゃあいつも通り『気配察知』と『魔力感知』、『限界知覚』を使ってと…。あー…かなり奥の方にいるね」


 今日も絶好調な独り言を呟きながら廃坑の奥深くに魔物の気配と魔力を読み取る。

 この感じだとBランクの冒険者でもキツいかもしれない。

 かなり強い魔力を持っているようだけど…なんの魔物だろうか?


光灯(ライト)


 光魔法の一番基本となる灯りを点けると洞窟の中に光が広がった。消費魔力も少ないこの魔法は初心者向けだけど、実は光魔法は適性がないとこれ以上の魔法を使えないのだとアドロノトス先生は言う。「儂等にはなーんも関係ないがの」と言っていたけど、そう考えるとユーニャは魔法の才能あるんじゃないかな?


 感知した魔物の魔力を辿って洞窟を進んで行く。人工のものだけにそれほど狭い場所はない。

 問題は採掘がうまくいってないところはすぐに行き止まりになっていることだ。

 「位置登録(ポジション)」の魔法を使っているので迷子になることはないけど、分岐の度にそれが増えていくのでかなり難解な洞窟となっている。

 でも、それももう終わる。

 ようやく魔力感知にかかった魔力反応の近くまで来たところで急に洞窟が開けてドーム球場ほどの空間に出た。

 元々鉱山だったことを考えるとこの広さはあまりに不自然すぎる。

 と、奥に何かいるのがぼんやりと見えてきた。

 近寄るにつれてだんだんその姿がはっきりとしてきて、二十メテルほど離れたところでその全容が見えた。


「石像?」


 しかし魔力感知では魔力反応は目の前にある巨大な像から感じられる。その像はフォルコアトルよりも巨大な蛇が蜷局を巻いて鎌首を持ち上げたような姿をしている。しかしただの蛇とは大きく異なる点があり、何よりも目を引くのが首の後ろについた翼だろう。昔何かで見たケツァルコアトルのような風貌。いやいや、あれは神様だったはずだからこんな洞窟の奥で石像になってわけないでしょ。そもそも世界が違うんだから普通にいるはずがない。

 ゴーレムやガーゴイルの類だろうか?でもそんなのが自然発生ってするのかな?前世で読んだ異世界転生の話だとそういうものはだいたい人やら魔族やらが作るものでゲームのようにどこからともなく発生するものではなかったと思う。

 私が首を傾げながらその石像を調べてみるが特におかしいところはない。魔力はこの石像の真ん中あたりから感じるのは間違いないのに怪しいところが一切ないなんて逆に怪しすぎるんだけどね?

 しばらく調査していると洞窟がカタカタと音を立てて震え始めた。


「地震?!こんなところで生き埋めになったりしたら洒落にならないよ」


 しかし今度は像自体が震えだし魔力反応がさっきよりも増大してきている。しかも体が段々と石から鮮やかな緑色の蛇の肉体に変わっていく。このレベルの魔力は魔物では初めて出会う…というかこんなの普通の冒険者じゃ全員返り討ちにしかならないって!


「ぐるるるぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ケツァルコアトル擬きは咆哮を上げ翼を大きく広げるとその小さな目をギョロリと私に向けてきた。


---スキル「異常耐性」の経験値が規定値を超えました。レベルが上がりました---


スキル「異常耐性」9→MAX


---スキル「異常耐性」の経験値が規定値を超えました。スキルが進化します---


スキル「異常耐性」はユニークスキル「異常無効」に進化しました。


 はい?今何かされたよ?

 目で見られたら状態異常って…魔眼とかいうものかな?ついこの前アドロノトス先生から教えてもらったばかりの魔物の特殊能力の一つ。魔力を込めた瞳で相手と目が合うと麻痺したり、ひどいものだと石化すると聞いた。

 つまり、今結構危ない状況だったってことだよね?

 あまり悠長にしてると他にも何か特殊能力があった場合やられてしまうかもしれない。早めに倒してしまわないと…。

 以前もらった短剣を抜き、左手には石射(ストーンシュート)を用意しておく。何をしてくるかわからない相手だけど洞窟の中という状況から火や水は使えないし、風もどんな動きをするか読めないので地魔法で制圧することに。

 ケツァルコアトル擬きが次の動きを見せる前に間合いを詰めて斬りかかる。

 ケツァルコアトル擬きに刃が入る、と思ったら突然衝撃を受けて耳の奥に強い圧力が掛かった。


ゴォォォォン


「かっ…は……ぁ…」


 そう、気付いた時にはケツァルコアトル擬きの尻尾が私を横薙ぎに叩いて私は後ろの岩壁に激突していた。

 肺から一気に空気を押し出された体はしばらく動きを止めてしまい、再起動するまでに僅かながらにタイムロスが生じる。

 その隙にケツァルコアトル(面倒くさいので擬きは省略)は蛇独特のシャァァァァァッという音を出したかと思うと自身の周りに空気の渦を作り出す。その数は八個。しかし感じる魔力からすると一つ一つは天魔法上級のものと同じくらい。

 あんなのまともに受けたら私の体なんてバラバラになっちゃうよ!

 咄嗟に魔人化を使って肉体を強化すると酸素の足りない体に鞭打ってなんとかその場から飛び出した。


ガリガリガリガリガリ


 私がいなくなると同時に放たれた魔法が洞窟の地面を削って壁に大穴を開けた。この威力ならさっきバラバラと言ったけどミンチまで片道超特急で間違い無しだ。

 しかも洞窟の中だからと遠慮していた私と違いケツァルコアトルは何の戸惑いも見せずに撃ってきた。これじゃ遠慮してる私の方が不利に決まってる。


「ったくもう…生き埋めになったらどうするのよ…」


 独り言を言いながらもなんとか体を起こし、体勢と息を整えているとケツァルコアトルの眼に再び睨まれて魔力の流れを感じた。


---スキル「異常無効」の経験値が規定値を超えました。レベルが上がりました---


スキル「異常無効」1→2


 って言うか本当に遠慮しないのね!!!


「もぉっ!絶対許さないんだからっ!剣魔法 圧水晶円斬(アクアブレード)!」


 魔人化を使っているせいでMPがゴリゴリと凄い勢いで減っていってるけど、とりあえずこの蛇やっつけないと私がやられちゃう。

 何よりもあったま来たから活き造りにしてやるっ!

 自分の周りにさっきやられたのと同じ数、八枚の圧水晶円斬(アクアブレード)を浮かべると、ケツァルコアトルも同じくさっき出したのと同じ風の魔法を周囲に浮かべた。


「そんなのに私が負けるわけないでしょうがっ!」


 勢い良く圧水晶円斬(アクアブレード)を発射する。覚えた時よりも凶悪なほど切れ味が増しているこの魔法を止めるのは無理だよ?

 ケツァルコアトルが出した風の魔法と圧水晶円斬(アクアブレード)がぶつかると、その風の魔法を切り裂いて消し去るとその勢いのままケツァルコアトルに向かっていく。


「いっけえぇぇぇっ!」


ザグッ ザッ ザシュ


 いくつもの肉を切り裂く音がした後、数瞬してその体がバラバラになって地面に落ちていく。

 体の大きさも相まって落ちたときも大きな音がしてその体を洞窟内に横たえた。

 完全にバラバラにしちゃったけど、これだと素材の買い取りそうはできないかなぁ?私がここまで苦戦したのって実は初めてなのにそれだとなんか面白くないよねぇ。

 本来命があっただけでも儲けものなのに、勝ったと思ったら現金なものである。

 しかも思ったのは本人だけだったのだから、尚更滑稽というものだ。

今日もありがとうございました。

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