閑話 カイト達との依頼 前編
お盆休み中に書いたお話を投稿します。
閑話にするようなものでもなかったのですが、本筋からは離れてしまうので。
リードを訓練する傍ら、冒険者としても活動している私は毎週地と光の日だけギルドに顔を出しては片付けられそうな依頼をこなしている。
来られる日が限られており、しかも一般的には休みの日とされる光の日に活動するとあってなかなか他の冒険者とは一緒にパーティーを組むことは叶わなかった。
しかし、ここにきてようやくその念願が叶うこととなる。
「じゃあよろしく頼むな!」
「うん。難しい依頼じゃないし、気楽にやりましょ」
私は昨日ギルドに来た際、初日に出会ったカイトと初めてパーティーを組んだ。
カイトはリリアという幼なじみと他に二人の冒険者と組んでおり、前衛二人、後衛、斥候と悪くない構成になっている。
このまま経験を積めば、相応の実力を持ったパーティーとなるだろう。無理や無茶をせず実力に見合った依頼をし、きちんと己を高めていければの話だけど。
で、そんな彼等だけど受けた依頼にそぐわない強力な魔物が見かけられたということで断念するか、高ランク冒険者を連れての再アタックをするかで話し合っていたところへ私が現れたということだ。
依頼を断念、つまりキャンセルするとキャンセル料が発生したり、ランクが下がったりすることもある。故意や悪質なものの場合はギルドからの除名すら有り得るので冒険者達は一度受けた依頼は可能な限り達成する努力をするものだ。
話が逸れたが、つまりは依頼達成のための助っ人を頼まれたというわけだ。
今回彼等が受けたのは森の近くにある湿地帯に生息する魔物の部位収集。マッドスライムの核だったかな?
マッドスライム自体はGランク冒険者単独でも十分に撃破可能な強さだけど、核を取り出そうとすると身を削れるだけ削ってから真水につけるという方法を取らなければならないらしく、Gランクだと三人以上のパーティーが推奨となる。
もちろん彼等は四人なので本来ならば問題ないのだが、彼等が湿地帯に向かったところ、本来は生息していないはずの大型の魔物が現れたという。
見つからないよう細心の注意を払いながら何とか町に戻ってきたのが昨日で、話し合いの途中に現れたのが私ということだ。
私がその依頼をするなら強力な魔物は普通に討伐した上でマッドスライムには氷魔法で高圧洗浄機のように水を掛けて身を削るより早く核を取り出すことが可能だと思う。
とりあえず今回に関してはその依頼の手助けをするつもりはなく、あくまでもその強力な魔物が出てきたときに討伐、もしくは彼等を守りながら撤退するのが私の役目だ。
現在二の鐘が鳴ってしばらく、私達は南門前の広場に集合している。到着したのは私が最後ですぐにでも出発するという。
彼等はそれぞれが荷物を持っているが、本来ならロバを連れてそれに荷を乗せて行くのだそうだ。
近場での依頼のため、今回は宿に置いてきたとカイトから聞いた。
もちろん私はいつも通り腰ベルトのみで、傍目からは短剣を二本と小さな鞄にちょっとした薬を持っている程度にしか見えないだろうけど、魔法の鞄持ちだということを教えてあげる必要もない。
「改めて、このパーティー『草原の疾駆者』でリーダーをしているカイトだ。よろしくな!」
「当パーティーでの折衝役、戦闘では後衛を受け持ちますリリアです。よろしくね、セシルちゃん」
「ブランだ。カイトと一緒で剣振り回すことしかできねーがよろしくな!」
「私はキスティよ。斥候役をしているわ。よろしく」
今回私が参加するに当たっては私のランクや実力に関しては伏せておくこと、ひとまずは見学という形でついていくと言ってある。なのでカイト以外は私のランクを知らない。
「セシルです!カイトに誘われて参加しました!よろしくお願いします!」
と、普通の女の子っぽく挨拶したものの…。
湿地帯への移動中のこと、私から離れたところで。
「おいカイト。あの子本当に大丈夫なのか?」
「そうよ、私達についてくるってことは同じランクなんでしょうけど、あの魔物が出てきたらどうするのよ」
「大丈夫だって。あぁ見えてセシルは強いからさ。俺達は俺達の依頼を達成するために頑張ればいい」
「…カイトがそう言うならいいけどよ。でもパーティーメンバーじゃないから万が一のときにはあの子を囮にしてでも俺達は逃げるからな」
なんてことを話していた。
私はリリアと今までどんな依頼をしていたか話していたが、知覚限界の聴覚がしっかりその内容を聞き取ってしまった。
カイトからは信用されているからいいけど、ブランとキスティは今後危険なことがあったら誰かを犠牲にしてでも逃げ出しそうな、そんな感じがする。
念のため、全員のステータスを確認してみようかな?
私は久々に人物鑑定を使って四人の能力を一人ずつ見ていくことにした。
カイト
年齢:12歳
種族:人間/男
LV:8
HP:51
MP:10
スキル
言語理解 1
身体操作 1
投擲 1
片手剣 2
タレント
剣士
うん、なんていうか駆け出しって感じだよね。そこそこ魔物とも戦っているからか、レベルはちょっとだけ上がっているのでゴブリンくらいなら楽勝だと思う。
リリア
年齢:12歳
種族:人間/女
LV:8
HP:34
MP:61
スキル
言語理解 1
魔力感知 2
魔力操作 2
熱魔法 1
湿魔法 2
空魔法 1
野草知識 1
裁縫 1
この子は頑張ってるね。誰に習ったか魔法を少しだけ使い始めているからこのまま必死に努力すれば十年後には良い使い手になると思う。
ブラン
年齢:14歳
種族:人間/男
LV:10
HP:69
MP:21
スキル
言語理解 3
投擲 2
弓 2
短剣 3
気配察知 2
道具知識 2
詐術 1
タレント
狩人
盗賊
うん?ちょっと引っかかるね?詐術はアネットも持ってたスキルだけど盗賊なんてタレントは初めて見た。
≪盗賊≫:騙す、盗む、逃げるに特化された才能。それに付随する能力が伸びやすい。
タレントを鑑定してみてもこんな感じ。
一応カイトにはこの依頼が終わった後でそれとなく注意するように言っておこうかな?
キスティ
年齢:15歳
種族:人間/女
LV:12
HP:77
MP:34
スキル
言語理解 1
魔力感知 1
魔力操作 1
熱魔法 1
石魔法 2
闇魔法 1
身体操作 1
小剣 2
交渉 2
罠察知 2
罠解除 1
道具鑑定 2
道具知識 3
タレント
スカウト
なんか見たことないのがいくつかある。斥候向きな能力だね。でもこの人は後衛なんだよねぇ…前衛で敵をかき回しながらの戦闘ができると良いと思う。
ただダンジョンにアタックするときは必須の人材だよね。
ざっと全員見てみた結果、ブランに関しては気になるところがあるものの初心者パーティーとしてはこんなものだと思う。
キスティの持ってる罠察知と罠解除は私も欲しいくらいだけど…どうだろうなぁ。私のスキルは戦闘することに特化されてるから取れないかもしれない。
さて、そんな感じで考察していると目的の湿地帯のすぐ近くまで辿り着いていた。
ちなみにここに来るまでに魔物とは一度も遭遇していない。私が魔力感知を使っていても反応がなかったので周囲にはいないだろう。
でもこの湿地帯は別だ。いくつもの微小な反応と大きな反応が二つ。
今は湿地帯の奥へと移動しているのであまり心配することはないけど、ひとまずは安心だ。
「カイト。とりあえず依頼を済ませちゃおう?その強力な魔物が出るより早く済ませてしまえばいいだけなんだから」
「セシルの言う通りだな。よし、それじゃ手分けしてマッドスライムの身を削ったやつを集めてこよう。リリアはここでセシルと魔法で真水を出しててくれ」
「わかったわ」
カイトが合図をすると私とリリアを除く三人はそれぞれ別の方向へと歩き出した。
足下を見ながらマッドスライムを探している。
私もリリアと一緒に用意した桶に魔法で水を貯めておいてあげることにした。
「そうそう、もっと魔力が全身を巡る感じで操作するの」
「む…んん……っ」
私は桶に水を貯めた後、時間を持て余していたのでリリアに魔力操作の基本を教えてあげていた。うまくすれば魔力循環まで覚えるかもしれないので、そうすれば彼女の魔法も今より強力になる。それはすなわち「草原の疾駆者」全体の生存率に繋がる。
折角知り合ったのだから、強くなってほしいしいつかどこかで今日のことをご飯を食べながら「懐かしいね」なんて話したいと思うんだよね。
その後待つことしばし。リリアの魔力がだいぶ減ってきた頃にブランとキスティが袋に入れたマッドスライムを持って帰ってきた。
すぐさま真水に入れるとまだ核の周りについていた泥のような身が水に溶けて核だけが残るのでそれを別の袋に入れていく。
彼等が持ってきただけで依頼の数のほとんどを占めているのであとはカイトが戻ってくれば依頼達成は間違いない。
「カイトのやつ、どこまで探しに行ったんだ?」
「真面目だからねぇ…要領も悪いし、頑固だし…そこがいいところでもあるんだけど」
ブランとキスティが核の入った袋を縛りながら湿地帯を眺めている。背の高い木が点在しているのでそこまで見通しが良いわけではないけど、正面だけは結構遠くまで見える。
カイトが向かったのはその正面方向なので彼が戻ってくるならすぐわかるはずだ。
ちなみに私の魔力感知と気配察知で彼の居場所は捉えている。ここから千メテルほど先からこっちに向かって歩いてきているので、もう少ししたら合流できると思う。
湿地帯のため足下が悪く、普通に歩くよりだいぶ時間はかかるものの今のところは問題なさそうだ。さっきよりも強力な魔力反応が近くにいるのが気になるけど、下手に寄り道したりせずにこちらへ向かってくればお互いに気付くことなくやり過ごせるはずだ。
と思うこと自体がフラグなんだろうか。
突然その強い魔力反応がカイトの方へと進み始める。カイトに気付いて襲いかかりに行ったわけではなく、単純にその方向へと進み出しただけだ。
湿地帯という悪条件と合わさって、カイトの速度ではこちらに合流するより早くその魔物と接触してしまう。
私は一つ舌打ちすると同時に
「リリア、カイトと魔物がぶつかりそう。私はカイトを助けに行くからあなた達はここにいなさい」
「え、セシルちゃん?!」
リリアが叫んで私を呼び止めようとしていたけど、時間が勿体ないので聞く耳持たず急いで駆け出す。
確かに湿地帯だから足下は悪い。
普通に歩いたら泥が足に絡んでなかなか前に進めない。
でもそういうのは普通の人に任せるよ。
「氷獄閃」
氷魔法で作り出した斬撃を湿地帯に放つと真っ直ぐに氷の道が伸びていく。今はまだ春先だからしばらく凍ったまま維持されるはず。
寄り道もせず、真っ直ぐカイトの下へと駆けていく。
これならカイトが魔物に気付く頃ちょうど辿り着けるはず。
まっててよ!
今日もありがとうございました。
長くなったので一旦切ります。




