第570話 蛇足
蛇足です。
読まなくてもこの物語は一応の完結をしています。
セシーリア•ジュエルエースの偉業は書き連ねればキリがない。
しかしその華々しい活躍の裏に蠢くものがあることを彼女は知っている。
「はあ……退屈だ……」
地上は熱砂に覆われた大地だが、彼の住む遥か地下世界には関係のないこと。
ひんやりとした空気だがどこか土臭い。
地上に出て心の赴くままに暴れ回りたい気持ちはあるものの、かつての制裁を思い出してぶるりと身体を震わせた。
「まぁいい。別にここでだって好きに出来るんだ」
彼の住まう宮殿には見目麗しい様々な種族が今日の彼の寵愛を待ち侘びている。
「……そういえばいつかの会議で聞いたっけ。新たな勇者はどこかの国の姫だって。いつか会ってみたいなぁ……その時はしっかりと俺の愛情を注ぎ込んでやらなきゃな……く、くははは……っ」
宮殿に響く嘲笑はまだ見ぬ姫を思ってか、動けぬ自らを思ってか。
それは定かではない。
この世界で最も美しい都として知られる聖都。
そこにそびえ立つ白亜の城は王が住むためのものではない。
遥か昔から世界中に信徒を持つイルミナス教の総本山。
白亜の城は教皇の住まうこの世界で最も尊き場所。
しかし眩い光の裏には必ず底知れぬ闇が潜むもの。
世界に見放された者たちが放つ怨嗟の声によって闇はより深く、より昏く淀んでいる。
「むふっ、むふふふっ……いいわあぁ……アテクシの努力も報われるってものよおぉ」
奇妙な紫色の服を着た男がくるくると回りながら独特な話し方でくつくつと嗤う。
「おいっ、気色悪い喋り方するなっていつも言ってるだろ!」
しかし同じ部屋にいたもう一人の男が苛立ちを隠しもせずに机を強く叩いた。
「いぃぃいぃじゃなあいのおぉ。アテクシだって浮かれちゃってるのよおぉ」
悪態をつく男はちぃっ、と大きく舌打ちすると机に向き直ってガリガリと書類を作っていく。
「貴方、ほんとおぉにあの女がきらぁいなのねえぇ?」
「……あぁっ、お前に次くらいには嫌いだよっ」
紫の男が吐いた『あの女』という言葉に一瞬男の手が止まった。
何の恨みを抱えているのか、一心不乱に書類に向かう男がボリボリと頭を掻きむしるとボロボロと大量のフケが書類に零れていく。
「いっそ、あぁなたもアテクシや彼等と同じよおぉになれば良いのにいぃ」
「お前みたいになりたくないんだよっ!」
彼等の足下には昏い闇に染まった亡者たちの嘆きに満ちている。
それらはいつか天に住まう彼女の首元に届く牙となり得るのか。今はまだ誰にもわからない。
ほぼ世界のどこでも見ることが出来る九天ルミナスでも覗くことが出来ない場所がある。
レベルにして四万を超えた者たちが住まう場所。
地上から遠く離れた地下世界。
そして魔法とは異なる体系によって齎された結界。
「きっと、私が知らない何かがまだこの世界にはあるよね」
最後に、彼女がまだ知らされていない神による隠蔽。
管理者と神は同格ではない。
だが管理者代理代行は神とほぼ同格である。
この世界を管理者不在に導いた悪神は今日もどこかで密かに微笑んだ。
ありがとうございました。
出来ればちゃんと本当の最後まで書き切ろうと思います。
その前に別の作品を執筆してもみたいです。
もし続編を書くならばしっかりと書き溜めていこうと思います。
本当にありがとうございました。




