第566話 Wedding
完結まで一気にいきます。
最終第569話プラス蛇足570話まで毎日更新!
九天ルミナス。
ヴォルガロンデから引き継いだ管理者としての仕事を行うための拠点。
現在の私の住居でもある。
ゼストビス帝国北端部にある浮島の中の一つで、島自体はそれほど大きくない。内部は複雑に配置された魔石によって維持されている空間魔法によってかなりの広さがある。
当然私だけじゃなくて奥さんたちにも一人ずつ部屋を割り当てているし、個人的に使う研究室のようなものだってある。
みんなそれぞれ忙しい毎日を送っているはずなのに、夜はしっかり私の寝室にやってくる。
だからこうして毎朝起きると全員がベッドの上にいるわけで。
これは地上にいた時と何も変わっていない。
変わったことはいくつかある。
ユーニャはデルポイの副社長から相談役になった。そのためカンファが副社長に就任。
私自身は変わらず会長兼オーナーだけど、元々ほとんど会社になんて行ってなかったので変わらないけど。
しかしユーニャは自分の右腕にしていた国民学校時代の同期をコモン部門長に据え、彼女とは携帯電話等で毎日連絡を取り合っている。
役員会議には遠隔で参加しているので会社には今でも無くてはならない存在になっている。
ミルルはベルギリウス公爵でもあるので簡単にその立場からは逃れられない。
しかし初めてここに来ることになった際、珠母組の一人に変身スキルを使わせてフィリライズとして毎日ベルギリウス公爵として活動させていたのでそのままの状態が続いている。
今は更にもう一人の珠母組メンバーを変身させて婚約者に仕立て上げている。
家格の問題は適当な伯爵家に資金援助を条件に養子縁組して解決。後は頃合いを見て跡取りを作れば、と思っていたらどうやら父親に新しいパートナーが出来たらしい。
しかも私達より若いとか……。とにかくそこで男の子が生まれたらその子に跡を継がせる予定らしい。
リーラインは学校の校長を辞任。私に変わって理事長を務めてくれることになった。
理事長を退いた私はただのオーナーとして名前が残ってるだけとなった。校長にはリーラインの補佐をしていた私の愛人の一人でもあるチャリが就任している。
チェリーは軍事顧問という立場上、どうしても辞任が出来ないでいた。
武術の指南はノルファとエリーが行うことが増えたため、それに関してはあまり困っていない。ついでに彼女の補佐についていた獣人の女性は今やチェリーの話を聞いて伝えるだけの人になってしまっている。
まぁそれで困ることは特にないし、軍事行動を起こすなら結局ミオラが指揮するのだから。
ステラに関しても変わりなく、相変わらずここ九天ルミナスでも私のお世話をしてくれている。
屋敷のメイドたちは私のお手付きがあった者たちが率先して動いてくれているし、そもそも人形セシルがずっと屋敷にいるので大きな問題もない。
キュピラとネレイアは屋敷での役割もまだ決まりきってなかった。
そんなこんなで奥さんたちも時折自分の仕事をしているけれど、九天ルミナスにずっといる状態だ。
私も管理者代理代行としての仕事が多くないので、今まで時間が無くて出来なかったことを進めていた。
一つ目が祭壇の整備。
学校用のダンジョンはあるけれど、クランの訓練用ダンジョンも欲しかったのでそちらを新しく設置。
そして各大陸から集めてきた宝石を大量に蓄えた岩山を加工して天を衝くほど巨大な柱を立ててみた。
強度はユーニャが全力で殴らないと壊れないくらいなので、多分最低でもミーリニアスくらいの実力が無ければ破壊は出来ない。何かしら特殊なスキルでもあれば別だけど。
二つ目。眷属たちの引き上げ。
彼等も九天ルミナスへ連れてきた。
これに関してはいろいろ思惑があるのだけれど、基本的には私が一緒にいたいから。
今も玉座で考え事をしている私の前には左右に分かれて立ち並ぶ二十四人の眷属たちの姿が目に入る。
右側にはエースを筆頭に宝石から作り上げた愛する眷属たち。
対して左側には帝国との戦争で手を貸してくれたフルハたち魔物の魔石から作り上げた者たち。
エースたちを十二宝師。フルハたちは十二魔師。どちらが上とかではなく、私のために動く手駒たちである。
ちなみにフルハだけでなくデリューザクスもいるし、脅威度S以上の魔物から得た魔石から生み出された彼等は非常に強い。
世界で起きている様々な異変を察知し、事前に彼等が解決。もしくは私に報告が来るようにしている。
三つ目。テゴイ王国の完全傀儡化。
こちらは時間の問題だったのであっという間に終わった。更に隣り合う海に面した国をも取り込んだことによって他大陸からの客も多く押し寄せることになった。
おかげでデルポイは更に潤っているのだけど、元テゴイ王国の王侯貴族たちはあの国では一般的な平民よりも貧しい暮らしを強いられていると思う。
そのおかげもあって、世界の大半を経済的に支配していると言っても過言ではない。過言ではないけれど、まだその枠組みに入り切らないところもある。
それが第三大陸の神聖国と第二大陸のピクシーたち。加えて第五大陸は未開地も多いため、シーロン商会でも手を出していないところはこちらも干渉しないことにした。
四つ目。
これこそミーリニアスから引き出した条件。
帝国北端部を私の領土とした。
帝国からも干渉されないようミーリニアスとも話し合いは済んでいる。
面積で言えば岩手県くらいの範囲だが、広大な帝国の領土からすればほんの僅かでしかない。神聖国、アルマリノ王国とも接していないため私の支配地域とは思わないだろう。
特に何かするつもりはないけれど、階の脚を守るためだ。
いろいろやったおかげで帝国との戦争から更に二年もの月日を要した。
忙しいながら時間を見ながら作り続けたものを、今日ようやく渡せる。
「綺麗だよ、ソフィア」
「セシルママ」
私の前には真っ白なウェディングドレスに身を包んだソフィアが頬を赤らめていた。
私が着たのと同じタイプのAラインドレスだけど、私のようにケープを羽織るのではなく胸や二の腕あたりに大きなリボンがあしらわれて素肌を覆っている。
レース地でもなく割と厚みのある生地で、それでも清らかさを感じさせるデザインだ。
「本当、ママ達が来てくれて良かった。誰よりもセシルママに見てもらいたかったし」
はは、と乾いた笑いしか出てこないけれど実は間に合ったのも結構ギリギリだったりする。
本来なら本体が地上に下りるときは厳重な結界が必要になるのだけれど、このヴォルガロンデの工房には必要がない。
一応万が一を考えるとあまりやりたくない方法ではあるけれど、自分たちの能力のほとんどを制約するアーティファクトをミルルが作ってくれたのでレベル五千程度にはなっているはず。
工房自体に結界が施されているので、ここまでしておけば私が地上に下りること自体は問題がない。
当然だけど私以外にも招待客はいる。
「おめでとうソフィア」
「ソファイア、幸せになるのよ」
奥さんたちも揃ってやってきている。
コルやアネットも招待しようと思ったけど、これから行われることを知っている身としてはあまり勧めたくない。何よりヴォルガロンデの遺跡をあまり広めたくないしね。
「今頃ヘイロンも娘の晴れ姿を見て泣いてるの」
「チェリー姉はアルーリリスのとこ行かない?」
「私は良いの。自分の時に父上を呼んであげられなかったから、今は父上優先なの」
チェリーだけでなくリーラインもここにいるし、身内が来ているからといって奥さんたちは会いに行ったりしないらしい。
ステラだけは段取り含めて取り仕切っているためここにはいないけど。
「ソフィア、はい」
異空間を開いて取り出したのは水晶で出来たトレイに乗った五つの指輪。
「これって……もしかして?」
「えぇ、貴女たちに頼まれていた結婚指輪だよ」
そこには無色透明なダイヤモンドをあしらった指輪を中心に四つの同じ指輪が鎮座している。
「うわぁ……素敵な指輪をありがとう、セシルママ」
「娘のためだからね。このくらいなんでもないよ」
当然私が作ったのはこれだけではなく、ウェディングドレスに合わせた五人分の装飾品を自重無しに作り上げた。
さすがにこれはこの結婚式を彩り、そして乗り切るためのものなので普段使いのものではない。だからと言って手抜きなんてしてないし、宝石の選別から自分のときと同じくらい拘って作ってみた。
ソフィアにはダイヤモンドの隣に小さな天上の雫を。
ランファにはブルーダイヤモンドとベニトアイトを。
エミルシルにはグリーンダイヤモンドとデマントイドガーネット。
アルーリリスにイエローダイヤモンドとオパール。
ミサキにパープルダイヤモンドとパープルサファイアを。
メインになるダイヤモンドと違い、小さな石なので自己主張しすぎないようにしてみたせいで少し見辛いけれど、どれも今の私が行える付与魔法では最高クラスのものを施させてもらった。
当然台座となる指輪の金属も人工物なので頑丈だし、魔石と同じくらい魔力も籠るので実質魔石三個分の魔道具を身に着けているようなものだ。
「ソフィア、その結婚指輪作るのにセシルは凄く時間を掛けて頑張っててんだよ」
「それだけ貴女たち娘のことを大切にしてましてよ? 必ず幸せになること、これがわたくし達から出す貴女達への結婚条件ですわ」
パン、と持っていた扇子を畳んでソフィアに突き出すミルルは嬉しそうな、でも少し寂しそうに笑顔を曇らせていた。
今夜はなるべくミルルを可愛がってあげなきゃね。
……多分、今夜はソフィアたちも初夜だろうしママ達も励んでもいいよね?
それなら久し振りに結婚式のときに着たウェディングドレスでってどうでしょうか?! 勿論当日着用したものは保管してるから同じドレスをアノンに作ってもらったんだよね。
ふ、ふふ……なんか滾ってきたかも?
「セシル? なんか顔がだらしないことになってるよ?」
「これはきっとソファイアの今夜のことを考えてるんじゃないかしら?」
リーラインが遠回しに初夜のことに触れるとソフィアもそのことに気付いたのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。
まぁ当然貴族家の娘なので性教育はしてますし。
一応普通に男性と結婚すると思ってたからごく一般的なものと、母親たちの関係についての両方をね。
おかげで母親と同じ同性多重婚ということになっちゃったけど。
「セシルもソフィアも浮かれるのも良いけど、それより先に大事なことがあるの。気を抜いたら駄目なの」
パン、と手を叩いてチェリーが場を引き締めた。
死ぬことはないとわかっていても、私も娘たちに万が一があってほしくはないから奥さんたちと同じレベルで装飾品を揃えたけれど、どうなるかは彼女たちの意思次第。
私達は外で見守ることしか出来ないから。
「そうだね。ソフィア、気をしっかり持ってね」
「……うんっ! ユーニャママ、ミルルママ、リーラママ、チェリーママ、キュピラママ、ネルママ……今まで私を愛してくれてありがとうございました。いってきます!」
私の腕を取るソフィア。
いつの間にか背も伸びて私とほとんど変わらないくらいにまで……大きくなったね。
熱くなる目頭を押さえることなく、床にいくつか天上の雫を落としながら会場へと向かった。




