第526話 二次会?
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「お母様、わたくしランファ様とお話していてもよろしいでしょうか」
「父上、私もソファイア様ともっと話したく存じます」
私とヘイロンは子どもたちからの申し出に了承し、ソフィアには会場の奥にある個室へ行くよう伝えておいた。
「悪いな」
「ううん、こちらこそ」
「いや、今回のことだけじゃなくてな……まぁいい。また改めて相談したいことがある」
「商談じゃなくて相談?」
ヘイロンが少しだけ困ったような顔をしているので、どうやら本当に相談がしたいのだろう。
ヴォルガロンデの元へ辿り着くために『階の脚』へ向かうのは間もなくだけど、この披露宴が終わった後でも少しは時間が取れる。
「明日でもいいなら時間はあるよ?」
「そうか、それなら頼めるか」
なんか思ったより深刻な相談なのかもしれない。
私は後ろにいたユーニャに目配せする。
「ではホンイー殿は私と一緒にデルポイ本社見学でもいかがでしょう? 息子のコルチボイスも同席させますので」
「まあっ、それは願ってもない申し出でございます」
コル、許せ。
貴方なら後で何とでも出来るでしょ。
……というか。そうか、結婚したからコルも皆の息子になったってことなのか。
いきなり孫まで出来ちゃったけど、いいよね?
それからヘイロンとの話を終えた後、今度はキュピラとネレイアを連れて会場を回る。
「改めて、今日は来てくれてありがとうリード」
「あぁ、こちらこそ呼んでくれて嬉しい。本当は息子を連れてきたかったんだがな。さすがにまだ無理だと母上に怒られてしまったよ」
「あぁ……ごめんね、最近までかなり忙しくてお祝いに行けなかった」
「構わんさ。セシルの息子殿より丁寧な謝罪をいただいている」
コルからリードのところも子どもが生まれた話は第五大陸から戻ってすぐくらいに聞いてはいた。
本当にバタバタと忙しかったので全然書類や手紙を見ることが出来なかったので彼が代わりに返事を出しておいてくれたのだ。
「それにしても……随分幼い妻を迎えたのだな」
「紹介するね。私の妻でキュピラとネレイア」
私がリードに二人を紹介すると彼女たちは揃って名乗りながら頭を下げた。
「私はリードルディ•クアバーデス。セシルとは……まぁ幼馴染のようなものだ」
「リードルディの妻でカリオノーラと申します」
リード夫妻も私のもっとも遅い奥さんたちに礼を取ってくれた。
「でも幼そうに見えるけど、二人ともクアバーデス侯より年上だからね?」
「あじ……いや、人間以外の種族は外見ではわからんものなのだな」
亜人、と言いそうになって言い直したのは良いね。
でも彼等は亜人と呼ばれること自体はそこまで気にしてなかったりするんだけどね。
「きっとリードがおじいちゃんになっても見た目変わらないと思うよ」
「何十年先の話をしているんだ……」
多分その頃には私の見た目も変わってなくていろいろと面倒ごとが増えたりしてるんだろうなぁ。
笑顔を絶やさない裏でそんなことを考えている間に、披露宴は過ぎていった。
三々五々招待客が帰っていき、屋敷ではもう数名を残すのみとなっていた。
我が家に泊まるのは魔王たちと他大陸からやってきた王たち。
披露宴が終わった後の小さなパーティーを開き、現状と今後について話し合っていた。
「ふむ……聞いてはいたが第五大陸は厳しいのだな」
「他大陸に進出しようにも他の魔王の領分を侵す可能性もあるからな」
「第二大陸とてさほど変わりません。ほとんどが岩場と砂に覆われた土地なので……私達エルフの国は豊かな森の恵みがありますけれど、獣人やピクシー達は厳しい暮らしを強いられていると聞いています」
「そう聞くと妾のいる第四大陸、そしてこの第三大陸は随分恵まれておるのぉ」
各大陸の状況を聞きながら皆がグラスを傾ける。
このグラスは私が水晶で作った特別なもので、中身はデルポイで醸造しているブランデーである。
深みのある甘みと僅かな渋みがアルコールと共に喉を焼く。かなりの酒精があるけれど、ここに酔い潰れるような人はいない。
「でも今はどこかが戦争とかしてるわけじゃないよね?」
「……セシーリア。貴女ねぇ、言い方ってものがあるでしょう? なんでそんな真っ直ぐ聞くのよ」
どストレートに聞いてしまったのが良くなかったのかリーラインのお母さんに怒られてしまった。
だってこの場で腹の探り合いをしても仕方ないし。そもそも身内しかいないんだよ?
「ここには味方しかいないよ?」
「……ふっ、それもそうだ。大公殿には娘も嫁いだことだし、儂も大公殿の父として本音で話をしよう」
「それなら私もね。リーラインを娶っていただきましたし、母として貴女からの相談なら何でも聞くつもりよ?」
ガットセント王、エルフの国の女王は二人とも国を治める立場なのに心強いことこの上ない。
「相談ってわけじゃないよ。これからもみんなの国がより良くなっていくために協力したいねって話」
尤も、こんな話を自国の王を交えずに話している時点で私もおかしいんだけどね。
でも、未だに私は王家に確執があるよ。
滅んでしまえとは言わないけれど、積極的に助けていこうとは思っていない。
「なぁ、やっぱりセシルは自分の国を作ったらどうだ?」
「嫌だよ面倒くさいもん」
「一国の王を面倒臭いだけで嫌がるとはのぅ。妾も同じだが……確かにセシーリア殿の力は一国の臣下としておくには強すぎるものじゃ。何かしら考えた方が良いかもしれぬ」
そうは言ってもねぇ?
今はまだ自分の目的のために行動しなきゃいけないし。
「とりあえずそれは保留で。あと百年くらいしたら暇潰しに建国するかもしれないから、その時は手伝ってくれると嬉しいな」
「ふふっ、それも面白そうじゃな。その時は妾が力を貸すと約束しよう」
「あら、でしたら私も最初の同盟国として名乗りを上げさせてもらうわね」
「エルフの国の女王よ、それはズルいぞ。儂が先に名乗りを上げようと」
だんだん収集がつかなくなってきた話し合いは、その後は私からのお願いをすることで一度落ち着かせる。
「……話はわかりました。でしたら貴女のところへ送るエルフの男を見繕っておきましょう。ちょうど良い人がいますから」
ニコリと笑うエルフの女王。
私のお願いはコルにエルフの執事をつけてあげたいという話である。
ちなみにコルが男色であることは彼女も知っているので『ちょうど良い』というのは『そういうこと』なのだろう。
「それとは別で、行儀見習いとして私の姪っ子の娘も預かってもらえないかしら?」
「女王陛下の姪っ子の娘? それは王族では?」
「構わないでしょう。貴女だって王族の一人みたいなものでしょう?」
私が、王族? 王族に嫁ぐ孫娘の祖母ってだけなんだから王族ではないけど?
「人間換算だとまだ十二くらいだから……貴女の娘の『お友達』として、ね?」
「いいですけど、ウチのソフィアはなかなか忙しくしていまして」
「それなりに鍛えてありますが……物足りないようでしたら死なない程度ならどのように扱ってもらっても構いません」
なんでこの世界の人は家族をそんな風に扱うかな。
リードも最初はクアバーデス侯にそう言われてたっけ。
その後私に鍛えられて強くはなったけども。
「ふむ。ならば儂の孫娘も預けようかのぉ。息子の娘がちょうど九つになる。チェリーツィアのように強く育ってほしいと思っていたところだ」
「おっ、俺もだ! ……本当は明日相談しようと思ってたことなんだが……」
ガットセント王まで。
というかヘイロンまで?
聞けばさっきソフィアと話していたランファ嬢を預かってほしいとのこと。
「あいつは頭も良いし腕も立つ。だがシーロン商会よりもデルポイの方がもっと勉強になるだろう」
「デルポイに、ねぇ……でもランファ嬢はソフィアと凄く気が合いそうだったし、クランに入るって言うんじゃないの?」
「それならそれでいい。シーロン商会は俺がいる限り安泰だが、友だちってのは作れる時じゃなきゃ、相手がいなきゃ出来ないからな」
まぁ、どうしたいかはランファ嬢に確認すればいいか。
あとソフィアにも話を聞いてみないと。
なんかあの子の周りも王族で埋められていくね。アルマリノ王国の王族や貴族で埋められてしまうより全然良いけど。
「良いのぉ……妾のところには差し出せるような娘はおらんわ」
「ヒマリさんはなんで張り合おうとするの……しなくていいから」
「せやかて……あ、そうや! 確かウチの元帥んトコにおもろそうな子ぉがおったはずやで? その子を行儀見習いに出したろか」
「だから普通の令嬢じゃ無理だって……」
「大丈夫やろ。アカンかったらセシルはん鍛えたってや」
そんな暇ないってば!
ていうか話し方が素になってるよ!
でも本当にソフィアとクラン活動しようと思ったら少なくともレベル五百はないと話にならない。
結婚式前に脅威度Sの魔物を狩ったり複合ダンジョンでのレベル上げに付き合わせたから、あの子のレベルも八千を超えている。
かと言っていきなり強すぎる力を手に入れた子どもがどうなるかなんて想像に難くないし。
「どうするかはまだ考えなきゃいけないけど、預かるのは問題ないよ。ソフィアにも友だちが欲しいと思ってたし」
「リーラインと同じように貴女の娘が娶ってくれても良いのよ」
そんなことにはならないっての!
とは強く言えないんだけどね……血は繋がってないのにソフィアは私に良く似てきている。
いや別に私は生粋の同性愛者じゃないよ?!
私は宝石愛者ですから!
それからも話し合いは続いた。
この話を突き詰めていくことで夜は更けていく。
私が屋敷で自由に出来る時間はあまり残されていないので、とりあえずの顔合わせから共同生活を送らせることにしようということで。
みんな王様なのに話の展開が早すぎませんかね?
なんで夜決めた話を翌朝に実行しようとするの?
え、私がのんびりしすぎ?
違うよね、絶対!
「本当にやりやがった……あんの馬鹿オカン……」
「お母様……私聞いていないのですけれど……」
「父上の割には早かったの。でも……」
翌日の昼には頭を抱えた人がたくさん、食堂に発生しておりましたとさ。
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