第524話 初夜とコレクション
コミカライズもよろしくお願いします!
お盆期間連続投稿!
現在私ことセシーリア•ジュエルエース……セシルは一人寝室のベッドの上で待機中であります。
正座で、カッチカチに固まりながら。
何故かって?
それはね、今夜が初夜だからです!
既に全員と関係しているだろう、とか野暮は言っちゃ駄目です。
それはそれ、これはこれ。
多分お揃いであろう白いベビードールに身を包み、私が自分のために用意した装飾品を身に着けている。
指輪、ブレスレット、バングル、ネックレス、チョーカー、ウエストチェーン、アンクレットにイヤリングまで。おっと髪飾りも。
全てにあらゆる宝石を散りばめており、それぞれ奥さんたちを象徴する宝石も必ず身に着けている。
寝室のベッド前には大きな姿見が置いてあるので、今の自分の姿もよくわかる。
まぁさすがに正座で固まっている姿はやや滑稽ではあるのだけれど……とはいえ。
「はあぁ……宝石で彩られた私って綺麗だなぁ……」
と、思わず呟いてしまうほどですとも。
自分をネタに出来るよ!
何の? 聞くなよ!
コンコンコン
一人で悶えること多分鐘半分くらいは経ったと思う。ドアをノックされる音で正気に戻った私は慌ててベッドの上で佇まいを直した。
「ひゃっ、ひゃいっ! どどっ、どうぞ!」
私が声を掛けると、カチャっと小さく音を立ててドアが開いた。
「こんばんは……お待たせセシル」
「…………っ!」
ドアからまず入ってきたのはユーニャ。
結婚式でつけていた装飾品のうち身に着けられないもの以外は全て着けてきてとお願いしてある。
薄い水色のベビードールは彼女の身に着けている下着まで全て丸見えだったりする。
続いてミルルも真っ赤なのに透け透けの、ステラも紺なのに薄っすらと透けたベビードール。リーラインのエメラルドグリーンの、チェリーの黄色もとても扇情的で私の心拍数を上げてきてくれる。
最後に薄桃色と黒のベビードールに身を包んだキュピラとネレイアが入ってきて、ドアが閉められた。
「あぁ……みんな、凄く綺麗だよ」
お世辞でも何でもなくただ見惚れて褒めたら、みんなも顔を赤くしている。
そしてベッドに上がって私の前にやってくると、どこで聞いたのか三つ指つけて頭を下げた。
「本日この時より私どもは貴女様の妻になりました。いつ久しく愛してくださることを心より願っております」
代表してユーニャが挨拶すると、ミルルたちもそれに倣って「お願いいたします」と続けた。
……もういいかな? 駄目? ちゃんと答えなきゃいけない?
「……私こそ、みんなに愛してもらえて凄く嬉しいよ。これからもよろしくね」
と、真面目に挨拶した後はさっきの血痕式と同じくらい獣になる。
宝石で彩られた彼女達は魅力的過ぎて一切加減出来なかった。
ジュエルエース家の屋敷中に嬌声が響くけれど、今屋敷内には誰もいない。
だからこそこの狂宴を期待していた私も、みんなも遠慮することなく声を上げ続けるのだった。
ふぅ。
おはようこんにちはこんばんは。
性獣セシルです。
「月が綺麗ですね」
死んでもいい、などと答える人は誰もいない。
寿命が来るまで誰も死なせないから。
じゃなくて、奥さんたちはみんな揃って火照った顔と身体で気絶中です。
昨夜からさっきまでほぼ丸一日ずっと致してたからね!
気絶してても私は容赦しなかったよ!
なんですかね。
もうみんな綺麗すぎて可愛すぎて宝石も大好きでみんなも好きで……最高の最高はやっぱり最高でした!
結局奥さんたちはみんな翌朝まで起き上がれず。
あのステラでさえ起きても膝が震えてまともに立てないほどだった。
ちなみにこの初夜のシーツは当たり前のように私が回収しました。
あの結婚式のせいか、何故かみんなまた再生しちゃったんだよ……アレが。
なのでみんなの血痕がバッチリ残ってて、真っ白いシーツに八つの血痕と白かったのにやや黄ばんで……私の思い出の一品がまた増えたよ! ちゃんと研究室に飾らなきゃね!
「セシーリア様……それ飾るのは止めませんか……?」
ステラに止められたけれど、私は絶対に飾る。
もう入れるための額とそれに取り付ける魔石も複合ダンジョン下層ボスのものを用意してるし。
「やだっ」
「そんな満面の笑みで……いえ、わかりました……私の主は倒錯した趣味をお持ちの美しい女主人ですから……」
がっくりと肩を落として諦めたステラの頭を撫でてあげると、私は一人研究室へと入っていくのだった。
「よしっ、完成!」
研究室に入って少し経った。私の前には額縁に入ったシーツがある。
当然その額縁には複合ダンジョン下層ボスの魔石を用いて状態保存の魔法がかけれているけれど、他にも私達全員の宝石を魔石化、連結、強化しているため数百年はこの状態を維持出来る。
ちなみに全員分のシーツを飾ってあるこの部屋。
元々宝石を鑑賞するための部屋を更に改造し、奥に続く扉を取り付けたその先にある。
これもヴォルガロンデの技術を用いたもので、おそらく私くらいしか入ることは出来ないくらい大量のMPを消費する。
今はステラだけ入れてるけど、今後は誰も入れなくする予定だ。
「真ん中に今回のシーツ。そして結婚式で使ったドレスと装飾品の数々。更に取り囲むように配置したそれぞれの奥さんたちとの思い出……完璧すぎる」
決して血痕に喜んでいるわけではない。
思い出に酔っているのだから。
ちなみに後ろ側の目立たないところではあるけど、愛人たちとの初めてが刻まれたシーツも保管し飾ってある。
ノルファやエリーのように私とよく顔を合わせる面々のものは目立つところに。使用人たちとのものはまとめて重ねちゃってるけどね。枚数も多いから。
うん。今度ここでソロ活動に励んでみよう。
「あの……やはりとても恥ずかしいのですが……」
「昨夜のステラの声はとっても可愛かったけど、それより恥ずかしいの?」
「……申し訳ありません。もう何も言わないので口に出さないでくださいませ……」
ステラも私と同じで涙なんて出ないのにヨヨヨと目尻に手の甲を当てている。
なんて強かな。
「それに、セシーリア様も昨夜は凄い声を上げてらっしゃいましたが?」
「みんなが愛してくれた証だからね! 遠慮しなかったよ。本当に嬉しかったなぁ……みんなも凄かったけどね」
「もう、私の負けでございます」
屋敷の中にノルファたちや使用人がいたら大変なことになっていたかもしれない。
事実ステラは今こうして私の側にいるけれど、他の奥さんたちはそれぞれの部屋に運んで休養中である。
体力も精力も限界を超えて振り絞った結果だろうね。
「さすがに誰も起き上がれないなら今夜は一人で過ごそうかな」
「そうしてくださいませ。この上使用人たちや騎士たちまで倒れてしまったらジュエルエース家が立ち行かなくなります」
失礼な!
と思ったけど、今の私は浮かれきっているので加減せずに徹底的にしてしまうだろう。
そうなると正しくステラが危惧している通りの結果になることは明白だ。
「とりあえず、今日のところは披露宴の準備を私だけで進めるよ。ステラも無理せず休んでいいからね」
「……今日ばかりはお言葉に甘えようかと思います」
よほど辛かったのだろう、ステラは私にお辞儀をするとすぐに姿を消してしまった。
私もその直後には鑑賞部屋を出て執務室へと向かうことにした。
「招待状は全部出したし、会場は飾り付けを残すのみ。ドレスはアノンが作ってくれたし、装飾品の準備は万端……いや、足りないかな?」
「セシーリア様、これ以上は身につけるところがないのでは……」
「セシーリア様ならばどれだけ身に着けられても問題ないでしょう! いつまでも美しく神々しい、我らが主に相応しい素晴らしい方です!」
「インギス少し黙ってて」
相変わらず盲目的に私を讃えるインギスはモルモに叱られても全く気にした様子もない。
というかモルモも私に苦言は呈しても否定はしていないんだよね。
身に着けるところが残っていれば嬉々として勧めてくるだろう。
「そもそも正装に取り付けるボタンやカフスもまだご用意なさっておりません」
「そうだった。あと剣帯もベルトのバックルも。それなら服の上からも身に着けられるアームレットも作ろうかな?」
「はい、それは素敵だと思います」
とはいえ。今日は準備をするって決めてるからね。
誘惑に負けないようにしなきゃ。
引き続き準備のための項目作りを進めていく。
「料理に関してはヘルマンに任せようかな」
「セシーリア様が見つけた第五大陸にいるという料理人でしたっけ。ただ……その、大丈夫でしょうか? 第三大陸とは味付けも違うでしょうし、何より王侯貴族もやってくる披露宴になるので……」
「そのあたりは確認してみるけど、多分大丈夫じゃないかな」
何せこと料理に関してはこの世界の誰よりもチートなヘルマンが作れないとは考えにくい。
食材に関してもデルポイとナナ、ヘルマンの奥さんで農業チートな転生者イネの協力があればどうとでも出来ると思う。
アルマリノ王国での披露宴は夜会などと同じで立食で、全員席を決めてコース料理を出すわけじゃない。
だからこそ世界中の珍しい料理を集めても良いと思うし、前世の料理を再現させても良い。
「一番の問題は送り迎えだね」
「ディッカルト様はイーキッシュ公爵領より参りますので移動に十日はかかるかと。産後の奥様にはかなりの負担になります」
「かと言って、デルポイから出てきたりしたら次期イーキッシュ公爵としての面子も立たない、か……」
公爵ともなれば王都まで来る間に立ち寄る町に金を落としながらの旅をしないといけない。
それを無視すればディックの評判を落とすことになってしまう。
「……ディック達の偽物でも用意しようかな……」
「偽物って……そんな似てる人を簡単に見つけられるでしょうか」
「見つける必要はないよ。こんな風に」
私は近くにいるインギスへ『変身』スキルを使って強制的に姿を変えさせた。
スキルによって細身の文官であるインギスの姿は騎士団四番隊隊長を任せている筋骨隆々なツバルゴへと変わり、隣にいたモルモは大きく目を見開いている。
「え……あ、あの……イン、ギス、は……?」
「モルモ、何を言っている? 私はここにいるが?」
ツバルゴの姿になったインギスがいつもの話し方でモルモと会話している。
本来のツバルゴならもっと豪快な話し方をするはず。
「モルモ嬢! 何を言っているんだ? 俺ならここにいるだろう?」
とかそんな感じで。
いつまでもツバルゴの姿でいられると暑苦しいので、私が指を鳴らすとインギスの姿は元に戻った。
「これを魔石に付与しておけばいいかな。魔力はたっぷり込めておけば片道分の十日間は変身状態を維持出来る」
「……やっぱりセシーリア様って凄いです」
「そうだろう? やはりセシーリア様は偉大で素晴らしくっ、尚且つ美しく聡明であらせられる女神の如きお方!」
……始まった。
インギスのこれは慣れてはいるけど何度聞いても背中がムズムズする。
私とモルモが溜め息を漏らしながら彼の演説を止めた頃、外出していたセドリックも戻ってきて準備は更に進めていくことになった。
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