第521話 結魂式
コミカライズもよろしくお願いします!
最後のネレイアがサインを終えてペンを置いた。
「ここに誓いは立てられました。貴女たちへ私の妻としての証を与えます」
結婚誓約書の隣に置いたトレイに手を伸ばし、自分の指輪を手に取るとみんなに見えるように左手を立てて薬指に指輪を嵌めた。
指輪には八つのダイヤモンドがあしらわれ、それらは自分と七人の妻と同じもの。
「ユーニャ」
「はい」
私の前に歩み寄ってきたユーニャの左手を取ると、彼女の薬指へと指輪を嵌めた。その指輪にはブルーダイヤモンドを。以前プロポーズした時につけてあげたものを改造させてもらったものだ。
続いてミルル。彼女にはレッドダイヤモンド。
ステラにバイオレットダイヤモンド。
リーラインにグリーンダイヤモンド。
チェリーにイエローダイヤモンド。
キュピラにピンクダイヤモンド。
ネレイアにパープルダイヤモンド。
私の分はカラーレスダイヤモンド。
誰かに染まることなく、みんなの色を受け入れるために。
「ここに婦婦となるための儀式は執り行われました」
フレアのオブジェに対して頭を下げると、みんなも私に倣って頭を下げた。
これで、結婚式は終わり。
頭を下げたまま、一息つくと私は満面の笑みで後ろを振り返った。
「みんなお疲れ様っ! さあっ、ソフィアたちを呼ん……」
---超特殊条件を満たしました---
---規定人数以上の同性による結婚式---
---起点となる者の管理者の資格を確認---
---最高条件による支援と試験を開催します---
---これより結魂式を行います---
---これより血痕式を行います---
---史上初の開催として特典が与えられます---
---超高レベル者同士の戦闘を確認しました---
---空間隔離。世界への破壊行為阻止解除。決闘システム起動。オリジンスキル選択権獲得戦闘へと移行します---
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「な……なんだってのよーーーーーっ!」
「セ、セシル……これって……?」
「……わかんないけど、絶対ろくなものじゃないよ……」
教会全体が震え、明らかに空間が閉ざされていく閉塞感を感じる。
しかも決闘システムって……どんなとんでもないのか出てくることか。何せレベル一万を遥かに超えたような相手同士じゃないと起こらないからね。
ただ……説明くらいしてほしいね。
---ご説明します---
反応があったわ。
メルよりも役に立つ説明役ありがとうございます。
(何か言ったのだ?)
(なんでもないよ。というか、これ何よ?)
(わっちにもわからないのだ)
ほらやっぱり役に立たない。
---管理者代理代行の指定位置における指定行動を取ったため、特殊条件を満たしました---
---規定人数以上であったために次の特殊条件も満たしました---
---超高レベル者同士であったために更に特殊条件も満たしました---
---管理者の資格所持者であったために更に次の特殊条件も満たしました---
---規定以上の転生ポイントをお持ちでしたので、最後の条件を満たしたため超特殊条件を満たすことと相成りました---
淡々と告げていくシステムメッセージ。
脳内に響く音声とは別で空中に文字が浮かび上がっていて、その淡々とした様子が一層不気味さを呼び起こしてくる。
それで、結局何を為せっていうんですかね?
---結魂式にて力と資格の証明を。血痕式にて愛情の証明を---
---全員による殺し合いを行います---
---なお、試験のため通常の決闘システムと異なり戦闘不能になった場合も死亡することはありません---
「殺し合いで死亡しないとか意味わかんないんだけどっ?!」
「ちょ、どういうことですのっ?!」
---十秒後に開始します---
いやいやっ! だから待てってば!
ガンッ
後ろで大きな音が鳴って振り向くとチェリーが教会のドアを思いっきり殴りつけたようだ。
しかし当然空間が隔離されているせいでビクともしない。
「空間魔法で転移は?!」
「駄目です! 先ほどから空間への干渉を妨害されています!」
---三、二、一……試験開始---
ドクンッ
試験開始を告げられた直後。
私達の中に何かが入り込むような違和感と嫌悪感が駆け巡る。
自分の思考が書き換えられるような凄く嫌な気分。
「ぐうっ……みんな、だい、じょう……?」
あれ、みんなって……誰、だっけ……?
というか、目の前にいる人達みんなウェディングドレス着てる?
というか、自分も?
なんか、撮影会とか?
あれ、撮影会って前世じゃあるまいし……あれ?
記憶が混乱してくる。
何故ここにいるのかもわからない。
そもそも彼女達は何をしているのかわからない。
しかも……みんな異常なほど強い?
「ああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ごぉっ
「うわっとおっ?!」
水色の髪の子が突然殴りかかってきた。
しかも速くて鋭いうえに、とても重そうな一撃をいとも容易く放つところを見ると必殺技とかそういう類のものではないだろう。
「たあぁっ!」
「うぐっ?!」
水色の子ばかりに集中していたら銀髪の子に横から肘打ちを食らってしまった。
かろうじて腕で防いだものの、おそらく複数の魔法を使って複合的に威力を底上げしている。
うっ?!
「神技発動。出力制限解除。神の祝福『_%~#』発動」
じゃらっ
自分の意思とは関係なくスキルを発動させた途端、目の前にいる七人全員に金色の鎖が巻き付いた。
しかしあれは動きを制限するようなものじゃない。
というか、寧ろ……。
「いあぁぁぁっ!」
突然大きな声を上げた緑髪のエルフが魔力で作り出した弓を構えたと思ったら数百もの矢を放ってきた。
それらはそれほど強いものではないものの、数が多過ぎる! 点や線での攻撃じゃない。弓矢なのに面での攻撃になっていた。
「くっ!」
「シィッ!」
緑色の矢をかなり防いでいたと思ったら今度は闇灰色の少女が同じような矢で攻撃してきた。
くそっ!
「新奇魔法 精霊の舞踏会!」
しかしそれら全ての矢を私が生み出した全属性の魔力砲撃で全て撃ち落としていく。
こっちだって手数なら負けないからねっ!
「うにやぁぁぁぁっ!」
しかし弾幕が収まったと同時に飛びかかってきた黒髪虎耳の少女の攻撃をモロに受けてしまった。
「なっ?! うぐっ!」
痛みはそれほどでもないけれど、これほど力を出して攻撃を受けたのは初めてかもしれない。
しかも彼女の攻撃は止まっていない。
ほぼ一方的に殴られ続けた私は更に魔力を収束している白髮の少女が目に入る。
「やばっ……」
ズガアァァァァッ
超高火力の炎魔法攻撃で私の全身は焼かれてしまった。それもすぐに回復していくが、ダメージはさすがに大きい。
無理矢理身体を起こそうとしたところへ今度はもう一度水色髪の子が殴りかかってきた。
ドゴォッ
「ぐっ……がはっ……あ……っ!」
ちゃんと防いだはずなのに、その攻撃は私の防御を突き抜けて身体に直接打撃を与えてきた。
まずい。やらなきゃ、やられる……。
「……金閃迅!」
両手に神気と魔力で作り出した剣で全員を打ち払う。
斬撃であるはずだけど、この場にいる全員の防御力が高すぎて斬ることが出来ないらしい。
「グランドデスピアッサー!」
ガゴンッ
銀髪少女の放った地魔法と暗黒魔法で作り出した細剣が私の右肩を穿つ。
かなり強力な攻撃ではあるけれど、彼女達と同じく私の防御力も相当に高いので貫くまでにはいたらない。しかし、痛みのせいで右腕がうまく上がらない。
キュイン キュイン
「ぎゃっ……あ、あぁぁぁぁぁっ! ぐうぅぅっ……新奇魔法 極獄凍流波!」
そしてその右肩を狙われて魔法で作られた矢が二本突き立てられた。
撃ったのは緑髪の女と闇灰色髪の少女。
しかし私もすぐに魔法を放ったおかげで銀髪の少女を含めた三人を氷の中に封じ込めることが出来た。
あと……何人だ?
「電撃魔法 神雷金剛鎚!」
ズガアァァァァッ
「イギャアァァァァァァァッ!」
な、にが……?
よく見ると藍色の髪の女が私に向けて手を差し向けていた。
しかもその魔法は私の魔法だ……っ!
「爆発魔法 神話崩壊!」
藍色髪の女に向けて強力な爆発魔法を放つと、相手は爆風に飲み込まれて吹き飛ばされた。
あの威力を受けて五体満足でいられるなんて、よほどレベルが高いんだね。
あとはっ!
「閃亢剣!」
「がっ?! あ、あぁ……」
振り向きざまに斬撃を飛ばすと、またこちらに魔法を放とうとしていた白髮の少女に直撃した。
彼女だけは他の女達よりやや防御が薄かったのか、それだけで動かなくなってくれた。
「残るは……貴女だけだよ!」
最後の一人である水色髪の女に対峙すると、彼女は更に力を上げてきた。
噴き上がる力は黒い波動となって吹き荒れ、やがて炎のように彼女の身から立ち上る。それと同時に髪が黒く、肌も褐色へと変わった。
ただ、本当に見た目だけが変わったわけじゃないようだ。
あの子から感じられる力はそれほどまでに凄まじい。
「はあっ!」
ガキィィィン
「ぐうぅぅぅぅっ! なっ、なんて馬鹿力なのっ?!」
これでも高レベル相当に力はあるはずだけど、あの女の力はそんな私を遥かに凌いでいる。その分スピードは私よりかなり遅い。
勝機を見出すにはそこしかないか。
彼女の攻撃は受けず、可能な限り回避しつつ私の攻撃だけを積み重ねていくもダメージが入っている様子がない。
「閃亢剣!」
「闇黒拳!」
私の繰り出した光の剣は彼女の放った黒い拳によって、相殺されてしまった。
それからもほんの僅かな間に交わされる超威力の攻撃の応酬。
私の繰り出す白金色の神気を纏った攻撃は全て彼女が放つ闇色の炎を纏った攻撃で相殺されていく。
いや、それでもレベルの高さがダメージに表れていた。相殺しきれずに彼女の全身は既にズタズタで立っているのも不思議なくらい。今も右足一本で立ち、右拳を握り込んでいるものの、左半身はほとんど動いていない。
ただ私も彼女の攻撃を止められずに何回か受けてしまい、それは正しく必殺の一撃ともいうべき威力だった。
それこそここに来る前にレベル上げをしてなければ耐えられ……あれ? なんでここに来るためにレベル上げしたんだっけ?
……ヴォルガロンデに会う?
違う。
その準備も含めて、確か……そう、結婚式……っ?!
「ユーニャ!」
私は目の前でボロボロになっていた最愛の人の名前を叫んだ。
これで何度目だろうか、ユーニャと本気で殴り合いをするのは。
「ユーニャ! 私だよっ! セシルだよ!」
「……セ、シル……? セシル……っ?! セシル!」
良かった。
ユーニャも正気に戻ったみたい。
『全力』スキルが解除されてユーニャが褐色肌からいつもの真っ白い身体に戻っていく。
私たちは血塗れになりながら互いの身体を抱き寄せると求め合うように頬を擦り合わせた。
やっぱり、ユーニャは本当に特別に、好き。
まるで心と心が、いや魂同士が結びつくかのように彼女を求めてしまう。
「ごめんね……私、またセシルをこんなに……」
「私こそだよ。でも……取り返しがつかなくなる前で良かった……」
もう少しで金光剪まで使うところだったし。
けど……一体何が起きたの?
結婚式、結魂式、血痕式……かつて結婚システムのあったMMOではみんなやってましたね。結婚式後にPVPを。
新郎新婦同士とか、新郎新婦vs招待客とか。




