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第516話 準備準備!

コミカライズもよろしくお願いします!

 今作っている装飾品はあくまでもウェディングドレス用なので、普段使いというか正装……主に全力戦闘をする時とはまた違う装いにしたかった。

 一応私の分だけでなく奥さんたちの装飾品にはヴォルガロンデの技術を使って魔石化、非常に多くのMPを注ぎ込んで『硬化』を付与したからよほどのことが無ければ壊れないはず。

 ちなみに私が全力で攻撃してようやく毛ほどの筋が入るくらいの傷をつけられた程度には強度がある。

 これならこの世界で彼女たちの装飾品を破壊出来る人なんていないはず。


 ということで、自分のウェディングドレス用に装飾品を一式用意する。

 とりあえず結婚指輪には全員分のダイヤモンドを入れる。私の分はカラーレスダイヤモンドを。

 奥さんたちの指輪もそうだけど、埋込型にしているので邪魔になることもない。


 そしてみんなの象徴になるような宝石を一つずつ選んでペアシェイプカットにして真ん中にはラウンドブリリアントカットにした大きなカラーレスダイヤモンドをあしらったブローチを作成する。

 サファイア、ルビー、セイシャライト、エメラルド、トパーズ、オパール、アメジストと様々なカラーの宝石を取りまとめるならやはりダイヤモンドだろう。


 右手の親指と中指、小指にも指輪を用意してプラチナで作ったチェーンでバングルと繋げられるように。

 バングルにはアクアマリンとガーネット、カボションカットのムーンストーンとラブラドライトの四つを。指輪はラウンドブリリアントカットしたグリッドナイト、ペリドット、イエローサファイア。


 ネックレスはチェーンにダイヤモンドを使ったシンプルなものにして、左手のバングルはフォルサイトを宝石のまま加工したものを用意した。


 イヤリングとイヤーカフにはアウイナイトとテニサイト……前世でのベニトアイトを使って青系統に。つまりユーニャだけは特別扱いであることを意識してみた。


 最後にシンデレラのガラスの靴を意識して、クリスタルの靴も作った。

 これはすっかり失念していたので奥さん全員分を用意する。


 自分の装飾品だけで更に三日。

 これから今度は正装用に全員の装備や戦闘スタイルに合わせた魔道具としての装飾品も作るので、もう十日くらいはかかるはず。

 この間にキュピラとネレイアには第三大陸に慣れてもらうのと、他の奥さんたちによる教育を施してもらっている。

 教育と言っても一般常識やジュエルエース家、デルポイ、学校とクランについて。

 私の目的なんかもかな。


 いやしかし本当に忙しいね。

 滅茶苦茶楽しいけど忙しい。

 宝石は見てるだけでも楽しいし癒されるし興奮するし発情……げふんげふん。そ、装飾品……アクセサリーを作るのはまた別の楽しさがある。

 これがまだ十日も続くんだよ?

 ここが天国か?

 こんなたっくさんの宝石に囲まれてキラキラ一面な日々って幸せ以外の何物でもないねぇ……最高。


「はあ……準備とはいえ楽しすぎる……ずっとこうしていたい……」


 時々装飾品を作りながらも独り言は言っていたと思うけど、やっぱり心の底から思う言葉はついつい口から零れちゃうよね。


「……だらしない顔で何ほざいとんのや……」

「ふえっ?! アッ、アイカッ?!」

「『アイカ?』やあらへんわ宝石バカのドアホセシルが」


 いつの間にかやってきていたアイカは私の正面でしゃがみ込むと大量に並べられたみんなの装飾品を見渡して大きく息を吐き出した。


「あ、良い出来過ぎて感動した?」

「作りすぎやドアホォ。盛大に呆れたに決まっとるやないか」


ゴン


「あいたっ?!」


 アイカから落とされたチョップはおでこに当たって私の意識が日常へと戻ってくる。


「もう、痛いなぁ。あーぁ、アイカが来たってことは私のアクセサリー作りは中断?」

「しゃあないやろ。セシルがおらな話が進まへんねん」

「でも私しかアクセサリー作れないけどね!」


ゴン


「いたっ。もー、だからなんで叩くのっ?」


 アイカと話しながら私は出来上がった装飾品を自慢げに見せつけたけど、そのせいでまたアイカからチョップを食らってしまった。


「なんかムカついたからやな」

「理不尽!」

「その言葉はセシルのためにあるからお返ししとくで」

「扱いひどくない?!」


ゴン


「いたいっ。もーーーーっ!」


 今度は無言でチョップが落とされた。

 いやまぁ全然痛くないけど、なんかアイカに叩かれるとつい口から「痛い」と漏れてしまう。


「遊んどらんと、はよ戻るで。どのみちまだドレスは出来へんのやし」

「はいはい……」


 よいしょとは言わなかったけれど、重くなった腰を浮かせると両手を上に上げて大きく伸びをした。


「……セシルももう歳やなぁ……」

「私まだ二十三だよっ?!」


 せやったか、とアイカはニヤリと笑って屋敷へと繋がるドアへと足を向けた。

 私もそれを見届けると屋敷の執務室へと長距離転移(ゲート)で移動した。

 執務室で目を開けるとそこには奥さんたちとアノンがいて、彼女が応接セットのテーブルに何枚もの紙を広げていた。


「やっと帰ってきた。やっぱりアイカさんにお願いして正解だったよ」


 ユーニャが呆れたように腰を手を当てて眉をハの字にして溜め息を漏らす。

 というか、ステラ以外は全員似たような仕草をしていた。


「えっと……どういうこと?」

「そもそもセシル? 一人で出掛けちゃ駄目って言っておいたのに、一人で『祭壇』に行ってたでしょ」


 ……そうだった!

 すっかり忘れてた!


「まぁあそこなら危険なことはないと思うけれど……何があるかわからないからとても心配したのよ?」

「みんな交代でセシルの様子を見に行ってたの」


 え、本当に?

 全然気付かなかったんだけど?

 私はことの真偽を確かめるためにステラへ視線を送ると、彼女はすっと目を逸らした。

 どうやら本当らしいし、ステラも様子を見に来ていたようだ。


「セシル姉、毎日会いに行ってた。覚えてない?」

「私も姉様に何度も会いに行きましたけど……話し掛けても応えてもらえず……」


 え、会いに来てたの?

 ……あれ? そういえば何日も装飾品作ってたけど私屋敷に帰ってたっけ?


「キュピラとネレイアはまだ日が浅いので私とユーニャから言い聞かせましたけれど……新しく迎えた妻に対する態度ではなくてよ?」

「う……さ、さすがに返す言葉もありません……」


 どれだけ集中してたんだろう?


「セシーリア様、せめて夜くらいは屋敷へとお戻りくださいませ。私どもも主のいない屋敷で過ごすのは寂しく思います」


 ここまで集中砲火を浴びたらさすがの私でも反省する。

 みんなに潔く頭を下げると、次からは宝石をある程度採取した上で地下の研究室で作業することを約束した。


「わかればいいんですのよ」


 ミルルだけは扇子で顔を隠して「ほほ」と笑っていたけど、みんなに心配かけたのは事実なのでしっかり改めてますとも。


「で、何かあった?」


 それはそれとして私は呼び出された用件について尋ねてみることにした。


「そうそう。イリゼとマリナから連絡があったからセシルに来てもらったんだよ」

「イリゼから……ということはヴォルガロンデのいう『上』の手掛かり?」

「手掛かり……とまでいくかどうか……ひとまずこれ」


 『これ』と言われてユーニャから手渡されたのは報告書の紙束。

 一番上の書類はイリゼのものか。

 ……どうやら第一、第二大陸と第三大陸大樹海は外れみたい。

 ただ第二大陸と大樹海には脅威度S上位の魔物がいたらしく、eggを持っている可能性があるため私に討伐してほしいと。

 ある意味探し物の一つだからちょうどいい。

 第一大陸は単なる外れだね。

 おそらく以前討伐した殲滅天使とブルーフェニックスが第一大陸最強の魔物だったんだろう。

 そういう意味では第三大陸には大樹海の魔物以外にケーヒャ首長国にいたライトニングビートルって魔物もかなり強かったっけ。

 無音で飛ぶのに初速から音速近い速度が出るうえ、外骨格はミスリルの剣ですら歯が立たないくらい高い防御力だった。

 結局は本気を出した私の方が速度は上で軽く殴ったら外骨格は無事でも中身が耐えられなかったみたいで簡単に倒せたけど。


「イリゼには私から話しておくよ。討伐には発見した眷属たちと行ってくるね」

「うん。絶対にっ、一人じゃっ、駄目だからね!」

「わ、わかったよ。約束する」


 うんうんと頷く面々を前に私は後退りながら約束した。さすがにこれを破ったら離婚とか言われかねない、よね。


「ちょうどいい機会だし、ソフィアも一緒に連れていくよ」

「お嬢様もです?」

「ソフィア嬢大丈夫?」


 キュピラとネレイアが心配そうに首を傾げる。

 言葉使いも内容も違うのに、二人の動きがぴったり揃っていて可愛らしい。


「あの子なら大丈夫よ。キュピラ達より断然強いもの」

「脅威度Sの案件か軽い連鎖襲撃(スタンピード)鎮圧の案件以外はクランハウスか複合ダンジョンにいらっしゃいます」


 クランハウスはともかく複合ダンジョンに入り浸ってるの? 私の眷属達と同じような修行中毒にならなきゃいいけど。


「最近は新しく学校に入った子とも仲良くしてるわ」

「え、何それ私聞いてない……」

「……セシーリア? 貴女しか出来ないことが多くて忙しいのもわかるけれど、ちゃんとソファイアに向き合いなさい?」

「面目ない……。ならやっぱりソフィアを連れてくよ」


 それについてはみんな揃って許可を出してくれた。

 親子水入らずとはいかないけど、遠足気分で楽しむことにしようかな。危険はあるけど。


「あとは……これは珠母組の?」

「えぇ、マリナから届いた報告書ですの」

「あぁ、帝国北部で冒険者をやってた人だね」


 割と一般的な女性冒険者らしく、男性冒険者ともいろんな意味で仲良くやりつつ情報を集めてくれていたはず。

 稀に一人寝の夜に彼女との感覚共有ではお世話になることもあるし、個人的にお気に入りの人である。

 体型はミルルに似てあまり背は高くないものの、大きなお胸と泣き黒子がチャームポイントの可愛らしい女性。そのせいかかなりモテるみたいでいろんな男性冒険者と関係を持っている。

 元はどこかの貴族から送り込まれた間者だったんだけどね。


「で、帝国北部の浮遊群島地帯にて『(きざはし)の脚』なるものを発見したものの、鍵がかかっていて中までは確認出来ず。そこで託された手紙をお送りします……。この『階の脚』っていうのが、ヴォルガロンデのいう『上』に繋がるんじゃ?」

「そう思うの。でもそれよりも先にその手紙を見てほしいの」


 チェリーに促されて一緒に添付されていた手紙を見る。

 表には何も書かれていない便箋。

 しかしくるりと裏面を検めると、そこには見覚えのある名前が刻まれていた。


「アドロノトス、先生……」

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>私の分だけでなく奥さんたちの装飾品にはヴォルガロンデの技術を使って魔石化、非常に多くのMPを注ぎ込んで『硬化』を付与したからよほどのことが無ければ壊れないはず。 >ちなみに私が全力で攻撃してようやく…
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