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第51話 お仕置きと初依頼

最近仕事で全然書けていないので、しばらくしたら少し書きためを作る日数をいただくかもしれません。

あと一週間くらいは毎日更新のペースは維持できるはずです。

 どうして腕に自信があるとこうやって無駄な争いをしたがるんだろう?

 寧ろもっと強い人ならこんなことはしないのかもしれないし、中途半端に強いものだから勘違いしてちょっかい出してくるのかもしれないけど。

 でも雰囲気からすると何か異様なものを感じる。イルーナやランドールからも感じたことのある気配。それが何なのかまではわからないけど油断はしないし、私に二度と絡んでこないようにしておきたい。


「じゃあちょっとだけ相手するね?」

「このガキ!よくもデクダをっ!」


 そんなもう倒れて動けない人の名前になんか興味ないよ。

 私は口をもごもごと動かしながら詠唱している振りを始める。イルーナから言われていた詠唱する振りをすることで本当の実力を隠す意味がある。極端に強すぎる力は頼られると同時に疎まれる危険もあるということだろうね。前世でもそういうことは人や集団問わずあったと思う。

 詠唱が終わった風に左手の人差し指を突き出すと地魔法を使い親指の先ほどの石の塊を作り出した。手で作ったピストルで石の塊は弾丸というわけだ。本来このくらいならイルーナとの特訓で作り出すまでに〇・一秒とかからない。詠唱したことで同じ魔法を連続で使うことができるわけだが彼らにとってはこの弾丸を作り出すのに数秒の時間がかかると錯覚したことだろう。

 実際には機関銃以上の速度で連射可能な上にマガジンが私の魔力なので数万発は発射できる。


「ガキのくせに魔法を使うたぁやるじゃねぇか。だがそのくらいの奴はゴマンといるんだぜ?」

「うん、知ってるよ。私の友だちも使えるからね。いいから早く掛かってきなってば。それとも怖くなったんならちゃんと『ごめんなさい』したら許してあげるよ?」

「このガキ…っ!」

「そのセリフはもう聞き飽きたよ。ほら、『ごめんなさい』は?」

「ぶっ殺してやるぁぁぁぁ!!」


 煽りに煽ってついにキレた三人組の残り二人は剣と斧を抜き放って斬りかかってきた。

 十メテルくらい離れていたところから襲い掛かってきた二人を十分引き付けてから私は魔法を唱えた。


石射(ストーンシュート)!」


パパン


 指先から放たれた弾丸は二人の眉間に正確に当たって砕け散った。

 突然の痛みに二人は突進を止めて膝をついて顔を撫でている。


「なっ?なんだ?顔に…何しやがった?」

「さぁね?それで『ごめんなさい』は?」


 実は今撃った石の弾丸はあまり強度がない。勢いよく人に当たれば簡単に砕けてしまうのは結果を見ての通り。但し相応の痛みは走る。

 立ち止まっている二人に続けて弾丸を打ち込んでいく。


「ぎゃっ!あででででででっ」

「いでぇぇぇぇぇぇっ!も、もうやべっ?!」


 顔はもちろん全身隈無く当てているため二人はかなりの痛みを受けているはず。

 痛いとか止めてとか、私が聞きたいのはそんなことじゃない。人に迷惑をかけたら謝るのが道理だ。

 私は魔法を撃つ手を止めて二人にもう一度問いかける。


「悪いことしたら謝るのは普通のことだよ。『みんなの悪口言ってごめんなさい』ってちゃんと言わなきゃ駄目だよ?」

「そ、そんなこと言えるわけ…ぎやっ」


 ちゃんと教えてあげてるのに二人は未だに抵抗するらしい。再び頭を抱えてうずくまっている二人に石の弾丸を連射していく。剥き出しになっている手や顔などは段々真っ赤に腫れてきているがお構いなしだ。こういう輩はちょっといい顔するとまたすぐ忘れて同じことをするからね。


「わかった!悪かった!俺達が悪かったって!」

「…ちゃんとした謝り方も教えたよね?」


 連射していた手を止めてうずくまる二人の側まで寄ると見下ろしたまま冷たく言い放った。これで反省しないならもう少し痛い思いしてもらうしかない。


「…わ、悪口言ってごめんなさい…」

「うんうん、ちゃんと謝ればいいんだよ。もうあんなこと言ったら駄目だからね?」

「あ、あぁ」

「返事は『はい』」

「「はっ!はいぃっ!」」


 返事まで聞いたところで私はようやく手を下ろしてニコリと微笑んだ。二人もその様子を見て力が抜けたのかその場でへたりこんでしまった。

 気付いたらギルドの周りに人集りが出来てしまっており苦笑いを浮かべながら急いでリコリスさんの元へ戻ることになった。そこそこ騒がしくしてしまったから仕方ないとはいえあまり目立つのも良くないよね。

 まったく…テンプレでお約束な展開はこれっきりにしてほしいものだよ!




 その後リコリスさんから依頼の話をいろいろ聞いたんだけど、ギルドから出るときはこっそり裏口から出させてもらったくらいで…。やっぱり子どもが大の大人を魔法で軽く捻った、なんてゴシップはいいネタになるってことなんだろうね。


 で。

 Fランクくらいになると街の外に出ての素材収集や魔物討伐が主な依頼になるとのこと。基本的には自分のランクからプラスマイナス一の範囲でしか依頼は受けられないということ。稀に名前が売れてくるとギルドからの指名依頼や依頼主からの直接依頼があるそうだけど今のランクではあまり気にすることはない。

 そんなわけで私は今森の中で野草、薬草、毒草の採集中だ。

 依頼に出ていたのは三種類だけ。回復ポーションの原料になるマナリオ草、解毒ポーションの原料のポンデミル草、魔力ポーションの原料のラーナ草。これらはいつでも依頼が出ていて十株毎に報酬が貰える。とにかく今はお金がないので私は手当たり次第に集めているところなんだけど、折角なので他の薬草、食べられる野草、取り扱い注意な毒草なんかも集めている。

 腰ベルトの魔法の鞄があるので相当な量を集めることができるのも私の利点よね。

 現時点で恐らくそれぞれ百株以上、それ以外のも含めると自作ポーションでお店が開けるくらいにはなったと思う。もちろんある程度野生の株は残しておく。そうすることでまた増えて採集することができるから。

 マナリオ草やラーナ草なんかはこの森の環境なら一週間、六日もすればまた今日回収したのと同じだけの数に戻るはずだ。

 ポーションを自作して売るのもいいかもと頭を過ったがそれは振り払った。万が一バレて大騒ぎになる可能性もあるし、自作したものは自分で使うことにしようと思う。

 森の中は注意されていた通り魔物が時折襲い掛かってきた。ゴブリンやウルフなど見慣れたものからブーボウに似た猪の魔物ややたら凶暴な熊の魔物まで。依頼の説明を受けた時に聞いていたのでゴブリンは両耳、ウルフは牙などが討伐証明として提出することで僅かながらにお金が貰えるらしい。熊と猪は解らなかったのでなるべく傷を付けないようにして腰ベルトに収納してある。さっき使った石射(ストーンシュート)を強くして心臓を一撃で貫くことで胸の部分には穴があるものの、ほぼそのままの状態にしてある。

 ちなみに猪の魔物は一体だけ自分で解体して私のお昼ご飯になっている。村では何度も解体したから猪なら割と簡単にできるようになったのは助かった。

 昔取った杵柄ってやつだよね。

 その後しばらく採集をしていたが五の鐘が遠くで聞こえたのを合図に森から出て街に戻ることにした。

 鐘の音がした方向に向かえば街に着くとわかっているのは安心できるけど、今後街から離れた場所に採集しに行くこともあるだろうから何かしら方向がわかるものを持っていたい。アドロノトス先生に相談してみようかな?




「おかえりなさいセシルちゃん。どうだった?」

「いやぁ…疲れたよぉ」


 ギルドに着いた私をリコリスさんが笑顔で迎えてくれた。

 採集自体は村でもやっていたことだから疲れないし、魔物との戦闘も二十回もしていないくらいだから疲れるほどじゃない。街に入るときの行列もギルドカードを持っていたから商人や一般人とは違いすぐに入れた。

 では何故こんなに疲れているかというと。


「ギルドの前の人集りが全然減ってなくて気疲れしちゃったよ」

「あれはセシルちゃんが自分で蒔いた種でしょ?兵士にも連絡してないし、時間かかるのは仕方ないわよ」

「むー…わかっててももやもやするというか…」

「どうせあそこまでしちゃったんだから明日には尾ひれに胸びれ、背びれまでついて噂が飛び交ってると思うわよー?よっ、有名人」

「もー、やめてよぉ」

「あはは…セシルちゃんあんなに強いのにからかい甲斐があってかわいいからついね。それで、話は戻るけどどうだった?」


 リコリスさんは椅子に座って営業スマイルを向けてくれているが今はその笑顔がちょっと憎らしい。ひとまず腰ベルトからギルドカードを出して彼女に手渡した。


「採集は慣れてるからそこそこに数は集まったんだけど魔物の解体でちょっと困ってることがあって…」

「解体かぁ…確かに慣れないとなかなか難しいのよね。このギルドにも解体専門の人がいて手数料払うとやってくれるわ。もちろん高い素材ほど手数料もかかるけどね」

「慣れるまでは勉強代だと思うことにするよ。それでどこに出したらいいの?」


 私が問いかけると彼女は笑顔のまま奥のカウンターを指差した。上にぶら下がっている看板には素材買取カウンターと書いてある。私はリコリスさんに教えてもらった通り素材買取カウンターへ向かうとそこの受付嬢に声を掛けようとして逆に向こうから話し掛けられた。


「こんにちは、セシルちゃんよね?リコリスとブルーノさんから聞いてるわよ」

「はい、今日採ってきた素材の買取をしてほしいんですけど」

「えぇ…リコリスにはあんなに親しげにしてたのに私にはなんだか他人行儀なのね」


 …このギルドのスタッフは接客業を何だと思ってるんだろう?こんなんで大丈夫なんだろうか?


「…それで素材はどこに出したらいいの?」

「もう素っ気ないわねぇ。まぁいいわ。何を採ってきたの?」

「薬草と魔物の素材だよ。カウンターに全部出すにはちょっと多いかも?」

「へぇ、セシルちゃん今日登録したのにもうそんなに集めて来たんだ。凄いねぇ?それじゃああっちの部屋で出してくれる?」


 お姉さんに指差された部屋は奥の運動場に通じている通路の途中にあるらしく「手前から二番目の右の部屋よ」と追加で案内された。

 入った部屋には机がいくつかあるだけの殺風景なもので広さだけは大学の講義室くらいはありそうだが、本当に何もない。

 でもこの部屋なら熊も猪も出して問題無さそうだね。

 私は準備をしていると思われるお姉さんを待ちながらようやく手に入るお金の使い道を考えるのだった。

今日もありがとうございました。

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