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第47話 初!冒険者ギルド

昨日は更新しなくてすみませんでした。今日の夕方くらいに更新してますので、まだでしたらそちらから、お読みください。

 リードは結局翌日の礼儀作法の授業もサボって逃げ出していたがこれも私が居場所を見つけて捕獲、先生の下に送り届ける羽目になった。予想通りといえば予想通りなので気苦労は大したことではないが。

 結局領主になるなら絶対に必要な技能なので身につけないのであれば武術も魔法も教えないと無理矢理納得させて授業を受けさせた。

 ちなみに私も当たり前のように同席させてもらいました。前世の知識に頼るだけの礼儀作法では私としても今後不安が残るためだ。

 余談として講義を受けて何度か実践も行い、ダンスをしているうちに「宮廷作法」というスキルが手に入ったので今後はかなり楽ができるのではないかと期待しているところ。

 さて。

 今日は地の日なので授業や訓練は全て休みになる。明日の光の日も同様に。リードの訓練もないことだし、私はファムさんに街に出掛ける旨を伝えると早速屋敷を飛び出した。

 ちなみにリードは現在自身のMPを上げるべく特訓中だ。最低でも補助魔法か魔闘術、それと火魔法を同時に使えるだけのMPは必要になるので彼も必死になっている。よほどあの魔法剣が気に入ったらしい。それを横目で見ながら私は初めての町見物に繰り出すのだった。




「うーん…さすがに村とは大違いで人がいっぱいだなぁ」


 先程三の鐘が鳴ったのを聞いて屋敷を出てきたのでまだお昼には早い時間だというのに街は多くの人で賑わっていた。

 大通りには店が並び、そこに入っては出ていく人も多くちゃんとお金が回っていることがわかる。大通りから少し外れた明るい道は露店が並びそこかしこから美味しそうな匂いがしている。余計なお金を持っていたらあっという間に散財してしまいそうなほど強烈な誘惑だ。とは言え前世の縁日のような多様さはなく殆どが肉串だったり果物だったりというのは些か面白みに欠ける。

 尤も、今の私はまだ給金を貰う前なので実はお金が無かったりするんだけどね。

 お金がないのに街に来た理由?

 もちろん冒険者ギルドに行くために決まってる。どんなところか興味があるしね。

 そんなわけで朝ファムさんから聞いた道を辿りながら目的地を目指してひたすらに進んでいる。領主館は街の一番奥にあるので街の入り口すぐにある冒険者ギルドは結構離れていることになる。走っていけばすぐではあるものの折角の異世界の町なのだし、散策しなくては勿体ない。

 そんな風に街のあちこちをキョロキョロと見回しながら歩いていると街の門まで到着した。門の向こうでは街に入ろうとする人の行列ができていて後ろの人など街に入るまでかなりの時間を要するのではないだろうか。

 私も一度町を出てしまえば身分証がないのであの行列に並ばないといけなくなる。今はナージュさんに頼んで身分証を発行してもらっているところだ。

 門から少し離れたところには宿屋が立ち並ぶ一角があり、その更に奥には飲食店が並んでいる。飲食店と言えば聞こえはいいが所謂酒場、飲み屋というものだ。お金のない人達からガラの悪い人、収入の入ったばかりの冒険者達が集まる場所で情報収集の場としての役割もある、とランドールから聞いたことがある。

 そしてその酒場が集まってる一角の中に冒険者ギルドはあった。なるほど、冒険者達が依頼を終えて得た金を巻き上げるにはうってつけの立地だね。

 私は冒険者ギルドの前まで来ると一度自分の服装などを見直してからドアを開けて中に入った。

 中に入ると思ったよりも人はおらず、打ち合わせ用と思われるテーブルがいくつか。受付だろうか壁際にカウンターが並び、全部で八カ所ある。入り口のすぐ近くに掲示板があってそこには今出されている依頼が貼り出されているが数はあまりない。

 ひょっとしたらここの冒険者ギルドはあまり栄えてないのだろうか?


「いらっしゃい、可愛いお嬢さん。ここには依頼で来たのかな?」


 中に入ってあちこちを見回していたからかカウンターから一人の女性が出てきて声を掛けてきてくれた。どうしたらいいか分からなかったので非常にありがたい。

 女性は濃い茶髪を胸のあたりまで伸ばしていてるが受付という職業のためか汚れている感じはしない。領主館での石鹸を見ていればわかるが、この長さの髪をここまで綺麗にしておくのはなかなかに大変な苦労があるのではないだろうか。そして受付の女性達と同じ服に身を包み優しそうな顔と声の持ち主なので、これは男性からのアプローチもすごいんじゃないかな。ちなみに胸は並くらいだと思う。制服のせいで体型がわかりにくいせいだ。ファムさんみたいに暴力的なメロンでないなら私としても友好的にしておきたいと思う。もちろんファムさんは可愛らしい女性だし優しいのでとても仲良くさせてもらっているけどね。昨日は私の作ったシャンプーで髪を洗ってあげたし。


「依頼じゃなくて冒険者になりたくて来たの。どうやったら冒険者になれるの?」

「え?…お嬢さんみたいな可愛い子が冒険者に…?」


 膝を折ってしゃがみこんだ姿勢で下から見上げるように私を見ていた女性は私の言葉に目を見開いた。

 確かに私は八歳なのでこんな小さな女の子が冒険者になりたいなどと普通は有り得ないのかもしれない。


「ぎゃっはっはっはっはっ!お嬢ちゃんみたいな小っこいのが冒険者になるったぁ笑わせるぜ!」

「お、おいあんまり笑ってやるな、よ…ぷっ、くくく…」

「お嬢ちゃん、悪いこた言わねぇから家に帰ってパパとママに怒られてきな。今ならまだ家出したとしてもそんなに怒られてねぇで済むだろうよ」


 ついでに周りからの野次も飛んできた。

 さっきまでギルド内のテーブルについていて打ち合わせをしていたと思われる一団だ。

 実際こんな歳の子が冒険者になるなんて言い出したら笑われるのもわかる。彼等はひょっとしたら毎日命懸けで依頼をこなしているのかもしれないのだし。でもまだ笑ってるのを見るとさすがに少しイラっとする。

 しかしここまで見事なテンプレを聞かされるとは思わなかったので、イラっとはしたものの逆に落ち着いてもくるというものだ。


「で、お姉さん。どうしたらいいの?」

「あ、あのね?あっちのおじさん達が言うのも本当のことだと思うよ?冒険者って危ないお仕事だから怪我したりひょっとしたら死んじゃったりすることもあるんだからね?」

「おいおい、おじさんはひでぇよ。おらぁまだ三十四だぜ」

「けっ、十分おっさんだろうがよ。お嬢ちゃん、リコリスちゃんの言うこと聞いて冒険者になるなんてやめときな。怪我じゃ済まねぇことだってあるんだぜ?ありゃあ俺がまだ駆け出しのこ…」

「出た出た。お前のいつもの話。長ぇんだからやめろって」


 しっかし煩い外野だね!

 そしてこの女性の名前はリコリスさんって言うんだね。今後もお世話になるかもしれないし、覚えておこう。


「怪我しちゃうのも死んじゃうのもわかるけど、大丈夫だよ。私強いから」

「…はぁ…止める気はないのね?」


 彼女はとても大きな溜め息をつくと最終確認と言わんばかりにもう一度私の登録を止めに入る。もちろん私の返事はyesだ。止めるつもりはない。

 その問いに大きく頷くと彼女は「わかったわ」とだけ言ってカウンターの奥に入っていった。


「おいおい本気かよお嬢ちゃん?」

「加入審査でいきなり泣かされても知らねぇぞぉ?」


 ん?加入審査なんてあるの?さすがにそれは知らなかった。

 リコリスさんが戻るのにもう少し掛かりそうだし、折角だから親切なおじさん達に聞いてみることにする。


「ねえ、加入審査なんてあるの?」

「ん?おぉ、あるぜ。ギルド側の用意した試験官と一対一で戦って、実力を見せられたら合格だ。俺が登録するときには何ヶ月もかかったもんさ。そうさな、あれは俺がまだ成人する前のことでな…」

「だからお前ぇの話は長ぇんだって。お嬢ちゃん、今なら逃げ出してもリコリスちゃんだって何も言わねえ。あの子には俺達から怖くなって帰っちまったって言っとくからよ。な、怪我しねえ内に帰りな」


 野次と冷やかしだけのおじさん達かと思ったら予想以上に親切な口の悪いだけのおじさん達だったようだ。私のことを心配してくれる優しい彼等に大きく頷くとぐっと両手で握り拳を作ってみる。


「大丈夫!私は村では一番強かったんだもん!」

「…はぁ。一応聞くだけは聞いてやったからな」

「ははははっ!はっ!げほっ、ごほっ!」

「笑いすぎだ馬鹿野郎」

「はは…いいねぇ。若い時は無鉄砲なのが売りじゃねぇか。よし、お嬢ちゃんが合格したら登録料は俺が出してやるぜ!」

「おいおい…。じゃ俺は駄目だったときに回復魔法使ってくれる奴に当たりをつけといてやるよ」


 いちいち口が悪いのに親切な人達だね。尤も、試験官がアドロノトス先生みたいな達人だったら私もお手上げかもしれないけどさ。

 そして彼等は私が合格するかどうか賭けまで始めてしまった。もう放っておこう。それに合格したら登録料払ってくれるパトロンまで見つけたんだから良しとしなきゃね。


 しばらくしてリコリスさんが奥から出てきた。その表情は明らかにいなくなっていて欲しかったようにガッカリしたものだった。


「それでは準備ができましたのでこちらへお越しください」

「はい」


 私は彼女に促されてカウンター奥の扉へ向かった。奥は長い通路になっており、抜けた先が明るくなっているところからそこそこ広い運動場のような場所に繋がっているのかもしれない。


「なあリコリスちゃん。今日の試験官って誰なんだ?」

「今日…というより今回の試験官はブルーノさんですよ」

「なっ?!うわマジかよ…こりゃ絶対無理じゃねぇか。畜生、不合格の方に賭ければよかったぜ…」


 なんか後ろで話してるようだけど、そのブルーノさんって人は相当な手練れと見ていいのかな?もしそうならそれなりに力を出して戦った方がいいのかもれない。念の為向かい合ったら鑑定しておくことにしようかな。

 通路を抜けるとやはり野球場くらいの広さの空間に出た。どうやらギルドの裏手にある広場に繋がっていたようだ。

 そしてそこに一人佇む男性の姿。

 胸と手、足にだけ鎧を付けて大剣を杖代わりにしているその人は身長二メテル超え、全身が鍛え抜かれた筋肉で覆われた大男だった。遠くから見ているだけでも威圧感を感じる。

 なるほど、これはなかなか骨のある人っぽいね!

今日もありがとうございました。

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