第454話 訓練終了(ソフィア、リーラインステータス)
複合ダンジョンの探索は結局ソフィアが倒れたことによって中止になった。
本当は戦闘に慣れたらソフィアと同じくらいのレベルである下層まで足を伸ばすつもりだったが、今はそれどころじゃない。
「結局黒い獅子も神気の結界魔法で閉じ込めたら消えちゃったしね」
「うむ。わからないことだらけなのだ」
「ソフィアも倒れちゃったけど、翌朝にはいつも通りだったし……まぁ、あのステータスには驚いたけど」
「それも含めての調査なのだ」
私は持ち帰ったヴォルガロンデの資料を片っ端から漁っていた。
神の祝福に関する資料を見つけるためだ。
特に試練に関するものについて。
たださすがに数千冊もある資料の中から見つけ出すのは骨が折れる。かと言ってメイド達には秘密にしたい内容だし、パートナー達はそれぞれが忙しい。
なので。
「御当主様、こちら調べ終わりました」
「お師匠様、私も終わりました」
「ご主人様、調査済みの資料は系統別に分けておきました」
イリゼ、レーア、ラメルに手伝ってもらって調査している。
凄く助かるけど三人とも可愛すぎてたまに見つめてしまうのが難点だね。
それでも私一人でやるよりも遥かに効率的に調査は進み、既に半分近くは整理を終えている。
「ありがとう三人とも」
ラメルの超級解析で本の中身が全部わかればいいのだけど、そこまでの能力はない。というかそんなスキルなんてないとメルから言われたので、こうして一冊ずつ調べてるわけだけど。
「ソフィア様のため、ひいては御当主様のためですから当然です」
イリゼの涼やかな微笑みにただ感謝するしかない。他の二人も同じだろうし、終わったら何かご褒美あげなきゃね。
「お師匠様っ! こちらですわ! ここに神の祝福の試練について記載がありますのっ!」
新しく本を開いていたレーアが叫びながら私の隣へとやってきた。
私も持っていた本を閉じて脇に置くとレーアと一緒に内容を確認していく。同時に他の二人も顔を寄せてきた。
「ほぉん? つまり『神の祝福』の『試練』で戦わなアカンやつは倒しても問題あらへん、ちゅうことやな」
「私がやったみたいに行動不能にするのも有効みたい」
「それが出来るのはお前だけだろう」
私はイリゼ達を伴ってクドーの離れへとやってきていた。
調査結果をアイカ達とも共有して意見をもらいたかったからだ。
「ただ不明な点としまして、ご主人様からお聞きした限りですとどうしてソフィア様が封印されたタレントを『解放』なされたか、です」
「今回『解放』したんは『傲慢』やったっけ?」
「そう。そしたらソフィアから黒い靄みたいなのが出てきて、黒い獅子がすぐ隣に現れたの」
「……拘りすぎやろ……」
アイカが何やら呟いていたけれど、私は何のことかわからずに首を傾げた。
「いや、なんでもあらへん。ちょっと思い当たることがあるんやけど……セシルはまたその『凶禍兆』の魔物みたいなんが出てきても対処出来るん?」
「大丈夫だと思うよ」
「ほな近い内にウチも一緒に行ったるわ」
これだけの話ですぐに何か思いつくアイカは本当に流石と言える。
私はさっぱりだし、後ろの三人も少し悔しそうだ。
「気にしないで。貴女達はちゃんとやってくれてるし、私は凄く助かってるから。アイカが特別なだけだよ」
「お師匠様……」
三者三様の仕草で私の言葉を受け止めてくれている。
しかしそれを見たアイカはやや引き気味ではあるものの楽しそうに笑った。
「あっひゃっひゃっひゃっ……女誑しの次は宝石誑しかいな。やっぱセシルといると退屈せんなぁ」
「宝石誑しって何よ。私はただ愛でてるだけだよっ」
その言葉でまた三人が顔を赤くしたのは言うまでもない。
数日後、今度はアイカとクドーを伴ってソフィアの訓練のために複合ダンジョンへと赴いた。
ソフィアは一緒に屋敷まで連れ帰ってくれた二人ではあるものの、それからはあまり関わりが無かったせいか少し緊張している。
「ほなまぁ……とりあえず、セシル。テーブル出してぇな」
「……テーブル?」
「それとお茶の用意な」
アイカが何をしたいのかよくわからなかったけれど、とりあえずは言われた通りにしていく。
四人分のお茶を用意するとアイカは徐にケーキスタンドを出してショートケーキやマカロンなんかを並べた。
「わっ、うわぁ……」
「うまそうやろ? ソフィアはどれが好きなん?」
「えっ? えっ、食べていいの?」
「当たり前やん。こないなもん出すだけ出してお預けとかせんわ」
「じゃっ、じゃあこの、ショートケーキ……」
「おっけーや」
アイカはケーキスタンドからショートケーキをトングで掴むとソフィアの前にそっと置き、自分は私の淹れた紅茶に口をつけた。
私も何をしてるかわからなかったのでアイカに倣って紅茶を一口。
クドーに至っては最初から何もせずに紅茶を飲んでいる。
「んーーーっ! 美味しいっ!」
「せやろ。このケーキはまだデルポイでも売ってへんのやで。こっちのフルーツタルトもウチの自信作なんやけどまだ食べれるか?」
「食べる!」
……あんまり甘いものばっかり食べさせて夕飯が食べられなくなるのは困るんだけど。
私も甘いものは嫌いじゃないけど流石に何個もケーキを食べられる気がしない。
その後もソフィアはアイカに言われるまま更に二つのケーキをペロリと平らげた。
「ほなもうこれで終わりにしよか」
「えーー……もっと食べたい……」
「もう四個も食べたやん。お終いや」
「やだやだもっと食べるうっ!」
パチン パチッ パチッ
ソフィアが駄々をこねるのと合わせて、先日も聞いた何かが弾けるような音が響いた。
すぐにソフィアを凝視するも今のところ特に変わったところは無く、私は警戒だけはしつつ状況を見守る。
「アカンで。そないに食べたら夕飯入らんようになるやろ?」
「夕飯も食べるもん! ケーキも食べるの!」
バチッ バヂッ バヂヂヂヂッ
音が激しくなるにつれてソフィアの顔が段々歪んできた。
焦ったような、それでいてとても攻撃的な笑みを浮かべており、優しく穏やかなソフィアの面影はどこにもない。
「お腹空いたのっ! お腹空いた! いっぱい食べたいのっ!」
「あーあー、さよか。ほな出したるわ」
アイカは面倒臭そうに魔法の鞄から追加のお菓子をテーブルの上に並べると、私に視線を寄越してきた。
そろそろ、ということだろう。
ソフィアはというと、アイカが出したお菓子を両手でそれぞれ掴みながら一心不乱に口に詰め込んでいた。
「げ、げひっ。げひいぃひぃひぃぃっ、げひひひひひっ」
あの可愛いソフィアから、まさかこんな声を聞かされるとは思ってもみなかった……。それだけで私の精神力がゴリゴリと削られる思いだ。
そして椅子に座り、両手でお菓子を掴んだまま彼女は濁った笑い声を止めた直後に呟いた。
「『暴食』……『解放』」
前回のように予め黒い靄が出ることはなく、ソフィアが呟いた途端にその小さな身体からドロリと零れるように地面に広がった。
その様子は靄ではなくまるでヘドロのよう。
「……出てきたで」
「うん。今度は、黒い、豚?」
「まるっきり豚だな。オークでもなく。だが……凄まじい殺気だ」
落ち着いているようだけど、アイカとクドーの二人でさえ冷や汗を流している。
それほどまでにあの黒い豚から感じられる気配は濃厚な殺意に塗れていた。
「セシル! また凶禍兆なのだ! 早く押さえ込むのだ!」
「わかってるよ。……ソフィア、すぐ終わらせるからちょっと待っててね」
私が意識を切り替えたことで黒い豚も何か感じ取ったのか、その身体から凶禍兆と呼ばれる黒い力を溢れさせた。
「最初から全力でやってあげるよっ!」
出力制限を解除すると同時に発動させた結界魔法を黒い豚へと向ける。
さぁ、ソフィアを返してもらうよ。
「ねぇセシルママ、私の訓練はもう終わりなの?」
「うん、一段落だね。今後はソフィア自身の戦い方を身に着けていかなきゃいけないね」
「私、自身の?」
「そう。だから今後の訓練相手はムースになるね」
アイカ達とソフィアを連れて何度も複合ダンジョンに挑み、何度となくソフィアに『解放』を使わせた。
これだけでだいたい十日くらい。それからもう十日くらい使って下層まで挑んだ結果。
ソファイア・ジュエルエース
年齢:9歳
種族:人間/女
LV:3,298
HP:1,006k
MP:2,648M
スキル
言語理解 5
出力制限 MAX
気配察知 7
魔力感知 MAX
投擲 MAX
弓 MAX
片手剣 MAX
大剣 MAX
槍術 MAX
短剣 MAX
小剣 MAX
棒術 MAX
格闘 MAX
魔闘術 MAX
交渉 3
人物鑑定 6
スキル鑑定 5
野草知識 1
鉱物知識 1
解体 1
礼儀作法 4
宮廷作法 2
ユニークスキル
炎魔法 MAX
氷魔法 MAX
天魔法 MAX
地魔法 MAX
理力魔法 2
空間魔法 3
魔人化 MAX
隠蔽 MAX
吸収攻撃無効 6
異常無効 5
ネクタル -
レジェンドスキル
魔力闊達 2
聖魔法 2
邪魔法 2
四則魔法(上級) 1
新奇魔法作成 1
解放 -
神の祝福
大罪の主
タレント
転移者
転生者
格闘マスタリー
遠距離攻撃マスタリー
魔ヲ極メル者
理ヲ修メル者
ルシファー
強欲〈封印〉
レヴィアタン
憤怒〈封印〉
アスモデウス
ベルゼブブ
ベルフェゴール
封印されていたタレントを『解放』した結果、それぞれ対応する悪魔の名前へと変わった。
それによってステータスが大幅に上がっている。
ソファイア・ジュエルエース
総合戦闘力 2,972M
総合技能 1,373k
前回見た時より総合戦闘力が千倍くらい上がっているところを見ると、ソフィアもかなり『こちら側』な子になってきたと実感出来るね。
今後は出力制限を使いながらの生活や戦闘を学んでもらわないと。
でも強くなりすぎちゃったから他の転生者クラスの子達と一緒にダンジョンに入るのは無理かもしれない。
今ならチェリーやリーラインと一緒に入るのがちょうどいいくらいかな?
リーラインも複合ダンジョンに連れて行ってスキルオーブを使わせたからそれなりの強さになったしね。
リーライン・ジン・メイヨホルネ
年齢:103歳
種族:ハイエルフ/女
LV:3,903
HP:1,016k
MP:9,243M
スキル
言語理解 8
魔力譲渡 MAX
補助魔法 MAX
付与魔法 MAX
格闘 MAX
魔闘術 MAX
宮廷作法 8
演奏 MAX
料理 8
変身 MAX
ユニークスキル
凝縮思考 5
緑の躍動 6
炎魔法 MAX
氷魔法 MAX
天魔法 MAX
地魔法 MAX
超弓技 6
超剣技 2
超槍技 1
吸収攻撃無効 MAX
異常無効 MAX
捕獲 5
錬金術 6
魔道具作成 3
レジェンドスキル
解析 6
魔力闊達 7
聖魔法 4
邪魔法 4
神聖魔法 1
四則魔法(上級) 2
新奇魔法作成 3
スキル生成 3
タレント
剣闘マスタリー
格闘マスタリー
遠距離攻撃マスタリー
魔ヲ極メル者
理ヲ修メル者
錬金術士
魔工技師
蛮勇
突撃者
憎悪
憤怒
怨嗟
こんな感じ。
一応近接戦闘も出来るようにしてるけど、基本的には魔法での戦闘と遠距離攻撃がメインになる。
そんなこんなで私の家族達の訓練や育成は一段落かな。
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