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第46話 魔法の先生と魔法騎士

すみません、投稿ボタン押したはずが押せてなかったようです。昨日丸々1日投稿してなかったようで申し訳無いです。

「そろそろリードも来る頃かの…。あの子は最近になって魔法を使えるようになったと聞くが剣以外のことに不真面目なのが困ったの」


 アドロノトス先生は椅子に座って窓の外を眺めながら呟いているが、私の心の中は今それどころじゃない。

 村にはイルーナよりも強い人がいなかったので気にしたこともなかったけど、このアドロノトス先生はそれを遥かに上回る強さを誇る。ステータスや持ちスキルだけで言えば私の方が上だけど、年齢から察する経験値は相当なものだろう。

 それに初めて他人から鑑定されたのも大きな驚きの種だ。実際何も感じなかったし、彼もそんな素振りは見せなかった。先程の話からすると隠蔽スキルのおかげで私のステータス全てを見られたわけではなさそうだけど。


「セシル先生はイルーナから魔法を習ったのかの?」

「はい、母さんから魔法の名前を教えてもらったり魔力圧縮を教えてもらいました」

「ほっほっ。それでその馬鹿げた魔力量なんじゃの。あの子もあれで普通の魔法使いよりもかなり魔力は多かった方じゃが…君はそれ以上だの」


 確かに私のMPはイルーナの凡そ70倍はある。アドロノトス先生と比べても倍はあるので常人が辿り着くのはおかしいからね。


「アドロノトス先生は私のステータスがどこまで見えたんですか?」

「名前と年齢、レベル、生命力と魔力量。あとはスキルがちょっとばかりだの。随分強い隠蔽スキルを持ってるようじゃが、スキルだけでなくレベルと生命力や魔力量も隠さんとあまり意味はないの」


 むー…確かに。スキル隠してもHPとMPが馬鹿みたいに高かったら相手は普通に警戒しちゃうよね。同じようにレベルも変えておいた方がいいのかな。

 そう思うが早いか私は隠蔽スキルを使って自身のステータスを隠す部分を変更する。簡単にできるので怪しまれない程度にするのに一分とかからない。

 ということで新しく隠蔽し直した私のステータスは以下の通り。


セシル

年齢:8歳

種族:人間/女

LV:6

HP:101

MP:11,764


スキル

言語理解 4

魔力感知 6

魔力操作 1

魔力自動回復 2

火魔法 5

水魔法 4

風魔法 4

土魔法 3

投擲 4

弓 4

格闘 3

道具鑑定 2

野草知識 3

道具知識 1


タレント

魔法使い

狩人


 これならイルーナの娘ってことで押し通せるんじゃないかと思う。


「これならどうでしょう?」

「ふむ…うん、年齢の割にスキルが多すぎるとは思うがそこは貴族様の家庭教師になるほどの実力者ということにすればいいかの」


 うんうん、アドロノトス先生のお墨付きも貰えたしこれなら大丈夫だね!

 今後冒険者として登録するときも注意するようにしないと。


「但し、世の中には解析というスキルを使う者がいるでの。他にも神の力を与えられた者などもの。そういった者達には隠蔽スキルと言えど全てを誤魔化しきれないということは覚えておきなさい」

「そんなスキルがあるんですね。わかりました、そういう人とはなるべく敵対しないように気を付けます」

「ほっほっ。こりゃイルーナよりよっぽと賢い子じゃの。リードよりよほど鍛え甲斐がありそうだの」

「あはは…っていうかリードってば今日も遅い…」

「儂もあの両親に頼まれて来ておるが…ここまで授業を受けないのであれば早々に身を引こうかのぉ」


 ちょっとリード!アドロノトス先生はすごい人なんだから勿体ないこと止めてよねっ!

 私は昨日同様魔力感知と気配察知を使ってリードを探すことにする。範囲を少し広げるだけでリードの居場所はすぐにわかった。昨日とは違って屋敷の中にいるようだけど…ここは厨房?すぐ近くにモースさんもいることから恐らく彼が今必死にパンケーキのアレンジをしているのを摘まみ食いでもしているんだろう。本当に仕方のない。


「何かリードが興味を持つようなことでもあればいいんですけど…」


 私はリードに代わってアドロノトス先生に苦笑いを向けると、彼は少し考えるように机の上の魔法書を指で叩き始めた。


トン トン トン トン


 一定のリズムで叩かれる指の音だけが部屋に響き窓から入ってくる風の心地良さもあって眠気を誘う。


「セシル先生は補助魔法は使えるかの?」

「はい、使えますよ。まだそんなに鍛えてないのでレベルは高くないですけど」

「使えれば十分じゃよ。どれ、剣を出してみてもらえるかの?普通の金属の剣ならなんでも良いでの」


 アドロノトス先生は私の腰のあたりを指差すと剣を出すようにと指示してきた。なんで私の腰ベルトが魔法の鞄だってわかったんだろ?尤も、この人に隠し事は通用しそうにないし諦めて鞄から普通のショートソードを取り出した。


「その剣に補助魔法で魔力を通してみてくれんかの」

「魔闘術とは違うのですか?」

「ほ?魔闘術まで使えるのか?ならそれで良いでの、やってみてくれんかの」


 私は言われるまま剣に魔力を通して剣自体の攻撃力を上げていく。剣が私の魔力に耐えられるギリギリまで魔力を込めようとしたところでアドロノトス先生からストップが入り、魔力を流すのを止めて次の言葉を待った。


「そしたら次は火魔法を剣に使うんじゃ。剣を内側から燃やすような感じですると良いかの」


 アドロノトス先生の言葉通りに剣に炎魔法を使おうとするが、なかなかうまく魔力が流れていかない。無理矢理やっても剣を壊すだけだし、かと言って外側からやっても意味がないんだろう。

 しばらく試行錯誤してるとふっと魔力が通り剣自体に炎魔法が発現する。すると今度は剣から炎が上がり真っ赤に燃え上がり始めた。


「うわぁ…すごい…こんなことできるんだ」


 何かのゲームで見た魔法剣というものだろうか。これで火が苦手な魔物を斬りつけたら相当なダメージになるだろう。

 私自身は全く熱くないが、アドロノトス先生は発現した炎魔法の大きさに驚いたのか魔力を使って自分の前に無色透明な壁を作っている。


「ちょっと強すぎじゃ。もう少し火力を抑えんかっ」

「え?あぁ、はいすみません」

「なんともまぁ…しかし思った通りあっという間に会得してしまったのぉ。普通は何年も修業してようやく会得できるような所謂奥義とも言える技なんじゃがの」

「あはは…すみません、理不尽で」

「何が理不尽なもんかい。そういうのを『才能』というんじゃ。火魔法でできれば他も原理は一緒だからどんな魔法でも剣を通して使うことができるじゃろう。これならリードもやる気になるかもしれぬの」


 アドロノトス先生は自分でやればよかったんじゃ?

 あぁ、ひょっとして私にも授業をしているつもりだったのかもしれないね。

 剣で使う魔法、所謂魔法剣。そのまま斬っても良し、魔力を飛ばしても良しとなるので格段に戦闘方法が広がるだろう。


「剣で使う魔法って言えば必死になるかもしれませんね!」

「そのためには補助魔法か魔闘術のどちらかは覚えて貰わんといかんがの」

「それは私も協力します」

「ほっほっ。頼もしいことじゃの。早速リードに見せてくるといい」


 私はアドロノトス先生に一礼すると駆け足で厨房に向かった。


 厨房に入ると先程感知した通りモースさんが料理している側でリードが口を出しながら「まだなのか」とせっついている。その姿だけを見れば歳相応の子どもと言えるだろう。

 今日も今日とて隠蔽スキルを使ってリードの背後に立つと、彼の正面にいたモースさんは驚いた顔をした後すぐに苦笑いを浮かべた。これからリードに起こる惨事を予想しているのか。


「楽しそうね、リード?」

「うひっ?!…せ、セシルか?い、いやこれはだな…」

「私もパンケーキ焼くの手伝ってあげよっか?」


 そう言うと先程アドロノトス先生から習ったばかりの魔法剣を彼の目の前に翳して見せた。私自身は熱くもないがこの至近距離でさっきと同じだけの魔法剣を出したら熱気だけで二人ともやられてしまうのでかなり火力を落としたものにしている。


「ちょ、ちょっと腹ごなしをしたら行くつもりだったんだ…が…。セシル、この剣はなんだ?」

「さっきアドロノトス先生から教えてもらった魔法剣だよ。すごい先生だよね、これなら私がリードに一本取られる未来なんて永遠に来なくなりそうだよ」

「なっ?!…そんなことあってたまるかっ。モース、僕は行くぞ!試作品が出来上がったら僕にも食べさせろ」


 私が魔法剣の魔力を消して腰ベルトに収納するのとリードが授業を受ける部屋に向かったのは同時だった。

 残されたモースさんは相変わらずの苦笑いで私を見ている。


「セシル様はリードルディ様に厳しいですなぁ」

「これでも私はリードの家庭教師ですから。それじゃ私も行きますね」


 軽く言葉を交わした後、モースさんには何も言わずにその場を立ち去ることにした。彼にリードに対して授業に行けと言わせたくとも彼にはその権限がない。場合によっては不敬と取られてしまってもおかしくはないのだ。なので今回の件も私からは何も言わず、ただパンケーキのアレンジがうまくいくことを祈るのみ。


 部屋に着くとリードはアドロノトス先生からネチネチと嫌味を言われているところだった。

 曰く、「こんな老いぼれの教える魔法などつまらんかのぉ」「リード坊ちゃんは私が教えるまでもなく十分お強くなれるでの」「そもそも遅れてやってくるやる気がないのではのぉ」等々。リードもその都度言い訳をしているが、実際サボっていたのは彼なので立場は悪い。しかしアドロノトス先生の一言に突然噛み付いた。


「これならまだセシル先生により高度な魔法を教えた方が儂も面白味があるでの」

「っ!駄目だっ!セシルにこれ以上強くなられたら僕が困るんだ!」

「…リード?」


 私が部屋に入ってきていたことに気付いていなかったリードは今の怒声を聞かれたことが余程恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「ふむ…。それだけやる気があるならもう少し儂も授業を続けようかの。しかし、授業の合間にはセシル先生にもいろいろと魔法を教えることにしたでの。悔しかったら必死に勉強するしかないの」


 あれ?いつの間にそんなことになったんだろう?

 私がいない間にまた話が勝手に進んでいた、というよりアドロノトス先生の独断だろう。無論彼から魔法を教わるのは私としても願ってもないことなので大歓迎だけど。

 リードは魔法、武術双方の教師から必要以上に煽られて勉強、訓練していくことになる。

 いずれ王国有数の実力者となり「魔法騎士」「紅蓮剣」「赤獅子」などの異名も取ることになるのだが、それはずっとずっと先の話。

今日もありがとうございました。

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