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第433話 決闘システム

 赤竜王から聞いてヴォルガロンデの研究所がある場所の目途は付いた。

 それともう一つ。


「それと、こういう花形の装飾品を他に知らない?」

「……それは『階の鍵』か。……ふむ、どうやら今はエルフの国にあるようだな。明るい緑色の長い髪をした娘……エルフの姫のようだな」

「え、それってまさか……リーライン?」

「知り合いか?」

「まぁ……知り合いというか……私の奥さん、だよ」


 私が『奥さん』と言ったところで、赤竜王は無言で頷いた。

 何よその首肯は。


「世界にはオスとメスで番になるようシステムが組み込まれているはずだが、稀にお主のような者が生まれることも知っている。ある意味ではお主のような者が『資格』を持っておるのは僥倖かもしれぬな」

「どういう意味よ……」

「もしお主が『管理者代理』もしくは『管理者代理代行』になれば他の種族では考えられぬほど長命となるのだ。あとは言わずともわかるであろう?」


 愛した人と同じ時間を生きられない、ってことだよね。

 うん。だからこそ私はやっぱり『管理者』とかそれに類するものになりたい。その補助をする人は私と同じくらいの寿命を得ることが出来るっていう話だしね。


「まぁ良い。『階の鍵』はそのエルフの姫が持っているようだ。お主の番であれば、譲ってもらうことも容易かろう」

「わかった。それじゃ私はヴォルガロンデの研究所に行ってくる。また何かあったら訪ねてくるから」


 私の言葉に赤竜王は答えることはなく、ただ無言で見つめてくるだけだった。




 赤竜王がいた空間を抜けた私達は長距離転移(ゲート)で再びゼブロイド火山の麓まで戻ってきた。

 リーラインから階の鍵を貰うのは後でもいい。どのみちここを片付けたら一度戻って屋敷に連れ帰らないといけないんだし。


「確か東の方って言ってたか?」

「そうねぇ。二万メテルの溶岩の池っていうくらいだから空から見たらすぐわかるかしら?」

「でも山頂近くから見渡した時には見えなかったし、結構離れてるのかも」


 低い山って言ってたから他の山の影になって見えなかったってことも考えられるけどさ。

 さて、どうやって行こうか。

 私の飛行魔法は私一人にしか使えないし。昔使ってた天魔法との組み合わせで他の二人を浮かせて運べばなんとかなるかもしれないけど、あれは制御が難しいんだよね。


「私一人で飛んで探して、見つけたら長距離転移(ゲート)で戻ってくればいい?」

「ううん。お姉ちゃんにお任せよぉ」


 どういうこと、とプレリに聞き返すより早く彼女は自分とソールの身体を天魔法の風で包むとそのまま上空へと飛び立った。


「……マジか。私よりも天魔法の扱い上手すぎでしょ……」


 遥か上空へと到達している彼女達に遅れるわけにはいかないので、私もすぐに飛行魔法で空へ上がる。

 さっきの速度を見る限り、スピードもそんなに遠慮する必要は無さそうだ。


「お待たせ。プレリの天魔法はすごいね」

「うっふふ……風の扱いなら誰にも負けない自信があるのよ」


 おっとりと微笑むプレリに対し、予告無しで空に飛ばされたソールの顔は青褪めていたが……頑張れとしか言えない。


「それじゃ大きな溶岩の池を探してね。たまに飛行型の魔物もいるから下ばっかり見てちゃ駄目だよ」

「おぉよ! 任せてとけって」

「私は少しはなれたところを飛びながら探すから、見つけたら連絡を取り合おう」


 二人が首肯したところで、私はその場を離れて東へと飛び立った。

 時折襲ってくる魔物は極力簡単な魔法で撃退しつつ、その場で魔法の鞄に放り込む。

 しかしそれほど遠くはないだろうと思っていたけれど、私の考えは甘かった。

 『大陸』と呼ばれているのだからかなりの広さがある。アディス火山連峰だけでこの大陸の四分の一を占めているけれどそれだって日本の面積より広い。

 鐘一つ分ほど飛び続けたものの、代わり映えしない荒れ地、時折聳え立つ火山、そして襲い来る魔物にいい加減うんざりしてきていた。


『リーダー! あったぜ!』

『セシルちゃん、あったわよ。大きな溶岩の池よ』


 しかし前触れなく頭に響いた眷属からの通信によって私の苛立ちはすぐに解消された。

 そのまま彼女達の現在地を確認すると、長距離転移(ゲート)で移動する。

 どうやら私達の距離は三十万メテルは離れていたらしく相応のMPを消費したが、転移した先にあったのは確かに巨大な溶岩の池だった。


「二人ともありがとう。お手柄だよ」

「おぉよっ!」

「うふふっ、お姉ちゃん頑張ったわ」


 眼下に広がる溶岩は地平のどこまでも続いており、まるで世界の終わりみたいな光景だった。

 そして何よりも。


「なんか、暑い?」

「そうねぇ。セシルちゃん、熱操作はしてくれてるのよね? セシルちゃんと合流したから少しは良くなったけれど、それでも暑いわ」


 そうなのだ。

 ただの溶岩ならば私の熱操作でも充分快適に過ごせるはずなのに、今は肌がひりつくほどの熱気を感じている。

 溶岩の直上にいるわけではなく、まだ数百メテル離れているのにこの気温は明らかに異常だった。


「多分あの溶岩の池の真上はもっと暑いと思う。溶岩の直上は上昇気流が出来て熱が全部上にいくからね。普通ならプレリに気流を操作してもらえば大丈夫だろうけど……多分そうはいかないかも」

「そうなのよぉ。さっきからやってるのだけれど、うまくいかないのよねぇ」


 さすがに優秀だね。

 プレリの気流操作なら多分私より上手いはずだけど、それがうまくいかないなら別の要因があるに違いない。


「一先ずは私が氷魔法と天魔法を併用して気温を下げて近付くよ。でも危険があったら二人はここよりもっと高い場所に避難して」

「馬鹿言うなよ! リーダー置いて俺達だけ逃げるわけにはいかねぇだろ!」

「そうよ、ソールちゃんの言う通りよ。お姉ちゃんだってセシルちゃんだけを残してなんていけないわ」


 二人は私の眷属だし、私を守ろうとしてくれている。

 私もそう作ったし、私の命令には逆らえない。

 でもそれ以上に二人は私の愛する宝石達であることに変わりないのもまた事実。


「駄目だよ、これは命令だから。もし二人に何かあったら私すっごく悲しい。だから私が危険だと判断したら強制的に打ち上げる。二人はこの池から離れたところで待機すること」

「そんな!」


 私が淡々と説明したせいもあってか、プレリが必死に縋ってくる。


「……本当は今すぐにでも屋敷に戻したいの。でも私だって二人と一緒にいたいの。我が儘な主でごめんね?」

「……わかったぜ。けど、リーダーも無理すんな。俺達の主はリーダーしかいねぇんだ。リーダーがいなくなったら俺達はただの宝石になっちまうんだからな?」


 ソールが拳を強く握り締めながら、なんとか頷いてくれたのでプレリもそれに合わせるようにコクリと首を縦に振った。


「よし。じゃあいくよ」


 魔法で私達の周囲だけ気温をぐっと下げて結界魔法で包み込む。

 この周辺は乾燥しているからダイヤモンドダストが起こることはないけれど、そのくらいまで冷やした上で私達は溶岩の池の直上へと飛び出した。


「ぐうぅっ! あっつ!」

「こりゃ、ひでぇ……こんなこと、あるのかよ……」


 魔法の出力を上げて自分達を守るように気温を下げようとするけれど、それでも有り得ないほどに温度が上がっていく。

 私自身の魔法に対する抵抗性や身に着けている魔石によって炎に対して強くなっているけれど、それでもかなりの暑さ、いや熱さだ。

 一般的な溶岩の温度は千度くらいだから、私達を包む結界の外に出たら普通の人間なら即死してしまう。

 それだけ私のレベルが高いことの証明でもあるけど……。


「溶岩が、全然固まらずに、ドロドロしてる……マグマじゃあるまいし、普通じゃ、有り得ない……」


 話すだけでも一苦労。

 体力をどんどんと奪われ、気温を維持しているだけで馬鹿みたいにMPが消費されていく。


「直径、二万メテル、よね? 真ん中まで、一万メテル……湖ならそれほど、大きくはないけれど……あんまり、長く……いたくないわぁ……」

「同感、だぜ……リーダー、全力で飛ばして、さっさと島に行こうぜ」


 プレリとソールに言われるまでもなく、私もスピードを出しているけれど、あまりに早く飛ぶと小さな島だった場合に見落とす可能性がある。

 赤竜王は真ん中と言ったけれど、本当に中心にあるとも限らない。

 だから今は原付の法定速度くらいで飛行せざるを得ないのだ。

 しばらく飛行して、私達の体力もかなり削られてしまった頃、ようやくその島を見つけることが出来た。


「思ってたより、小さな、島、なのね……」

「リー、ダー……早く、行く、ぞ……」


 この二人は、もう限界かもしれない。


「二人とも、島には私だけで行くからもう……っ?! なにっ?!」


 私が打ち上げるかどうかの判断を迷っていたところ、突然すぐ近くから膨大な魔力反応を感知した。

 ゴポンと溶岩が膨れ上がったと思ったら、それはどんどん大きくなり、やがて人型に近い形へと姿を変えてきた。


「二人とも逃げて!」


 私は一気に天魔法の出力を跳ね上げると、二人を別の結界に隔離して上空へと打ち上げた。

 とてもじゃないけど、あの二人を庇いながら戦えるような相手じゃない! 二人が何か叫んでいるのが聞こえたけれど、今は目の前の溶岩人形に集中しなきゃ。

 ゴポンドポンと音を立てながら、その体は膨張を続けた。


オォォオオオオォォォオォォォッ


 音なのか声なのかわからない音を出した溶岩人形は、両手を持ち上げて私を威嚇しているようだった。

 魔力の源はやはりこの溶岩人形の中心あたりから感じる。ついでに言うと、気温はさっきよりも上がっている。

 つまりこの熱さも含めて、あの溶岩人形を倒せばヴォルガロンデの研究所をゆっくり探すことも出来る。


「暑いから、出来るだけ早く倒さなきゃね。出力制限解除」


 私の力を抑え込むためのスキルを解除して、魔力も闘気も全力で使えるようにしていく。やり過ぎるとこの辺りの地形が変わっちゃうから本当に注意は必要だけど……。

 けれど私の心配を無視して、頭の中に直接言葉が響いてきた。


---超高レベル者同士の戦闘を確認しました---

---オリジンスキル保持者同士の戦闘を確認しました---

---空間隔離。世界への破壊行為阻止解除。決闘システム起動。オリジンスキル選択権獲得戦闘へと移行します---


「はいぃっ?! 何それっ?! ちょっと、聞いてないんだけどおぉぉぉぉっ!」


 この世界にはまだまだ私の知らないことがあるらしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「どういう意味よ……」 >「もしお主が『管理者代理』もしくは『管理者代理代行』になれば他の種族では考えられぬほど長命となるのだ。あとは言わずともわかるであろう?」  ここで気付こう。 …
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