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第426話 たまにはちゃんと冒険者

 ジェイ、イリゼ、レーアと旅を続けて数日。

 私達はケーヒャ首長国へと入っていた。

 しかしこの国は国土の九割が森であり、ほぼ未開の地でもある。

 一応街道らしきものはあるけれど、レーアのゴーレム車でも時折大きく跳ねるほど道が悪い。

 周囲は木、木、木!

 さっきからずっと森を進んでるだけで景色はあまり変化がない。

 それでも我慢して揺られていると、その日の夕方頃ようやく首都へと辿り着いた。


「やっと着いたー」

「主殿、お疲れ様でござった」


 ジェイにエスコートされてゴーレム車から降りるとレーアは魔法の鞄にまるごとそれを収納してしまった。

 なるほどゴーレムなら『物』扱いなわけだ。

 ケーヒャ首長国はそれほど人が来るようなところでもないし、夕方なので門に並ぶ人は誰もいない。

 私達はかなり町に近いところまでやってきたので、少し歩いてすぐに町に入ることが出来た。

 首都と聞けばどんな小さな国でもそれなりに発展しているかと思っていたけれど、ここはそれに当てはまらないらしい。

 町とは名ばかりの村にしか見えない。

 広さはそれなりにあると思うけれど、そこかしこに二十メテルはありそうな木が立っており夕方だというのに周囲は既にかなり暗い。


「テゴイ王国とは全然違ってあっさり中に入れたね」

「身分証の提示すら求められませんでした。普通はあり得ませんが」

「お師匠様、もう暗くなりそうですしそろそろ宿を取りませんこと? 町の探索は明日になさってはいかがかしら?」


 レーアの提案には私も賛成だね。

 私は三人に頷くと門の近くにあった割と綺麗な宿屋に入り、二人部屋を二つ取って一度屋敷へと戻った。

 翌日。

 屋敷で一晩寝た私はイリゼだけを連れてケーヒャ首長国の首都へと戻ってきていた。

 ジェイは刀が振り回せないし、レーアは歩いての散策が好きじゃないんだってさ。


「全く…二人とも御当主様になんという無礼な振る舞いでしょうか」

「あはは…まぁ私は気にしないよ」


 とりあえず何もしないのはどうかと思ったからジョーカーと一緒の仕事をさせることにしたけどさ。


「それで御当主様、本日はどうされますか?」

「テゴイ王国と違って国自体の治安はそこまで悪くないみたいだし、『ウィトラルボル』の情報を集めに冒険者ギルドでも行ってみようかと思うよ」

「かしこまりました」


 ほとんど森の中と言っていいほどの町中を歩くことしばらく、ようやく冒険者ギルドを見つけることが出来た。

 中には一般の人よりちょっと強いかなってくらいの人が四人。Bランク、Aランク程度の人が一人ずつといったところか。


カララン


 カウベルの乾いた音が響いてドアが開いた。

 すっ、と中にいた人達がこちらに目を向けてきた。しかし入ってきたのが女二人だったせいか何もなかったかのように目線を戻した。

 その中でカウンターの奥にいる男だけが動きもせずに天井に顔を向けていびきをかいていた。

 彼がこの中では一番強いし、多分ギルドマスターだと思う。ベオファウムで世話になったブルーノさんに冒険者ギルドマスターは元Aランク冒険者以上じゃないとなれないって聞いたことあったしね。


「こんにちは。ちょっと教えてほしいことがあるんだけど」


 私はカウンターにいた受付嬢へと声を掛けた。


「はい。どのようなことでしょう?」

「この森の中で水晶みたいなもので出来た木を見たことがある冒険者っているかな?」


 正確にはガラスだけれど、あまり一般的ではないしここは水晶と言った方が話は伝わりやすいと思ってだった。


「えぇ、と……それは…」


 しかし受付嬢の答えはどうも何か言い淀んでいて、折角情報を仕入れに来たのに期待出来そうにない。

 もう一度聞くために一歩踏み出したところ。


「やめとけ。それは一般人や一冒険者が手に入れられるものじゃない」


 そんなことを言ってきたのは受付嬢の後ろでいびきをかいていたギルドマスターと思わしき男からだった。

 彼はだるそうに身体を起こすと受付嬢の隣までやってきた。


「ふ、ん…。アンタ、どっかの貴族か帝国軍人かい?」

「貴方、御当主様に向かって…」

「イリゼ、下がって」


 ギルドマスターから全身を舐めるように見られた上、まるで値踏みされるような言い方にイリゼが食いついたけれど、私はそのくらい気にしない。

 今は貴族としてじゃなく、冒険者として動いているからね。


「連れが失礼。貴方の言う通りだけど、今の私は冒険者だよ。それが何か関係あるの?」

「『今の』ね…。まあいい。…さっきの話だがな、アンタの探してる水晶の木ってのは確かにある。だがそいつはこの国の首長家の敷地内にある。だから一般人や一冒険者じゃ手に入れられないのさ」

「あぁ、そういうことなんだ」

「貴重な木だからな。敷地のどこかに一本だけあって、代々首長になった者にだけ場所を教えているそうだ」

「一本だけ?」


 おかしいね?

 クドーの物質図鑑で調べた時には群生地があるって話だったのに?

 けどこの国の森林地帯はほとんどが未開の地。

 ちゃんと調べればどこかに知られていない群生地があるのかもしれない。


「わかったら、大人しく依頼をこなすか、採取でも討伐でもしておいてくれ」


 ギルドマスターはそれだけ言うと背中を向けて私達にひらひらと手を振って元の席へと戻っていった。


「…というわけなんです」

「うん。別に困らせるつもりはないよ。ただすぐに見れたらいいなって思っただけだから」


 ちょっと残念だったけど、私が探してるのは群生地であって一本だけの木を見たいわけじゃない。

 それにテゴイ王国でも貴族として立ち回らなきゃいけなかったけど、この国でも貴族として動くのは避けたい。

 折角自由な冒険者として活動してるのに王侯貴族の相手なんてしたくないよ。


「折角なので依頼を受けていかれますか? ケーヒャ首長国では他国にはないような依頼もございますよ」

「そうなの? でも私は冒険者だけど連れは同行してるだけで冒険者登録はしてないよ?」

「本来なら登録していただきたいところですが…騎士や貴族の方だとそういうこともありますし構いません」


 そう言って受付嬢はカウンターの下に置いてあった分厚いファイルを取り出すと、私達の前でページを捲り始めた。

 まぁ確かにたまにはちゃんと冒険者やるのも良いかもしれない。


「これなんてどうでしょう? 『ザウゼルク草の採取』」


 彼女が指差したのはFランク冒険者が受けるような採取依頼。

 『ザウゼルク草』なんて私は聞いたことないけど、アイカなら知ってるのかな。

 まぁそれより大きな問題があってだね?


「それだと私のランクじゃ受けられないよ」


 Sランク冒険者は指名依頼以外だとBランク以上の依頼しか受けられない。

 そんな低ランクの依頼をさせて何か重大な事件が起きたときに不在、なんてことになると責任問題にもなる。


「あ…失礼しました。ひょっとして、冒険者登録されたばかりの方でしょうか?」

「いや……これ」


 私は腰ベルトに入れていた冒険者ギルドカードを取り出してカウンターに置いた。

 虹色に光る金色のカードは世界でも多くはいないSランク冒険者の証。

 そして予想通り受付嬢は目を見開いてカードを凝視していた。


「こっ、これ?! え、Sランク…? えええぇぇぇっ!!」

「うるさっ! って叫びすぎ!」


 思わず耳を塞いで受付嬢に文句を言うと、彼女も自分の口を押さえてカードを押し出すように私へ返してくれた。

 ギルド内には他にも冒険者はいたけれど、Sランクということは聞こえていなかったみたい。


「…し、失礼しました…。オリハルコンのカードなんて初めて見たので…」

「…気をつけてね」

「けど、こんな言い方は変かもしれませんが、何故この国に? 特別な依頼を受けてるんでしょうか?」


 確かにこの大陸にいるSランク冒険者なんて二十人くらいだし、ある意味では珍獣みたいなものだ。

 ほとんどが帝国軍人で冒険者登録もしている人だけどね。一応序列もあって、トップは帝国軍大将だということは珠母組のフィアロから聞いている。

 私は四番目。

 今までの冒険者ギルドへの功績で定められているから、実力順ってわけじゃないみたい。


「特に理由はないよ。旅をしながらいろんなところを見て回っているの。で、途中で聞いた水晶の木ってものが気になってね」

「あぁそういうことだったんですね。でも、でしたら残念でしたね…」

「仕方ないよ。それで私にあった依頼はあるかな?」


 このままだといつまでも雑談が続きそうなので無理矢理にも話を元に戻した。




「御当主様、よろしいので?」

「ん? 何が?」

「あのような依頼など受けてしまわれて…。気の赴くままに探索なさった方が様々な発見があるかと愚考致しました」

「愚考なんかじゃないけど…一応あちこちで依頼受けておけば、私がそこにいたって証明になるでしょ? いつまでも王国に引きこもってるって思われたくないから」

「ですが…国王の耳に入れば余計な追求や良からぬ噂を流す者も出てくるのでは?」


 イリゼの言うこともある意味では間違いじゃないけど、じゃあ何のために私を大公なんて爵位にしたんだって話よね。


「今の私に文句を言える人はアルマリノ王国にいないよ。そういうのは全部潰しちゃったしね。…まぁ小言くらいは聞くよ」

「ふふ、左様ですか」


 涼やかに笑うイリゼを引き連れて、二人で町から出ると森の中へと入っていく。

 受けた依頼は塩漬けになっていたBランクの依頼が三つとAランク一つ。

 一つだけ採取依頼だけど他は全て討伐依頼。

 調査なんてものもあるけれど、対象を発見したら倒してしまうのだから討伐みたいなものでしょ。


「御当主様、依頼の採取物はこのまま真っ直ぐの高台の上です。討伐対象は反対側になります」

「採取だけ終わらせて魔法の鞄に入れておこうか。討伐対象はそれからだね」

「承知しました」


 イリゼと森の中を歩きながら方針を定めた後は植物操作を使いながら走り出した。

 こうやって普通の依頼をこなすのなんてすごく久し振りだからちょっと楽しくなってきちゃうね!

 そういえばアイカとクドーは研究進んでるのかな?

 アイカが行きたいって行ってたダンジョンも探すだけはしておいてあげたい。

 それに珠母組の面々は今頃どうしてるかなぁ?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >クドーの物質図鑑で調べた時には群生地があるって話だったのに?  この辺を踏み込んで質問しなかった理由が気になるかな〜?  持っている情報と違うっぽいのに、森のどこかで群生地を見かけ…
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