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第412話 今度こそ旅に出るよ!

 さて、ある程度の説明は終わらせた。

 細かいステータスは今後急速培養するから端折るとして、神の祝福を持つ転生者且つ転移者は四人。

 ジルバ 11歳男子。

 セイン 6歳男子。

 ナナ 8歳女子。

 クローディア 5歳女子。

 クローディアだけ貴族名である。彼女は取り潰しになったオナイギュラ伯爵家の三女であり、家が無くなったのは三歳の時。反逆者の汚名を着せられ家名を持っていた彼女は孤児院に入ることも出来ず、王都のスラムでなんとか生を繋いでいたところを私に見つかったというわけだ。

 あの三伯爵家を潰したのが私だと知った時には物凄く反抗してきたけど、家の悪事も知らなかったのは幸運だったね。知ってて放置してたならステラから抹殺されてたよ。


 残りの三人に関しても今後急速培養するからこの七人だけがさっきのクラスとは別枠扱いとなる。

 ちなみにアイカの神の眼については説明済みだけど、私とクドーの能力はまだ明かしてない。

 私の『経験値1000倍』とか普通にチートだし、急速培養するまでは秘密にする予定。

 当然全員レベル1から3くらいなので、これからはまず訓練だね。

 さて、四人の神の祝福だけど。


 ジルバが『平行線』。

 前世で仕事が忙しすぎて死んだからもう一人自分がいればいいのに、と思ってお願いした能力。自分と同じ能力、同じ姿で現れそれぞれ別々に活動出来る、らしい。


 セインは『変身ベルト』。

 なんの冗談かと思ったけど、神の祝福を使うと腰にベルトが現れて思った姿に変身出来る。誰かに変身する場合は対象が自分の能力よりも低い相手にしか使えないため、今まで同じくらいの年齢の子にしか変身出来なかったみたい。制限時間は三分…って、いろんな作品がゴチャゴチャになってませんかね?


 ナナは『百花繚乱』。

 シンプルでわかりやすい能力。一度見た花や植物、非常に詳細に把握している植物を地面から生やせる。薬草も毒草もMPが続く限り生産可能。


 最後にクローディアが『天気余剰』。

 どうやら前世はお天気お姉さんだったらしいんだけど、天気予報が外れたせいで殺されてしまったんだって。この能力は天候を操ることが出来るけれど全てが余剰に起こり得る。そのためパーティーメンバーや自分自身をも巻き込むかなり危険な能力。


「いやぁ…なかなかおもろい子達やな。特にナナ…やったか? この子ウチの助手に欲しいくらいなんやけど」

「それは学校での教育が終わってから、ナナと相談してみてよ」


 とりあえず転生者クラスはまた別の担任をつけたので、今はまた鑑定を弾かれた子達のクラスに来ている。

 ルイマリヤの時に思ったけど、転生と転移を経ていないと強力な『神の祝福』って得られないんじゃないかと。

 そしてそれが確信したのが今だ。


「貴方達は他の人よりもちょっとだけ優れた力を持っているの。だから冒険者となって力のない人達を助けられる人になってくれることを願うよ」


 そう告げるだけに留めた。

 残り十三人。

 彼等の能力は私達よりもガクッと落ちる。

 私みたいに経験値が増える子もいたけど倍率は二倍。

 他には『火の支配』『物質転送』『剣舞の御子』など…。はっきり言ってレジェンドスキル程度の能力も多い。

 『器用貧乏』なんて名前が酷いし、クドーのレジェンドスキル『武具自在』の完全下位互換でしかない。

 それでも神の祝福を持っていない人に比べたら強くなれると思う。

 ソフィアは転生者クラスに入れることにする。あの子の神の祝福は普通とは違いすぎるからちょっと難しい。

 それでも同年代の子ども達と一緒に過ごすことで必要なコミュニケーション能力も身につけられると思い、頑張ってもらうことにした。




 学校のことは教員達に任せ、ソフィアの様子を一週間ほど見ていたけれど特に問題は無さそうだった。


「もう、大人だからこんなこと言うのはおかしいんだけど…何かあったらすぐに呼ぶんだよ?」

「うん。ありがとうねえね。大人でも、僕たちたった二人だけの姉弟だから…頼りになる姉がいてすごく心強いよ」

「本当に、すぐ呼んでね? お祖父様やそこいらの貴族が無茶苦茶言ってきたら私がすぐに懲らしめてやるから!」


 今日はディックがイーキッシュ公爵領へ行く日だ。

 向こうへ到着後、すぐに手続きをしてこの子は正式にお祖父様の息子になり、次期イーキッシュ公爵となる。


「リーア、くれぐれも…くれぐれも! ディックをよろしくね?!」

「セッ、セシーリア様…圧が強すぎます…」

「あ、でもディックを泣かせたらリーアも懲らしめ、えぐっ?!」


 リーアの両手を握り締めながら懇願していると、後ろから首に手を回されて引き離されてしまった。


「ディック、セシルは抑えておくからもう出発しちゃって」

「せやで。もうかれこれ鐘半分はこの調子や。このままやったら今日出発できへんくなるで」


 私を抑えているのはユーニャである。

 力だけなら私よりも強いので彼女に押さえつけらると逃げられないのは夜のベッドでよくわかっている。


「うん、じゃあ行くよ。落ち着いたら手紙書くから、遊びに来てね!」

「お世話になりました」


 うー、うー! と私がうめいているのを横にディックとリーアは五人の文官と護衛である騎士達と一緒に旅立っていった。

 彼等が門から出るまで私はユーニャに押さえつけられていて、結局最後の挨拶さえまともに出来なかった。


「セシル、もうこれで会えなくなるわけじゃないんだし、落ち着いたらみんなで遊びにいこ?」

「…うん」


 あんまり一緒にいられなかったけど…あんな小さかった弟がもうしっかり大人になって、私の元から去っていった。

 嬉しいような…でもやっぱり寂しいなぁ。

 気付けばいろんなことがどんどん進んで、自分の思った通りのことばっかりじゃなくて、それでもやりたいことはちゃんとやってきた。

 そして思い出した。


「そういえば、京子だった時の年齢過ぎちゃってたなぁ…」


 みんなでディックを見送り、執務室でぼーっとしていたらそんな言葉が口から出た。


「京子? それはセシルさんの前世の名前?」

「え? あれコルいたの? っていうか私声出てた?」

「ずっといました。私の屋敷が出来るまではここで仕事するって話しましたよね?」


 そういえば、そんなことを言われたような気もする。


「セシルさんの前世は二十歳で終わってしまったのでしたね。当時も今と同じくらい宝石が好きだったのでしょうか」

「あー…まぁ好きだったけど、当時は働き始めたばっかりだったし、学生の頃は生活費と学費でバイトだけじゃ自由に出来るお金がほとんどなくてね」

「確かに、お金のかかる趣味ですからね。なら尚更今はやりたいことをなさった方が良いでしょう。その名に相応しいほどに」


 コルの言うその名とは『ジュエルエース大公』のこと。

 この屋敷に置いてあった彼のコレクションを見ればその素晴らしさ、その情熱がよくわかる。

 私も彼に負けず劣らずのコレクションを集め続けているし、既にその量も質も上回っているけどまだまだ足りない。


「そうだね。もっとキラキラした宝石に囲まれた生活をしたいよ」

「でしたら、早いところ懸念事項を何とかするために動いた方が良いでしょう。もう、大丈夫ですよ。何かあってもどうにか出来るようにしてくれているじゃないですか」


 穏やかに微笑むコルに、私は何も言えなかった。

 私自身も気付いていなかったのだ。

 私がいなくても大丈夫なのか、と。みんなのことが心配でただアレコレ動いていた、と。


「やっぱりコルの方が大人だね」

「前世ではセシルさん…京子さんの倍以上生きましたから」


 しかも会社の社長だもんね。

 海千山千の猛者とはこのことか。

 コルに任せておけばランディルナ家もジュエルエース家も大丈夫だと、自信を持って言える。


「わかった。今度こそ本当に旅に出るよ」

「えぇ。私は今セシルさんのおかげでやりたいことをさせてもらってますから、ご自身もやりたいようにやってください。だいたい、私にそんな生き方を勧めたのはセシルさんじゃないですか」


 コルと話して執務室を出ると間もなく昼食という時間だった。

 お昼を食べ終えた後、部屋に戻って旅支度を進めていく。

 けどほとんど野営用の道具は一つの魔法の鞄に詰めてあるため、新たに追加したのはほんのちょっとだけ。

 そのほとんどをユーニャに用意してもらって、もういつでも出られる状態だった。


「そやけど、学校の方はホンマに任せっきりでえぇん?」

「とりあえずはね。本格的にやる時にはノルファとエリーにお願いするんだけど、その前にダンジョンでパワーレベリングするよ」


 でも結局脅威度Sの群れだったり上位種が出てきたら私が出ないといけなくなるだろうね。

 まぁそのくらいは大した手間でもない。


「それで脅威度Sの下位の魔物を倒せるくらいになったら本格的に冒険者登録して活動してもらうよ。少なくとも一年はかかるから、それまでは自由にさせてもらうつもりだよ」

「なるほどなぁ。ほな最初に行くとこはどこにすんねん?」

「最初は西側小国群を回ってみるよ。リィンの様子も気になるしね。それからフィアロがいる帝国を回るつもり」


 西側小国群には人跡未踏の地と思われる地域がチラホラ見受けられるからね。


「じゃあ今日はちょっとだけだけど、早速出発しよっか」


 私はアイカとクドーに触れると長距離転移(ゲート)を使ってソフィアを引き取ったテゴイ王国へと向かった。

 ユラユラする空間を潜り抜けた先は相変わらずどんよりした空気が漂う町のすぐ側だった。


「よしっと…じゃあ町は寄らなくていいよね? あんまり気持ちの良いところじゃなかったし」

「ええんちゃう? どうせこの国かてそう長くないやろ」


 クドーは何も言わなかったけれど、人付き合いがそれほど得意じゃない彼が好んで町に寄りたいと言い出すわけもない。

 そんなわけで私達はソフィアの故郷をスルーしてリィンから貰った地図を広げた。


「今がここ。ここから西に行けばテゴイ王国の王都があるね。北にケーヒャ首長国。南には都市国家のオブフ国とロロイコ王国。テゴイ王国の王都から北西に行けばジェーキス魔国」

「有力なんはケーヒャ首長国やったっけ?」

「うん。それと情報が全然出てこないジェーキス魔国」

「一番えぇのは片っ端から行くことなんやけど…ひとまずリィンの様子を見に行ったらえぇんとちゃう?」

「この国の荒れようを見た以上、王都へも行き、有望な子ども達を連れて行く、というのも有りだと俺は思うが?」


 むぅ。思ったよりも意見がまとまらない。

 この三人ならある程度のことならなんとでもなると思ってたけど、よく考えたら意見も考え方も違うんだから方向性は全然別方向だった。

 さて、どうしたものか。

今日もありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >彼等の能力は私達よりもガクッと落ちる。 >私みたいに経験値が増える子もいたけど倍率は二倍。  普通ならどんな事も倍速で成長するなんて、天才なんですけどねぇ。 1000倍ェ……。 >『…
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