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第398話 久々の依頼

本年もよろしくお願いします!

 新緑の昼下がり。

 私は屋敷のガゼボでステラの淹れてくれたお茶を飲んでいた。

 彼女は私の真横に立っていて、何かとお世話をしてくる。

 屋敷内では必要ないのだけど、護衛として今日はザビーが近くに控えている。

 騎士団の隊長の一人で五番隊を任せている根暗な印象がある男性だ。

 五番隊はウチの騎士団の中で一番平均レベルが低い。多分二十くらいだったはず。

 その代わり全員が魔法関係のスキルに恵まれており、レベルが低かろうと四属性のうちどれか一つでも中位であれば入隊可能。

 そんなメンバーを束ねるザビーもまた魔法使いとして優秀である。

 炎魔法と天魔法を主軸に水魔法と土魔法、闇魔法を使うことが出来た。

 今は私のパワーレベリングを受けて全て上位スキルに成長しているし、邪魔法と聖魔法まで使える。

 一度天狗になったから精霊の舞踏会(エレメンタルダンス)で心も体もボロボロにしてあげたんだけど、それ以来非常に従順だね。たまに怯えているけど気にしない。

 そして今日はもう一人? 私の前にいる。


「あと四カ月もすればコルとディックが貴族院卒業かぁ」

「そうすればいよいよヴォルガロンデを探しに行けるのだ」


 珍しくメルを顕現させてお茶の供をさせている。


「探すけどいきなり全力で探すわけじゃないよ?」

「わかってるのだ」


 ただ、一応帝国や神聖国に派遣している珠母組のおかげで怪しいと思える場所がいくつか出てきている。

 リィンに行かせている帝国西部にある小国群にはあまり人が立ち寄らない場所も多く、そういう地域の探索は重要だ。

 フィアロからは帝国の北端で空に浮かぶ島を見たという噂があると聞かされた。これもまた普通の人が近寄れないという意味では立ち寄るべきだろう。

 神聖国には怪しい地域はあまりないらしいけど、やはり北部で空に浮かぶ島の噂はあるみたい。

 ついでに貿易で東の島々、更に東にある大陸では人間以外の種族が多数確認されている。

 そこもゆっくり行ってみたい。


「なんだかんだと言うが世界をいろいろ見て回りたいだけなのだ」

「そりゃね。特に人間以外の種族とか興味あるし」

「前にアホな貴族の家から助け出したエルフ達はどうなったのだ?」

「あぁ、あれはね…」


 私は当時のことを思い出しながらメルに話し始めた。




 今から一年半前。

 ようやく尻尾を出したオナイギュラ、オーユデック、ミントウイェの三馬鹿伯爵達を罠に嵌めて一気に殲滅させたことがあった。

 わかりやすく王国を自分達のものに出来るとかっていう虚言を信じちゃったんだよね。

 誰にやらせたか? 勿論ジョーカーだよ。彼は嘘つきの天才だと思う。

 それで三人を捕らえることなく、戦場で殺し、彼等の領地と資産は没収。

 その中に海外から違法に連れてこられた異種族がいたわけだ。その数なんと千四百人。

 私はその人達を全て集めて話をすることになったんだ。

 そういう違法奴隷の処遇を一任する権利を陛下からもらっていたからなんだけど、いざ目の前にするとあまりの多さに頭を抱えたくなった。

 そして全員と話をするわけにもいかなかったので、代表者との話し合いになった。


「突然このような席についてもらって申し訳ない。貴女方を違法に捕らえていた貴族達を処断しましたので、自由の身となられましたことをまずは説明させていただきたい」


 まずはインギスから今の状況と国王ではなく私が出てきた理由を説明させた。


「丁寧な説明に感謝する。私はここより東の大陸にあるエルフの国の王女リーライン・ジン・メイヨホルネだ。単刀直入に申し上げる。我々を元の場所に帰してほしい」

「アタシはピクシーのフェアよ! アタシ達も元の場所に戻りたいわ!」


 エルフとピクシーの代表二人が最初に声を上げたことによって残る他の種族達も同じように元の場所に帰りたいと言い始めた。

 みんながみんな『自分達が』という話をするせいで収拾がつかなくなってきていた。


「私達の国の者が本当に迷惑を掛けたことを心よりお詫び申し上げます。私もみなさんには元の場所に戻って今までの生活を取り戻してもらいたいと思っています。けれど、これだけの人数を乗せる船をすぐに用意することは出来ません。だから今から言う私の話を聞いてください」


 私から彼等に一つ一つ説明したのだ。

 私が転移出来ること、それぞれの種族が住んでいた場所の近くまでは送ること。

 但し、このことは絶対誰にも話してはいけないこと。

 それを守ってくれるなら必ず全員送り返すことと、準備が出来るまでの生活はこちらで保証すること。

 一度エルフとピクシー、そして獣人の一人を連れて海の近くまで転移したことで私の話は信じてくれた。


 それから半年もしたころには全員を元の場所に送り返すことが出来た。

 ちなみに場所の確認は大陸をあちこち飛び回り、転移も何度か繰り返してようやく目的地を見つけるという地道な作業でしたとも。




「で、その時に案内したエルフとかピクシー、獣人達はいつか自分達の町や村に来てほしいって言ってたよ」

「社交辞令なのだ。が、一回くらいなら別に良いのだ」


 元気にしてるといいんだけどねぇ。


「しかし屋敷に残ったエルフもいるのだ?」

「いるねぇ。アイカの助手になってたり私の研究室にいたりメイドしてる子もいるよ。ドワーフの男の子が二人クドーのとこでも働いてるし」


 さすがに獣人は誰も残らなかったけど。

 結局のところ、この大陸は人間ばっかりだからどうしても目立っちゃう。

 ドワーフの男の子達は鍛冶しか興味無くて屋敷からは出ないけど、エルフの子達は外に出ることもあって割と噂になってる。


「大丈夫なのだ?」

「一人で外出はさせないし、そこらのチンピラにどうこう出来るレベルじゃないよ。王都なら我が家で働いてるって言えば引っ込む人も多いしね」


 ウチの女性従業員を軟派するのは別にいいんだけど、嫌がる相手を無理矢理っていうなら私の名に賭けて制裁するよ。


「まぁそれなら良いのだ」


 メルはそれだけ言うと姿を消してしまった。

 あれは本当に管理者になることに全力を注いでほしいんだろうけど、こっちにも都合があるからね。

 私も興味はあるけど、家のことはしっかりしておきたいし、宝石だって集めたいんだから。


「セシーリア様」


 やれやれと思っていたところへザビーから声が掛かる。

 私の方でも把握していたけれど、客が来たようだ。

 今日は来客予定なんてなかったのにね。


「はぁ…仕方無いね。ザビー、ちょっと行って連れてきてくれる?」

「わかりました」


 ザビーはローブを改造したマントを翻して門へと向かって歩き出した。

 今来た人が無理に屋敷の敷地内に入ってきたら問答無用でリビングアーマー達に不審者として処理されちゃうからね。


「よろしいのですか?」

「ゆっくりしたいっていう私の予定は狂っちゃうけどね。でもかなり慌ててるみたいだし、話くらいは聞いてあげなきゃと思って」


 しばらくしてザビーが連れてきた二人を前に立ち上がることなく、その場で挨拶させてもらった。


「ご無沙汰しています、アルマリノ王国王都冒険者ギルドマスターレイアーノ・ノミキス準男爵殿。クレアさんも久し振り」


 ギルドマスターであるレイアーノさんは貴族であるため単純に上位の貴族に対する礼をし、クレアさんは私の前で両膝をついた。


「新年の挨拶以来です。突然の訪問にも拘わらず、時間を取っていただき感謝します」

「さすがに無視は出来ない相手だからね。クレアさん、服が汚れちゃうから立っていいよ」

「…で、ですが…わかりました」


 クレアさんが立ち上がったところで私はザビーに視線を送る。

 彼は私の意図に気付き、すぐにクレアさんの服に『洗浄(ウォッシュ)』を使って汚れを消してくれた。


「とりあえず二人とも座ったら?」


 二人に椅子を薦めたけれど、なかなか座ろうとしないので半命令みたいな形で席に着かせた。

 ステラに目配せしてお茶を淹れてもらい、私からカップに口をつけてから彼等にも促した。


「それで、今日はどうしたの?」

「ランディルナ閣下にお願い申し上げ…」

「ギルドマスター、ここには私の家の者しかいないから前みたいに話していいよ。私もそんな風に畏まられると話しにくいからさ」


 なるべく笑顔で彼にそう告げたけれど、横に立つステラはあまり良い顔をしていなかった。

 それに気付いたかどうかはわからなかったけど、レイアーノさんは「このままで」と言って話し始めた。


「しばらく前にギルドに入ってきた話なのですが、ドラゴスパイン山脈にて未確認の脅威度Sの魔物が発見されました。調査の結果、我々人間に不利益を齎すものとして処分する事に決まりました」

「そうなんだ。それを私にやってほしいってこと?」

「はい」


 脅威度Sの魔物かぁ。

 ドラゴスパイン山脈は人跡未踏の地だからそういう魔物なんていくらでもいるはず。

 私も何匹かは始末している。

 ちなみに下位の脅威度Sなら我が家の騎士団でも十分対処出来る。

 なにせあそこで大繁殖しているワイバーンだって普通には凄く強い魔物だけど、我が家ではメイド達が鳥肉を狩ってくる感覚で仕入れてくる。


「ちなみに見つかったのって?」

「キリングフェンリルです。加えて未確認ですが、マーダーレオを見た者もいると」


 ん?

 マーダーレオってちょっと前にリィン達のとこに行った際何匹か始末したような?


「未確認のものまで探すつもりはないよ?」


 多分もう処理しちゃってるから、いないものを探せと言われても困る。


「勿論です。それとこれはアルマリノ王国とゼストビス帝国両国の冒険者ギルドからの指名依頼となりますので、拒否権はありません」

「それはまぁ別にいいんだけど…確認させてほしいことがある」

「なんでしょう」

「例えばその討伐依頼を私の部下にやらせても問題ない?」


 キリングフェンリル自体は脅威度Sの魔物だけど、マーダーレオより少し上くらいのものだ。連鎖襲撃(スタンピード)で倒したegg持ちのキリングフェンリルは通常の個体より遥かに強力だったしeggで強化されたから私でも簡単に倒せなかった。

 でも今回のは聞く限りだと普通の個体だし騎士団だけでやらせてみようと思う。


「問題は、ありません…。しかし相手は脅威度Sですよ?」

「それこそ問題ないよ。騎士団の隊長なら誰でも倒せるだろうし、倒せない方が問題かな。ねぇ、ザビー?」


 私は戻ってきてギルドマスターとクレアさんの後ろに立っていたザビーに声を掛けた。


「はっ。万全を期すという意味では隊長格三人もいれば十分かと」


 三人もいる?

 まぁ人選は後で考えよう。


「てことで、依頼は受けるけど討伐はランディルナ家の騎士団で行うよ。異論は認めない」


 私はそれだけ二人に告げると、早速ミオラを呼び出すことにした。

今日もありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >私はここより東の大陸にあるエルフの国の王女リーライン・ジン・メイヨホルネだ。  国際(大)問題……!!  返すだけじゃあ終われない問題を、同解決したんだ…………っ!!  なお本…
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