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第381話 カイザック復活

 そんなこんながあって、私の回復魔法なら欠損した身体も回復させることが出来るようになっていた。

 ついでにダンジョンマスター、ダンジョン、魔人薬のどれでも浄化出来る魔法も作ったし、病気の治癒が出来る魔法も覚えた。

 ただあの魔導書を読んでから、なんかちょっと体に違和感があって、何かの拍子に新しいスキルが生まれそうな気がするんだよね。

 とりあえず今は放っておこう。


「それで、どうするの? カイザックが今までと変わらずミルルに忠誠を誓って彼女を守り続けるなら、貴方の体を治してあげる」

「…だが、私は…一度何も出来ずにお嬢様を…」


 カイザックは少ない指を絡めて手を組むと、祈るようにミルルへと跪いた。


「こんな、一度は何も出来ず死にかけた者ですが…それでも、今もお嬢様のことを本気でお守りしたいと思っています。私を…お側に置いてくださいますか?」


 ミルルは体の不自由なカイザックが今にも倒れ込みそうだったので、自身もしゃがんで彼の肩を支えた。


「ありがとう、カイザック。その気持ち、確かに受け取りました」


 ミルルは私の方を向いて一つ頷くと「お願いしますわ」と彼女も私に跪いた。

 二人の思いに答えるために、私も出力を三割くらいまで上げた。


「わかった。じゃあ頼むよ、カイザック。新奇魔法 復活(レスレクティオ)


 カイザックの頭の上から光の粒がキラキラと舞い散る。

 それらは彼の失われてしまった体の部位や不調なところ、治りきっていない傷口に集まっていきより強い光へと変わっていく。

 そして光が消えていくと、カイザックが無くしてしまった手の指は元通りになり、動かしにくそうにしていた足も完全に回復させていた。


「…凄まじい、回復魔法だ…。お嬢様、これでまた…貴女様の騎士として働くことが出来ます。今後、より一層励みたいと存じます」


 カイザックの言葉に何度も頷くミルルの目からは、こらえきれなくなった涙が幾筋も流れては床に染みを作っていた。




 カイザックはその後我が家のメイド達によって身嗜みを整えさせた後、クドー作の武具を渡してミルルと共にベルギリウス公爵家に行ってもらった。

 今後はより武芸に励んでもらい、ミルルを生涯に渡って守ってもらいたいものだ。

 問題は。


「はぁ…久し振りに見たけれど、やっぱりカイザックはいい男よね…」

「あの男のどこに魅力を感じているのかわかりません。セシーリア様のお姿を見ていられれば十分ではありませんか」

「…ノルファって、そっちの趣味だったかしら?」

「セシーリア様をそのような下衆な目で見たことなどありません!」


 久し振りに再会したミオラがかつてのお熱を再発して、カイザックに入れあげてしまいそうなことだろうか。

 もういっそ恩着せがましくカイザックにミオラと結婚するよう命令してもいいかもしれない。


「ねぇミオラ? もしカイザックと結婚することになったらランディルナ家の騎士団長は退任する?」

「は? …いや、私がカイザックと結婚って…そんなことあるわけないでしょ。仮にいつか誰かと結婚するんだとしても、私はセシルに雇ってもらった恩を忘れたりなんかしないわ。貴女にクビって言われるまで働かせてもらうつもりよ?」


 実際ミオラに抜けられると困るのは騎士団長の立場くらいなものか。

 私の眷属達が目を覚ますまでは子作りを控えてもらって、彼等が目覚めたら騎士団長は誰かにやってもらってもいい。

 もしくは早急にもう一人くらいミオラやノルファと肩を並べられるくらいの実力者を雇えれば、一人欠けてもなんとでもなるだろう。

 当てがないわけじゃないしね。

 あれから我が家にもまた多くの応募があった。

 新しく騎士団を創設するに当たって警備の人員だけでは足りないからだけど、冒険者や他の町の兵士など全部で百人以上。

 その中でも冒険者ランクAの人は即戦力だから、教育(せんのう)が施された後は騎士団に入団している。

 元の能力でいえばミオラやノルファを上回る人も何人かいたし、ちゃんと我が家に忠誠を誓ってくれるなら団長や副団長の立場くらいあげてもいい。

 まぁそれも今すぐどうにかしなきゃいけない話じゃない。


「ミオラ、シャルラーン様から貴族にならないかって話あったでしょ?」

「えぇ、あったわね。けど私は女だし、これからもランディルナ家の騎士として…」

「カイザックと結婚して貴族になってよ」

「仕え…て? はあぁぁぁぁっ?! な、何言ってるのよ?! わ、私が、カカカカイザックと、け、結婚っ?!」


 分かりやすいくらいに動揺するミオラ。

 もう良い歳なんだから落ち着かないとね?


「カイザックは私とミルルから言えば逆らえないし、ミオラさえ良ければ結婚して私達のために今後も働いてほしいと思って」

「…駄目よ。結婚なんかしたら、子どもだって出来るかもしれないのよ? そうすれば騎士としての仕事なんて出来ないじゃない。普通女は結婚して妊娠したらみんな仕事を辞めるものよ?」

「我が家の福利厚生にはちゃんと『産前産後休暇』と『育児休暇』があるよ。子どもが一歳になるまでは他の人に仕事をしてもらえばいいよ」

「け、けど…」


 ミオラがハッキリしない。

 私が命令してもいいんだけど、出来れば自分の意志で決めてほしい。


「ミルルには話をしておくから、今度ベルギリウス公爵家に行って二人で話してきなって。結婚して仕事をクビになんてしないって約束するから」

「で、でも…」

「結婚するのも一つの目標だって言ってたじゃない。カイザックが不満なら他の男探してあげてもいいけど?」

「ふっ、不満なんかないわよ!」

「じゃ決まりね」


 私が言い切るとミオラは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 ノルファは我関せずでそんなミオラの様子を冷静に見つめていた。


「ノルファも結婚したいなら…」

「私はセシーリア様にお仕え出来ることが至上の喜びですので結婚などというものに興味はありません」

「…でも結婚したらお母さんも喜ぶんじゃないの?」

「母には生涯独身でセシーリア様に命を捧げることを伝えてあります。母も『命の恩人なのだから死ねと言われたら死になさい』と言っております。我が母ながら理解があって助かります」


 どんな母親よ?!

 それで本人が納得するならまぁいいか。

 歳を重ねて気が変わったら使用人の誰かと結婚するという手もないわけじゃないしね。


「いや、まぁ…私は助かるけど。気が変わったらいつでも相談してね」

「有り得ないと思いますが、セシーリア様のご厚意に感謝申し上げます」


 ノルファって本当に真面目だよねぇ。

 誠心誠意って彼女のためにあるような言葉だと思う。


「じゃ、とりあえずカイザックの件はミオラに一任するとして」

「わ、私はまだ行くって言ってないわよ?!」

「ランディルナ至宝伯として命令するから行ってきてね」

「ちょ、ひ、卑怯じゃない?! こんな時だけ貴族にならなくても!」

「こんな時もどんな時も、私はいつでも貴族だよ。とにかく、今は仕事を片付けるために騎士団本部に行くよ」


 さっきから屋敷を出て歩いていたんだよ。

 騎士団本部は旧スパンツィル侯爵家の敷地内に元々あった建物を仮設本部として使っている。

 あくまで仮設なので、すぐ隣にちゃんとした本部も作ってるし、敷地内には訓練所と寮も建設中。

 軍務大臣だったスパンツィル侯爵は武闘派らしく敷地内に騎士団本部があって、それが今の仮設本部なんだけどさすがに魔道具も全然無いような古い建物だったので新しく作ることになったんだよね。

 団員達は気にしてないみたいだけど、私は気にするしステラが管理出来ないのも困る。


「団員達は今何してるの?」

「ロジンとオズマが仕切って訓練させてるわ」

「あの二人ももうちょっとしっかりしてくれれば副団長くらいにはしてあげたんだけどねぇ」


 現在隊長格としてミオラを団長、ノルファを副団長に。リーアもディックの従者兼護衛兼婚約者として隊長格に。ロジンとオズマは騎士団をいくつかに分けた部隊の隊長にしている。

 リーアはその内外れてしまうだろうけど、ディック専属だからそれほど痛手はない。

 ただコルにも専属の護衛を就けたいのと、隊長はあと三人は欲しい。副団長ももう一人いれば安心だから…。


「あと五人くらいは隊長格と同等くらい頼りになる人がいればいいんだけど」

「入団している者の中では十人程度実力ならば問題ない者がいます。人格は…冒険者ですので、その…」

「あぁ、冒険者なら多少はね。まぁちょっと見させてもらうよ」


 ということで騎士団本部に到着した。

 外にある訓練所ではいくつかのグループに分かれて訓練に勤しんでいる様子が見える。全部で六十人くらいかな?


「ロジン、調子はどう?」

「セシーリア様! 新人達は実力別に分けて訓練させているところです。上位の連中は俺やオズマと同じくらい強いですよ!」

「へぇ。ちょっと会ってみたいから呼んでもらえる?」

「はいっ! 一番隊、訓練中断! 集合っ!」


 ロジンが声を張り上げると、訓練用の剣で模擬戦をしていたグループが動きを止めてこちらに向かって走ってきた。

 私は彼等がやってくる間に全員を鑑定しておいた。


「よしっ。初めてお会いするだろうが、こちらが我等の主人であるセシーリア・ランディルナ様だ」


 ロジンから紹介されたので私は一歩前に出て挨拶しておくことにした。


「初めまして…の人がほとんどだね。私がセシーリア・ランディルナだよ。よろしくね」

「ちょっとセシル! なんでいつも通りの喋り方なのよ?! 威厳とか見せなきゃいけないんじゃないの?!」


 私が気の抜けた挨拶をしたものだからミオラからクレームがついた。私だって何も考えずに話したわけじゃないんだけど。


「…セシーリア様はとても気さくなところがあるが主人なので決して馴れ馴れしくなどしないように」

「そんな者がいたら、私が本気で一から訓練して差し上げます」


 ロジンが追加で説明したけれど、ノルファが殺気を漏らしながら腰に下げた剣の柄に手をかけた。

 ノルファが本気出したら訓練じゃなくて粛正になっちゃいそうなんだけど?

 そしてミオラとノルファの紹介も済ませたところで、団員の一人から声が上がった。


「本当に、王国一強いのかよ?」


 お約束のイベントが始まったらしい。

今日もありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「本当に、王国一強いのかよ?」 >お約束のイベントが始まったらしい。  大体の出自が冒険者だし、セシルの戦っている所を見たことが無ければ、まあ確かめたくはありますわな。  なお冒険者…
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