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第37話 貴族との決闘?

8/5 題名追加

「何用だオスカーロ。私は貴様に入室を許可した覚えはないのだがな」


 いきなり入室してきたオスカーロという人物に対して領主様はかなりお怒りの様子。

 そもそも領主様というか侯爵様の執務室にいきなり乱入してくるってどういう神経なんだろう?


「よろしいではありませんか叔父上。私はリードの剣術指南役を突然解任されたのですよ?後任の者くらい私の目で確認しておこうと思ったまでです」

「フン、白々しい真似を。まぁいい。そこにいるセシルが貴様の後任だ。今までご苦労だったな」

「まぁ待ってください。…ふぅん…?このような平民の小娘にリードの指南役が務まるのですかな?」

「オスカーロ先生!セシルはこれでも十分な強さを持っています。お言葉ですが先生よりもつ…」

「リード」


 オスカーロと領主様の話の間にリードが割って入ろうとしたのを私は制した。余計なひと言が大きなトラブルの原因になることなんてよくあることだ。


「先生より?私よりも何だと言うのですかリードォ?」


 と思ったけど、時既に遅し。しっかり絡んできた。

 どうでもいい上にとても面倒くさい。


「それに、最近私の教えのおかげでリードはメキメキと剣の腕を上げてきています。そこへ来て突然こんな小娘が出てきて私の手柄を横取りされては敵いませんな」

「ほぅ?ではリードルディがセシルに会う前まで『この子に剣の才能はありません』と言っていたのは誰だったかな?」

「……リードの才能はまだまだ発掘している途中だったのです。私が根気良く教えていたからこそ最近になって花開いてきたのです」


 よくもまぁいけしゃあしゃあとそんなことが言えたものだね!?ほんとに呆れてしまうけど、実際この人がどのくらい強いのかは確認してみようかな?

 私はこっそり鑑定を使って目の前で未だに領主様と口論しているオスカーロのステータスを覗いてみることにした。


オスカーロ

年齢:21歳

種族:人間/男

LV:13

HP:124

MP:38


スキル

言語理解 4

魔力感知 1

熱魔法 2

石魔法 1

身体操作 6

片手剣 5

格闘 3

馬術 2

礼儀作法 1

弁明 5

詐術 4


タレント

剣士

詐欺師


 あ、これダメなヤツだ。タレントに詐欺師って…。こんなの初めて見たよ。

 一応魔法も使えるみたいだけどこれならまだユーニャの方が扱いが上手い。本当にただ使えるってだけだ。そもそも片手剣のスキルもリードと一つしか違わないし、先生って言っていられたのは主に身体操作スキルの差でしか無かったと思う。

 これで教えるのが上手いならともかくこの人は単に誤魔化してるに過ぎないし、リードの才能を埋もれさせていくだけになってしまう。さすがにそれは勿体ないしね。


「とにかく!こんな平民の小娘にリードを任せることは出来ません!即刻解雇して私の元にリードを戻してください!」


 おっとステータスを覗き見してる間に話が随分進んでしまっていたようだ。このまま黙ってる領主様とは思えないけど、ここは一つリードと同じ方法を取ってみようかな?


「それでは私の方がオスカーロさんより弱くて教えるのが下手だって言うのでしょうか?」

「…貴様。高貴なる私の名を呼んだか?無礼者めっ!おいナージュ、この者の首を即刻刎ねろ!」


 おっと、どうやら地雷をぶち抜いてしまったらしい。まぁそれも計算通りというか、ただ煽りたかっただけなんだけどね。


「オスカーロ…私の執務室でそんなことさせるわけないだろう。それにどうしても首を刎ねたければ自分でやったらどうだ?」


 領主様が視線をこちらに向けて、いつもの悪い笑みを浮かべている。これは「お前の実力を見せてもらういい機会だ」と言ってるかのようだね。もちろん私もその案には賛成だけど。


「叔父上自らそうおっしゃるということは、この小娘がどうなろうと構わないということですかな?」

「貴様にそれができるのなら、もう一度リードルディの剣術指南役に就かせてやってもいい。ただし負けた場合は諦めるんだな」

「ハッ。この私がこんな小娘如きに負けることなどあろうはずがありません。おい小娘!表に出ろ。今から私自ら貴様の首を刎ねてやる。光栄に思えよ?」


 言いたいことだけ言ってオスカーロは入口のドアから出て行った。

 私もソファから立ち上がってその後に続こうとする。


「セシル、その、すまない」

「リード?…謝ることなんてないよ。大丈夫、私負けないから」

「セシル、君のことだから万が一ということはないだろうが、君はランドールとイルーナから預かった大事な体だ。十分に注意するように」

「はい、大丈夫です。…でも『どこまで』やっていいんですか?」


 私がにっこりと若干黒い笑いを浮かべると領主様は今までで一番楽しそうなワル顔をして頷いた。


「いい顔だ。殺さない程度に痛めつけてやれ。あいつの扱いは私も面倒だったんだ。この際引導を渡してやるのも悪くない」

「承知致しました」


 私がカーテシーで礼をして退出しようとすると今度はナージュさんから声が掛かった。


「セシル、彼はあれでもザイオルディ様の甥で男爵家の跡取りだ。貴女と彼のような貴族の間には大きな壁があるのだから下手に声を掛けたりはしない方がいい」

「ナージュさん…はい、ありがとうございます。今後気を付けます」

「今後があると良いが…彼は頭に血が上ると何をするかわからないところがある。今回は決闘のような方式を取るので問題はないが、通常は貴族に逆らったらその場で打ち首にされてもおかしくはないのだからな」


 うひゃぁ。結構危ない橋を渡っていたようだ。うっかり頭が胴体をお別れしないで済むように今後は貴族相手に無茶するのはやめ…ないだろうね。「ほどほど」にしよう。


 領主様と一緒にオスカーロを追って屋敷の外に出ると運動場のような場所に案内された。どうやらここで訓練しているらしく模擬戦をするための広さもあるし、木で出来た木偶人形のようなものも置いてある。

 オスカーロはそこで既に剣を持って準備しており私が来るのを待っていたようだった。


「逃げずに来たことだけは褒めてやろう。さぁそこにある好きな武器を手に取ってここまで上がってこい」


 オスカーロが剣で差した場所には樽にいくつもの武器が入っている。彼の武器は片手剣なので私も同じ武器を持ってみた。


「これ、刃が潰してない…」

「どうした、怖じ気づいたのか?」


 さすがに私がこの剣を使ったら簡単に勝ってしまう。いや、勝つのは当たり前としても簡単にオスカーロを殺めてしまいそうだ。刃を潰したものを探してみたがここには無さそうだ。

 さて、困ったね?ただ刃を潰してあっても鉄の塊で斬りつけたら彼程度の実力だとガードの上からでも簡単に骨をへし折ってしまうだろう。

 そう思って樽を漁っているとちょうどいいものが見付かったので私はそれを手にしてオスカーロの前に歩み出た。


「……貴様、ふざけているのか?」

「ふざけてなんかいませんよ?私はこれでお相手します」

「そのような木剣で決闘などできるはずあるまいっ!さぁ早く剣を取れ!」


 そう私の選んだ剣は木剣だ。しかも訓練でかなり使い込まれたものらしく傷も多いし柄の接合部もガタガタして緩んでいる。


「それより、これは決闘なんですか?先程は私の首を刎ねるとおっしゃってましたが私は貴方の首を欲してはいませんので相応の武器を選んだに過ぎません」

「後悔するなよ…?いや、後悔などする間もないほどあっという間にその首を刎ね飛ばしてやる」


 いい具合に頭に血が上っているようで額に血管が浮き出てきそうだ。しかし煽り耐性全くないね。上位の貴族にバカにされたら家に帰って暴れ回ったりするのかな?

 私が彼の暴言をスルーしているとゼグディナスさんが私達の間に入ってきた。


「双方、言いたいことは剣で語るといい。では…はじめっ」


 ゼグディナスさんが声で開始の合図を出すと同時にオスカーロは私に斬りかかってきた。右上段に振りかぶった剣を私の首目掛けて振り下ろそうとしている。

 なるほど、剣の扱いに慣れていない人相手ならこれでも十分だろうね。でも私相手じゃそんなの避けてくださいって言ってるようなものだよ。


「取った!…なっ。がぁっ」

「遅いよ」


 彼の剣が私の首の軌道に入ってきたところで頭を下げてそれを避ける。あまりに遅いから避けるまでに少し待ってしまった。

 避けた後にカウンターで左フックをオスカーロの脇腹に叩き込んだ。そんなに強く打ってないけど隙だらけだった上に攻撃されるとは思っていなかったところへの打撃だからか、彼は脇腹を押さえてうずくまっている。その首筋にそっと木剣の剣先を当てると青い顔をして私を見上げた。


「これが貴方の持っている剣と同じものだったら既に首が落ちていましたね?」

「くっ…き、きさまぁぁっ」


 オスカーロは立ち上がると少し距離を取って剣を構えた。さっきまでの油断した態度ではなくちゃんとした剣術の構えのようだ。隙だらけなのは変わらないけれど。


「通常の試合ならこれで勝負ありだが…オスカーロ様、まだ続けられますかな?」

「当たり前だ!こんな小娘にコケにされたまま終わってたまるかぁっ!」


 本当にさっきから小娘小娘って五月蝿いなぁ。背が低いのは仕方ないじゃんか。まだ八歳なんだし。前世での話になるけどこのくらいの年齢だったら今の私の身長はそこまで低くも高くもない。

 オスカーロはゼグディナスさんより少し低いくらいだからかなりの高身長だけどね。ただあの見下してくる態度と無意味な自信で溢れた顔は好みじゃない。一般的にはイケメンの部類だとは思うけど私は嫌い。


「はあぁぁぁっ!」


 オスカーロは懲りずに再び斬りかかってきた。今度は大振りな一撃ではなくコンパクトに、それでいて鋭い突きも交えた連撃だ。

 私も避けずにその全てを木剣で捌いていく。受け流してカウンターを入れてもよかったけど攻撃が一切通じないことも解らせてあげたい。


「くそっ、なんなんだその剣は。ただの木剣じゃないのか」

「ただの木剣ですよ?こんな木の剣も切れないナマクラな剣なのか…それとも切れない程度の実力なのか、ですかね」


ブチブチブチッ


 おっと?何かが切れるような音がした気がする。

 もちろんただの気のせいだけど目の前のオスカーロの顔は怒りで真っ赤になっている。

 さすがにそろそろ終わらせてもいいかな?

今日もありがとうございました。

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