第336話 幼馴染女子三人
説明をお願いします。
口に出せばステラあたりが答えてくれるかもしれないけど、今の私の状況について理解が及ばないの。
自室のベッドでユーニャと一緒に寝るのはいつものことだ。
彼女の胸に抱かれて眠るととても心地よくて、すごく安心する。
最近は無茶なことは全然してないので、ベッドの上ではただただイチャイチャしてるだけ。
今もいつも通りユーニャの胸が私の目の前にある。
いつもと違うのは真後ろにも同じくらい大きな胸がもうワンセットあることだ。
なんでこうなったんだっけ?
あれから話を進めてミック、カンファさん、アネットを含めたメンバーで夕食を食べてから男性二人は帰っていった。
ちなみに今日からしばらくの間、アイカとクドーは留守にしている。あの二人にしか頼めない仕事だから、折角視察から帰ったばかりで申し訳ないけど少し王都から離れてもらっている。
アネットは仕事を覚えてもらうために今日からこの屋敷にいてもらうことになるから、当然残ってもらった。
昼の間にステラに頼んで部屋の用意はしてもらってある。
あとはアネットに予め渡しておいた魔法の鞄に彼女の私物があるはずだから、それを置けば引っ越しは完了だ。
引っ越しとか大きな荷物を運ぶ時には本当に便利だよね、魔法の鞄って。
「それじゃアネットはこの部屋を使ってね」
「うっわあぁぁぁぁぁ…ひっろ! 何これ! セシルって本当に貴族なんだね!」
「いつの間にかね。とりあえず、最低限の家具だけは置いたけど他に必要なものがあれば私かユーニャ、それかこっちの…」
自分の半身を後ろに下げるとちょうど私の影に立っていたステラを紹介する。
私の生活には絶対必要な彼女だけど、とにかく表にあまり出ようとしないのでしっかり紹介しないといつまでも彼女は自分のことをアネットに話さないだろう。
「この子はステラ。この屋敷のこと全ての把握してるから、わからないことがあればなんでも聞いて。この子がいないと私達の生活はままならないくらいだから大切にしてあげてね」
紹介しながらステラの後ろに回り込んで彼女の肩を掴んで一歩前に出させる。
ユーニャとはまた違う感触にちょっとだけドキっとしたけど、顔には出てないはずだ。
「わかった。けど、なんでも聞いていいの? セシルの性癖とか?」
「ちょっ?! 何を聞いて…」
「セシーリア様の性癖でしたら…」
「ストオォォォォップッ!! 何話そうとしてるのっ?!」
思わず力が入ってステラの身体を引き寄せると慌ててその口を手で塞いだ。
ステラはたまに空気読まずに無表情のまま言われた通りのことをしようとするから怖い。
「べむーびヴぁばばも…」
「いや、そのまま喋らなくていいから」
全くもう…。
ステラの口が動かなくなったのを確認してから彼女を開放すると大きく溜め息をついた。
なんか今日一番疲れたよ。
「ぷっ…。セシルがユーニャと恋人同士なのはわかったけど、他にも秘密がありそうだね。ステラ、今度はセシルがいないところでいろいろ教えてね」
「承知しました」
「承知しなくていいからっ!」
アネットに部屋を案内した後、そのままの流れで私、アネットとユーニャ、ステラの四人で浴場へやってきた。
ステラに案内させて終わりにしても良かったんだけど、幼馴染の三人でお風呂に入るのも良いよねってユーニャに言われたら私に断る術なんてない。
「アネットさん、こちらで服を脱いでいただいて籠へ入れておいてください。洗濯が終わりましたらお部屋へ運んでおきますので」
ステラがアネットに説明してる間に私とユーニャは早速服を脱ぎ始めた。
アネットも説明を受けながら服を脱いでいるのでそんなに遅れることもないだろう。
久し振りに会った幼馴染に裸を晒すことに抵抗がないわけでもないけど、今からお風呂に入ろうっていうのに恥ずかしがってたって仕方ない。
「うわぁ…昔のアネットからは想像も出来ないくらい大人っぽくなったねぇ…」
隣のユーニャは気前良く服を脱いでいくアネットを見ながらそんな感想を漏らしていた。
貴女も十分育ってると思いますよ!
ステラもかなりグラマラスな体型をしてるし、進化してなかったら私一人ものすごく浮いた体型だったと思う。
っていうか、今も十分浮いてるけどね!
これでもかなりスタイル良いと思ってるのに他の三人が凄すぎるんだよ!
「はい、お待たせぇ…って、セシルはどうしたの?」
「…なんでもない…」
「アネット、セシルは私達に比べてホラ…」
私に見えないようにユーニャはアネットの胸を指差し、その指を唇の前で立てた。
見えないようにしてても時空理術で空間ごと把握してるから丸見えだよ!
「あぁ、あんまり胸大きくなってないの気にしてるの?」
「ア、アネット! し、しーっだよ?!」
「別にいいじゃない。ユーニャはセシルの胸の大きさ物足りないの?」
「わ、私っ?! そんなわけないよ! セシルの胸はすっごく最高だよ!」
お願いしますユーニャさん、私のHPがゴリゴリ削られていくので大声出さないでください…。
彼女の力説を受けてアネットは楽しそうに笑っているけど、私は全然笑えない…。
「じゃあいいじゃない。男だって好きになった女の胸が一番だって言ってるんだし、ユーニャがそう言うならセシルの胸はそれが最高の状態ってことよ」
「おぉぉ…アネットがすごい大人だ…。あんなに小さかったのに」
「そりゃお互い様でしょうよ。それより少し冷えてきたんだけど」
「あ、そうだね。こっちだよ」
ユーニャとアネットはそのまま話しながら浴場へと入っていった。
私とステラを残して。
はぁ…。なんでこんなに慰められなきゃいけないの。
Cカップだって十分大きいんだよ。
なのに胸の大きい人が多すぎて相対的に小さく見えるっていうのは納得出来ないよ!
「セシーリア様。私はセシーリア様のお姿はとても美しいと思っております。例えるならば女神くらいしか思いつかないほどでございます。かの精霊女王ですらセシーリア様には及ばぬと断言出来ます」
「ステラ…例えが凄すぎて慰められてるのに貶されてるように思えるから、もういいよ…」
無表情のまま首を傾げるステラに服を脱ぐように言い、全裸になった彼女と二人で浴場へと入っていった。
浴場ではユーニャがアネットに魔石の使い方を説明してくれていた。
アネットのスキルには魔力操作があったし、このくらいなら問題なく使えるはずではある。
ただ商人や娼婦としてのアネットはすごく優秀だけど、この屋敷に滞在するとなるとMPがちょっと心許ないのは事実だし、そのうち『神の祝福』のロック解除を試しに使う時にアネットを連れていくのもいいかもしれないね。
実際、浴槽に入って灯りを点けたり消したりを面白がって繰り返してる内にMPがかなり減ってきてフラフラし始めてしまった。
もうちょっとやったら魔渇卒倒で倒れてしまうところだっただろう。
湯上りの水分補給に魔力ポーションを飲ませて回復させたけど、この屋敷内の魔石を下手に動かさないように注意だけはしておいた。
お風呂から出て私達は一旦それぞれの部屋に戻った。
寝る前にちょっとでも仕事を片付けておこうと思い、執務室で二つの商会から上がってきた報告書を読み込んでいた。そしてもう一つ、アネットに立ち上げてもらう予定の商会についての計画書。
一応商会の名前はもう決まっていて『ルサールカ』としている。
最初に案が出た時、アイカに決めてもらった名前なんだけど、私もよくわかなかった。
川底に宝石で出来た宮殿を作る蛙の妻で少女の姿をしていて男性を惑わす魔物…とかそんな感じだったはず。
彼女はなんであんなにマニアックな知識ばっかり持ってるんだろ。
ある意味では娼館運営を基軸に置く商会の名前としては最適かもしれない。
ひとまず王都の花街に一店舗。そっち系の魔道具や薬品、道具を扱う店と横並びにすることでそちらの売上も稼ごうという計画。
売り子には当日店に入らない子にしてもらい、その道具を売り子のお姉さんにすぐお試しすることもできるという…そんな発想を私とアイカで出した。
全員にドン引きされるっていう罰ゲーム付きでね。
コンコンコン
控え目なノックの音がしたので、私は書類から目を離さないままに返事にしておいた。
この音はユーニャだからね。
「お待たせー。ホラ、アネットも入って」
「お邪魔ぁ」
ところが入ってきたのはユーニャだけではなく、今日から屋敷に住むことになったアネットも一緒だった。
「アネット? どうしたの?」
「折角だから幼馴染三人でいろいろお話しようかと思って」
「えっへへぇ。お邪魔だった?」
「邪魔じゃないよ。すぐ片付けるから座って待ってて」
二人は寝間着姿のまま屋敷内を歩いてきて、部屋に入ってすぐソファーへと腰掛けた。
私も手元の書類を纏めるとそのまま執務机の上に置いて早速お茶を淹れてあげることにした。
魔法を使ってポットにお湯を入れるのが珍しいのかアネットがずっと私の手元を見ていた。こんな淹れ方をするのは平民どころか貴族ですらほとんどいないから確かに珍しいことに違いはない。
「はい。もう夜は冷えてきてるから二人とも寒くない?」
二人の前にカップを置くと早速一口飲み、幸せそうな溜め息を吐き出した。
「大丈夫っていうか、このお屋敷すごく暖かくない?」
「温度調整の魔石をあちこちに配置してるから年中春みたいに暖かいんだよ」
ユーニャが私に変わって説明してくれたので私からは何も言わない。
「へぇ…なんかすごいね。アタシも結構稼いでたからいい暮らししてる方だと思ってたけど、二人には負けるなぁ」
「そんなことないよ。私だってセシルと一緒にここで暮らすようになってからだもん」
「ふぅん…。じゃあいい暮らしさせてもらってる分、ユーニャはセシルにちゃんと尽くさないとね! 私もした方がいい?」
ぶっ!
アネットはニヤニヤと悪い笑みを浮かべて私とユーニャを見比べている。
「いらないからっ。私はユーニャだけでちゃんと満足してるからっ」
「セ、セシル…」
言ってから自分が何を口にしたか気付いて口元を手で押さえた。
しまった。
まんまと乗せられた。
「いやぁ…村にいた時から二人は仲良いなぁって思ってたけど、まさかこんな関係になるなんてねぇ…。ちょっといろいろ聞かせてもらおうじゃない?」
夜はまだこれからだと、言いたいかのようにアネットは魔法の鞄からワインのボトルとグラスを三つ取り出すと私達の前に並べていった。
今日もありがとうございました。
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