第293話 ローヤヨック伯爵領出発
先日ノクターンノベルの方にリクエストのあったセシルとユーニャとゴニョゴニョを投稿しました。
ユーニャの壊滅的な性癖を表現したらドン引きレベルの話になってしまいましたが……35000字程度の普段なら8話分くらいの短編になっています。
宝石好きのチート転生で検索したら出ると思います。ここにリンクを載せるのは憚られたので紹介のみです。
過激な内容なので18歳未満の方は当然読んだら駄目ですよ?
地下にある私の研究室に籠もって鐘一つくらいだろうか。
私の前には大量に獲得してきたベリルが加工されて並んでいた。
一部は原石のまま残したので、それはそれで地下一階の展示室へと並べてきた。
ここにあるのは全てルースに加工したものばかり。
「はぁ…素敵だ…。なんて綺麗なんだろう。みんなみんな大好きっ!」
それぞれが違った装い、表情見せる宝石達に愛の言葉を囁きながら加工していたのでかなり時間がかかってしまったけど、こんなに可愛いし綺麗なんだから仕方ないよね。
「はぁ…相変わらずセシルは宝石馬鹿なのだ。わっちもセシルだったから気持ちはわかるがそこまでじゃなかったはずなのだ」
「前世はお金無くて宝石なんて買えなかったけど、ここならスキルもあればお金もあるもん」
「それで歯止めが効かなくなってしまったのだ…」
なんとでも言えばいい。
メルの戯れ言よりも目の前にいる宝石達の方に目を奪われて何も聞こえない。
「それより、私はこれから楽しみたいから消えててよ」
「はいはいわかったのだ。好きなだけやると良いのだ」
呆れたメルはさっさと姿を消して地下室には静寂が戻ってきた。
ここにいて消えてる間はこちらには全く干渉してこないので安心出来る。いかに前世は一心同体だったとしてもやっぱり今は別なんだから見られたくないしね。
「てことで、追加でいろいろ作らなきゃ」
今夜は捗るよ!
欲望に染まった目でフォルサイトの塊を手にした私は自分の思い描くままにそれらを加工していくのだった。
翌朝。
「セシーリア様、おはようございます」
「うぅ…ん…。おはよう、ステラ」
カーテンから差し込む朝日に目蓋の裏を焼かれてうっすらと目を開けた。
もう秋になるけれど、この時期の朝日はやはりきつい。
昨晩は取り憑かれたようにいろいろ作っちゃったから、そのお試しをやってたら大変なことになっちゃったんだよね。
パイルバンカーの性能向上には随分驚かされて頭がおかしくなりそうだったっけ。他にもいろんな物を改良、性能向上、備品製作をしてたせいで一の鐘が鳴るくらいまで没頭してしまった。
「昨夜はかなり戻られるのが遅かったようでしたね」
「…ステラってたまに意地悪だよね」
「事実でございますので。それより朝食の用意が整っております。食堂へおいでください」
「あ、うん。わかった」
ステラに促されて上体を起き上がらせると、ベッドの上を這うように移動して床に足をついた。
「おっとっと…」
しかし足をついた瞬間にちょっとバランスを崩してフラフラと千鳥足でよろけてしまった。
「…セシーリア様…。こんなことは言いたくありませんが…いくらなんでももう少し手加減されてはいかがでしょうか…」
「違うよ! ただちょっとフラってしただけだよ!」
「そういうことにしておきます」
「…違うもん…」
昨日のメルと同じ目をしたステラに背を向けて寝間着を脱ぎ捨てていき、屋敷用の服へと着替えると今度こそしっかり立って大きく伸びをした。
「んっ………はぁ。さて、それじゃ行くよ」
「はい」
私の脱ぎ捨てた寝間着を持ったステラとは廊下で別れ、一人先に食堂へと入れば既にユーニャの姿がそこにある。
「おはよう、ユーニャ」
「おはよう、セシル」
残り三日間をこうして屋敷で過ごした私は四日目の朝に予定通りローヤヨック伯爵領都ライドング近くの森へと転移していった。
その後、一度領主館に立ち寄ってから領都内にある工房をいくつか見学させてもらった。
結論としてはこの世界の職人の腕が悪いわけではない。
あくまでも魔法に頼った文明が発達しているせいで、便利な道具がイマイチ発明されていないだけだった。
私みたいにチート全開で四則魔法(上級)でも使えれば加工だって出来ただろうけど、そんなものを使える人は世界中で見ても一握り。
となれば必然、原石のまま綺麗な宝石を身に着けていく文化で停滞し続けたということになる。
非常に勿体ない。
今回クドーに頼んだのはあくまでも加工する技術。
道具まで与えてあげるわけじゃないので、この間違いの職人達はそこから開発していくことになる。
アドバイスくらいはしてもいいとは思ってるけど、出来れば自分達で試行錯誤してほしいよね。そうすれば私が思いも寄らないような凄い加工技術が生まれたりするかもしれないから。
ちなみに、技術指導は追加することも出来るようにしてあるよ。一回で月間産出量五分追加ってことで。
それも含めた契約を改めてローヤヨック伯と詰める話し合いは順調に進み、二人とも納得した上で魔法契約をさせてもらった。
ということでアクアマリンだけでなく、他の宝石も欲しかったので青色以外にも宝石質な石が出たら優先的に貰えることになったよ。彼等にとってはアクアマリンが最優先みたいだから、私にとっても好都合。
期間も価値の低い石と見なされたために今後百年としてある。これはお互いの家が断絶しなかった場合、子孫にまで有効になる契約らしい。
私の場合は寿命って意味ではまだ生きてるだろうから、これは専らローヤヨック伯への束縛となるだろうね。
「やれるだけのことはやっておいた。あとは職人達に任せればいい」
「ありがとうクドー」
「構わん。約束の物は頼むぞ」
「うん。ちゃんと用意しておくから大丈夫だよ」
技術指導料として今回はクドーにも報酬を用意してある。
魔石としての使い勝手が良い、強力な魔物で作ったフォルサイトがお望みらしい。
この視察が終わったらユアちゃんのダンジョンでレッドドラゴンを宝石化しようかと考え中だ。
「ウチかてちゃんと働いたんやけど」
「わかってるって。約束は守るから」
アイカと約束したのは裏庭にある彼女の畑へオリジンスキル『ガイア』で『マグナ』という術を使うこと。
こっちは植物に効果があるものみたいだ。
『ゲンマ』にしろ『マグナ』にしろ二つともスキルというわけではないし、魔法でもないので便宜上術と言ってるけど、私も相変わらずよくわかってない。
使うと便利なので使ってるだけだったりする。
でもそんなものだよね。前世の機械だって、理解して使ってる人なんて極一部だったはずだし。
「ほんなら、明日にはここを出てオーユゴック伯爵領に行くいうんでおっけーか?」
「うん。そのつもりでカボスさんとも話してきたよ」
「確かオーユデック伯爵領都ウェリントンへはここから五日という話だったか」
「なら三日も見れば十分やろ」
自分で持ってきた蒸留酒が入ったボトルをショットグラスに注いでは一気に煽るアイカとローヤヨック伯から貰ったワインを瓶毎ラッパ飲みしているクドー。
二人ともそれなりに飲んでるはずだけど全然酔った感じがしない。
話していることに間違いはないので特に取り上げることもしないけど、飲み過ぎじゃない?
「ウチらは今日も屋敷に戻らへんけど、セシルは戻るんやったら遅刻せんとちゃんと来るんやで」
「大丈夫だって。ちゃんとステラに起こされるから」
「ユーニャとイチャコラして遅れんなやって意味や」
「イチャ……っ、だっ、大丈夫だよ! 最近してないもん!」
「ほおぅ…いきなり倦怠期かぁ?」
アイカに揶揄われて顔が熱くなっているのはわかるけど否定するのは止められない。
それが墓穴を掘ってることに気付いたのは一通りの事情を話してしまった後だった。
くそぅ…結局口ではアイカに敵わない。
「それにしても随分えげつないもん作ったもんやなぁ。それリーゼに言えば一般発売も出来るはずやで」
「…今度、話してくるよ…」
そうしてやたら悶々とさせられたまま屋敷へと転移させられることになった私がすぐに地下室へと籠もったのは当然の帰結だったと思う。
「ではランディルナ伯、気をつけて行かれよ」
「えぇ、ローヤヨック伯。この度はありがとうございました」
領主館前までわざわざ見送りに出てきてくれたローヤヨック伯と握手をして別れると、すぐにカボスさんの馬車に乗り込んだ。
後ろでは大きく手を振ってくれているローヤヨック伯が見え、あの姿だけでも彼の人の好さが滲み出ている。
「えぇおっちゃんやったな」
「もうアイカ、失礼だよ。すごく立派な領主様だったじゃない」
「あひゃひゃ! そうやな!」
町中だというのに気にせず幌の上で寝転がるアイカとそんな話をしながら一直線にライドングを出る。
「次の目的地はオーユデック伯爵領都ウェリントンですな」
「うん。オーユデック伯爵領ではどんな宝石が産出されるの?」
カボスさんはヴィンセント商会にいた時、各地で宝石の買い付けをしていただけあってアルマリノ王国内の宝石についてかなり詳しい。
時には他国にも行ってたみたいだし、その経験はとても助かっている。
「そうですな…。ドラゴスパイン山脈近くにある鉱山ではエメラルドが採れるね。それと山脈から流れ出る川が集まった湖の近くにスピネルかな。スピネルは平民にも手を出しやすい宝石ということもあって、あそこの領民はこぞってその池の近くで宝石を探しているよ。まぁなかなか我々の目に叶うような大きさの物は採れないようだけどね」
ほうほう、エメラルドはかなり魅力的だね。
ローヤヨック伯爵領ではいくつものベリル鉱石があったけどエメラルドはだいたいそういうところにはなかったりするから、ちょっと諦めていたんだけど、割と近くに鉱床があるみたいだ。
ひょっとしたらこの大きな山脈で人があまり行けないような場所にもまだ見ぬ宝石の鉱床が埋まってるかもしれないね。
そう思うと目の前に広がる巨大な山脈が宝の山、もとい宝石の山にしか見えなくなってくるから不思議だ。
「じゅるっ…」
おっと涎が。
「ははっ、さすがセシルちゃんだ。よぅし飛ばしていこうか!」
はりきるカボスさんに同意しつつ、馬達に補助魔法を重ね掛けしていけば元気になりすぎた馬達は私達が乗る馬車を力強く引っ張って走っていく。
さてさて、次はエメラルドとスピネルだ!
しっかり交渉するのと、鉱山でばっちり摘まみ食いしなきゃね!
前から吹き付けてくる風を心地良く感じながら、次の目的地へと心を寄せるのだった。
今日も読んでくださってありがとうございました。
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