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第278話 王妃様達がやってきた

 商人達との話から二日後。

 現在庭のガゼボでシャルラーン様とカリオノーラ様を招いてお茶会を開いている。

 ミルルとニーヤを巻き込んであげたかったけど、それだと王族の二人も友だちもどちらも緊張してうまく話せなくなりそうなので今回は遠慮した。


「あぁ…やっぱりセシーリアのところのパンケーキは最高だわ…」

「えぇ。それにこの紅茶も…まるで何十年と紅茶を淹れるために研鑽を重ねたかのように完璧なものよ」


 彼女達はステラの用意したお茶とお菓子を大絶賛中だ。

 私の後ろに控えているステラも表情は変えていないものの、心なしか誇らしげだ。


「お気に召していただき光栄です。彼女は我が家の大切な者ですから」

「まぁ。セシーリアにそこまで言わせるなんて…」


 うふふ、おほほと上品に笑う二人に合わせて目に見える範囲で屋敷の紹介をして話題を繋いでいく。

 そうじゃないと私には王都で流行りのドレスの話なんかわからないし、アクセサリーの話をされても不快だし、演劇も観なけりゃ昼ドラ真っ青なドロドロの不倫話なんて興味もないから話題が無いんだよ。


(セシル)


 心の中で話題を繋げていられることに安堵していると久し振りにメルから声がかかった。


(どうかした?)

(この屋敷を探っていた気配が消えていくのだ。目の前の者達が連れてきた護衛とは別のようなのだ)

(あぁ…二人が来る前にステラにお願いしておいたの。多分彼女達と私を監視するために変なのがついてくるだろうから適当に排除しておいてって)

(なるほどなのだ)


 メルに言われるまでもなく私も当然気付いている。

 気配を殺して屋敷の周りを十人くらいが囲んでいたけれど、少しずつ数減らしていってる。これならもうちょっとで全滅させられるだろう。

 だからシャルラーン様達が到着した時に「護衛はこれで全部か」とちゃんと聞いておいた。

 彼女達なら私がそう聞いたことの意味を正しく理解してくれたはずなので、遠慮なく始末したというわけだ。

 ちなみに護衛は屋敷の中に入っており、今も二人の後ろに一人ずつ。ガゼボのすぐ近くに四人。門で我が家の警備四人と共に二人の計八人だ。

 尤も…護衛よりも、外にいる間者だか監視だかよりも、この屋敷内にいる誰よりも私の方が圧倒的に強いのでそう簡単に害せるわけもないんだけどさ。

 けれどそう思ってる間にステラによって屋敷の周りにいた不届き者の排除は全て完了した。


「シャルラーン様もカリオノーラ様も人気者であらせられますね」

「…どういうことかしら?」

「いえ大したことは。あまりに熱心なファンがいたのでお帰りいただいただけですので」


 何でもない風を装って屋敷をぐるっと囲む塀を見回すと、シャルラーン様は後ろに立っていた護衛を全て遠ざけたので私もステラに場を辞するよう指示した。


「さすがセシーリアですね。内緒話をするのにここほど適した場所はありませんわ」

「どんな内緒話か存じませんが、あまり頻繁に通われるのは余計に疚しいことがあると暴露してしまうようなものなのでお気をつけ下さい」

「えぇ、勿論心得ているわ」



 全員を下がらせたとは言え、護衛の中にもスパイがいないとも限らないので念のため遮音結界(エリアミュート)は使っておく。

 どうも様子からして以前のようなおねだりではなさそうな感じがする。


「セシーリアはアルフォンスのことは知っていて?」

「アルマリノ王国第一王子にして王位継承第一位。ザッカンブルグ王国第一王女との婚約が決まっていて近く婚姻の儀が行われると噂は聞いております。第二王子のディルグレイル殿下との不仲、第四王子レンブラント殿下とは比較的仲が良いと。私が存じ上げているのはこのくらいでしょうか」

「陛下はザッカンブルグ王国との繋がりをより強固なものにしたいと思っております。しかし…それを良しとしない者がアルマリノ王国にもザッカンブルグ王国にも一定数いるのが現実です」


 …なんか聞きたくないような話が始まったよ?

 これって王族のお家騒動的な非常に厄介な問題なんじゃないの?


「ザッカンブルグ王国内では王太子殿下は婚姻をとても喜んでくださっているのですが、あちらの王弟殿下と第二王女殿下が反対しており、オナイギュラ伯爵と懇意になって婚姻そのものを無しにしようとしています。またこちらもディルグレイルが強く反対しておりまして…それに他の貴族の後押しもあって最近王太子には自分がなると言い出しているのです」


 おぅ…予想通りだった…。

 聞くんじゃなかった。

 頭を抱えそうになるのを何とかこらえてみたものの、顔には思いっきり出てしまっていたようでシャルラーン様が不安気な顔をしてしまった。

 申し訳ないと思うならこんな話新興貴族でしかない私に聞かせないでほしいんだけど。


「えぇっと…私はその手の話には疎いのですが、ディルグレイル殿下を推している貴族というのは?」

「ゾノサヴァイル公爵と軍務大臣のスパンツィル侯爵、外務大臣ニーレンヨード侯、それと王族内では第五王子のコルチボイス、第四王女チェリーシャ、第五王女ミーマイアが」

「どいつもこいつも脳筋ばっかりで強ければいいっていうような連中よ」

「カリオノーラ」


 シャルラーン様からカリオノーラ様の言葉に苦言が入るが私も同じことを考えていたのであまり意味はない。

 そもそも第二王子が考えるよりも先に動くし手が出るようなタイプだとか。戦略よりも筋肉とか言いそうな人だ。叙爵の儀式で初めてみたけど、ゴルドオード侯にも引けを取らないほどの巨体を筋肉の鎧で固めたいかにも武人という感じの人だったっけ。

 ゾノサヴァイル公爵はよく知らないけど、スパンツィル侯爵はクアバーデス侯もかなり苦手だと言っていたっけ。多分いろいろ策を巡らせても無駄なタイプだからだろう。


「いかにも戦うのが好きそうな方々ばかりですが…ゴルドオード侯は入っていないのですね」

「ゴルドオード侯はそれどころではないでしょう。あの領地は帝国、神聖国とも国境を構えていますから」

「…今も帝国や神聖国からの侵攻があると? 貴族院でも聞いていませんでしたが…」

「侵攻というほどではないでしょう。ですが本当に局地的な小競り合いがあると聞いています」


 うはぁ…。

 そりゃ王太子が誰とか言ってる暇すらないわけだ。

 しかし聞けば聞くほど関わり合いになりたくないんだけど!

 というかそもそも私に話してどうにかなるような問題でもないでしょうに。

 なのでそれをそのままシャルラーン様に尋ねてみると、彼女は苦笑いのまま詫びてきた。


「ごめんなさいね。半分は愚痴を聞いてもらいたかったのよ」

「…じゃあ残り半分は…」

「セシーリアにも少しだけ手伝ってほしいのよ。勿論誰かを殺してほしいなんて話は貴女には持ってこないから安心してね」


 私『には』、ね?

 一体誰のところに持っていく話なんだろう。聞くつもりもないし、関わるつもりもないけどさ。


「お母様のお姉様、つまり私の伯母様に当たる人の手を借りることが出来ればディルグレイルお兄様の勢力をかなり落とすことが出来るの。けどあの方は…」

「カリオノーラ。そこから先は私が」


 話を続けようとしたカリオノーラ様を制してシャルラーン様が話してくれるようだ。

 …なのになんで話す前に大きく深呼吸しなきゃいけないんだろう。


「姉の名前はリゼメジャー・ゾノサヴァイル。ディルグレイルを推しているゾノサヴァイル公爵の姉でもあるわ。彼女は魔道具開発の第一人者なのだけど…かなりの、その…変わり者で…」


 立場がとても面倒な人だけど、魔道具作りを生業にする人に変わり者が多いのは納得した。

 アイカ然り、ディック然りだ。

 私? 私は普通でしょ。ただ宝石が好きなだけで引き篭りじゃないもん。

 というかシャルラーン様はゾノサヴァイル公爵家の出だったんだね。それなら確かに陰湿な兄弟喧嘩とも言える王位継承問題で揉めているのはある意味で自分達の兄妹喧嘩みたいなものか。


「セシーリアが貴族院でオリジナルの魔道具を開発したことも知っていて、協力するかどうかは貴女と会ってから決めると言っているわ。最近では開発資金が足りなくて困ってるようだけど、そちらは私達の方で何とかしてみるつもりよ」

「…その前に私がアルフォンス様側についているという前提で話が進んでいる気がするのですが…」


 当然でしょう? と言わんばかりにキョトンした顔を見せる王族女性二人。

 私が敵対するとは全く思っていないらしい。勿論しないけど、味方になるとも言ってないわけで。


「……ちなみに、私がその話を受けるメリットは何かありますか?」

「いえ…セシーリアには何のメリットもないわ。ただ…これを見てちょうだい」


 そうしてシャルラーン様が取り出したのは一枚の手紙だった。

 宛名は書いてない。

 誰からの手紙か気になって裏返すと、そこにはクアバーデス侯爵家の封蝋がしてあった。

 またあの人は何かを企んでるのか!

 しかし渡されてしまったものは突き返すわけにもいかないのでテーブルにあるバターナイフで封蝋を開けて中身を取り出した。そこに書いてあったのは私の名前とクアバーデス侯の名前、それ以外はたったの一言だった。


「借りを返せ」


 ……このタイミングで使ってくるかっ?! あの腹黒領主めっ!!!

 これってアレよね? ユーニャを盗賊から救出したときの…。


「…わかりました。お手伝いさせていただきます……」


 否を言わずに了承した私はそっと手紙を折りたたんで懐に仕舞った。表情を隠す? そんな余裕ないです。きっと今の顔は怒りと焦りと悲しみが織り交ざったスムージーのようなものだろう。

 同じ三つならトリカラートルマリンみたいに綺麗な宝石だったら嬉しいのにさ。


「一体何が書いてあったのかしら?」

「きっとセシーリアの弱みを握っているのではないでしょうか。クアバーデス侯爵ならやりかねませんわ、お母様」


 クアバーデス侯、どうやら貴方の悪評は王族にまで広がってるみたいですよ。

 そんな悪評すら喜んで受け取りそうなのがクアバーデス侯だけど。

 その後シャルラーン様と話して近い内にリゼメジャー様に会いにいくことになった。彼女は実家から出ており、西大通りから少し北へ入ったところに研究所を設けて日夜魔道具の開発を行っているとのこと。

 どうやら私の秘密基地があったところのすぐ近くみたいだね。そこなら迷わないで行くことが出来るだろう。

 これでようやく重大な話が終わったので遮音結界(エリアミュート)を解除して護衛とステラを近くまで呼び寄せて普通のお茶会が再開された。

 今回はシャルラーン様とカリオノーラ様が訪問してくださったので、お土産も彼女達からいただいた。

 海を渡った先にある国から届いたフルーツらしい。

 赤黒い固い皮に包まれており、それを捲ると中からライトグリーンの身がプルンと飛び出してきたのでそれを一口食べてみた。

 味はもう外見通りライチだった。中身が鮮やかな色だったので味と見た目のギャップが激しくて脳内の処理がおいつかないでいた。

 この世界ってたまにこういうのがあるから時々びっくりするんだよね。

 そこから先は終始和やかな雰囲気で話が進み、双方とも満足のうちにお茶会を終えることが出来た。

 折角だからとステラ特製のスフレパンケーキをお土産に持たせてあげると大喜びして「また来る」と言って帰っていった。

 遊びに来るだけなら歓迎だけどお土産だけじゃなくて面倒な話も込みで持ってくるのだけは勘弁してもらいたいと思うのだった。

今日もありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] >そうしてシャルラーン様が取り出したのは一枚の手紙だった。 >そこに書いてあったのは私の名前とクアバーデス侯の名前、それ以外はたったの一言だった。 >「借りを返せ」  むぅ……(ふくれっ面…
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