第233話 殲滅戦1 戦闘開始!
ようやくこの小説書こうと思ったシーンまで辿り着きました。
女の子が無双するのが好きなんですよ。
村の人達はディックを除いて両親も友だちも良くしてくれた近所のお婆さんやおばさんもみんな死んだ。
それもこれも全部この魔物達のせい。
なんで連鎖襲撃が起こったかなんて理由はどうでもよくて、ただただ許せなくてこの気持ちをぶつけないとやってられない。
邪魔でしかなかったリードも実家に特急便で送り返したし、後は…。
「暴れるだけだよね」
魔人化だけなら今の私にとって何の弊害もない。
魔闘術で全身と武器の強化を行い、殺意を無差別にばら撒いても魔物達は遠くの方から変な声を上げながら迫ってきている。
リードと話している間に時間が過ぎてしまって上空から絨毯爆撃をするにはもう近くなりすぎてしまった。
これ以上私が下がると万が一魔物が通り抜けてしまった場合に町にいる騎士団へと向かってしまう。
雑魚ならいい。
けど脅威度B以上の魔物が抜けてしまったら騎士団では危ないかもしれない。
冒険者ギルドからも応援が来ているはずだけど、ベオファウムにいる冒険者でそれに対処出来るのは元Aランクのブルーノさんくらいだ。
だから一匹足りとも抜かせるわけにはいかない。
それに。
「みんなの仇だから、誰にも譲るつもりもないしね」
ユアちゃんのダンジョン九十階層かegg持ちみたいな強敵にしか使わないような魔力を両手に集中させ、全力に近い地魔法を地面に叩きつけた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
新奇魔法で強力な地魔法もあるけれど今使ったのはそんなものではなく、ただの壁。
私がいる場所から森に向かって一万メテル以上の長い壁が草原に現れた。それは高さも百メテルを超え、厚さも十メテルはある巨大な壁。
城壁のような立派な物ではなく無骨な岩でしかない。
しかしそれは扇形のように私から徐々に広がっていく形をしており、私の後ろにはようやく人一人通れるくらいの隙間しかない。
「これでもう私から逃げられない」
勿論私の逃げ場もないけど、逃げるつもりなんて全くない。
両親のことを思い出せば、生まれてすぐからずっと大切にしてくれたことや、初めてイルーナに叩かれたこと、いつも過保護なほど私を構ってくるランドールの顔が浮かんでくる。
村のことを思い出して、一緒に遊んだキャリーとハウルの顔が浮かび、その後に彼女らの死に様がくっきり鮮明に蘇ってくる。
それだけで両目から溢れるように雫が零れていくけど、決して拭おうとはしなかった。
そして一度落ち着くために空を見上げながら大きく深呼吸すると、腰ベルトから短剣を抜き放った。
流れる涙すら、力に変えてみせる。
「絶対、絶対にっ! ぜぇったいぃにっ! 許さないんだからっ! 死ねえええぇぇぇぇっ!!」
地面が爆散して大きくクレーターが出来た直後、私の身体は加速していき魔物の集団の先頭に辿り着いた。
このあたりにいるのはゴブリンやオーク、ウルフ、コボルトなど低ランク冒険者でも狩れるような弱い魔物達。
それがどれだけいるかわからないほどに密集して押し寄せてきている。
「閃亢剣!」
両手の短剣をそれぞれ振り抜けば魔物達の身体は上下に分かれて地面に落ちる。
手加減は抜き。
魔物達を切り裂いた金色に輝く光の刃は彼方まで飛んでいき、その二振りの攻撃は先頭を走っていた弱い魔物達の命は簡単に消し飛ばす。
ドチャ、ビチャと汚らしい音がして大地が魔物の血で穢れていく。それすら、今の私にとっては不快以外の何物でもない。
「大地を汚すなぁっ! 新奇魔法 煉獄浄焦炎!」
咆哮と同時に私の顔の前に現れた真っ赤な魔力の塊が弾け、前方へ浄化の炎が走る。
数千にも及ぶ魔物の骸がその炎に焼かれただの炭になる。
炎が消えた頃には周りにいた魔物達は全ていなくなっており、次の敵は百メテル以上も先だ。
認識するのと私の足が動いたのはどっちが早かったか。
またも地面を踏み砕き、あっという間に次の集団の先頭へと肉迫していた。
「爆発魔法 暴発領域!」
デリューザクスと戦った後に生み出した、多数を一気に殲滅するために強力な爆発を何度も集団の中で炸裂させる。
近いところにいた魔物達は直接短剣で斬り伏せていくが、爆風の余波が届かないような場所では何度となく爆発音が響き、空から肉片が降り注いでくる。
このあたりにいるのは脅威度Cのオーガやマッドベア、ガッシュリザード、ダークウルフなどが殆どだ。中にはブラッディベアのような脅威度Bの魔物も紛れていたけどそれも軒並みさっきの魔法で爆殺し尽くした。
遠距離にいて爆発から逃れた魔物は炎魔法や地魔法で葬っていく。
普段の依頼なら素材を駄目にしてしまうような戦い方なんてしない。けれど今はここにいる全ての魔物の存在自体を消し去りたい。
「まだまだぁっ!」
先頭を走っていた弱い魔物はかなりの数がいたけどほとんどいなくなり、ここから先は脅威度B以上の高ランク冒険者しか相手をしないような強力な魔物が増えていくはず。
中にはギガースの足下をちょろちょろ動いているゴブリンなんかもいるけどあっさり踏み潰されている。
そして次の集団へと向かおうとしたところで上空からグリフォンやインプ、ハーピーのような飛行型の魔物が襲ってきた。
「あぁぁぁっもうっ! 鬱陶しいっ! 新奇魔法 精霊の舞踏会!」
流石に身体からごっそり魔力を持って行かれた感覚はあったものの、自身の周囲にバスケットボール大の魔力球が数千ほど生み出された。
「いけぇっ!」
私自身は特に狙いは付けない。
そんなことしなくても意志があるかのように魔力球は魔物へと襲い掛かり、その命を刈り取っていく。
光の球が舞い踊る様は正しく精霊達が踊っているかのよう。
空の魔物はこれでほぼ殲滅出来たはずなので、私自身は目の前から迫るやたら大きくて目立つ魔物達へと襲い掛かった。
その後も攻撃の手を休めることなく魔物達を蹴散らしていく。
短剣で斬り刻み、魔法で消し飛ばし文字通り蹂躙するその姿はどっちが魔物だかわからなくなるほどだった。
でもそれでいいんだ。
私は魔物にとっての理不尽になるんだから。
頭を過るそんな考えがより一層私の攻撃力を上げてくれた気がする。
さっきからレベルがガンガン上がっているので気のせいではないだろうけど。
巨大な魔物に囲まれている中、真後ろから振り上げた棍棒を力任せに振り下ろしてくるギガース。
ザンッ
一太刀でギガースを縦に真っ二つにすれば、遅れてやってきた天然のゴーレムも襲ってくる。
どうやらアイアンゴーレムのようだ。身体の至る所が鉄で出来ているのでロックゴーレムなんかよりも防御が固い。
「そんなの私には関係ないけど、ねっ! 炎焦殺!」
自重しない私の炎魔法なら鉄を溶かすくらい出来る。
しかもこれは敵を焼き尽くすまで消えない炎だから、その身体がドロドロに溶けてしまうまで周囲の魔物にも炎のお裾分けをしてくれる。
脅威度Aを超える魔物は数は少ないものの、強力な個体が多い。
少しでも私自身が攻撃する手間を省いておきたい。
それでも時折広範囲攻撃魔法を使って魔物の数を減らしていく。
魔物の数はかなり減ったと思うけど、私の戦いはまだ終わりを見せないでいた。
「はぁはぁはぁはぁ…っ!」
軽い息切れを起こしている中、息を止めて夜の闇の中へと鋭い斬撃を放つ。
ガキンと甲高い金属音がして私の短剣が止められる。
次の攻撃に入ろうと、もう片手の短剣を走らせようとしたところへその魔物は羽を広げ低空飛行で私の足へその鋭い角を突き立ててきた。
「あぐっ…こ、のおおぉぉぉぉぉっ!」
しかし羽を広げたことで自身の弱いところをむき出しにしたその魔物の背に短剣を突き立ててその命を奪った。
確かミスリルビートルという希少種で、甲殻がミスリルで出来ているという豪華なカブトムシ。
性格は非常に凶暴で敵にはミスリルで出来たその角を突き立てて殺す脅威度Sに認定された魔物だ。そして攻撃力もさることながら、身体が小さくなかなか攻撃を当てることが出来ないので厄介極まりない。
傷ついた身体に小治癒を掛けて回復させると次の魔物へと向かう。
このあたりにいる脅威度Sの魔物こそ、一体足りともベオファウムへ通すわけにはいかない。
そんなのがまだ数十体はいる。けど。
「やっと終わりが見えてきたよ!」
時間は既に深夜をとっくに回った。
一の刻が過ぎ、もう鐘半分も時間が経てば山間から朝日が昇ってくるだろう。
最初から魔物の数なんて数えてないけど、当初聞かされていた五万なんて数はとっくに超えてると思う。
「ああぁぁぁぁっ!」
大きな咆哮を上げて全身に魔力を漲らせていくと、一定のところで吹き上げる魔力が金色の光となる。
そして短剣を構えると同時に周囲に理力魔法の壁を百枚ほど展開した。
「金閃迅!」
地面のことは気にせず踏み込むと魔物とすれ違いざまに短剣を走らせていく。
理力魔法の壁にぶつかると同時に方向転換。また別の魔物へと斬りかかる。
何度も繰り返され、光る金色の閃光が闇の中で煌めけば、後に残るのは大量の魔物の骸。
のはずだった。
ギャリン キィン
私の攻撃をその鋭い牙や爪で凌ぐとんでもない能力を持った魔物までいた。こんなことされたのはエクシードレオン以来だけど、切り結ぶ一瞬の中で相手の姿を見て納得した。
キリングフェンリル。
脅威度Sの魔物の中でもトップクラスでやばい奴。
冒険者ギルドではランクSの冒険者数人がかりで討伐したと過去の記録に残ってたっけ。
ザザザザザザザザザザザッ
理力魔法の壁が無くなり私が着地したところへ背後からキリングフェンリルがその牙を剥いてきた。
動物は好きだし、中でも犬や猫は嫌いじゃない。
「けどそんな怖い顔した犬はお断りだよ! 電撃魔法 雷神槍墜撃!」
爆発にも似た轟音がに響くのと同時に、キリングフェンリルが声にならない悲鳴を上げた後黒い煙を全身から上げながら崩れ落ちた。
「ついでにオマケ! 新奇魔法 並び立つ尖塔!」
エイガン戦に向けて訓練していた時に登録した新奇魔法を使うと地面から凄い勢いで岩で出来た棘が十数本飛び出してきた。
棘と呼ぶにはあまりに高く聳え立つそれは最早塔と呼ぶに相応しい。
私の魔力で強化されているので当然普通の岩より遥かに硬く、それだけ鋭い。
モズの早贄のごとく岩に突き刺さった魔物たちがその命を散らしていく。
私はモズみたいに忘れたりしないから。
…絶対に殺し忘れないから!
そして復讐に燃える私の耳に聞き覚えのある言葉が届いたのはそんな時だった。
---egg所有者同士の戦闘を確認しました---
今日もありがとうございました。




