第220話 セシルステータス(五年次開始時点)
貴族院在学中にやらなきゃいけないことははっきりしたけど、舞台はリードやミルル達が整えてくれるのを待つだけ。
それまでは私もやれることをやっておく必要がある。
と言ってもレベルやスキルレベルを上げることくらい。
一応ユーニャの武器を受け取った際に新しい短剣とか片手剣を今までよりも強力なものという条件でクドーに依頼しておいた。
「お前は何と戦うつもりだ? 竜王種や魔王種さえ今のセシルなら一方的に倒せるくらいにはなっただろう?」
とまで言われたけど、用心に越したことないよね?
それに依頼されたクドー自身も嬉々として新しい武器の構想に入ってるんだから人のことは言えないと思う。
ちなみに今の私のステータスはこんな感じになっている。
セシル
年齢:14歳
種族:人間/女(管理者の資格)
LV:4166
HP:759,128
MP:5,924M
転生ポイント:2,106k ▼
スキル
言語理解 8
補助魔法 MAX
付与魔法 MAX
投擲 MAX
弓 MAX
槍術 8
棒術 7
格闘 MAX
魔闘術 MAX
人物鑑定 9
道具鑑定 9
スキル鑑定 MAX
宮廷作法 9
料理 6
ユニークスキル
炎魔法 MAX
氷魔法 MAX
天魔法 MAX
地魔法 MAX
理力魔法 MAX
空間魔法 MAX
殺意 5
超剣技 MAX ⇒レジェンドスキル絶剣へ進化
隠蔽 MAX
探知 MAX
吸収攻撃耐性 4
異常無効 MAX
錬金術 7
魔道具作成 MAX
レジェンドスキル
魔力闊達 7
聖魔法 8
邪魔法 8
絶剣 4
四則魔法(上級) 5
新奇魔法作成 8
擬似生命創造 4
戦帝化 4
egg -
神の祝福
経験値1000倍
タレント
転移者
転生者
剣闘マスタリー
格闘マスタリー
魔ヲ極メル者
理ヲ修メル者
狙撃手
錬金術士
魔工技師
蛮勇
突撃者
鉄壁
慈悲ナキ者
憎悪
憤怒
怨嗟
なんで私には武具自在が身につかないんだろうね。
その代わりというかレジェンドスキル絶剣は入手出来た。
私が剣を持っている間のみ有効になっているスキルだけど、その性能はケツァルコアトルと戦った時の私が魔人化して魔闘術を使っている時と同じくらいだったと思う。
これで戦帝化しようものなら魔人薬を使ったゴランガを一方的に倒したことからも馬鹿げた威力になることはわかっている。
ゴガッ
他にも有効なスキルを手に入れたい気持ちはあるんだけど、戦闘に偏ったスキルは既にかなり取得していると思うんだよね。
ドゴン
もしくは新奇魔法をいくつか開発しておこうか。
対人向けの魔法ってあまり多くない気がするし、それも悪くないね。
「たあぁぁぁぁぁっ!」
大きな声がしたので後ろを振り向くとユーニャが魔物の頭に拳を振り下ろしているところだった。
ユーニャの力で、しかもあのガントレットを装備しているのでそんなことをすれば…。
ゴンッ ダァァァン
思い切り地面に叩きつけられて魔物はその身体を光の粒に変えてしまった。
ドロップ品も特にないようでユーニャは「ふぅ」と一息つくと手足をブラブラさせて感覚を確かめている。
ここはユアちゃんのいる王都管理ダンジョン。
草原、森林、洞窟、砂漠、廃墟、湿地、雪原、海洋、岩山、火山という十層毎に十のエリアに分かれている。
それぞれの場所に見合った魔物が出てくるため、最後まで辿り着こうと思えばかなりの装備を整える必要がある。
またゼロのつく層は迷宮層となり、複雑な迷路を超えていくのだけどそこだけはエリアごとの特徴とは異なる系統の魔物が出てくるためどこもかしこも初見殺しと言えるだろう。
これを作ったダンジョンマスターの性格の悪さが気になるところだけど、当の本人であるユアちゃんはただの寂しがり屋で私が会いに行くといろんな話をしてくれるとても良い子だったりする。
ちなみにここまでの規模のダンジョンは世界中で見ても十本の指に入るほどだとか。
で、現在私達は四十七層に来ている。
ここらへんでユーニャが苦戦するような魔物はいないはずだけど、戦い慣れしてもらうために来ているのでこのくらいでちょうどいい。
で、暇を持て余している私は今後の自分の育成(?)方針を検討しているわけだ。
何故暇かと言うと。
「ユーニャ、何度も言うがインパクトの瞬間に過重をかけるようにしろ。それまでは解除しておけ」
「はいっ!」
格闘の指導をクドーに任せているからだったりする。
アイカは採取したい素材があるからと七十階層の海洋エリアに行っている。
私達三人はユアちゃんからこのダンジョンの中なら好きな場所に転移出来る指輪を貰っているので、いつでもどこでも行けるからね。
ユーニャもここ何回かダンジョンに来るようになってから格闘戦に大分慣れてはきているものの、まだまだクドーから合格点は貰えていない。
そのクドーも徐々に指導が高度になってきていることからユーニャに教えるのは悪い気がしていないとアイカも言っていた。
「セシル、私の訓練に付き合わせてるだけじゃ退屈だよね」
魔物との戦闘が一段落したからか、いつの間にかユーニャは私の隣に来て座っていた。
「大丈夫だよ。ユーニャこそクドーから教えて貰っているけど身体は平気?」
「うん。セシルに迷惑がかからないようにしたいから頑張るよ」
頑張る方向を間違えちゃ駄目よ?
貴女は商人になりたいって言ってたよね?
ユーニャの心意気は嬉しいので水を差すようなことは言えないけど、苦痛でないなら何よりだ。
男性に対する恐怖心はアイカの治療もあってもうほとんどないみたいだし、クドーと二人だけでも問題ないそうだ。
「もしセシルも自分の訓練でやりたいことがあるなら行ってきてもいいんだよ?」
「うーん…。クドー、私も行ってきていい?」
「構わんぞ。ユーニャは問題ないし、俺もいる」
つまりこの階層ならユーニャの戦闘能力で支障が出ることはないし、何かあってもクドーがいるからどうとでも対処するってことかな。
「わかった。じゃあ約束の時間までちょっと行ってくるよ。ユーニャも無理はしないようにね」
「うん、いってらっしゃい」
「あぁ」
二人に手を振ると私は転移の指輪を使ってユアちゃんがいるダンジョンマスターの部屋へと転移することにした。
「ユアちゃん、遊びに来たよー」
ダンジョンマスターの部屋に入るとすぐに声を張り上げてユアちゃんを呼んでみる。
たまに作業に夢中になってて気付いてくれない時があるからね。
「お、おぉ? セ、セシルいいいいらっしゃい!」
これは決して見られたくない何かを隠そうとして慌てているわけではなく、単純にこの子が人見知りのコミュ障で寂しがり屋を数百年も拗らせてしまったがためのものだ。
なんだかかわいいよね?
「ちょっとユアちゃんに相談があってね。話聞いてくれるかな?」
「セッセシルが我にそそそ相談?! い、いいよ勿論! なん、何でも聞いて!」
ユアちゃんは「相談」の一言にテンションが跳ね上がった。
けどだからって数メテル先から転移で飛んでくることはないと思う。
こういうところはもうちょっと落ち着いてほしいところだね。
「ありがとうユアちゃん。それで相談なんだけど…これからの私の育成方針というか、どういうスキルを取ったらもっと強くなれるかなっていうのとその取得方法なんだけど」
「…セシル、我のダンジョンク、クリアしたのにまま、まだ強くなるの…?」
ユアちゃんのダンジョンは確かに世界中で見てもかなりの難易度を誇る。けれど彼女から聞いた世界最大で最高難度のダンジョンは全四百層で踏破者ゼロの鬼畜仕様らしい。
他のダンジョンの情報は詳しく話せないと言うので私もそれ以上は聞いてないけど、この大陸には無いとのこと。
まぁそんな有名なダンジョンなら調べたらわかりそうなものだけど。
「どうしても負けられない相手がいてね。近いうちに戦うことになりそうなの。だからそれまでに出来るだけ強くなっておきたいなって」
「セシルより強いの?」
ユアちゃんに言われてはっと気付いた。
そういえばいくらエイガンが強いと言っても私みたいにチートを持っているわけでもないし、自称貴族院最強というだけ。
王国の中でも私を実力で倒せそうな人は王国騎士団長、エイガン、それとまだ知らないけどもう一人くらいだとしか聞いてないけどそれがどの程度の強さかは知らない。
でも備えあれば憂い無し、用意周到、石橋を叩き壊して飛行魔法で飛んで渡るくらいの準備をしてもいいと思う。
「わかんないけど、絶対負けないくらいの強さにはなっておきたいから」
「え、えぇ…?! レッ、レベルは世界最強クラスだし、スキルやタレントだってそそ、そんなすごいのも、持ってる人なんてほと、ほとんどいないよ?」
「…まぁ確かに全力を出せばアイカとクドーの二人を相手にしても勝てる自信はあるけど…」
ちなみに二人のレベルも私に付き合って何度かダンジョンに入っていたせいで六百を超えている。超えているけど私はその七倍ものレベルに達している。
戦帝化を使うとレベルが下がっちゃうから全力を出しっ放しにしてると二人より弱くなるかもしれないけど。
「…セシルが強くなりたいっていうならきょ、協力するけど…お願いを聞いてほしい、かな」
「お願い? 珍しいねユアちゃんが私にお願いなんて」
「あぁっ?! いっいや、いっ嫌ならいいのっ! ごごごごごめんなさい調子に乗りましたぁっ!」
なんでこの子はこんなに卑屈なんだろう?
ぼっちって拗らせるとこんなことになっちゃうの?
「別に嫌じゃないよ。友だちなんだからそんな遠慮しないで? ユアちゃんには今までいろいろしてもらってるし、私に出来ることならするよ」
「と、友だち…え、えへへ…」
ユアは「友だち」というキーワードに反応して完全にトリップしてしまった。前もそうだったけどこうなると長いんだよね。
しかしこの子を見てると「不憫」って言葉が頭をよぎって仕方ない…。
大丈夫、私はいつまでも貴女の友だちだからね?
「ユアちゃん、戻ってきてー。友だちを放置しないでー」
「はっ?! ごごごごめんセシル! 友だちは大事。うん、ちゃんと相手する!」
今放置してトリップしてたよね?
本当に大丈夫かな。
でもこう見えて六百歳超えのダンジョンマスターなんだし、いろんなこと知ってる上にダンジョン踏破者の私に嘘はつけないから、そういう意味では安心して相談出来る。
「それで、何かいい案はないかな?」
「うーん…。一番いいのは『英人種』にし、進化することなんだけど」
私のステータスに転生ポイントというものがある。
これはアイカ達にも無くて、何であるのかも何が出来るのかもよくわかってない。
けど頭の中に響く「転生ポイントを貯めろ」という声が、ポイントを使って何かをすることに抵抗を産む。
そういえば英人種に進化出来るようになってからはほとんど聞こえなくなっていた気がする。
「出来れば転生ポイントは使いたくないんだけどね」
「え、えぇ…? け、けど普通の『人間』と『英人種』じゃ出来ることが全然違うし、もっと強くていろんなスキルが使えるようになるよ?」
「今でもいろんなスキルは使えるんだけど…」
「…そうだった…セシルだった…」
何その「セシル」っていう生き物だった、みたいなセリフは!
まぁ今更そんなこと気にしないけどさ。
「じゃ、じゃあダン連協の記事を見てみる。セシルに有用なスキルってどんなの?」
「強くなるやつ! あと便利なの!」
「…ちっちゃい子どもみたいだよ…」
ユアちゃんの冷めた目線を受けて「あはは」と苦笑いと同時に頬を掻く。
そしてちょうどアイカがクドー達と合流する時間になったので私はダンジョンマスターの部屋から転移することにした。
今日もありがとうございました。




