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第18話 決意?

ギリギリ更新間に合いました。

7/29 題名追加

 テストをしようと思い立ったのは昨日のイルーナとの訓練の後だ。

 私の持ってる特異魔法は非常に強力だ。でも昨日ははっきりイルーナには言ってなかったがアクアブレード一発で千以上MPを持っていかれる。大きさ、威力、数を増やせばその消費は比べ物にならないと思う。

 MPの増えた今なら微々たる程度かもしれないがもう少しうまく立ち回れる戦い方があってもいいような気がしたのよね。

 昨夜瞑想中に考えていたことがあったんだけど…強い魔物に出会ったときに、今持ってる武器で傷を付けられないときはどうしたらいいかって。もちろん魔法は使えない、もしくは効かないと仮定してだけど。

 そうなると、武器や肉体を強化しないといけない。もちろん身体強化で強くはなるだろうけど、そこまで硬くなるものなのかなと。

 で、思いついたのが魔法を使う要領で自分の体をコーティングする方法。というわけで早速試してみよう!

 魔力を全身に行き渡らせてイメージを固める。自分の体を守る魔力で出来たスーツ。実体化したら間違いなく特撮モノのあのスーツになるだろう。園の弟たちも大好きだったっけ。


---スキル「補助魔法」を獲得しました---


 続けてナイフを抜いて、それにも魔力で強度と切れ味を増すようなイメージを加えていく。


---スキル「付与魔法」を獲得しました---


 スキルが手に入ったところからするとどうやら成功したらしい。

 そのまま私は身体強化で加速してホブゴブリンに近付く。

 私の速度についてこれないホブゴブリンは一瞬で私を見失ってキョロキョロと辺りを見渡すが、私は足元でナイフを構えたまましゃがんでいる。そのまま跳び上がって左腕を斬りつけにいく。


「シッ!」


 軽い手応えがして私はホブゴブリンの背後に着地して振り返った。

 浅かったかな?


「ゴオォォォォォォッ!」


 大声を出しながらホブゴブリンもこちらを振り返ると


ドサッ


「ゴッ!?」

「え?」


 突然左腕が落ちた。

 妙に浅い手応えだなと思っていたものの、そうではなかったらしい。

 切れ味が良くなりすぎてしまったようだ。それにしてもナイフの刀身よりも腕の方が太かったのにあっさり切り落とすことができたのは不思議ではある。

 切り落とされた腕の付け根を押さえてのた打ち回っている隙に今度は左手に魔力を込めて纏わせていく。拳を全身よりも強く硬くしていく。


---スキル「補助魔法」の経験値が規定値を超えました。レベルが上がりました---


スキル「補助魔法」1→4


 スキルのレベルが上がったことで拳の強さもより上がる。

 恐らく普通の岩よりも遥かに硬くなっているだろう。正直こんなので叩かれたら下手な鈍器でされるよりもあっさり骨が折れたり場合によっては圧殺されてしまいそうだ。

 そしてその拳でホブゴブリンの膝を正面から殴りかかった。まずは足を潰す。私の拳を全力で叩きつけると何かを割る感触がして膝関節そのものを粉砕してそこから下の足だけがその場に残された。片足を無くしたことでバランスを崩し倒れてきたところへ顔面に渾身の力で再度殴り


パキャッ ピシャ


「ふぇっ!?」


 殴り…殴ったら、頭が砕けた…。

 顔に生暖かい液体がかかったこともあり、少しばかり放心、いや意識を飛ばしてしまった。



「あれ?」

「気が付いたー?」


 ふと正気に戻ると私はイルーナに抱き締められていた。

 目の前にはまだ私が倒したゴブリンとホブゴブリンの死体が散乱している。特にホブゴブリンの方は私が加減しなかったせいでかなり凄惨な死体になっている。


「セシルちゃんにはまだ刺激が強すぎたみたいで、気絶しちゃったんだよ」

「…ごめんなさい」

「謝ることなんかないよー。寧ろすごいなーって感心してた」

「こんなことになるってわかんなくて、加減とか知らないし、えっと」

「もー。セシルちゃんまた『怖くないか』とか『気味悪いんじゃ』とか言うつもりでしょ?絶対そんなことありません!貴女は私の娘ですぅー」


 う。完全に読まれてる。


「でも、こういうのは少しずつ慣れていかないといけないかもね?貴女は私たちに守られるだけじゃ嫌だって言ったんだものね」

「……うん。母さん、またこうやって気絶しちゃったり落ち込んだりするかもしれないけど…よろしくお願いします」

「あはは。仕方ないよー。私はセシルちゃんのお母さんだからねー。でも、見るのも気持ち悪くなるような倒し方はよほどのことがない限りはしない方がいいかもねー…その辺のことも今後の訓練の課題だね」


 そう言いながらイルーナは立ち上がって軽く伸びをした。


「それじゃそろそろここの後始末をしましょ」


 促されて私も立ち上がると首から上が消失したホブゴブリンの死体の真下に岩魔法で大き目の穴を開けた。だいたい深さ3メテルの穴の中に次々とゴブリンの死体を放り投げていく。全て投げ入れると炎魔法で火を放ち焼いていく。

 ちなみにこの作業もイルーナは一切手を出して来なかった。

 実は結構スパルタなのではないかと密かに思い始めてきた。

 火魔法だった頃よりも火力が上がりあっという間に死体を焼き尽くすと上から更に岩魔法で土を被せて蓋をした。これで後始末は完了だ。


 その後数時間イルーナと一緒に森の中を探索して魔物を狩って回った。

 ホブゴブリンの頭を砕いたような戦い方を自重しようとしたため攻撃力が極端に落ちて何度か攻撃を食らうこともあった。

 最初は確かにイルーナが


「私のセシルちゃんに!怪我させるんじゃ、なあああぁぁぁぁぁぁい!!!!」


 とか叫んで土魔法で真下から串刺しにしたり、火魔法で灰にしていたんだけど


「母さん、毎回そうされると相手から攻撃された後の行動をどうしていいかわかんなくなるからちょっとやめて」

「だってぇ、セシルちゃんが怪我したら私冷静でいられないよー」

「それでもダメだよ。いつも母さんや誰かと戦うとは限らないんだから」


 そう言ってからは完全に見守り状態に入ってくれて、攻撃を受けても手を出さないようになった。

 おかげであえて敵の中に入って攻撃を見切ったり、受けてからの返し、カウンターなどを実戦の中で学んでいくことができた。

 もちろんそんな戦い方の知識なんてあるわけもないので指示はイルーナが出してくれていたし、スキルレベルが上がったことである程度勝手に体が動いてくれるようになったのも大きい。

 私も自信を持てたし、ここで終わりにしたい旨をイルーナに伝えた。

 ちょうど今から帰って夕飯を作り始めたらちょうどいい頃合いだしね。




「ほぉぉぉ。それじゃセシルはオレと変わらないくらいのことができるんじゃないか?」

「それは言い過ぎだよー。セシルちゃんはまだ4歳なんだよ」

「そうだなぁ…。セシルもあんまり無理して強くならなくてもいいんだからな?」

「うん、わかってるよ父さん」


 3人で夕食を食べながらそんなことを話していた。

 今日の成果をイルーナが少し大袈裟なくらい身振り手振りを加えて。合間合間にランドールからは「そこはこうした方がいい」「こういうときはこうしてみては」など、いかにも男性的な意見が出てくる。

 折角の意見なので私も心のメモ帳に書き留めておくことにした。魔法を使わない戦いを行うランドールの意見は貴重だろう。もう少し慣れてきたら魔法を絡めた戦い方を模索する必要が出てくると思うがそれはあくまでもう少し先の話になると思う。

 夕食が終わると台所でイルーナの片付けの手伝いをする。

 4歳になってから始めた家の手伝いの一つだ。それまでできなかったのはちゃんと理由がある。

 …手が届かないんだよ。これでも台を使ってようやくだよ。


「私ねー、将来はこうやって娘と一緒にお料理とかお片付けするのが夢だったんだー」

「そうなの?」

「うんー。だからセシルちゃんのおかげで夢が叶っちゃった。ありがとー」

「えへへ。でもまだお料理はしてないよ?」

「うーん…。もう火魔法もしっかり使えるし、その気があるなら今度一緒にお料理もしてみよっか」

「いいの!?」

「うんうん、私からお願いしたいくらいだよー」

「やるっ。母さんと一緒にお料理するっ。絶対!約束だよ!」

「あははー。もうセシルちゃんはなんでこんなに私を幸せにしてくれるんだろうね。ホントに大好きだよー」

「ああぁぁぁ。母さん抱き締めないでお皿が落ちるよー」


 イルーナは洗い物が終わったので手を拭いて私を横から抱き締めてきた。横からいきなりだったので咄嗟のことに私も拭いていた皿を落としそうになった。

 そんな私達をランドールはチビチビと葡萄酒を飲みながら眺めていた。その瞳はとても優しくて、あれが本当の父親の目なんだろうか。


「さて、片付けも終わったみたいだな。今日も汗をかいたから体を拭いて寝るとしようか」

「はーい。セシルちゃん、桶にお湯入れてくれる?」

「うん、わかったー」


 私はランドールが持ってきた桶を3つ並べると火魔法と水魔法を併用して直接温かいお湯を入れていく。

 以前はイルーナが水魔法で水を入れてから火魔法で温めていたが、私はユニークスキル魔法同時操作のおかげで最初からお湯を入れることができる。

 と言っても昨日のイルーナとの訓練がなかったらここまでスムーズには出来なかっただろうけど。


「…セシル、こんな器用なことできたっけ?」

「できるように頑張ったよ」

「イルーナ…」

「わ、私そんなに厳しくしてないよっ!?」


 ランドールのジト目が刺さるがイルーナも必死に言い訳をしている。「セシルちゃんが何でもできるから」とか「ちゃんと鍛えないと怪我しちゃう」とかもっともなようで、明らかに厳しくしていたのがバレている。

 ランドールもそれを見て更に睨みを利かせると流石にイルーナも唸っていたが


「ぶっ…。あっははははは。そうだな、セシルは何でも出来過ぎるな。だが可愛い娘にあんまり厳しくして嫌われても知らないぞ?」

「えええぇぇぇぇぇぇっ!?セ、セシルちゃんは私のこと好きよね?ね!?」

「…ふふっ、あはははは。母さん必死過ぎるよー」


 私とランドールが笑っているのを一人不機嫌な顔で見ていたイルーナだったが、結局一緒に笑い出して収拾がつかなくなった。一頻り笑い合った後みんなで体を拭いて寝間着に着替えると私は一足先にベッドに潜り込んだ。

 母さんじゃないけど、なんでこの人たちはこんなに私を幸せにしてくれるんだろう。家族ってこんなに温かいものだったんだね。生まれ変わって良かったよ。この人たちの娘でいることがとても幸せで…絶対に守りたい。理不尽な暴力なんかに奪わせない。


 当時はそんな決意を抱いていたんだ。

そろそろセシルも成長しますよ。

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