表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/574

第161話 王都管理ダンジョン 12

GW連続投稿中!

外出自粛で引きこもります!

 攻撃を受け止めるのは盾を装備したクドーに任せることにして私は全力で白鎧王へと短剣を走らせた。


ガッ


 私の魔力を込めた短剣でもその強化された身体に短剣を食い込ませるのがやっとだった。

 さっきはこれでも傷を付けることくらい出来たんだけどね!

 食い込んだ短剣を無理矢理引き抜いて相手の身体を足場にして飛び退くと理力魔法を使って足場を作る。

 オーガキングとの戦闘時に作った跳ね返す足場だ。

 その反発力で再び斬り掛かるが、やはり私の短剣では白鎧王の防御を抜くことが出来ない。


「たぁぁぁぁっ!」


ギィィン


 足元ではクドーも黒い刀身の剣で斬り掛かっていた。

 魔闘術とは違う力を込めているのかクドーの剣で斬りつけた部分は私の短剣よりも深く傷を付けている。

 しかしそれも二十メテルを超えるほどの巨体相手では誤差の範囲でしかない。

 私達がそれぞれ飛び退くと同時に白鎧王も大剣を振り回してきた。

 動き自体も早かったが、やはりその巨体からは信じられないほどの速度で大剣が迫る。

 クドーがさっきまで立っていたところへその大剣が突き刺さる。

 巨大な大剣はアダマンタイトで出来た頑丈な床石を粉々に砕き、その攻撃力の高さをまざまざと見せつけてきた。

 受けたらさすがに痛いじゃ済みそうもない。

 理力魔法の足場を使って空中を飛び回りながら白鎧王の攻撃を避け、合間に短剣で斬りつけているが碌なダメージを与えられていない。

 気付くとクドーは私と同じように空中にも地面があるかのように走り回り、その大剣を受けることなく盾を使って上手く流している。

 流石に武具の扱いは慣れたものだね。

 空中を走り回ってることについてはこの戦闘が終わったらゆっくり聞かせてもらおう。

 まるで飛んでる蝿を叩き落とそうとしているように白鎧王は大剣を振るっているが私達に直撃することはない。

 しかし私達の攻撃も全く効いている様子もない。

 さっきまでと違い、迷宮金から魔力の供給は無くなったものの自身で蓄えている魔力で私達の付けた傷もしばらくすると無くなっており、長期戦の様相を呈していた。

 と思っていたところへアイカから声が掛かった。


「準備おっけーや! この魔法おっそいから何とかそいつの動き止めてーや!」

「なっ?! 無茶言うなーーー!」

「無茶でも何でもやらんと倒せんやろーーっ!」


 思っていたより欠点の多い魔法なのかもしれない。

 アイカからの要求は碌なダメージを与えられない私達にはかなり無茶なものだった。

 それを言っているアイカ自身もわかっているのだろうけど。

 アイカ自身は邪魔法の魔力を集中しているため黒い靄が足下から吹き出していてこうしている間にも魔力を消耗しているはずだ。あまり長くあの状態にしておけば魔法を撃つ前にアイカの魔力が尽きてしまう。

 時間を掛けられないならあのスキルを使うしかない。


「クドー! 全力でやるよ!」


 空中を駆け回るクドーに声を掛けると私は一度地面に降り立った。


「『戦帝化』!」


 魔人化から進化した使いたくないスキルの堂々一位になってしまった戦帝化。

 このスキルを使うのは初めてだ。

 何故今まで使うことを躊躇っていたかと言えば、スキル鑑定の結果がこれだったからだ。


 戦帝化:身体能力を極限に押し上げる。種族を問わずその能力は一律。このスキルを持つ者は魔人化を代償無しで使える。このスキルを発動すると時間経過によってレベルが下がる。スキルレベルによって下降幅は下がる。スキルレベルによって得られる身体能力は上がる。


 レジェンドスキルになったのにまさかのペナルティ付き。

 しかもレベルが下がるって!酷すぎるでしょ?!今まで頑張ってレベル上げてきたのにさっ!


 でも。

 そんなこと言ってられない、よね!


「はあっ!」


 気合いを込めて地面を蹴ればアダマンタイトで出来た床石に亀裂が入る。

 次の瞬間には白鎧王の土手っ腹に私の肘が身体ごとめり込んでいた。

 味わったことのない急加速に頭も身体もついてこれない。

 つまり咄嗟に肘を突き出していたのは偶々でしかない。


「そんなこと!言ってらんないんだよ!」


 大声で叫び、鎧にめり込んでいた身体を無理矢理引き剥がすとその場で短剣の連撃で白鎧王の防御を紙のような扱いで切り裂いていく。

 身体に取り付いている私を煩わしく思ったのか白鎧王は叩き落とそうと片手を伸ばしてきたが、その初動で私は退避した。


「くらえっ!『断』!」


 私に標的が向いていたところへ背後からクドーが取り出した大槌斧バルドルで渾身の一撃を振り下ろした。


ギャイィィィィィィン


 甲高い金属音が響くと今まで散々弾かれていた攻撃だったのに、易々と白鎧王の左腕を斬り落とした。

 轟音を上げて落ちる巨大な腕。

 クドーへと移る白鎧王の意識。

 私が目一杯踏み込むとアダマンタイトで出来た床石は大きく割れて小さなクレーターが出来る。

 そしてその勢いのまま白鎧王へと突撃した。


「金閃迅!」


 今までの速度の比ではないほどの加速が生まれ、両手に持つ短剣からは金色の魔力の刃が白鎧王の身体を引き裂く衝撃を伝えてくる。

 理力魔法で作った足場も飛び立つたびに砕け散り、迸る閃光となって白鎧王を包み込んだ。

 そしてその足下へと着地すると最大限魔力を込めた一撃を天に向かって振り抜いた。


「亢閃剣!」


 振り抜いた勢いで自分の身体も広間の天井近くまで飛び上がってしまった。

 下を見れば金閃迅によって既にボロボロになった真っ白な鎧が真っ二つに斬り開かれて赤い宝玉が強い輝きを放っているのが見えた。


「アイカァァァッ!」

「さっすがセシルやな…これで終わりや! 新奇魔法『ディストーションエクリプス』!」


 アイカの聞き覚えがない新奇魔法は彼女を包んでいた邪魔法特有の黒い魔力が吐き出されるように黒い球体となって放たれた。

 それはユラユラと白鎧王へと近付いていき鎧を破壊されて身動きの取れない巨体へと触れた瞬間、陽炎のように空間がぐにゃりと歪み渦を巻いて広がっていく。

 そして白鎧王を包み込むほどの大きさになったかと思えば急激に萎み出して、最後にはぽんっと間の抜ける音を立てて消えてしまった。


---魔王種の撃滅に成功しました---

---egg所有者同士の戦闘終了を確認しました---

---能力解放、周辺部保護を終了します---


 間を置かずにいつも通りのアナウンスが流れた。

 しかし前回オーガキングを倒した時と違ってegg所有権が移るとかそういう話は無かった。

 パーティーで倒すと所有権委譲にはならないのかな?

 でも戦闘前には所有権委譲戦闘を開始しますとか言われたような気がする。


「な、なぁセシル…なんやったや今の…」

「eggっていう私も持ってるよくわからないレジェンドスキルを持ってる魔物のことを『魔王種』って言うみたいだね」


 アナウンスが流れたとはいえ、アイカは周りを警戒しながら私の元へとやってきた。

 魔王種については実際のところ私もよくわかってないけど。


「…なんかウチにもそれ生えたんやけど…」

「え?アイカのとこにいったの?」


 驚いて問い掛けると同時に人物鑑定を使ってアイカをじっくり見ようとしていたが、神の祝福のせいで鑑定が弾かれてしまう。

 つい癖になってるとは言え、私が鑑定をしたことをアイカにはバレてしまうので訝しげな顔をさせてしまった。


「ウチら同士じゃ見れんのはわかっとんのに何をしとんのや」

「ごめん、つい…」

「…これ見ると四つ集めると新しいスキルが手に入る、ってことなんか?」

「んー、私もよくわかんないんだよ。とにかくこれを持ってる人とか魔物同士で戦って勝った方にeggが移るみたい」

「はぁ? …まぁようわからんけど、とりあえずこの鎧はもう倒したってことでえぇんやろな?」

「それは間違いないと思うよ」

「どのみち復活されたらもう手に負えんだろう」


 さっきちゃんと撃滅しましたってアナウンス流れたしね。

 私達が話し込んでいる間にクドーも武器を片付けてフラフラしながらこちらへとやってきた。

 まともな攻撃を受けたのは私だけだけど、クドーも何度か白鎧王の攻撃を受け止めていたので消耗は激しいはずだ。


「まぁようわからんことは後回しやな。とりあえずセシル、服なんとかしい」

「へっ? ひゃあぁっ?!」


 アイカに言われて自分の体を見下ろすとさっき白鎧王の攻撃を受けた左胸のあたりの制服が焼け焦げて無くなっており、辛うじて危ない部分を隠せているだけの下着が丸見えになっていた、

 アイカもクドーがこっちを向かないように視線を向けると彼は最初から興味がなかったか、ただの紳士かわからないけどこちらを一瞥すらしていない。

 その隙に腰ベルトから取り出した掛布団代わりにしていた布を取り出すと肩に掛けて胸の前で止めた。これなら見られることもない…けど、制服新調しなきゃなぁ。

 自分の服のことが片付いた後、戦闘後の広間の様子を視線を泳がせながら確認する。

 この広間の床はアダマンタイトで出来ているとは言え、あちこちが割れたり陥没している。しかしかなり広い部屋だったおかげで壁にある迷宮金は全くの無傷だった。


「…あー、採取は後や。今は休も」


 そして彼女はその場で後ろ向きに倒れ込んだ。

 あんまり勢いよく倒れたら頭打っちゃうよ。

 アイカのレベルなら痛いくらいでしかないだろうけど。


「俺も、賛成だな」


 そしてクドーもその場に座り込んだ後、やはり上体を後ろに倒した。

 そんな二人を見て、私もバタンとその場に倒れ込む。

 とにかく勝てて良かった。

 思った以上に無茶苦茶なダンジョンだったけど、この後迷宮金の採取をしてダンジョンマスターの部屋に行けば制覇となるはすだ。

 残念ながらギルドから魔道具を受け取ってきていないので正式な制覇扱いにはならないけど、私達はやりきったということを私達が証明出来ればそれでいい。どうせそれはオマケでしかないのだしね。

 視線の先、遠くにうっすら輝く迷宮金の天井を見つめながら三人共無言で達成感を味わっていた。

 クドーの回復をしようかと思ったけど魔人化を使ったため怪我はもうないようだし、アイカもじわじわとMPが回復してきているはずなので余計なことを言ってこの達成感に水を差すのは控えることにした。

今日もありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >魔人化を代償無しで使える。このスキルを発動すると時間経過によってレベルが下がる。 代償、あるじゃないですか……。 魔人化がスキル使用時間でレベルが下がる代償へ変わる。 とかに書き換…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ