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第150話 王都管理ダンジョン 1

 さて。

 私とアイカ、クドーの三人はアイカの店を出るとそのまま西門から出て王都管理ダンジョンがある少し離れた集落へと向かった。

 ダンジョンの近くは集落というより小さな町のようになっておりギルドの出張所もあるし、ダンジョンで使うであろう道具類や武器防具を取り扱う店、休憩所や酒場なんかもある。

 住民らしき人はその店の関係者くらいなのにこの近辺にいる人はかなりの人数がいる。その人達は全てが冒険者と思われるけど、中には冒険者っぽくない子もいる。見ていると、どうやら冒険者に付き添う荷物持ちのようだ。

 なるほど、一般の冒険者は魔法の鞄がないからそういうものも必要になるのか。

 そしてその荷物持ちの子どもは冒険者達に小突かれながらヨタヨタとついていった。

 なんかヤダな、あぁいうのは…。


「何見とん?…あぁ、荷物持ちか。アレ孤児達にとってはいい仕事らしいで?」

「孤児?」

「ウチの店の近くにもちょっとおったやろ?親を亡くした子とか捨てられた子なんかがやっとんのや」

「捨てられた…」


 その必死についていく子どもの背中を見送りながら、自分の過去を思い出して悲しい気持ちを何とか抑えつけた。私も親に捨てられたようなものだし、とても他人事ではない気がしてしまう。


「変な同情すんなや?孤児を一人二人助けたところで何も変わらんのやからな」

「……わかってるよ。うん、それじゃ気を取り直してダンジョンに行こうか」


 見るとクドーは退屈そうに近くの武器屋に並べられている武器を眺めている。

 私から見てもあれではクドーの作った武器ほどの性能はないだろうに、あそこまで熱心に見てるのはなんでだろう?


「む?話は済んだか?」

「うん、ごめんね。それでクドーは何で熱心に武器を見てたの?」

「あぁ…。武器作りの参考にな」


 ふうん?デザインか何かのだろうか?

 でも確かクドーってデザイナーってタレント持ってたと思ったんだけどなぁ?


「ほな行くでー。はよ行かんとその分遅くなってまうよー」

「はーい、今行くよー」


 私はクドーに視線を走らせると二人で少し早足になってアイカへと追いついた。




「俺達は構わんが、冒険者ギルドの魔道具無しで入るのは止めておいた方がいいぞ?」

「えぇんやって。ウチら慣れてるんや」

「そこまで言うなら止めないが…もし遭難しても助けにいけないからな」


 そう言ってギルドから委託された衛兵達はダンジョンへと通じる扉を開けてくれた。

 外から見るとただ暗いだけで中の様子はわからない。

 この世界に来てから洞穴のようなところは入ったことがあるけど、ダンジョンに入ったことはない。

 一体中がどうなっているか…さすがの私でもちょっと緊張する。


「ほな行くでー」


 しかしアイカは私の緊張などお構いなしにズカズカとダンジョン内へと足を踏み入れていった。


「先に行くぞ。セシルもあまり気負わずにな」


 クドーも特に気にする様子もなくアイカについて中へと足を踏み入れた。

 扉をくぐるとすぐに下へと降りる階段になっており、外から差し込む日の光を頼りに私はどんどん降りていく。

 階段が終わったところでアイカとクドーは私を待ってくれていた。

 二人の前にはまた扉があり、その先が第一層かと思われる。


「この先が第一層なんやけど…えぇか?中入ってもびっくりするなや?」

「うん?どういうこと?」

「中に入ればすぐわかる」


 二人の言葉に首を傾げながらも徐々に開かれていく扉を眺めていた。

 扉の中からは光が溢れてきていて中の様子を見ることは出来ない。そして扉が開かれるとアイカとクドーはそのまま中へと入っていった。

 私も二人の後に続いて扉をくぐる。そして扉を通り抜けると同時に光は無くなり、目の前には草原が広がっていた。


「…は?草原?」

「…まぁ驚くな言うても無理やな」

「お前も最初はそうだっただろう?大騒ぎしない分、セシルはまだマシだ」


 アイカのことだから多分あの関西弁で相当大騒ぎをしたんだろうね。


「ま、そんなわけでダンジョンの中はこんな風によくわからん構造になっとんのや」

「とりあえずだいたい十層ごとに環境が変わるようになっているな。全てのダンジョンがここと同じわけではないがな」

「ふうん…。やっぱり異世界だけのことはあるね」

「第一層はそれこそ野生の獣と変わらんような魔物しかおらへんし、とっとと次の階層行くで。というか、ウチらなら途中は全部すっ飛ばしてっても問題あらへん」


 クドーもアイカの言葉に首肯すると体をほぐし始めた。

 なんとなく予想はつく。


「よーい…どん!」


 そしてアイカが叫ぶと同時に私達は走り始めた。

 多分下の階層に降りるところはアイカが知ってるだろうし、私は二人を追い抜かない程度についていけばいい。

 ほぼ三人並んで走っていると所々に冒険者と思わしき反応がある。感じられる魔力や気配からランクは低いものと思われるけど、一層の魔物相手にやられることはないと思う。

 荷物持ちの子は別だけど。


「セシル!余所見してると魔物にぶつかるで!」

「え?うわっと!」


 アイカに声を掛けられて前を向くとちょうどウサギのような魔物が私に向かってきていた。

 それを右手で薙払うとウサギ型の魔物は地面に叩きつけられたかと思いきや、そのまま光の粒になって消えてしまった。

 そう言えばクレアさんからダンジョンで魔物を倒しても素材は手に入らないって聞いてたけど、こういうことだったんだね。


「危ないで!今日中に四十層まで行くんやからな!」


 …うそぉ…。

 一つの階層がどのくらい広いか知らないけど、確かクレアさんは五十層に辿り着くまでに一般的なBランクパーティーで三日くらいと言ってたはずだ。

 それを一日とちょっとで到達しようとしてるなんてどう考えても異常だ。


「セシル、俺達ならそれが普通だ。お前は今まで異常扱いされてきたからおかしいと思うかもしれないが、俺達と一緒にいる間は忘れろ」

「クドー…」


 そっか。

 「普通」なら「異常」と思われるような力でもこの二人といる間なら気にしなくていいんだ。

 散々理不尽だの規格外だの言われてきたけど今なら全力出してもいいんだ。

 そう思えば自然と体が軽くなる。自分の奥底から湧き上がってくる力を抑えつける必要なんてない。ただやりたいようにやればいいんだ。


「もう大丈夫そうやな。それじゃペース上げてくで!」




 途中で倒した魔物はどれほどだっただろうか。

 目の前にいる魔物も遠くから向かってくる魔物も私達の進行を妨げることは出来なかった。

 私の前にくれば剣や魔法で薙ぎ払われ、アイカの前に行けば魔法で焼き尽くされ、クドーの前では細切れにまで切り裂かれる。

 何組かの冒険者パーティーを見かけたけど、私達が走っていたことしか見えなかったはずだ。下手に私達の力を見られたりしないようアイカも私もかなり遠くから魔法を使っていたしね。

 ペースを上げて走っていたおかげで私達は現在五十一層の扉の前にいる。

 五十層が中層最後ということもあってダンジョンの中ボス?みたいなのもいたんだけど、一瞬でクドーが四分割していたので私もアイカも何もしていないから疲れと言えば走り続けたことだけだ。

 そうそうダンジョンでは十層毎に迷宮層があり、そこだけは迷路のようになっていてあちこちに罠があった。クレアさんが言ってたのはこのことだと思う。

 それもアイカの神の眼で一発看破して避けるか発動させてからクドーか私が対処すれば十分なものだった。

 迷路自体もアイカが順路を覚えているようで迷うことなく下層へ続く階段までのルートを一直線に走り続けるものだから、ここまでほぼノンストップ。普通なら三日。でも私達なら一日。普通じゃない。


「なんやセシルご機嫌やな?」

「ふふっ、普通じゃないってすごいんだね!」

「んぁ?なんやねん?当たり前やろ?」


 アイカは私が用意した食事を済ませ、既に寝る準備に入っている。

 ここは階層の合間なので魔物に襲われる可能性が非常に低い。

 極稀にダンジョン内での連鎖襲撃(スタンピード)が起きた時には問答無用で魔物が通るらしいけど、今はその兆候もない。

 クドーも武器の手入れをしながらリラックスしており、終わり次第寝るのだろう。

 念の為絶対領域(アブソリュートエリア)を使っているけどアイカからは「MPの無駄やで。別に止めたりせぇへんけど」と言われた。

 備えは大事だからね。止めないなら口も出さなくていいと思うんだけど。


「とにかく明日も仰山走るんやから早めに休みぃや?」

「うん、ありがと。そうするよ」

「ほなな」


 食事の片付けも終わり、寝床の準備が終わる頃にはアイカの寝息が聞こえてきていた。

 クドーも武器の手入れを終えとっくに眠りについている。

 私も二人に倣って簡易な寝床に潜り込むと一日中走った疲れからかすぐに夢の世界へと旅立ってしまっていた。




 翌朝目が覚めると同時に見慣れない景色だったため咄嗟に短剣を構えたけどダンジョン内で野営したことを思い出した。

 二人はまだ寝ているので起こさないように自分の寝床を片付けると朝食の準備に入る。

 私の腰ベルトには少なくとも冒険者五、六人が一カ月は過ごせるくらいの食糧が常に入っているので、残りの食材を思い出しながら今朝のメニューを考える。

 すぐに行動を始めるかもしれないので重くなりすぎないように野菜とソーセージのスープと自分で焼いたパンを用意した。

 この世界のパンだと固くてイマイチ好きになれなかったのでなんとか酵母を作って自作したんだよね。

 今ではリードの大好物だけど、これはクアバーデス家のコックであるモースさんにも渡していないレシピなので、今のところ食べられるのは私の関係者だけということになる。


「アイカ、クドー、朝ご飯出来たよー」


 私が呼び掛けるとクドーは薄く目を開けてゆっくりと起き上がった。キョロキョロと辺りを見回してダンジョン内にいることがわかるとのんびりと寝床を片付け始めた。

 時折動きが止まったかと思うと座ったまま寝ていて、その度にビクッとして行動を再開している。

 ハッキリ言ってかなり可愛い。ギャップ萌えってやつですかね?

 それに対しアイカは…。


「あと五分んん……」


 そんなお約束なセリフはいいから!

 私はアイカが被っている厚手の布を勢いよく引っ剥がすのだった。

今日もありがとうございました。

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