第14話 プロポーズ?
昨日のPVが今までにないくらいの数字になっていてびっくりしました。
今後もゆっくりと進めていきます。
7/28 題名追加
キャリーの家を出た私はそのままの足でコールの店に向かった。
ユーニャの家に行きたいけど、昨日出会ったばかりだからどこにあるのか知らない。知ってそうな人といえば雇い主の息子のコール。というわけでのんびり歩きながら向かってる最中である。
転生ポイント:53
さっき自分のステータスを見ていたときも気付いてはいたんだけど上がってる、よね?
確か前回見たときは35だったと思う。
魔物を倒すことで上がる?
それとも人を守ることで上がる?
どちらもまだ検証が足りてないので結論を出すことができない。折角のスキル鑑定でも転生ポイントはスキルではないので確認ができない。
もーーーー、鑑定って言っても微妙に使い辛いよね!
頬を膨らませて少しイライラし始めたところでさっきのキャリーの顔を思い出して一人で笑うのだった。
この数字を見てると早く上げなきゃと気持ちが焦ってくるので無理矢理に頭の片隅に追いやる。どうやったら上がるのかわからない以上、今は焦っても仕方ない。
「おじさんこんにちは」
「お?セシルちゃんじゃないか。セシルちゃんは家から出してもらえてるのかい?」
「え?どういうこと?」
「昨日のあの騒ぎを起こした悪ガキたちはしばらく家に閉じ込めておこうって話になってたのさ」
あー。
実際仕方ないよね。こんな村じゃ大した事件も起こらないんだし、昨日のは本当に大騒ぎだった。
それにしてもミックやアネットは褒められただけで何もないかと思ったらそんなわけはなかったのね。でも村に来ていきなりそんなことに巻き込まれたユーニャはもう私たちと遊んでくれないかもしれないね。
「本当に反省してるよ。父さん母さんにも約束したから、もう無茶はしない」
「うん、セシルちゃんなら大丈夫だろうさ。それで、コールに用事かい?」
「ううん、コールは多分今頃勉強ばっかりしてるんだろうなって思ってるよ」
多分部屋で缶詰にされながら朝から晩まで勉強なんだろうなとは最初から思っていた。
「ユーニャの様子を見たいんだけど、どこに住んでるかわからないから聞きに来たの」
「ふむ。教えるのは構わないがあの子は巻き込まれたんだろう?会ってもらえるのかい?」
「会えなくてもいいの。巻き込んでしまったのは事実だし、ちゃんと謝ろうと思って。それで許してくれなかったら…」
「許してくれなかったら?」
「遠くからユーニャが笑顔になれるまで見守る、かな」
私が思いつめて俯くとコールの父親はニヤニヤして顎髭をじょりじょりと擦った。俯いてる私にはその顔は見えていないが、商人らしい何か企んでるような悪い顔をしてるのかもしれない。
「お父さん、セシルちゃんを虐めちゃダメよ」
「ほんとお父さんはセシルちゃんには意地悪よね」
店の奥から女性が二人出てきてコールの父親を窘める。二人ともコールの姉で、確か10代後半くらいだったはず。コールとは随分年齢が離れているが、それは聞かないのが子どもの心遣いというものだろう。
いや適当です。別に聞いても仕方ないだけで。
この世界では結婚してもおかしくない年齢ではあるが二人とも今のところはまだ家業を手伝っており、結婚というような話は聞かない。単純に私の耳に入っていないだけかもしれないが。
「ユーニャちゃんの家は…」
真ん中のお姉さんが指差しながらユーニャの家の場所を教えてくれた。
一番上のお姉さんはコールの父親に説教中。「もう一人女の子が欲しかった」「コールにはまだ早い」「本人の気持ち」等、不穏な言葉が聞こえてくるがスルーしておこう。
「それとユーニャちゃんは怒ってないはずだから気楽に遊びに行ってあげてね」
「うん、ありがとうお姉さん」
コールだけがいないコール一家にお辞儀をしてその場を走り去ることにして、そのまま教えてもらったユーニャの家に向かう。
ユーニャの家はコールの店から少し離れた家が密集気味の区画にあった。ずっと以前から空家だったところを買い取ったか借りてるかしているようだった。
しばらく人が入らなかったせいか、その家は少しくたびれているようだが普通に生活する分には困ることはなさそうだ。
私はノックするのを一瞬躊躇った後、意を決してドアを叩いた。
コンコンコン
「こんにちはー、ユーニャいますかー」
声を掛けてしばらくすると家の中からバタバタと音がして、勢いよくドアが開いた。
「セ、セシル!?どうしたの?なんでウチを知ってるの?」
「えっと、家はコールのお姉さんに教えてもらったから。ここに来たのは、ユーニャどうしてるかなって思ったからだよ」
「そ、そっか。じゃあ入って入って」
「うぇ?…お、お邪魔します」
思った以上の明るさでユーニャが出迎えてくれたものだからこっちの方が少し驚いてしまった。
一声掛けて中に入ろうとする私に首を傾げたユーニャが「ナニソレ」と言いながらも手を引いて招いてくれた。
ダイニングテーブルではユーニャの母親らしき人が何やら作業をしており、私を見つけると優しそうな瞳で微笑んでくれた。
「こんにちは、ユーニャの友だち?よろしくね」
「こんにちは、セシルと言います。こちらこそよろしくお願いします」
「あら…。ユーニャ、この子どこかの偉い人の子なの?とても礼儀正しいのね」
「セシルだよ。ほら、昨日からずっと話してるでしょ。この村でできた最初の友だちだよ」
改めて本人の目の前で友だち宣言されるのも恥ずかしいもので、私は頬が急激に熱を帯びてくるのを感じていた。
ユーニャ本人はそれをとても嬉しそうに話しているけども。
「ユーニャのお母さん?昨日はとても心配を掛けさせてしまってすみませんでした」
まずは気になっていたことを片付けてしまうために最初にこの話題に取り掛かることにした。
これでも元社会人(ほんの数か月だけどね)。相応の礼儀で話すことくらいはできる。
「あら。私はこの子の祖母よ?それと確かに心配はしたけど、この子ったら帰ってきてずっと楽しそうに貴女のことばっかり話してるのよ」
「お、お婆ちゃん!恥ずかしいからそういうこと言わないでってば」
ユーニャのお婆さんは目を細めて嬉しそうに話してくれるが、当のユーニャは顔が真っ赤だ。よほど恥ずかしいらしい。どちらもそれほど気にしていない様子だ。
とは言え、危険な目に遭わせてしまった負い目は私から解放されるわけではない。穏やかで優しそうな二人に対して私はバツの悪い顔で俯いてしまう。
「この子がこの村に来てこんなに楽しそうにしているのを初めて見たわ。昨日のことは確かに危ないことだったかもしれないけど」
「う…ごめんなさい」
「すみませんでした」
お叱りが続くと思って私とユーニャは二人揃って頭を下げたが、お婆さんの言葉は続く。
「それでもユーニャがこうして笑顔でいてくれるなら、これからも仲良くしてあげてちょうだいね?」
「っ!…はい。ユーニャとはずっと友だちでいたいって私も思ってます」
お婆さんの言葉に一瞬息を飲んだが、その覚悟のために本気で私も答えた。
確かにユーニャには不思議な何かを感じることがある。それが何なのかはわからないけど、そういう一種の勘は前世からも大事にしてきた。
「セシル…ありがとう!私セシルをお嫁さんにするよ!」
……や。なんでそうなるの?
ほら、お婆さんも笑ってるけど微妙な感じになってるでしょ?
「お、女の子同士じゃ…結婚はできないんじゃないかなぁ…?」
さも当たり前のツッコミをしてみることにした私だが、続くユーニャの言葉に再度戦慄することに。
「『男が稼いで家族を養う』ってやつでしょ。パパもよく言ってるから知ってるよ。だから私も立派な商人になってセシルをずっと養ってあげるね!」
ダメだこの子…早めになんとかしないと。
私は全力でお婆さんの方を振り返ると、お婆さんは長年の経験からかそよ風のように目線を逸らした。
このお婆さん、慣れてる?
ユーニャは思い込みが激しく、そして思ったら一途で猛進する。純粋故に悪意も他意もない。無碍に扱うわけにもいかず、家族も少し困ってると。
私は出会って二日で意外な一面を見させてもらったよ……。
その後はお婆さんも含めて昨日の森での一部始終を私視点から話したり、ユーニャが前に住んでいた町のことを聞かせてもらったり、亡くなってしまったユーニャの母親のことを聞かせてもらった。
その中でわかったことは、ユーニャのこの猪突猛進な性格は実に母親譲りだとよーーーくわかった。
ユーニャのお父さんに逆プロポーズして結婚したのだそうだ。
今後のユーニャとの付き合い方で注意しないといけない点がいくつか浮き彫りになった。もちろんとても良い子だし優しいし素直、それになんと言っても友だちだ。
友だちは大事にしないとだよね。私に出来ることならなんでもしてあげ…と言っても今の私にできることなんてたかが知れてるかぁ。
ユーニャの横顔を見ながらそんなことを考えてるとユーニャもこちらを振り向いた。キョトンとした顔が可愛くて微笑むとユーニャも同じように笑ってくれた。そして突然テーブルの下でユーニャから手を繋がれてびっくりしたけど、悪い気もしなかったので私も握り返すとそのまま帰るまでつないだままだった。
日が傾いてきて世界が茜色に染まってくる頃、私はずっと握りっぱなしだったユーニャの手を離した。
手を離した瞬間に私とユーニャの間になんとも言えない空気が流れたが気にしたらいけない。というか私にそっち方面の気はないからっ。
「今日は長い時間ありがとうございました」
「セシルちゃんならいつでも歓迎よ。またいつでもユーニャを訪ねてきてね」
「セシル、また一緒に遊ぼうね!」
「ふふ。うん、またね。それじゃおやすみなさい」
玄関のドアから手を振りながら見送ってくれる二人に私も手を振りながら答える。
ある程度離れたところで身体強化を使い駆け足で家路に就くのだった。
これを書いているときに小さいときからの友だちと何となく話したくなって会いに行きました。
どしたー?なんて言いながら久し振り、とも言わない友だちになんとなくー、とだけ返事したものです。




