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第126話 当然海の幸を堪能しなきゃね!

遅れましたがなんとか更新です。

 クラーケンを海の中へ引きずり込まれながらもやっつけた私だけど、船に戻るまでゆっくり泳ごうとしていたところこっちに向かってきている大きな魔物の反応に気付いて急いで船まで戻ったところ。

 そして今向かってきている魔物の反応はかなり多い。

 それぞれは特段大したこと無さそうなので船の乗組員さん達でもなんとかなりそう。

 この船の乗組員さん達の平均レベルは三十くらいなので脅威度Bまでの魔物ならなんとか撃退できると思う。

 問題は大きな魔物の反応だけど、これはクラーケンほどではないものの脅威度Aはある。しかもそれが二体。となればさすがに乗組員さん達の手には余ってしまうので、そちらは私が引き受けることにするつもりだ。

 水棲魔物相手に無敵の効果を出す電撃魔法で動きを封じてしまえば何とでもなることはさっきのクラーケン相手でも証明されたしね。


「そろそろ来るよっ!」


 誰とも無しにそう叫んで、私は飛び立って大きな魔物の進行方向へ電撃魔法を打ち出すのだった。




 あれから鐘一つ分くらい経って私を乗せた船は出発した港へと戻ってきた。

 今は三の鐘の少し後。

 港には相変わらず船がたくさん停泊しており、出発の時を今か今かと待ちわびているようだ。

 そしてその港の岸壁に多くの人が集まってこの船が戻るのを待っている。

 出発するときには赤い帆にいっぱい風を受けて勇ましかったこの船だけど、今はもう見る影もないほど傷ついている。

 大きな帆が張られたマストは折れ、船体のあちこちに穴や傷がついている。

 もっと言えば船底にも穴が空いてるのですぐにでも修理しなければならない。今は応急手当てとして甲板の一部を使ってなんとか塞いでいるにすぎない。

 こんな状態なので普通は動かすことすら出来ないが、そこは…ね?ここまでいろいろやったんだし、今更出し惜しみする必要もないでしょ。

 乗組員さんに聞いてマズの方向を確認した私が力操作で船を押していたわけだ。


「戻ったぞーーーっ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」


 乗組員さんの一人が船の上から叫べば、それを上回る大きな歓声が上がる。

 聞いた話だとクラーケンが出るようになってからは漁に出て戻っただけでもこんな調子らしい。

 今日からはこんなことないけどね。


「このお嬢ちゃんがやってくれたぞ!俺達はもうクラーケンに怯えたりしなくていいんだっ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」

「海は俺達のもんだっ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」

「このお嬢ちゃんは俺達の天使だっ!」

「「「おおぉぉぉぉぉっ!!」」」


 いや最後のやつ!絶対さっき私のパンツ見た人でしょっ?!

 私はすかさずそう叫んだおじさんの後ろへと移動して天魔法を放った。

 その不審なおじさんは風の勢いに飛ばされて、大きく宙を舞い岸壁の近くまで行って海に落ちた。

 その様子を港にいた他のおじさん達は指を差しながら大爆笑している。

 助けないの?


「いやぁ…本当に助かったよ。お嬢ちゃん…いや、もうお嬢ちゃんなんて呼べねぇなっ!セシルちゃん!ほんっとうにありがとうっ!」


 ここまで面と向かってお礼を言われるとなんだか照れ臭いね。

 少し噛みながらも「どういたしまして」と告げると船の乗組員さん達も港にいた漁師さん達も大きな歓声を上げて盛り上がってくれた。

 いつまでもこんなのが続いたら私の顔が熱くなって仕方ない。ちゃんと熱操作は働いてるよねっ?!


「そ、それよりほら、捕ってきた物を出さないといけないよね?」

「おぉ、そうだったなっ!おーーいみんな!あっちの広いとこに移動だーーっ!」


 乗組員さんの一人が他の人を誘導して港の広いところへと移動していく。

 本来なら市場にでも使っていそうな倉庫のような場所へ移動すると私の前にはかなりのスペースが確保された。

 そこへ魔法の鞄から出したように見せかけて空間魔法の出口を作り出しクラーケンを含む獲物を全て吐き出した。

 クラーケンだけでも十メテルはあるのだが、それ以外にも大物の魔物が二体いたし他にも大型の魚や魔物がどんどん積み上がっていく。

 全部で五十体くらい出したところでようやく打ち止めになり、ようやく私の異空間の中が空になった。

 すっきりしたところで私もさっきはあまり落ち着いて見ることがなかった獲物をじっくりと見ることができるぞっと。


「こりゃぁ…なんというか…」

「…あぁ。なぁ、セシルちゃんはこう…人に理不尽とか規格外とか言われたことねぇか?」


 いっつも言われてますっ!

 とは言わずに「はははは」と乾いた笑いを浮かべていると、どこからか「嫁に…」「いやこの港の長に」「セシルちゃんは天使」とかっておいっ!戻ってきたのっ?!

 いい加減げんなりしていると漁師さん達はぞろぞろと動き始めて魚や魔物を仕分けし始めた。

 どうやらこれからすぐにでも仕事を始めるようだ。


「さて、これだけの獲物だ。新鮮なうちにセシルちゃんに味わってもらおうか?」

「おぉそりゃいいなっ!セシルちゃんびっくりするぜぇ?」


 漁師さん達が嬉々として魚や魔物を選りすぐっていくが、私はそれについていけずに瞬きしながらただ眺めていた。

 あっという間に魚は選ばれて漁師さん達の手によってどんどん捌かれていく。

 気付けば私の目の前には懐かしい料理が大皿に乗って鎮座していたのだった。


「これ…」

「へへっ…セシルちゃんどうだい?こいつは俺達漁師や船乗りしか食わねえんだ」

「王都から来たセシルちゃんにゃびっくりするかもしれねぇが、すげぇ美味いんだぜ?」

「こいつを、魚で作った黒い汁に浸けて食うのが一番さっ!さぁ食ってくれっ!」


 漁師さん達は嬉しそうに、いやどちらかというと悪戯心を満載させた笑顔で椅子に座らされた私を見ている。

 目の前にある料理を食べるところを見たいのだろうけど…あまり良い趣味じゃないと思う。

 なるほど、確かに王都の人には縁がないかもしれない。

 こんな風に生の魚を食べるなんてね?


「これ、お刺身……」

「オサシミ?なんだそりゃ?」

「…ううん、なんでもないっ!食べていいのっ?!」

「お、おぅ…。セシルちゃんは平気なのか?」

「平気も何も大好きだよっ!いただきますっ!」


 目の前にある大皿から手掴みで一口大に切られた赤身の魚を取ると小皿に入れられた黒い汁に浸けて口の中へと入れてみる。

 歯応えや味は完全にマグロだった。

 そして予想通り黒い汁は魚醤のようなもので前世で使っていた醤油とは風味が違うけど、これはこれでお刺身にとても良く合う。


「美味しいっ!次はこれっ!」


 次に掴んだのは白身の魚で噛み締めるとコチコチと良い歯応えがして、噛めば噛むほどにその身から旨味が溢れてくる。

 前世でも食べたことのないその味はとても新鮮な味わいだ。

 他の魚も食べたくて一つずつ口へ入れてはじっくりと味わっていくが、漁師さん達はあまりに抵抗無く私が食べていることを不思議に思っているようだ。


「なんだよセシルちゃんは生の魚でも食えるのかよ…」

「折角びっくりさせようとしたのになぁ?」


 不思議に、というより食べるのに抵抗が無くて少し不満な様子。

 元日本人で刺身嫌いな人はそういないと思うけどねっ!


「そんなことないよ。すごく美味しくてびっくりしてるもん。でも…あのクラーケンは食べないの?」

「はっ?!あの化け物をかっ?!いやいやいや、あんな気味が悪ぃのなんか食う奴ぁいねぇよ!」

「えぇぇ…。クラーケンみたいなのって水揚げされたりもしない?」

「あー…たまに網にかかるけどな。クラーケンの子どもだってすぐ殺して海に捨てるんだ」

「勿体ないなぁ…。じゃあ他に食べてみたいのを選んでもいい?」

「…いいけど…本気かい?」


 私は椅子から立ち上がると捕ってきた魚や魔物が仕分けされている方へと向かい、一つずつ見ていく。

 さすがに魚は詳しくないのでよくわからないし見分けもつかない。

 そして廃棄する物が入れられてる箱を覗き込むとそこには見慣れた生き物が。


「…イカだ」

「おいセシルちゃん、それは捨てるやつだぞ?その白いのはたまに漁で捕れるんだが見た目が気持ち悪いからすぐ捨てちまうんだ」

「えぇ…勿体ない。…てことはこっちも?」

「それもだな。なんか黒いし、足が多いから海虫って言ってみんなすぐ捨てちまうな」

「…な、なんてことを…こんな大きなエビとカニを…?」


 鮮度が落ちたら勿体ないので、廃棄物の箱からカニを出すとすぐさま宙に浮かべた水を熱操作で熱湯にしてその中へと放り込んだ。

 見た目は正しくズワイガニだけど、足の太さが旬のサンマくらいあり、胴体も私の頭以上のサイズがある。

 これはかなり期待出来そうだ。

 更にまるっきり伊勢エビの姿をした、漁師さん曰わく海虫を掴むと近くにあったナイフでざくざくと頭と胴体を切り離した。


「うぇっ?!セ、セシルちゃん…そんなの食うのか…?」

「勿論!」


 お腹の殻を剥いてみるとまるでムーンストーンのような半透明のぷりっとした身が顔を出した。

 それを慎重に殻から剥がし、一口大に切ってお皿へ盛り付ける。

 次にイカもゲソはぶつ切りに、体の薄皮を剥がしてから細く切っていく、もちろん耳までしっかりと。

 そうこうしてる間にカニが茹で上がったので、今度は冷水に入れて冷ましこちらはその姿のまま盛り付けた。

 最後は当然クラーケン!

 というか…茹でダコだね。

 足の先を少しだけ切って吸盤だけ切り捨てた。

 見た感じだと吸盤にはだいぶ汚れが溜まっているようだったのでこちらは仕方なく廃棄することに。

 あのコリコリとした食感は私も好きなんだけど仕方ないね。


「ということで…はいっ!出来ました!みなさんもどうですか?」


 私は非常に満足して先程座らされた椅子に再度腰掛けて今自分で作ったお刺身をみんなにも勧めながら、早速自分でも食べてみることにした。

今日もありがとうございました。

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