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第100話 王都での初依頼

祝!100話達成!

今後も頑張ります!

閑話を入れたら既に達成済みなのですが、メインストーリーでの達成は嬉しいですね。

 目移りしてはいけないと思い、テーブルの上を一旦片付けた私は落ち着くために一度お茶を淹れた。

 部屋には音が漏れないように魔法を掛けてあるけど、一旦出てしまうと再度掛け直さないといけない。下手にゴソゴソしてリードを起こしてしまうとまた時間を取ってしまうので腰ベルトに入れてあるいつか作った乾燥ハーブ入れたお茶をゆっくり味わう。

 とりあえず宝石を見ていた興奮は徐々に収まってきた。

 既にさっき部屋に入ってから鐘一つ分は宝石に見入っていたので時間としては既に深夜。そろそろ日付も変わろうかという頃合いだ。

 遮音結界(エリアミュート)を使っているのでこの部屋で私が出した声や音は周りに聞こえないけど、周りの音も聞こえなくなってしまうのでとても静かだ。

 あまりに静かすぎて耳鳴りがしてきそうだけど、そうなる前に作業を再開することにしよう。


 宝石を片付けた後に取り出したのはカンファが「最後の一箱」から取り出した物、魔石だ。

 もちろんそこらにある魔石程度なら自分で水晶を媒体にして作った方が内包魔力も多くなるので私には全く必要としないのだけど、あの時見せてもらったのはそんなものではない。


 コト コト コト


 買い取った魔石を全てテーブルの上に並べるとそれらは淡く光っていて、宝石よりも神秘的に見える。

 しかもこれらは特別な魔石。どう特別かというと…。


「…なんで宝石の中に紋章が浮かび上がってるんだろうねぇ…?」


 カボションカットされたような楕円形の魔石の中には竜を思わせる紋章が浮かび上がっている。

 他にも狼や鳥、判別できない獣、炎のような紋章まで様々なものがあり、それぞれ形もまちまちだ。

 竜の紋章が浮かび上がっているものだけがカボションカットされたようになっているが、他はただの結晶のように均一化されたカットが施されているわけではない。

 それは純粋にこの世界にカットの技術がまだないからというものあるが、これらは全て回収したときのまま何も加工されていないとのこと。

 もうわかるとは思うけど、この魔石は魔物を倒した際に回収されたものだ。しかもその倒した魔物の種族の絵が紋章となって浮かび上がっているのだという。

 つまり竜の魔石はそのまま竜を倒した際に得られた、ということなのだそうだ。そして名前をドラゴンハートと名付けられている。…なんの捻りもない命名だねぇ。

 他にもフェンリルハート、ナイトメアスピリット、ガルーダハート等…本当にもうそのままの名前としか言いようがない。

 余談、ではないが精霊と呼ばれる存在がこの世界にはあるようだけど、その精霊の入った石も強い魔力を持った石になるがこれは精霊石と呼ばれ魔石とは区別されている。

 それにしても宝石のように綺麗ではあるけど、宝石ほど私の食指は動かない。飾っておけばそれなりのオブジェにはなるのだけど厳密には宝石ではない。

 あくまでも魔物の中で生成された魔力的な物質であり、鉱物ではない。琥珀が一番近いだろうけど魔力があるという時点でちょっと違う。

 もちろんこれはこれで魅力的ではあるので今後も機会があれば集めていきたいとは思う。

 その後しばらく魔石を眺めていたがやはり宝石ほどの魅力を感じられず、少ししてから腰ベルトに片付けて床に就くことにした。




 翌日、朝起きてきたリードに朝食を食べさせると今日も出掛ける旨を伝えて早めに寮を出ることにした。

 リードは今日ババンゴーア様と合同で訓練をするらしい。

 いつの間にそんなに仲良くなったのか知らないけど、「リード」「ババン」と呼び合う仲なんだって。

 男同士の友情はよくわからないね。


 寮から出た私は昨日同様真っ直ぐ冒険者ギルドへと向かった。

 ギルドのホールに入ると朝早いこともあってかかなりの賑わいを見せていた。それこそすし詰め状態で鎧を着込んだ戦士や軽装の弓使い、魔法使いで溢れかえっている。

 とてもじゃないけどこんな人混みの中に私が入っていったらしばらく身動きできないようになるのは明白だ。なので私は異常なほど混み合っている掲示板の前を避けてBランク用のカウンターへ一直線に向かう。

 そこには昨日同様毒舌受付嬢のクレアさんが退屈そうな顔でホールの喧騒を眺めているのだった。


「おはようございます、クレアさん」

「おはようございます。…貴女は昨日の…セシルさん」

「はい、今日は依頼を受けに来ましたよ」

「そうですか。それは何よりです。ここ数日はBランク冒険者の方々は王都を離れているので暇を持て余していました。同じく暇なBランクの方が来てくださって助かります」


 …だから暇じゃないから。

 表情も変えずに毒を吐く彼女とまともに会話しようとするととても疲れてしまうからとっとと本題に入った方が良さそうだね。


「それで今受けられる依頼で日帰りできそうなものってどんなのがあるの?」


 ちなみに私の中での日帰りとは馬車で三日くらいまでなので彼女の想像するものとは大きくかけ離れているだろうけど、それはそれで構わない。


「そうですね…このあたりでしょうか」


 クレアさんは手元から数枚の依頼書を取り出して私の前に並べてくれた。


「バルムング草の根の採集。高純度金鉱石の採掘。ブラッディエイプの討伐…ってこれは昨日も見たやつだね」

「そうですね。バルムング草は王都の東にある高原で発見されますが、マイコニドやドライアドなどの植物系の魔物がよく見かけられます。それらは幻術の類を使うらしくきちんと対策をしないといけません」


 私も聞いたことはあるけど、マイコニドのようなキノコの魔物は幻術で相手を惑わせて体に菌を植え付けてその栄養を吸い取って新しい個体を生み出すと。

 菌床になって死ぬとか嫌すぎる。

 でも私には幻術の類は効かないんだけどね。異常無効スキルのおかげでちょっとやそっとのものでは私を惑わせたりはできない。それが毒であろうと魔法であろうとね。


「あと高純度金鉱石の採掘ですが、ギルドで把握している鉱山や鉱床では発見されなくなっています。ですのでセシルさんのように採掘の得意な方に受けていただけると助かります」


 金がそうそう出てくるはずないとは思うけど、私の鉱物操作ならそれも可能になる。純度が低い金鉱石が出てくる場所に行って鉱物操作をすれば簡単に集めることができる。ギルドマスターから渡された地図にもその場所は載っているし、王都からさほど遠くもない。ついでに他の宝石も採れたら幸いだしね?


「ブラッディエイプはバルムング草の高原から更に先に行くと岩山がありまして、そちらを巣にしているようです。近くを通る行商人からの依頼なのですがあまり使われることのないルートですし、ブラッディエイプ単体は脅威度Cの魔物ですがかなりの群れを形成しているのでその場合の脅威度はB扱いになります。ですのでこの依頼を受ける冒険者はあまりいません」


 あまりいないとか言っていいの?

 だからこの依頼ずっと残ってるんじゃないだろうか?

 クレアさんは毒舌というより無駄に素直すぎるせいなのかもしれない。

 ざっと説明を受けたけど、どれも王都からあまり離れていないので私ならすぐに終わらせることができそうだ。

 他にもグランドバイソンの肉、白銀ウルフの毛皮、キングレイクロブスターなどの納品なんかもある。どれも脅威度Bの魔物なのでパーティーで討伐に臨むのが普通らしいけどね。


「ひとまずバルムング草の採集かな。このあたりの土地勘もないことだし」

「畏まりました。幻術対策はしっかりしておいてください」

「あと、余裕があったらブラッディエイプの方にも行ってみます。討伐証明はどうしたらいいの?」

「ブラッディエイプの討伐証明は右腕の親指にだけ生えている真っ赤な爪です。ですがそこまで行くと日帰りは難しいと思われますし、お一人で行かれるのはとても危険です。いくらセシルさんが友だちのいないお子様だとしても無謀すぎます」

「うん、余裕があったらだから。時間的に厳しそうなら採集だけして帰ってくるつもり。あと友だちはちゃんといるから!余計なお世話だよ!」


 クレアさんは私に依頼書の写しを「お気をつけて」という言葉を添えて渡してくれた。

 さて、それじゃ王都の初依頼を片付けましょうか!

 私は未だに混み合うギルド内の人混みを避けながら外へ出ると急いで門の方へと走っていくのだった。




 門から町の外へ出た後、近くの林へと足を向けると近くに人がいないことを確認してから私は上空へと飛び上がった。

 高度は五百メテルくらいなので目の良い人には見えてしまうかもしれないのでちゃんと隠蔽スキルも使っている。

 さて、東の方角だったっけ。

 朝日が見える方へ目を向けるとかなり先の方に山へと繋がっている高原が確認できる。更にその高原の先が岩山になっておりいくつもの山が連なっている。

 確かにここのルートを通るような人はそうそういないだろうが、この山の向こうはバッガン男爵領なので全くいないというわけでもない。

 バッガン男爵領は盆地の僅かな平地にあり、長閑な農業地帯だとティオニン先生から聞いている。

 美味しい野菜があるなら一度は行ってみたいけど、当分先の話になるだろうね。

 ざっと上空から眺めているとクアバーデス侯爵領から王都へ入る際に寄った町も見えるし、ローヤヨック伯爵領へと繋がる山道の入り口も遠くに確認できた。

 あのあたりなら一日でも十分帰ってこれるだろうから覚えておこう。

 そのまま滑るように自分の体を東へと流していき、理力魔法と天魔法を併用して速度を上げていく。

 歩いていけば鐘一つ以上の距離があるけどこの飛行方法なら十分もすれば到着するだろう。

 地上を歩く人達には悪いけど折角の能力だから自重することなく使わせてもらう。私がこうして飛行できることを知ってるのは今はアドロノトス先生だけだ。でもこんな速度が出るとも思っていないはず。

 いつかはもっと早く飛べるようになりたいけどね。

 そう考えている内に目的地はすぐ目の前まで迫り、私は速度を落としてゆっくりと地面に降り立った。

今日もありがとうございました。

まだまだ続きますよー。

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