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第1話 結局理不尽には勝てない

書き始めてしまいました。

初投稿です。

誤字脱字、ご意見、苦情、いろいろ受け付けておりますが作者のメンタルはオカラ並みです。

気長にお付き合いください。


7/25題名つけるようにします

「京子姉ちゃん、はやくーーー」

「ちょ、待って。そんな急がなくてもお店は逃げないから!」

「お店は逃げなくても私が待ちきれないよー」


 なんでこんなテンプレを口走ってるんだろう…そんなことを考えるゴールデンウィーク真っ只中の休日。

 私、佐藤 京子(さとう きょうこ)は妹と一緒に買い物に来ていた。

 ここは私の住んでるアパートから電車で1時間くらいの街。若い子には大都会でオシャレな人や変わった服を着てる人、美味しい食べ物のお店なんかがひしめき合ってる。

 正直、私とは無縁な場所だ。

 オシャレには興味無いし、ご飯も美味しい必要はないと思ってる。身だしなみは整えるし、ご飯は食べられれば十分。()()()はそう育てられている。

 ……そのはずだ。少なくとも私は。


「京子姉ちゃん、私こっちにいられるの明日までなんだから時間勿体ないよ」


 さっきから私を姉と呼ぶこの子は私の妹の和美(かずみ)ちゃん。短大を卒業して働き出した私のアパートにGWだからと遊びに来ている。


「いや、そもそも呼んだ覚えもないし来るって話を園長からも聞いてなかったし案内しなきゃいけないってこともないよねっ!?」

「あー…それは京子姉ちゃんをびっくりさせようと」

「それで園長に私が呼んだことにして連絡させたのは誰だったっけなぁ」

「むぐっ…だって、都会に行きたかったし。京子姉ちゃんにもずっと会えなかったから会いたかったし」


 隣を歩く妹は俯きながらブツブツと言い訳を呟いているが、それは初日に何度も聞いている。

 それに意地悪なことを言っているけど、私だって和美ちゃんだけじゃなくて妹や弟たち、兄や姉たちには機会があれば会いたいとは思ってる。


「私も同じなんだけどね」

「え?」

「さて、着いたよ!ここが和美ちゃんが来たがってたお店だよ」


 だからちょっと迷惑かけられたくらい、何でもない。

 貴重な休みを使って私を慕ってくれてる妹を甘やかすためにこうして雑誌に載ってるスイーツのお店を何軒もハシゴするのだって苦じゃない。

 ちなみに、5軒目だ。

 …苦じゃないよ?でも今日の摂取カロリーは考えたくない。



 その後田舎の街では売ってないような服や小物を買い、人ごみの中を掻き分けるようにあちこち歩き回った。

 さすがに足が棒のようになってきたので、電車で私のアパートがある駅まで移動中だ。妹ははしゃぎすぎたのか電車に乗るとすぐに船を漕ぎ始め、今は私の肩にもたれかかって眠っている。


 お気付きとは思うが、私と妹は実の姉妹ではない。他の兄や姉、弟、妹たちもだ。物心つく前に施設に預けられ、今日までに至る。

 実の両親のことは覚えているが、思い出すほどにテンプレのようなダメ親だった。

 金さえ入れればいいと思って外で女を作ってロクに家に帰りもしない父親。その事を問い詰められるとキレて母親や私に手を上げる。

 父親の稼いだ金をギャンブルにつぎ込む母親。負けると私に八つ当たり。あまりに負けて食べ物すら買えないような日々が数日続いたこともあり、私が隣の家に食べ物を貰いに行ったこともある。たまに腫れた顔で行くとすぐに警察に連絡されて、おまわりさんが優しく抱きしめてくれたこともあった。

 そのことがキッカケで児相から何人かの人が来てたのはうっすら覚えている。

 ちなみに当時に受けた暴力の痕はまだ私に残っていて、実は右手の薬指と小指を完全に曲げることができない。記憶にはないけど、骨折したままちゃんと治療せず変な形で治癒したためと言われた。

 最終的にはお金を家に入れなくなった父親が蒸発。母親はギャンブルで負けすぎてお金がなくなり、家から出なくなった。

 私はお腹が空きすぎて歩くのもままならない状態のまま外に出て、マンションの入り口で倒れてしまったところで保護されたらしい。

 病院で目覚めた私は母親との面会もあったが彼女は私の養育を拒否。それからいろんな人に会って施設へと送られた。多分、あのまま彼女といたら私は間違いなく生きていなかったと思う。


 施設の生活は恵まれてはなかったけど、毎日ご飯があって冬でも長袖を着れてたから不満はなかった。私と同じような境遇の兄弟姉妹たちと将来は真っ当な大人になって幸せになろうっていつも励ましあってた。中には施設から卒業して道を外れてしまった兄や姉たちもいたが、選ぶのは本人だ。基本的にそういう兄や姉たちは評判も良くなかったし、私も会いたいとはあまり思わない。

 学校ではちょっと辛いこともあったけど部活の友だちは仲良くしてくれたし、得意じゃなかったけど勉強も頑張った。

 そうして施設の近くの公立高校から少し離れた街の短大に推薦入学で入ることもでき、奨学金を貰いながらバイトもして卒業できた。

 勿論、短大に行くお金は全部自分で捻出した。

 役所や高校の先生にも何度も相談した。先生元気かなぁ。


 その後なんとか都内の会社に入ることもできた。奨学金の返済をして生活費を引いてもお小遣いと呼べるものが残る。自由に使えるある程度のお金を得たのは初めてかもしれない。


 その初任給のお小遣いを何に使おうかなと思って迎えたGW。

 初日の午前中にアパートを訪ねてきた妹を見た私が嬉しくも戸惑う表情を出したのはお分かりだろう。

 あとは先程の話になるわけだが、園長先生に連絡して妹を数日泊めさせること。私が呼んだことにすること。責任持って帰りの電車に乗せることを約束して好きにさせることにしたのだ。

 困った妹だと思いながらも、私の肩を枕にしている可愛い妹の頬を指でつつく。全くの無反応で少しつまらないが起こしても悪いので、残り3駅分寝かせておくことにした。


「ふあぁぁぁぁ」

「随分よく寝てたけど、そんなに疲れた?」

「うーん、体力には自信があったんだけどなぁ?そうなのかな」

「慣れない環境であんなにはしゃいで遊んでればそうなるよ」


 寝ぼけ眼で後ろ頭をガシガシと掻きながら時折フラフラと危なげな足取りの和美ちゃんと一緒にアパートまでの道のりを歩いていた。私のアパートは最寄の駅から自転車で10分。つまり徒歩だと30分はかかる。

 しかしそれはあくまで自転車での道のりだったらの話。そっちの道なら帰り道にコンビニもあるし夜遅くまで営業してる TATSUYAもある。人通りも夜でもそれなりにある。

 彼女を早く休ませたかったので普段は通らない30分の道のりを15分にできる近道を選んだ。

 ただこっちの道は人通りも少なくちょっとした畑や林、その脇の作業小屋程度しか建物がない上街灯もあまりない。ちょっと危ないかな?と思いながらも大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせる。そこでフラフラの足取りのまま遅れ気味に歩いていた妹の方を振り返…?


「え?何?京子ねえちゃ…」


 私の表情に妹も驚いた顔を見せる。

 多分、青ざめた顔をしていたんだと思う。驚きと恐怖と焦心がない交ぜになったような。

 妹のすぐ後ろに真っ黒なパーカー、黒い目出し帽を被った人が走り寄ってきていたからだ。

 そんな私の表情を見た妹はもちろん後ろを振り返るわけで。その妖しい人と目が合い悲鳴を上げようとするが恐怖のあまり声が出ず、息を飲む音だけがした。

 その瞬間妹はその人に口を押えられ、首元に包丁のようなものを当てられた。


「動くな。声も出すな。大人しくしろ。そっちの女もだ。動かず、声も出さずに大人しくしてろ」


 その声を聞いた瞬間に、まずいなと思った。

 声に動揺が無さすぎる。明らかに()()()()()いる。

 私たちも施設育ちという生い立ちから、相応にイヤなことに巻き込まれている。それでも初めて悪いことをしようとする人にはそれなりの動揺があるものだが…目の前に男にはそういったものがない。


「妹を放して」

「声を出すなと言った」


 男は刃物を妹の首筋に更に近付けると瞬間的に頭の中が真っ白になる。


 まずいまずいまずいまずいまずい!!!


 頬を冷汗が伝う。一人なら全力で逃げるけど今は妹がいるし何より捕まっている。何とかしないと逃げることすらできない。見捨てるという選択肢は最初からない。


「きょ、京子ね」

「お前も声を出すなと言ってるだろう。…おい、そっちの女。これでこの女の口を塞げ」


 妹の声に被せてくると私にガムテープを放り投げる。

 私はそれを男から目を離さないように拾い上げる。少しだけ妹に視線を向ける。

 しばらく大人しく言うことを聞いてて、必ず助けるから。と意志を込めていると怯えた表情のまま妹も軽く頷いた。

 通じてるかな?通じてるといいな。

 そして震える手でガムテープをビリビリと引っ張り出しながらゆっくりと二人に近付いていく。

 まずは妹の口にガムテープを貼り声を出せないようにする。


「自分の口にも貼れ」


 男の指示に従って自分の口にもガムテープを貼る。両頬にかけて貼ったので顔の半分がごわごわした感じになる。これで終わりじゃないんだろうと再度ガムテープをビリビリと引っ張り出すとやはり男から次の指示が出た。


「次はこっちの女の手を後ろ手に縛れ」


 そう言うと男は妹を拘束していた手を離し、刃物も首元から離れた。

 瞬間的に私は妹を前蹴りで突き飛ばす。


「なっ!んぐっ!?」


 驚く男の手の刃物にガムテープを2周分ぐるぐると巻きつけ、そのまま鼻に向けて殴りつける。

 男はここで反撃されると思ってなかったのか思考が追いついてないようだ。

 突き飛ばした妹を立たせるために近寄って腕を引く。


「~~~~んっ!~~~っ!~~~っ!!」


 和美ちゃん!立って!走って!!

 と伝えようとするがガムテープを自分にも貼ったままだった。くぐもった声だけ掛けて妹を立ち上がらせようとする。


「この………女あああぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」


 激昂した男がガムテープが巻かれたままの刃物で向かってきた。

 瞬間的に妹を庇うように抱きかかえ、男に背中を向けるとほぼ同時に背中に衝撃が走る。


ドン!ドン!ドン!


 立て続けに走る衝撃が妹に伝わらないようにと必死に妹を力いっぱい抱きしめる。

 絶対、この子には指一本触らせない!

 衝撃が走った場所がとても熱いような冷たいような感覚がある。そしてそれに負けるように徐々に体から力が抜けてくる。背中はもう熱さしかないが、全身が冷蔵庫にいるかのように寒くなってきた。

 力が入らなくなり、私の体が妹から崩れるように倒れると背中へ続いていた衝撃はもうしていなかった。


「はぁーーーっはーーーーっはぁっ!はっ!ったく、余計な手間がかかるようになったじゃねぇか」


 何のことよ…。いいからさっさとどっか行ってよ。妹に触ったらタダじゃおかないから。

 私は少し粘るような()()()()に寝そべりながら男と震えながら固まっている妹を見る。


 逃げて。

 和美ちゃん。

 立って。

 走って。

 お願い。


 私の声はガムテープに遮られている以上にもう言葉になっていなかった。

 男は私には見向きもせず妹を立たせようと手を掴み引っ張り上げた。

 そのまま道路脇の方へ無理矢理引っ張って行こうとする。


 待て。

 その子は、私の妹だ。

 そんなのダメだ。

 絶対許さないんだから。


 私にはもう立ち上がる力も声を出す力もない。和美ちゃんは男に服を引き千切られすぐ近くの畑に押し倒された。


 お願い。誰か。和美ちゃんを助けて。

 私の全部を上げてもいい。

 今まで私が得てきた全部。

 これから受け取れるかもしれない全部。

 何もかも使っていい。好きにしていい。


 音を聞くこともままならなくなってきた私の瞳に男が拳を高く掲げて振り下ろす姿が映る。


 だからお願い。

 妹を、和美ちゃんを助けて。

 お願いっ…。


 絶望だけに支配された私の意識が途切れる瞬間。

 死の沼に飲まれる直前のことだった。


「いいよ。全部だよ?何もかも無くなっちゃうからね」


 頭の中の前の方で直接声が響いたと思った瞬間、男が自分の首を絞めて立ち上がった。

 そしてそのまま力を入れ続け、やがて窒息したのか膝が折れる。だが力は入り続けやがて首が右後ろにだらりと下がるとそのまま背中から上半身も倒れ込んだのが見えた。


 それを見届けた後、私は冷たい死の泥沼に身を委ねた。


ありがとうございました。

まだ異世界には行けません。

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