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「暇ね~」


 薄暗い空の下、エルパンは大股を開いてしゃがみ、木の棒で地面に落書きをしていた。


「良いことでしょ」

「まぁね~私ってば悪いこと考えてるわよね~よし、出来た」

「何これ」

「バイキン」

「ぶふっ」


 暇だ暇だと言いながらも、二人は下の灼熱地獄と上のひんやりとした暗い世界を行き来して自由に過ごしている為、案外充実している。今日は少しでも生い茂った雰囲気を出す為、二人で土を耕して草木のなる種を入れいていたところだった。


「あのさ、此処へ来てから色々思ったんだけど」

「何?」

「此処はさ、何にも無くて、怖くてさ、先はあるけどその未来はどうなるかわからない。きっと現状が変わらなかった人達もいるかもしれない。だけどさ、それでも頑張って生きてほしいから、このトンネルは出来たのかなって思ったりもしたんだ」

「うん。だと良いよね」

「でもやっぱり、本当はこんなところに期待してほしく無いんだ。だって、此処は上と下とはあるけど、結果一本道みたいなものだしさ。でも、ダニエル達、生きた人間の生きてる世界は、あんなにも広くて、幾つも道があるじゃない。辛い時は逃げても良い。だから、あの世界で頑張ってほしいの。そこら中知らない人だらけの中で辛い感情を叫んだら、きっと呆れてる人の中で一人くらい、耳を傾けてくれる人だっているはずなんだもの」

「エルパン、暇って言ったり、来て欲しく無いって言ったりしてる」


 リックのつっこみに、エルパンは、「ほんとだ」と笑い、その場に寝転がった。


「そりゃあね~出来ることなら人間じゃなくてさ、前一回来たっていう、霊みたいなのがふら~っと遊びに来てくれないかね~」


 腕枕をし、そのまま眠ろうとするエルパンだが、何かを察したリックがエルパンの腕を引っ張って強引に茂みに連れこんだ。


 二人の視線の先にいるのは、二人の男女。


「これの良いところは、知らないとか覚えて無い人が話しかけるあのたどたどしさよねー可愛く見える」

「おばちゃんみたい」

「おばちゃんで結構。んじゃ、私達はニ人がヘマしない様にアシストしましょうか」

「うん」


 監視者は我が子を見守る親の様な瞳で、二人の男女を見つめた。でも、それもあのトンネルを抜けるまでのこと。けれど、それで良い。この先の誰か達が、どうか幸せでありますように。


――end.

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