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 お次はまぁ~た、この薄暗い世界ですかい。何ですかコレ、やっぱり撮影かドッキリですか?


「貴方も、また来たんですか?」


 とかフツーに話しかけてきちゃってるのは、さっきのおじ様。案外早く再会しちゃったよね。


「そうですね。どう言う繋がりなんでしょう、私達」


 それが分かったらこんなとこに来てない気がするの。タブン。幾ら腐れ縁だとしても、一生ココにいるのだけはごめんだよっ。


「全くです。トンネルを抜けた後のこと、よくは覚えていないのですが、確か一瞬、違う世界が見えた気がするのです」


 うん私も。どうせ道も無いんだし、またトンネルに入りましょうよ。また独占インタビューしてもよろしくってよっ。


「では、トンネルに入ってからをスタートとしましょうか」


 おじ様の言葉に従って、トンネルに両足がついてから会話が始まった。


「好きな食べ物は?」


 いっちごー! っていつもは言うんだけど、今回はおにぎり!!


「おにぎりも良いと思いますけどね。逆に、いちご好きって狙ってる感ちょっとありますよ」


 確かに可愛い系アピールの王道だけどね。みんな受け入れてくれるモンだよ? ただ、番組とか差し入れとか大概いちごでさ、最近見だけでも吐き気するんだよね、いちご。


「本当に好きなものを言わないからですよ。嫌いな食べ物は?」


 いっちごー! 本当に……もう、やめて下さい……おうぇっぷ。


「自業自得ですね。そういや前からお金持ちっぽいこと言ってますが、年収は」


 まだ今は。売れたてだからそんなにだよ。でも、これからグーンと上がるんじゃないかな! 華のレッドカーペットもそう遠くない未来だよ!!


「ペットいます?」


 ワンちゃんが一匹。最近は仕事忙しくって実家の親に預けることが多くて……会いたいなぁ、ワンちゃん。


「ペットいる方って婚期遅れるって言いますけど、実感あります?」


 あってたまるか! 幾つだと思ってんの。まだみずみずしい19歳だからね。


「十九歳なのにキャラのこととかこの先の芸能界でのあり方とか考えてるって凄いですね。発言に三十歳くらいの貫録はありましたよ」


 おじ様は幾つ? お年によってはあんまり馴れ馴れしくしてると訴えちゃうゾっ!


「三十一ですよ。だから、貴方の時々言うおじ様はイラッとします」


 三十代後半なんて私から見たらおじ様だよ。また、ヒゲだって生やしてるし。


「では貴方もその年齢になれば……」


 男と女は違うのだよおじ様。納得がいかないかもしれないが、そう言うこともあるのだ、覚えておけい。


「余談ですが、私に対する今の印象は?」


 インタビュアー。


「そうですか、では」


 ちょっとちょっと! もっと違う答え求めてたんじゃないの!? 素敵だよ、素敵でちょっと冷たいけどちゃんと本質を突いてくれる出来たおじ様だよ!!


「いや、特には求めてませんでしたが……」


 求めてよ!!!


「はあ。有難うございます」


 アンタ、出会った時よりかなり私に慣れたでしょ。慣れた通り越して、ちょっと見下してるでしょ。


「いえそんなことは。でも慣れはしました。貴方も結構慣れたのでは?」


 そうだね。本当に、貴方みたいな人が、近くにいてくれたら良いのになぁ。


「本当の私を知っても、同じ言葉が言えるでしょうか」


 ん? じゃあ言えるか試してみたいから、教えてよ。素敵なおじ様のこと。


「まだ思い出せません。ですが、本当の私は貴方が思っている様な素敵なおじ様では無い。そんな気がします。」


 そうなのかなぁ。でも今まで話してきたおじ様は……。


 ……おじ様は。


 突然後頭部が痛み出し、忘れかけていた記憶が迫りくる様に蘇ってきた、真っ暗な目の前に、ムービーシアターみたいに色と動きを付けた思い出が映った様な感覚に陥る。


 私が今日初めて出会った、サングラスとマフラーで顔を隠した男。道路の片隅で、強引に誰かに引っ張られて、気が付いたら狭くて暗い小屋の中にいて。出ようと思ったら鍵かかってるし、窓も無い。確実に逃げだせない場所に閉じ込めて、私に近づき、両腕を掴み、頬をこすりつけ、抱きついて、熱く深いため息をついた男。


 異質な雰囲気に恐怖を覚えながらも、貴方は誰なの? 男に聞いた。そしたら、男はサングラスとマフラーを外して地面に投げ捨てた。


 その男。その男こそが。悲しい程に、一致している。


 正に、今私の隣にいるこの男に。

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